著者
村上 朝子 仲 隆裕 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.97-102, 1993-03-24
被引用文献数
1 1

本研究は,いけばなと盆栽の取り扱いについて,庭園植栽意匠との関係に注目し,考察した。いけばなの取り扱いについて中世の絵巻物や花伝書等を用いて検討した結果,「真の花」であり,座敷の押板飾りに欠かせない「三具足の花」が仏前の供花から派生し成立する過程が推察された。また,花伝書の記述から,特に「草の花」は自然の美を表現しようとするもので,このとき,当時の庭園植栽の姿が想定されていたことが指摘された。一方,盆栽については絵巻物から,縁や庭先に置かれる盆栽は庭の景を構成する一要素となり,これを考慮した植栽意匠がなされた場合があったこと,また,盆栽が植栽の整姿に影響した可能性について考察された。
著者
小野 佐和子
出版者
日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.235-250, 1982
被引用文献数
4 5

江戸時代後期に江戸に住む一般民衆のレクリエーションのあり方を考察した.<BR>その結果, 寺社を核とし, 寺社門前の料理屋, 花の名所, さらには囲周の風景をとりこんだ広い地域に及ぶ遊覧地の存在が明らかになり, そこに, 寺社参詣, 料理屋での遊興, 郊外の逍遙が結びついた娯楽のモチーフを認めることができた.
著者
長田 光世 森 清和 田畑 貞寿
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.151-156, 1993-03-24
被引用文献数
1 3

本研究は,生態学的な水辺緑地計画の視点から,計画指標となりうるトンボの種の把握を目的に,トンボの生息環境としてきわめて良好な環境である桶ケ谷沼におけるトンボの優占種の検討を行い,それを基礎とした複数の池の比較考察を行ったものである。その結果,トンボ科の広域分布種について,環境復元の段階的な発展に伴い種を4段階に分類し,それぞれ有効と推定できる指穏種を提示した。また,特にチョウトンボは,池を中心とする水辺緑地の多様な構造に対応して個体数密度を増加させ,さらに最もトンボ相が豊かになるような多様な構造をもった水辺緑地では,夏期調査時のトンボ科全体に対して最大の優占種となる指標性をもつことが把握された。
著者
吉田 直隆 難波 良平 片谷 克也
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.123-133, 1990-11-26
被引用文献数
2 2

森林公園の植生の形態を構成する樹種,立木密度,林況,および芝生地等の形態が,その利用状況に直接的に影響することは,一般的に自明のこととされている。そこで,代々木公園の通年にわたる利用実態調査をもとに,植生の形態を類型化し,植生の形態と利用との関係を明らかにするとともに,芝生広場の利用者が最も好む形態と広さについても明らかにした。
著者
前中 久行 大窪 久美子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.143-148, 1986-03-31
被引用文献数
3 1

大阪府下の主要な7公園で区域を定め、休日の芝生他の滞在者数調査を行なった。各公園の平均滞在者密度は7調査地中4ヶ所が約50人/haであった。これらの公園ではカセクサ、シマスズメノヒエなど踏み跡植物が高頻度で出現した。この踏み跡植物を利用密度の指標として大阪府下の各地各種の草生地の構成種を位置づけ、レクリエーション利用と植生の関係を検討した。
著者
市原 恒一 豊川 勝生 山田 健 大川畑 修
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.191-196, 1991-03-30
被引用文献数
3 7

森林施業が行われている既存の人工林を森林レクリエーションのための森林,すなわち景観的な価値が高い森林に改組する方法について検討している。今回は笠間営林署筑波山国有林のヒノキ複層林試験地の林内景観と森林の構造との関係を,写真および現地における景観評価試験により検討した。写真と現地の試験結果は,おおむね一致した。その結果,複層林は一般の林分より美しく,特に,(1)林内相対照度が大きい,(2)樹幹が通直である,(3)奥行きが深い,(4)奥行きが浅い林分では明るい林外が見通せる,などの条件をそなえた複層林が美しいと評価されることが明らかになった。
著者
丸田 頼一 支倉 紳 柴田 知之
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.19-24, 1985-03-30
被引用文献数
1 1

適要 1864年に,カリフォルニア州政府が設置したヨセミテ公園は,広域な原生地域を対象とした全米で最初のものてあった。その後,この公園は国立公園に吸収合併されたか,1902年,レッドウフドパークの設置以後,カリフォルニア州政府は州営公園系統の整備を着実に進め,現在ては,260ヵ所にものぽる多種多様な公園を設置している。本論においては,このような州営公園の発展の史的事実及び背景等を明白にしようとするものである。
著者
佐藤 昌
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.167-188, 1986-02-28
被引用文献数
2 1

近年日本の伝統様式の庭園が諸外国で築造せられ,高い評価を受けている。これについては,長い間の書籍,見聞記,広報,写真,映画等の情報の集積によるものであるが,国際的評価を得る主な原因は,彼等が実際に造られた日本造園を自分の国で実際に見る機会を得ることである。本稿は,諸外国で行なわれた万国博等に我国が出展した庭園及び日本に旅行滞在した外国人が自らの庭に作った初期のものを考察するものである。
著者
渡辺 達三 鈴木 雅和
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.187-192, 1992-03-31
被引用文献数
4

蓮は古来,紅蓮,白蓮などとその花色によって分けて呼ばれるように,色彩に大きな関心がもたれてきた。蓮の花色には花弁,雄ずい,花托などの要素が関与し,それら全体によって独特の色あいを呈するが,今回は,そのうちでも大きな要因をなすとみられる花弁を取り上げ,それを拡散照明受光方式による色彩色差計により測定し,L^*a^*b^*表色系による色彩空間を求め,1)品種(間),2)開花経過日数(間),3)着弁位置(間)におけるその実態の把握を行った。
著者
丸山 宏
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.7-12, 1984-05-31
被引用文献数
1 1

摘要:明治19年12月25日の府告示により成立する円山公園は,ハ坂神社,安養寺,長楽寺,双林寺の各境内地の上地にその端を発している。社寺境内地処分は,地組改正を念頭においた近代的上地所有制の確立とも関連する政策である。本稿では社寺境内地の解体解程で,円山公園が誕生する具体的な経緯を論じた。特に円山公園成立前にその一部が名区であったこと,また社寺境内外区画の決定の際に名所地が設置されていたことは新しい知見である。
著者
森下 諦三 野田 茂行 小沢 知雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.16-24, 1974-12-20

各種産業の工場では,有機性排水を活性汚泥法により処理している。その際の活性スラッジの成分は,ズーグレア,ワムシ,原生動物から成りたっている。したがって,生物処理スラッジの主体は,蛋白質で,有機質肥料として活用出来るものである。著者らは,スラッジの肥効を,ノイバウエル幼植物試験法,土壌中の無機化分解実験(砂質または粘土質土壌使用)および排水の消化工程で添加される凝集剤の影響テストにより検討した。さらに,活性スラッジの芝草に対する肥効と土壌改良性を,市販の類似資材と比較して調査を行なった。結果のまとめ(1)活性スラッジは,なたね油粕やニシン荒粕と同よう,緩効性の肥効を示し,かつまた,油粕施用時の生育障害を認めなかった。(2)凝集剤の添加は,一般に発芽率を稍低下させ,また無機凝集剤の中で,消石灰がリン酸の肥効に最も悪い影響を与えた。(3)芝草に対する活性スラッジの肥効は,その地上部より地下部によく現れる。(4)芝生への活性スラッジの施用は,踏圧による土壌の硬化を軽減する。(昭和48年10月21日,日本造園学秋季大会発表)
著者
下村 彰男 江頭 俊昭
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.307-312, 1992-03-31
被引用文献数
2

レジャー,レクリエーションは「楽しさ」や「やすらぎ」といった心(情緒)的情報を提供する活動であり,その活動の場である遊楽空間は情報提供のための空間装置として,その装置性,構造性が追求・計画されるべきであると考える。そこで,その基礎資料とするべく,本研究では近世における遊郭,芝居町など,心的情報提供空間の装置性に関して,文献・資料調査を中心に検討を加えた。その結果,(1)境界,(2)階層構造,(3)「導入」装置,(4)「繁・華」装置に大きな特徴がみられ,空間全体のイメージアビリティを高め,別世界性を強調すると同時に,気持ちの切り替えや雰囲気の高揚を促す仕組みを有していることが明かとなった
著者
小野 健吉
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.13-17, 1986-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

小川治兵衞 (『植治』) は、明治中期から昭和初期にかけて、無隣庵 (山縣有朋別邸) をはじめとする数多くの別荘庭園を作庭した。そうした別荘庭園の代表的なものの一つである封龍山荘庭園について、『京華林泉帖』(明治42年)『日本美術と工芸』(明治45年) の記事などから作庭当初の構想、世評を考察した。その結果、借景、庭園の構成についての小川治兵衞の考え方及び本庭園の世評の高さが明らかになった。
著者
高橋 理喜男
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.17-23, 1963-03-30
被引用文献数
2 2

Die Planung der Spielplatze in Osaka fing aus Anlass von einem unvorhergesehenen Unfall an. Das war "Die Anordnung des vom Schadenfeuer betroffenen Teils in dem Kita-Bezirk" im Jahre 1909, die vorwiegend aus dem Plan von Strassen und Spielplatze bestand. Der Plan war so epochemachend, dass ein gewisser Fremder ihn sehr eifrig unterstutzte, und dennoch wurde seine Ausfuhrung aus dem falschen Grunde gehindert, dass Spielplatze sich nur in einem besonderen Bezirk sammeln. Die zweite Planung, zum Andenken der Thronbesteigung entworfen, durchgang zu Beginn der Taischo-Zeit(1961), und sieben Spielplatze wurden sich gerecht auf der ganzen Stadt verteilt, und auch jeder in der Nahe der Schule. Nach einigen Jahren (1921) wurden vier Volksbibliotheken neben den Spielplatze angelegt. Geschichtlich ist diese Verbindung, nach meiner Meinung, das seltsame und bemerkenswerte Beispiel, darauf die westliche Zivilisation einwirkt.
著者
鈴木 誠 河原 武敏 ジャネル ベルナール
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.19-24, 1988-03-31
被引用文献数
1

20世紀初頭フランス西部,メーヌ・エ・ロワール県モーレヴリエ町に,フランス人建築家アレキサンドル・マルセルの設計になる,池泉回遊式の日本庭園が造られた。同国内でも最古かつ最大級の日本庭園でありながら,地元の人々にさえ良く知られずに,近年まで長年放置されていた。本研究では現地調査の結果をふまえ,この庭の現況と往時の姿,成立経緯と時代背景について,マルセルの他の業績と共にまとめた。
著者
北村 文雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.29-33, 1976-01-24
被引用文献数
1

イ)本研究は造園樹木の亜硫酸ガス抵抗性の季節的変異を究明し,都市における造園樹木の利用および保護,管理面に貢献することを目的として行われた。供試樹木としてカマクラヒバ,マサキ,サツキツツジを用い,その3〜4年生苗木を鉢植として,1972年5月より1年間,隔月毎に公害実験用グロースキャビネット内にて亜硫酸ガスを接触させて,植物の被害状況およびその後の生育状態を調査した。また灌水による被害軽減効果を検討した。ロ)実験結果から,供試樹木の亜硫酸ガス抵抗性は冬季(1月)およびそれに続く時期(3月)がもっとも強く,冬季に入る直前(11月)も抵抗性が強くなっている。逆に夏季(7月)がもっとも弱く,それに続く時期(9月)も弱いが,夏季に入る直前(5月)は種類によって被害の出現度が異なる。ハ)被害度の1指標とした落葉率はほぼ観察による被害度と同じ傾向を示す。ニ)処理後の生育をみると,枯死したものはなく,いずれも回復している。3月現在でカマクラヒバはすべて正常に生育し,マサキ,サツキツツジは7月および11月処理区を除いてほぼ正常に戻っている。7月区は被害による落葉後の新葉の萠出が遅れ,11月区も落葉期が冬にかかったために新葉が萠出していない。ホ)灌水による被害軽減効果はあまり認められない。へ)供試樹木の亜硫酸ガス抵抗性は,全般を通じてカマクラヒバが非常に強く,次いでマサキ,サツキツツジの順である。