著者
坂口 聡
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

プロパルギルアミンは、有機合成上有用な中間体であることから、効率的な合成法の開発が望まれている。末端アセチレンをC=N結合へ付加する反応は、プロパルギルアミンの簡便な合成法となるが、末端アセチレンのC=O結合への付加によるプロパルギルアルコールの合成に比べ、成功例は少ない。以前、私はイリジウム錯体触媒存在下、アミン、アルデヒドおよび1-オクチンのような単純アルキンの反応により、反応中生成するイミンの窒素原子に隣接するC-H結合の活性化を経る新規な三成分カップリング反応を見出し報告している。本研究では、アミン、アルデヒドおよびトリメチルシリルアセチレンの反応を行ったところ、1:1:1カップリングおよび1:2:2カップリング反応が生起し、対応するプロパルギルアミン誘導体が得られることが明らかになった。触媒量の[IrCl(cod)]_2存在下、n-ブチルアミン、n-ブチルアルデヒドおよびトリメチルシリルアセチレンをTHF中60℃で反応させたところ、系中でアミとアルデヒドから生成したイミンへ、トリメチルシリルアセチレンが付加した1:1:1カップリング生成物が78%の収率で得られた。またこのとき、アミン、アルデヒドおよびアルキンが1:2:2の比でカップリングした生成物の副生が確認された。そこで1:2:2カップリング生成物の生成を目指し種々検討した結果、1,4-ジオキサン中75℃で反応させることにより、目的物が80%を超える収率で合成できることが明らかになった。溶媒にシクロペンチルメチルエーテルを用い100℃で反応を行うと、短時間で反応は完結した。このような、アミン、アルデヒドおよびトリメチルシリルアセチレンの1:2:2カップリング反応は報告例がなく、本反応は、新規なプロパルギルアミン誘導体の触媒的合成法として有用である。
著者
濱中 春
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

今年度は、1800年頃の教育書や医学書における庭園や造園に関する記述を収集し、分析した。主要なテクストは、十八世紀の教育学の重要な潮流を形成するとともに、デッサウという、当時のドイツにおいて庭園文化が先進的に発展した場所を基点とする汎愛主義教育関連の著作である。それらの言説における庭園の位置づけの特徴は、教育の一環としての造園や園芸作業および植物学という側面がクローズアップされていることである。それは具体的には、当時の教育学や医学において論争されていた子どもの性教育、とくにオナニーの問題に関連し、汎愛主義教育においては、庭園の植物を性教育の材料とすることや、造園や園芸作業をオナニーの防止手段とすることが示されている。十八世紀にはしばしば、子どもは植物に、教育はその栽培にたとえられているが、汎愛主義教育には、その子どもの身体という自然を訓育するために庭園という自然が利用されるという、「自然」の二重の規律化が見出される。なお、現在はこれらの考察結果を論文としてまとめる作業を行っており、その成果を学術雑誌に発表する予定である。三年間の研究を総括すれば、1800年前後のドイツにおいては、「自然」という概念が、自然環境だけではなく、身体、健康、子どもなど多様な対象にわたって適用されている。それは、悪しき文明の対極としてポジティヴな価値を持ち、かつ人間による制御の対象でもあるという両義的な概念である。風景庭園という人工的につくりだされた自然の空間は、まさにそのような両義的な自然概念を具現化した空間であり、そこに、もう一つの「自然」である身体(健康や子どもの身体を含む)の問題系が交差することによって、この時期の庭園観に身体性のさまざま局面が浮上してくることになったということができる。
著者
柳原 英人
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

MBE装置を用いてルチル型遷移金属酸化物薄膜の成長を目的とした実験を行った.ルチル型遷移金属酸化物の中でも室温で金属強磁性を示す事で知られるCrO_2単結晶膜をMBEで成長させることを第一の目標とした.遷移金属酸化物はその価数によって様々な化合物が存在し,Crの場合には3価が安定であるため,単純な酸化法ではCr_2O_3が成長する,Cr^<4+>として安定化して成長させるためにまず,酸化源としてオゾンを選んだ.まず初年度にはオゾン純化装置を開発し純度90%以上のオゾンビームをMBE装置内に導入できるようにした.またRHEED像の観察システムを開発し,オゾンビーム中での薄膜成長をRHEEDを用いてリアルタイムに測定ができるようになった.CrO_2単結晶膜のMBE成長については,ルチル(TiO_2(100))単結晶を基板として,純オゾン中でのMBE成長を試みた.基板温度を室温から500℃まで様々に変化させ,オゾン分圧を,×10^<-4>〜×10^<-6> Torrと変化させて成長条件の探索を行ったがいずれのオゾン圧においても150℃以下ではアモルファスに,それ以上の温度では,Cr_2O_3(100)が成長した.このことからCr^<4+>の成長には高い酸化力を持つ酸化源(オゾン)のみでは十分でなく,比較的高い圧力下での成長が不可欠であると考えられる.本課題の遂行過程において開発,改良したMBE装置を用いて,いくつか副産的な成果もあった.一つ目は,RHEED装置の改良の結果,格子不整合の大きな金属多層膜において,その格子歪みが膜成長とともに緩和していく様子を定量的に観察することが可能となり,Co/Rh超格子の格子歪みと磁気異方性の関係を定量的に理解することに成功した.また二つ目の成果としてMgO(001)を基板としてオゾン中でFe酸化物を成長させるとγFe203エピタキシャル膜が得られるという発見である.この成果は今後様々な方向に展開する可能性がある.
著者
堀内 佐智雄
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

まず,これまで開発した酸一塩基型有機強誘電体について焦電特性を評価するため,焦電流測定法を用いた自発分極の温度変化を計測した。その結果,最大4-6μCcm^<-2>もの大きな自発分極が得られていることを見出した。特に,重水素化ヨーダニル酸(D_2ia)と5,5'-ジメチルー2,2'-ビピリジン(55DMBP)との一価陽子移動塩においては,室温で大きな自発分極をもちかつ,焦電係数について,典型的な焦電実用材であるTGS(硫酸グリシン)に匹敵する性能(400μCm^<-2>K^<-1>)を示すことも見出した。有機強誘電体フェナジン-クロラニル酸/プロマニル酸の中性共晶については,中性子回折による構造解析を完成させ,水素原子核(プロトン)の精密な分布状態の解析を行った。その結果,この物質ではプロトンが酸から塩基に向けて変位するという構造変化に基づき強誘電性が発現していることを明らかにし,論文発表を行った。また,酸-塩基多成分型有機強誘電体の新材料の開発を本年も継続して取り組んだ。室温で強誘電性を示す新たな材料として,テトラピリジルピラジンとブロマニル酸との塩を見出した。この塩では,これまでの酸一塩基系で見られた一次元水素結合鎖ではなく,酸分子の二量体内のプロトン移動と塩基分子の分子内プロトン移動の二種類の動的過程を経て自発分極が誘起されているという新たな強誘電発現機構を明らかにした。本成果については論文投稿準備中である。特に本年度は,課題ゐ最終年度として,これまでの成果について,従来の有機強誘電体と比較総括することに重点を置き,その主な成果として,国内雑誌上の解説としてまとめたほか,Nature Materials誌のReview Articleとして投稿し,近日中の掲載が決定した。
著者
加藤 大
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ナノテクノロジーの進展により、優れたナノ物質が開発され注目を集めているが、高効率な分離精製法は報告されていなかった。我々は、カーボンナノチューブ(CNT)やアミロイドβなどのナノ物質の高精度な分離法を開発し、さらに分離したナノ物質1個の構造決定に成功した。分析法の開発と共に、溶媒に分散しないため分離することが難しいCNTを溶液や乾固した状態で安定に孤立分散させる方法を開発した。
著者
笹澤 吉明
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

小中高生の不眠症の有病率とその心理社会的要因を明らかにするため、小学生1,000名、中学生1,500名、高校生1,000名に対して3度に亘り質問紙調査を行った結果、小学生では1割程度、中高生では、2割程度が不眠症傾向であり、不眠症傾向である小中高生は共通して、抑うつ気分、登校意欲の精神保健指標と縦断的に関連があることが明らかとなった。小中高生の不眠症傾向者共通して就寝時刻が遅く、睡眠時間が短い傾向があった。また生活面では、小学生、中学生の不眠症傾向者のテレビ視聴時間との縦断的関連が明らかとなった。小中高生それぞれ6名にアクチウォッチによる睡眠-覚醒の観察を行った結果、質問紙とアクチウォッチによる睡眠時間はほぼ一致していたが、不眠症傾向者の入眠潜時、中途覚醒時間との関連はみられなかった。以上の結果から、小中高生の不眠症の予防には、テレビの視聴時間の制限と就寝時刻を早めることの徹底が効果的であることが示唆された。
著者
武知 正晃
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、高分子ポリマーの欠点である機械的強度の向上と疎水性であることから細胞接着の改善を目的に、アテロフラーゲン含有アパタイトセメントを用いて、各種の気孔径および組成の吸収性多孔質ポリマーを作製し、これに骨髄細胞を移植じ、培養系および動物実験で骨再生を試み、臨床応用に最適の条件を見いだすことを目的とした。まず培養骨髄細胞を用いた骨再生の評価として、近交系ラットの大腿骨から骨髄細胞の細胞懸濁液を調整し、作製した各種試料に播種し、培養後、実験を行った.その結果、PLGAにアテロコラーゲン含有非崩壊型アパタイトセメントを混合した高機能性バイオセラミックス複合体は、対照群として用いたハイドロキシアパタイ'ト多孔体と比較して、細胞接着能、増殖能、アルカリフォスフアターゼ活性、タイプIコラーゲン合成能およびオステオカルシン産生能において優れていた。次に、高機能性バイオセラミックス複合体と骨髄細胞の複合体を利用し異所性骨形成実験を行った。高機能性バイオセラミックス複合体と骨髄細胞を3週間培養することによって試料を作製し、同種の近交系ラットの背部皮下に移植した。その結果、経時的に新生骨量は増加し、移植後8週においては、試料全体において骨形成が認められた。以上の結果から、PLGAにアテロコラーゲン含有非崩壊型アパタイトセメントを混合した高機能性バイオセラミックス複合体は、骨組織再生における細胞の足場として、より有用な担体となり得ることが示唆された。
著者
小川 慎一
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

1980年代半ばに最盛期にあった日本の小集団活動は、長期不況や製造拠点の海外展開、新たな経営手法への転換などにより、1990年代以降に実施する企業が少なくなった。しかし現在でも根強く小集団活動を続ける企業がある。そのような企業は従業員が継続的に改善をおこなうことに意義を認めている。普及団体や実施企業も産業構造の変化を敏感に捉えて、新たなニーズを発掘しながら多様な形態での小集団活動を模索している。
著者
中川 貴之
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

依存性薬物による精神障害に重要なドパミン神経を、ラットの脳切片を培養することで再現し、覚醒剤、コカイン、モルヒネなど異なるタイプの依存性薬物の反復処置によって、共通してドパミン神経の活動が異常に高まることを明らかにした。また、違法ドラッグMDMAの主な作用点であるセロトニン神経を、同じく脳切片を用いて再現し、MDMAを長期間処置しておくと、急性処置時とは異なるメカニズムでセロトニンの遊離が顕著に高まることを発見し、そのメカニズムを明らかにした。
著者
河村 智也
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、胎生期ストレスを与えられたラットの依存性薬物に対する感受性の変化を、脳内における生化学的・形態学的変化と関連することを目的とした。そこで本年度は、胎生期ストレスが仔に及ぼす影響のうち、脳形成に及ぼす影響と、成長後のストレスに対するコルチコステロン反応およびコカイン報酬効果に及ぼす影響を検討した。胎生期ストレスとして、妊娠13日目から17日目まで、1日3回母親を強い光の下で拘束した。生後10日で仔を灌流し、ストレス期間中の細胞新生の様子をBrdU免疫組織化学染色により観察した。また、同じくストレスを受けた母親から生まれた仔について、成長後のコカイン報酬効果に違いがあるかをコカイン誘発性条件性場所選好法を用いて測定した。加えて、ベースラインレベル、30分の拘束ストレス終了直後、1時間後、2時間後における血漿中コルチコステロン放出量を測定した。その結果、胎生期ストレスを受けた群は、受けなかった群に比べて側坐核、海馬で著しい細胞新生の減少を示したが、扁桃体では大きな違いを示さなかった。成長後、胎生期ストレス群のラットは、ベースラインレベルとストレス終了2時間後において、非胎生期ストレス群よりも高いコルチコステロン放出量を示した。しかしながらコカイン誘発性条件性場所選好の成立に両群間の違いは見られなかった。以上の結果より、胎生期ストレスは成長中の脳形成と成長後のコルチコステロン反応に影響を及ぼすが、コカイン誘発性条件性場所選好には影響を及ぼさないことが示唆された。
著者
十川 千春
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、モノアミントランスポーター発現動態の解析を申心に、疼痛に関わる下行性抑制系神経におけるモノアミントランスポーターの役割と疼痛制御への関与について検討し、歯科領域で問題となっている神経因性疼痛の有効な治療法の開発基盤を得ることを目的とする。われわれはこれまでに、ヒトDAT(hDAT)およびヒトNET(hNET>には、末梢組織においてエクソン6を欠失する新規のスプライシングバリアントが存在することを見出してきた。さらに、今年度はこれらのバリアントの発現および機能調節について検討を行った。hDAT、hNETの野生型(FL)およびエクソン6欠失バリアント(-EX6)をCOS-7細胞にそれぞれ形質導入し、3^Hラベルした基質の取り込みにより基質輸送活性を、また、ウエスタンブロッティング法および免疫染色法にて細胞局在について検討を行った。さらに免疫沈降法によりFLと-EX6の相互作用についても検討を行った。hDAT-EX6およびhNET-EX6はいずれも、基質輸送活性が著しく低下しており、hDAT-EX6はコカインのアナログであるWIN35,428の特異的結合がみられなかった。また、ウエスタンブロッティングの結果より、両バリアントともに膜への移行が著しく低下しており、hDAT-EX6はFL-hDATよりも膜への移行が著しく遅いことが分かった。さらに、hDATについて免疫染色の結果より、FL-hDATはC末端領域が細胞内へ存在するが、hDAT-EX6はC末端領域が細胞外へ局在していることが示唆された。次に、FLと-EX6の相互作用について調べるため、FL-hDATとhDAT-EX6を共発現させた場合、基質輸送活性のVmaxが著しく低下し、km値も低下していた。また、膜への発現も低下しており、FL-hDATとhDAT-EX6は細胞内でヘテロ二量体を形成することが明らかとなった。以上の結果より、ヒトカテコラミントランスポーターのエクソン6欠失バリアントは野生型と結合して野生型の膜移行を制御し、発現・機能調節に関与していることが明らかとなった。神経伝達物質であるノルエピネフリンおよびドパミンの再取り込み機構をつかさどるNETおよびDATの発現調櫛がアイソマーム間の相互作用により制御されている可能性が示唆された。
著者
石黒 浩毅
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は神経細胞接着因子NrCAM低発現が依存易形成性にnegativeに働くというヒト死後脳や遺伝子改変マウスの先行研究成果を発展させたものであり、依存形成の阻害に働く分子ネットの一部を明らかにすることにより病態解明と治療法の確立等に寄与することを目的とした。まずはNrCAM以外の神経i接着因子についても遣伝子多型と依存症との関連が示され、これら神経ネットワーキングに関わる分子が依存形成に重要な役割を果たすことがわかった。さらに、ニューロン由来およびグリア由来の培養細胞におけるNrCAM遺伝子に対してsiRNAを用いて発現抑制を行うこと、ならびにNrcamノックアウトマウスの脳の遺伝子発現解析を行うことにより、NrCAMが影響を与える分子群の遺伝子発現を網羅的に検討した。ヒト死後脳を用いたNrCAM遺伝子多型が及ぼす遺伝子発現変化の割合は約50%であると定量できたので、50%程度の遺伝子発現抑制効果を得たsiRNA実験系組織ならびにheterozygoteノックアウトマウス脳を解析した。それぞれの組織に対するイルミナビーズァレイ解析装置による網羅的遺伝子発現解析では、主にグルタミン酸系やGABA系、その他の神経系の分子をコードする遺伝子の発現変化が認められた。その内、培養細胞系およびノックアウトマウス脳において共に遺伝子発現変化が確認されたグルタミン酸系酵素分子は、その阻害剤がモルヒネをはじめとする依存性薬物への形成阻害を起こすことから、治療薬としての可能性を示唆するもめと考えられた。
著者
師岡 友紀 谷浦 葉子 三木 佐登美
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

看護基礎教育の臨地実習で「身体侵襲を伴う看護技術」を実施することは、新卒看護師にとってどのような意義があるか検討した。対象者175名のうち103名の同意を得、3ヵ月後・6ヵ月後・1年後に調査を行った。結果、身体侵襲を伴う看護技術を実施した場合、実施した技術に対する自己評価が高まるが、その傾向は全ての技術に当てはまらないこと、身体侵襲看護技術の経験のない場合はある場合と比較し就職1年後の離職願望が強いことが示された。実施の意義として「技術向上のための学習意欲が増す」と評価する割合が大きかった。
著者
南野 森
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究期間の全般にわたり、最新のフランス憲法学・原理論に関する文献を多数収集するとともに、現代フランスにおけるもっとも重要な法理論家であるミシェル・トロペールの論攷を5本翻訳し発表した。また、研究テーマに関連する雑誌論文を邦語・仏語で7本、図書も邦語・仏語で7冊刊行することができた。さらに、日仏の研究者交流にもつとめ、数回の共同研究会を日仏両国(うち一回は研究代表者の勤務校)において開催することもできた。
著者
江口 誠
出版者
愛知教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、ジャーナリズムと文学という観点からピータールー虐殺事件の受容に焦点をあて、19世紀初頭イギリスにおける様々な言説の把握を試みたものである。主な研究成果は、以下の3点にまとめられる:(1)単著Progress and Stasisの出版、(2)学術論文「サミュエル・バムフォードの詩におけるピータールー虐殺事件」の発表、(3)学術論文「ピータールー虐殺事件とWilliam Hone」の発表。
著者
藪 友良
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、マルコフ連鎖・モンテカルロ法(MCMC)を用いることで、高頻度の介入額を推計した上で、介入の為替レートへの効果をHourlyデータを用いて推定する(詳しくは、時間当たり介入額をauxiliary variableとして扱い、MCMC によって未知パラメータと時間当たり介入額の同時分布を求める)。この新アプローチを使って、1991/4/1~2002/12/31における日本の介入効果を推定したところ、1兆円の為替介入は、円ドルレートを1.7%変化させることがわかった。これは、1ドル=100円のとき、1兆円の介入により為替レートを1.7円動かすことを意味する。介入効果は、先行研究に比べて、その効果が倍以上となっていた。日本の通貨当局は2003年初から2004年春にかけて大量の円売りドル買い介入を行った。この時期の介入はJohn TaylorによってGreat interventionと命名されている。本稿では,このGreat interventionが,当時,日本銀行によって実施されていた量的緩和政策とどのように関係していたかを検討した。第1に,円売り介入により市場に供給された円資金のうち60%は日本銀行の金融調節によって直ちにオフセットされたものの残りの40%はオフセットされず,しばらくの間,市場に滞留した。この結果は,それ以前の時期にほぼ100%オフセットされていたという事実と対照的である。第2に,介入と介入以外の財政の支払いを比較すると,介入によって供給された円資金が日銀のオペによってオフセットされる度合いは低かった。この結果は日本銀行が介入とそれ以外の財政の支払いを区別して金融調節を行っていたことを示唆している。
著者
橋本 優子
出版者
東洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成14-16年度の3年間に、通貨・金融危機をきっかけとした為替変動の他国への波及効果や市場取引への影響について実証分析を行い、興味深い結果を得ることができた。通貨危機の波及効果に関する分析の結果は、アジア全域としては、株価変動と為替変動への震源からの影響は非対称であり、株価から為替レート変動というCausality(影響力)が意外に大きいことが明らかとなった。特にタイでは、この「株価→為替」というCausalityが強いこと、すなわち、タイではFundamentalsの悪化が先に起きて、それが通貨アタックを招くというシナリオであったことが示唆された。日本の銀行破綻が為替市場の取引に及ぼした影響の分析に関する析究では、1997年7月1日から1998年1月9日までの為替市場でのディーラー提示円ドルレートBID-ASKデータ(TICHデータ)を用いて行った。各ディーラーの提示する売買の全ての気配値をレコードしたデータをクリーニングし、10分毎の最終値を用いて、為替リターンの分散の影響をGARCHモデルで推定した結果、為替リターンの分散には非対称性やvolatility clusteringの存在が明らかとなった。とくに、条件付き分散の係数は1に近いことから、分散に対するショックの持続性が認められた。さらにGARCH分析結果の月毎の違いが有意であるかどうかを確かめるためF検定を行った結果、月毎に予期せざるショックからの影響を比べると、11月はサンプル期間平均に比べて低く過去のreturn分散の影響が強いことが分かった。11月の一連の銀行、金融機関破綻が、為替リターンに影響を及ぼしたと考えられる。また、Bid、Askそれぞれの提示数(Quote Entry)や値幅を細かく分析した結果、ディーラーが破綻後にニュースに敏感となったことが判明した。
著者
白鳥 圭志
出版者
東北学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は両大戦間期における外為銀行(横浜正金銀行)の分析の歴史的前提として、明治期から産業革命期に至る同行の経営動向の分析、管理体制の分祈を中心に行った。その結果、国内における産業資金供給の効率性を担保とする経営制度の確立は既に1880年代に見られたほか、日露戦争後までの時期の間に貿易金融機関としての経営体制のみならず、「満州」開発のための金融機関としての制度内容も整えられたことが明らかになった。その上で、産業革命期までの間に形成された経営体制を前提に第一次世界大戦期に経営拡大が図られることが判明した。ここまでの成果を前提に、第一次世界大戦期から金融恐慌前までの史料収集と分析に着手したが、残念ながら本年度中に史料収集も完了せず、したがって具体的な成果を挙げるには至らなかった。来年度は本科学研究費補助金の助成期間を過ぎてしまうが、何らかの形で財源を確保した上で第一次世界大戦期から1920年代半ばまでの史料収集と分析を継続し、成果としてのとりまとめを図りたいと考えている。また、できるだけ早い時期に、上記の産業革命期までの分析を論文として公表することを考えている。為替政策については、昨年度中に史料収集をほぼ完了することができた。もっとも、残念ながら、上記の外為銀行の史料が膨大だったために、予想外にこちらの史料収集と分析に時間がとられたため、為替政策の分析に着手することはできなかった。来年度、こちらの分析に着手し、成果としてのとりまとめをはかるつもりでいる。
著者
豊田 則成
出版者
びわこ成蹊スポーツ大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、元アスリートは、1)どのような出来事を転機として挙げるのか(転機のカテゴリー化)、2)いくつの転機を有するのか(転機の多少は何に起因するのか)、3)ひとつの転機をどのように捉えているのか(出来事をポジティブに捉える要因、ネガティブに捉える要因とは)、4)転機を転機として認める個人内基準とは何か、といったリサーチ・クエスチョンの下、3年間継続して実施された。まず、研究課題として、インタビュー調査の実施と「自己物語」の作成・検討を設定し、具体的には、1)インタビュー・マニュアルの作成、2)集中的なインタビュー調査の実施、3)自己物語の集積と質的分析、等の作業を行った。続いて、インタビュー調査の継続実施と研究成果の一部公開を課題とした。特に、モントリオールオリンピック大会に出場した日本代表選手を対象として、集中的なインタビュー調査を実施した。また、日本体育学会第56回大会(於:筑波大学)において、研究成果の一部を公開した。特に、大会本部が企画したオーガナイズドセッションにおいて、心理学領域のみならず、社会学や体力学、人類学等のプレゼンテーションと伴に、「スポーツ科学領域における事例研究の展開」といった共通のテーマ設定の中、ディスカッションできたことは意味深い。そこでの学究的刺激は、本研究の今後の展望について新たな知見の発掘を促した。そして、前年度に獲得したデータの補完を目指し、継続的なインタビュー調査を実施した。そして、日本体育学会第57回大会(於:弘前大学)において学会発表し、国内研究雑誌への論文投稿作業へと入った。特に、本研究をまとめるにあたり、「転機」といった観点から興味深い知見を得ることができた。そこでは、転機を経ることにより喪失というよりは獲得といった側面が強調され、そこには心理的成熟をみることができた。
著者
竹野 欽昭
出版者
独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は夏季トレーニングの前後に携帯型運動量連続測定装置を用いた運動中の運動量測定を実施し、トレーニング効果が運動量に及ぼす影響を明らかにするとともに、簡易的な運動量評価方法の検討を行った。トレーニング効果が運動中の運動量へ及ぼす影響を調べるため、夏季トレーニングの前後に下記の測定を実施した。1)実験室内での最大酸素摂取量測定および乳酸カーブテストこの測定は夏季トレーニングによるトレーニング効果の評価のため行った。トレッドミル運動による漸増負荷テストを実施し、心拍数、酸素摂取量、血中乳酸値を測定した。2)フィールドでの運動量の測定走運動、スケーティング運動について、野外の平坦な走路を用いて行った。簡易的な運動量評価方法を検討するため、1ステージ1分を目安にした、7〜8ステージの漸増負荷運動を行った。前後、左右、上下の3方向の運動量と総運動量を算出し、トレーニング前後の比較や上記のトレーニング効果評価項目との関連を分析した。その結果、トレーニング後に各負荷の心拍数と乳酸値の低下および最大酸素摂取量の増加が認められた。有酸素性運動能改善とフィールドでの運動量測定データとの関連を分析したところ、有酸素性運動能の改善に伴い、走運動では上下方向の運動量の低下が、スケーティング運動では左右方向の運動量の低下が認められた。このようなことから携帯型運動量連続測定装置を用いた運動中の運動量測定は、フィールドでの簡易的な運動能力評価法として適用可能なことが示された。