著者
田渕 幸親
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.51-60, 2004-01-31

日本のインドシナ進出に関する研究は、多様であり多彩であるけれども、おおむね政治力学主導型で進められてきた。海外における研究もまた同様であった。新たな視角での研究が求められていることを示すための基礎的作業として、これまでの研究を整理してみたのが本稿である。
著者
岩本 敏夫
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.117-128, 2005-01-31

わが国の空港整備は配置的側面から見ると、全国的に既成したと考えられる。しかし、多くの地方空港が運用の低迷に苦慮している。開港6年を経た佐賀空港も例外ではない。近接する福岡空港に需要の多くが集積しているためである。しかし、福岡空港は処理能力の限界が目前である。対応策として2案がある。現福岡空港を廃港にして滑走路2本を備えた新空港と交代させる案と、佐賀空港と新北九州空港を加えた3空港による機能分担案である。本稿では佐賀空港を事例として、地方空港設置の経緯を整理し、既存の社会資本活用推進の立場から地方空港の展望を考察する。
著者
平井 美津子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.115-122, 2007

日本は歴史や文化の基盤が欧米と大きく異なる。そのため英語で日本を理解してもらうには、文化的背景を加えたわかりやすい説明が必要となるが、このとき特徴的なキーワードが見出される。本稿ではこれらのキーワードを指摘し、例文を提示して文化的背景を織り交ぜながら解説し、それらについて検証する。
著者
中野 はるみ
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.67-84, 2007

文学作品は、作者が「ことば」の特性を最大限に使いこなして創作したものである。本稿では、「ことばのしくみ=語彙選択や文法」によって、その文学作品を読み解く方途を探っている。書き手が選んだ「ことばのしくみ」の特質が明らかになれば、読み手は、作品のイメージを明確に捉えることができる。素材として、日本の文豪、夏目漱石の最初の小説であり、誰もが一度は読んだことがある『吾輩は猫である」を取り上げた。
著者
中野 はるみ Harumi NAKANO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.45-57, 2008

グローバル社会が到来し外国語教育の重要性が増していくにつれ、学習する外国語の背後にある外国の思想や地域文化、習慣もともに学習する必要性があることが認識され、非言語【ノンバーバル】コミュニケーションの重要性が指摘されている。本稿では非言語【ノンバーバル】コミュニケーションと周辺言語【パラランゲージ】について、研究成果を追いその構成要素を調べた。加えて、発話を文字化したばあいに周辺言語【パラランゲージ】がどのような表現になるのかを探るために、周辺言語【パラランゲージ】を表現する語彙を抽出した。In the wake of the coming of the globalizing world and the increasing importance on foreign language education, it is generally recognized that there is a great necessity for learners to learn and to understand the thinking, the regional local culture and social daily customs which are embedded in any foreign language. In this regard, furthermore, it is also pointed out that one should not neglect the importance of the non-verbal communication. This article aims to achieve two purposes : firstly, it attempts to investigate the components of nonverbal communication ; secondly, it endeavors to trace the research results of paralanguage and its relationship with nonverbal communication. In addition, the article is also attempted to examine the case that when spoken dialogue (hatsuwa) is expressed or demonstrated by words (mojika), what kind of paralanguage expressions would be used and what can be observed? To achieve this, I extracted the vocabulary (glossary) which are used to express paralanguage in the realm of nonverbal communication.
著者
末松 信子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.87-89, 2002-01-31

「〜せざるを得ない」を意味する表現形式について,19世紀初頭のJane Austen(1775-1817)の用法を調査した。そしてAustenでは,今日最も一般的な'cannot help doing'型ではなく,歴史的により古い'cannot but do'型が優勢であること,また今日しばしば見られる'cannot help but do'型,今日古風と考えられる'cannot choose but do', 'cannot choose but to do'型は用いられていないことを明らかにした。
著者
VAN DEUSEN Brendan PATRICK John Owatari-DORGAN Brendan VAN DEUSEN John Patrick Owatari-DORGAN Thom RAWSON
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.13-21, 2015

アクティブ・ラーニングの演習を実施し、管理することは、EFL の教員にとってはますます差し迫った問題になりつつある。本稿では、オンラインの学習テクノロジーを活用することによってもたらされるアクティブ・ラーニングへの利点について調査を行った。まず、アクティブ・ラーニング、および Moodle として知られている学習管理システムを概観する。次に、日本の大学の EFL クラスにおいて、Moodle と連携させたアクティブ・ラーニングの実践内容について記述する。さらに、アクティブ・ラーニングに Moodle を活用することに対する学生と教員の意識調査を行った。その結果、自主的な学習活動、タスクベースの学習活動、さらに社交的に構成された学習活動による体験を通じて、学生と教員の双方が、Moodle 活用はアクティブ・ラーニングを支えるものであると肯定的に捉えていることがわかった。The implementation and management of active learning practices is becoming a more pressing concern for instructors of English as a foreign language (EFL). For this paper, the authors investigated the possible benefits to active learning provided by online learning technologies. The authors begin with overview of active learning and the learning management system (LMS) known as "Moodle". Following this, the authors describe the implementation of active learning in conjunction with Moodle in an English as a Foreign Language class at a Japanese university. Additionally, the authors surveyed students and teachers about their impressions of using Moodle for active learning. Students and teachers positively perceived Moodle as supporting active learning through experiences with autonomous, task-based, and socially constructed learning activities.
著者
細田 亜津子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.119-126, 2002-01-31

インドネシア・南スラウェシ州タナ・トラジャ県において,伝統的家屋=トンコナンの修復保存事業を行った。文化・習慣・社会背景が違う文化財保存の国際援助はそれらの理解,学習の繰り返しである。援助する側,援助される側はそれぞれの主張をする。地域性は独自性を自主的に発揮する場合は,事業を成功させる。しかし,地域性の押し付けば,文化的強制となり,援助展開をスケールの小さいものにしてしまう。本来は,一地方から起こった支援活動は国際援助として十分評価,活用,展開できるのである。
著者
立平 進
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.43-53, 2003-01-31

本稿は、1600年4月19日(慶長5年3月16日)、大分県臼杵市佐志生の黒島海岸に漂着したとされるリーフデ号について、今まで、漂着とされていたものが、実は目的地であり、到着であったと訂正するのが課題である。本稿を要約すると、二つの視点から漂着というより到着であったという歴史的根拠を示すものである。第一点は、1600年以前の西洋において、東洋についての情報がどのように行われていたのか、ということである。当時西洋で作られた、西洋人が描いた日本の地図を見ることによって、日本の地理情報を基に来航したとするものであり、目的意識をもって日本を目指したものであったといえるのではないかという提示である。第二点は当時の歴史的背景である。日本近海に何らかの理由で来航した船について、政治的な理由や人道的な立場から「漂着」としたと見るのである。リーフデ号の場合は「漂着の状態であった」ということであり、たまたまそこへ流れ着いたというものではない、とするものである。そして現在、歴史的な経緯から、大方の解釈は、漂着ではなく到着であり来航であることが明白で、到着した時の状態が漂着と表現したほうがよいような状態であったということである。百歩譲っても、到着の時が漂着の状態であったためということと理解したい。このような理由から、「種子島にポルトガル人が来航」したとして、「オランダ人が初めて来航した」とか、「オランダ船の来航」と歴史的に表記すべきであると提案したい。筆者は「西洋人の描いた日本地図展」(1993年、長崎県立美術博物館主催)という展覧会を担当したことがあり、それを契機にオランダ船の最初の来航について、歴史的な解釈を示したものである。また長崎県立美術博物館には古地図コレクター松本賢一所蔵の古地図コレクションが寄贈されていたこともあり、それを機会に、筆者は、同時に別の西洋の日本古地図にかかわる企画展示を担当したのであった(「欧州古版日本地図展」平成5年7月)。その展覧会では、シーボルト(滞日期間1823-28)以前の西洋から、日本がどのように見られていたのかを知ることができるものであった。安土桃山時代から元禄時代にかけて、近世初期の頃の西洋との交流を証言する資料である。もう一つの見方をすれば、伊能忠敬(1745-1818)以前の日本の地理情報であり、マルロポーロの日本情報以後の歴史的な資料といえる。西暦1600年前後の日本について、西洋諸国で、大きな関心が払われていたということも、この展覧会から知ることになった。本稿にかかわるテーマは、その時からの持ち越であった。
著者
田中 誠
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.77-80, 2006

ヘミングウェイの簡潔な文体は、様々な要素が絡み合って構成されていると考えられるが、その中でも、この稿ではandの使用頻度に注目をする。ヘミングウェイがandを多用しているという印象は多くの人が感じていることであると思うが、andの使用頻度は本当にヘミングウェイの作品の中で、統計的に見ても多いと言えるのか、また、最初の頃の作品と、晩年の作品では、andの使用頻度に違いはあるのかの調査をしてみることにした。コーパス作成のために選んだ作品は、The Sun Also RisesとThe Old Man and the Seaである。また、比較のために「小学館コーパスネットワーク」のWordbanksOnlineを使用し、その中のandの使用頻度を調べた。結果として、WordbanksOnlineと比較して、ヘミングウェイ作品中のandの使用頻度は、統計的に見ても高いということが分かった。またThe Sun Also RisesとThe Old Man and the Seaでは、後者の方がさらに、andの使用頻度が高いということが分かった。上記のヘミングウェイ作品においては、他の単語と比べてもandの使用頻度は高いということが分かった。
著者
高橋 信幸
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.165-174, 2005-01-31

日本の対人社会サービスからスティグマを払拭するにあたって、なぜ「措置から契約へ」の転換が必要であったのか。本稿はこの問題意識の下、デンマークと日本を比較することでその解答を見つけようとしている。そのために、まずデンマークと日本のサービス利用の違いを比較し、その違いが生じる要因を分析した。さらに、これらの要因を取り除いて普遍的な対人社会サービスを実現するには、地域からの分権、協働、民主主義、教育が重要であることを指摘した。
著者
圷 洋一
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.93-101, 2003-01-31

本稿では通常の意味での「介護費用」の中身をあらためて確認したうえで、介護保険制度上の各主体の活動にどのような費用(広義の介護費用)が関わっているのかを簡単に整理した。この整理を通じ、今日「介護費用」のあり方を論じるには、介護行為に直接かかる費用以外にも多様な費用を検討することが不可欠であることを示唆した。つぎにこうした「介護費用」との関わりで批判的なトーンで論じられることの多い介護保険制度における「負担」問題について、これを一歩引いた地点から検討するために社会保障全体の財源論について言及した。
著者
小林 徹
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.149-156, 2005-01-31

茶道は平和を追求する作法であり、現代社会に受け継がれている。作法は無駄のない動作と静寂のなかにその価値がみいだされる。武士道は戦う武士が勝利のために規範とするものである。規範のなかに現代人が守り伝えるべき約束事は存在する。しかし武士が存在しない現代においては新しい規範をつくって精神的拠り所とする試みが必要である。
著者
中根 允文
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.205-212, 2007

いま、長崎県における精神科医療の展開に関する歴史を、長崎大学医学部精神神経科学教室の初代教授である石田昇の成果を中心に振り返りつつある。完成させるには今しばらくの情報収集が必要であり、その途中経過として、ここには研究ノートの形で紹介してみたい。現在、長崎県下には39ケ所の精神科病院があり、総数で8,415ベッドが精神科疾患の患者のために準備されていて、入院患者数は7,059人である(図1)。彼等の平均入院日数は440.9日(図2)であり、利用率は83.5%(図3)になっている(いずれも、平成14年6月末現在のデータ)。長崎県の人口と比較したとき、ベッド数は万対55.2床(図4)、入院数は万対51.7人となる。全国の動向と比較したとき、全国でベッド数が万対28.0床、万対在院患者数が26.0人、そして平均日数は364日であり、いずれもその数値が大きく全国を上まっている。医療全体に関わる統計データで、西日本地区が東日本に比して全体的に高い数値をみており(病院数・病床数が多い、個人当たりの医療費が高いなど)、精神科医療では更にその傾向が顕著である。しかし、長崎は同傾向が更に著しくなっているのである。いつの頃から、このような傾向が目立ってきたのであろうか。長崎の精神科医療に関するハードの面が充実していること自体は歓迎すべきであろうが、実際はその内容が問われるべきであることも事実である。ここでは、長崎県における精神科医療の全般について広く言及するゆとりはなく、まずはその展開に大きく寄与した故石田昇教授の足跡をたどりながら、若干の考察を試みてみたい。
著者
北村 光子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.345-355, 2001

本研究は、介護老人保健施設の施設職員を対象に職務内容や専門性、また同僚・上司における信頼関係からくるケアへの影響や施設職員の職務内容に対する理解度が障害高齢者のケアにどのような影響を及ぼしているのかについて考察した。考察のまとめとして、施設職員の職務内容における満足度は心理的ギャップとの相互作用による関係形成から、障害高齢者のケアのあり方を現実にある客観的事実としての環境的諸問題を明らかにし、施設職員の心理的ギャップを考慮しながら前向きに検討していくことが求められると示唆された。
著者
嶋内 麻佐子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.131-141, 2001-03-31

利休歿後,利休の弟子七人衆の一人である古田織部により,その茶が継承された。織部は武将の茶としての展開を遂げ,茶室・茶の形態・露地・懐石・点前に至るまで,武家相応の茶の湯に置き換えることにより,利休の身分平等性を主とする作法やその技法,精神性からの脱皮を計ることに成功したと言える。しかし,その事で草庵における茶の形態だけは,守られたと思われる。そのことは,町人的作法から生まれた利休の茶を改良し,かつての貴族時代に生まれた文化と,武家故実に基づく文化を合流させた慶長年間の武家相応の茶の湯が,織部によって出来上がったと言えるのではないだろうか。
著者
細田 亜津子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.83-95, 2005-01-31

トラジャ社会は農村社会である。就労者の約80%が農業に従事しており、その他の就労者も兼業が多い。しかし、水田面積は全面積の約10%であり、二期作と棚田での収穫という厳しい現実である。水田形態は、Uma Mana、Uma Tongkonanと呼ぶ一族の共有田と個人所有とがある。共有田の収獲物は儀式など公的儀礼のために使用される。儀式での恩恵は一般大衆にも及び社会的役割を持つ水田である。また、地主と小作の関係は、先祖代々からの関係が多い。土地を所有しない小作は、他地域への出稼ぎを行う。伝統的な収穫物の分配は地主と小作は50%-50%が多く、第二期作は30%-70%になる。この地主-小作の元で働く農夫は、Ikatという稲束の単位により、稲刈りの労働に比例して報酬をうけとる。田植えについては、同じ報酬を受け取る。このように平等性と競争性を取り人れた社会である。一方、農村社会の諸規則は、儀礼との関連が強く、分配や遺産相続に影響する事もトラジャの特色である。
著者
李 昌訓
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.19-25, 2002-01-31

観光者行動による観光地選択は,いままで多くの研究がなされて来たが,必ずしも十分であるとはいえない。本論文は潜在観光者がある観光目的地を決める時,その観光地に対して持っているイメージが決定要因として作用するという観点より,ハウステンボスに対する観光イメージを形成する要因について,韓国の若い新世代大学生を対象に分析した。その結果,魅力性,経済性,都市体験,非日常的体験,親近感,そして利便性の6つの要因が抽出された。また,ハウステンボスの訪問意図に対する動機づけに彼らが抱くハウステンボスへのイメージが少なからず影響していることも示された。
著者
坂本 雅俊
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.165-173, 2002-01-31

養護学校における福祉教育のあり方の一考察として,今回,平成12年度に実施した,「全国の養護学校の「福祉教育」の担当教師に対するアンケート調査」の結果を示し,若干の論考を加えた。さて,結果からみられたことは,「福祉教育」は,その教育対象で分けると,社会人に対する社会教育やボランティア教育と学校における教育(児童・生徒に対する学校教育,大学における福祉専門職養成の専門教育)とに分けることができるが,その内容は共通する項目も多く含まれるものの,学習内容で分けると,社会科学的認識能力の学習,ボランティア学習,車椅子を押すなどのいわゆる福祉的な体験学習,人権学習,などに分けられ,さらに,目的内容で分けると,文化教育,人権教育,職業教育,道徳教育などの側面で分かれるようである。現在の教育現場においては,これらの整理がなされないまま,「福祉教育」についての方法や目的・内容が混在していることがわかった。そして,今後は義務教育において「福祉の体験」といった学習が本格化する。本論では,こうしたことについて,教育現場の先生方の意見を集約することで,そのあり方について些少ではあるが現状報告を行った。特に養護学校における「福祉教育」は,子ども達の発達段階が多様である事情から,「福祉教育」の目的や方法が,「社会福祉教育の基礎」を踏まえつつも多様であることが望まれるところである。こうしたことについての基礎的検討をおこなった。
著者
北村 光子 山崎 久子 大江 千恵子 綿 祐二
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.185-193, 2003-01-31

我が国は高齢社会に入り様々な社会問題や生活問題を抱えている。その中でも介護に関しては、施設介護や在宅介護に限らず注目されており、現場で働く介護職の量と質の向上に各方面から力が注がれている。介護職の中でも、国家資格保持者である介護福祉士は、単に身辺介護に留まらず専門性をもって、利用者をとりまく生活全般の改善・向上に努めている。しかし、このように介護の現場で専門の知識と技術を提供している介護福祉士の認知度や、過酷な労働でありながら業務の評価については決して高いとは言えず、"やりがい"と"現実"の間でジレンマを起こしている状態である。よりよい介護を目指して、介護職のリーダー的役割を担う介護福祉士の職業意識や社会的地位、あるいは就労意欲について、もっと客観的に評価する必要があるといえる。そこで本研究では、介護福祉士の現状を調査し、さらに介護福祉士の就労意欲に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とする。調査の結果、就労意欲の現状においては、仕事面で「身体的負担」「精神的負担」を感じると就労意欲を欠き辞職を考えるようになるという結果を得た。また、その理由として「賃金の低さ」や「仕事内容のきっさ」「運営方針への不満」「社会的地位の低さ」などが挙げられた。また、介護福祉士にとって、職場内に「良き理解者」が存在すると介護福祉士の「将来性」や「職に対する誇り」が得られるという結果を得た。この「良き理解者」について詳細な記述はできなかったが、このことは介護福祉士の役割を他職種間で共有することの重みを現しているといえる。今回の調査では、良き理解者が存在することが自己研鑽に直接結びつくという結果は得られなかったが、もっと介護福祉士の就労意欲や社会的地位を向上させるためには、自己研鑽できる環境設定や講習内容の充実が必要と考える。