著者
太田 健一郎 深澤 良彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.570, pp.73-80, 2001-01-16
参考文献数
7

デザインパターンに始まるソフトウェアパターンの流れはPLoPなどの活動と共に多種多様なパターンを生み出した。しかしながら、パターンの概念がほとんど知られておらず、パターンがほとんど存在しないと考えられている分野も存在する。それらの分野では標準、規則、マニュアルなどの既存の概念を組み合わせれば十分であると考え、パターンの発掘、共有の必要性を感じていない場合も多い。しかし、これら従来の概念では解決できない領域が存在し、そこで発生する問題を解決できる候補となるのがパターンなのである。本稿ではパターン一般に関し、パターンの持つ各種の特性を分析し、その特性を従来の概念のものと比較、検討し、パターンに最も適した領域とはどこなのかを探る。
著者
安藤 聡 酒井 正彦 坂部 俊樹 草刈 圭一朗 西田 直樹 ANDO Satoshi SAKAI Masahiko SAKABE Toshiki KUSAKARI Keiichirou NISHIDA Naoki
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.23, pp.43-48, 2012-05

Malbolgeは最も難解なプログラミング言語として知られている.高級アセンブリ言語の開発によりMalbolgeプログラムの作成が可能になっているものの,プログラム中で使用できる変数の値の最大値が固定されておりゲーデルコーディングが不可能であるため,配列機能がないのは記述力不足であった.本論文ではこの問題を解決するため,高級アセンブラに用いられている実現手法を整理し,これに配列機能のための命令である領域確保命令と間接参照命令を追加する方法を提案する. Malbolge is known to be one of the most esoteric programming languages. Although it is possible to write programs in Malbolge by the development of a high-level assembly language, lack of facility to manage individual data in a group of data like an array in language causes problem because Godel-coding is impossible in a program due to bounded values in variables. In this paper, in order to solve this problem, we show implementation issues used in the assembler in well-organized manner and propose a method for implementing a memory allocation instruction and an indirect reference instruction for array facility into the assembler.
著者
齋藤 雄輔 藤原 賢二 井垣 宏 吉田 則裕 飯田 元
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.416, pp.103-108, 2015-01-19

分散型版管理システムとそのホスティングサービスを用いたソフトウェア開発手法として,プルリクエストを基点とした制御を行う開発プロセス(Pull Request駆動型の開発)が提案されている. Pull Request駆動型の開発では,開発タスクごとに版管理システム上でブランチを作成し,実装を開始する際に対応するブランチの統合をプロジェクト管理者へ要求する.機能の実装に際して開発者は,各状況下において適切に版管理システムを操作する必要がある.しかし,これらの作業は煩雑であり,さらに版管理システムに対する深い知識を要求する.そこで本研究では, Pull Request駆動型の開発に適した開発者支援ツールを提案する.
著者
加藤 宏和 村田 佳洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.275, pp.1-6, 2012-10-25

近年,パーソナルナビゲーションシステムに関する研究が数多くなされており,観光スケジュール立案のためのナビゲーションシステムも研究されている.観光スケジュールは天候の影響を受ける.しかし,天候を完璧に予測することは不可能である.そのため,天候に応じたスケジュール群立案手法が必要となる.そこで我々は,この手法のための天候変化パターンを生成するアルゴリズムを提案した.このアルゴリズムは,時間帯に応じた降水確率を与えることで,その時間に起こりうる天候をシミュレートするものである.シミュレートして得られた天候変化パターンから確率通りの降水の割合が得られているかを調査するため,与えた降水確率と比較した.その結果,最大1.4%の誤差があるものの,ほぼ元の降水確率通りの割合が得られることがわかった.
著者
堀田 吉彦 大久保 弘崇 粕谷 英人 山本 晋一郎 斎藤 邦彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.522, pp.43-48, 2007-01-25

UNLはOOPのモデリング言語だけでなく,OOPを可視化するときにも用いられる.中でもUMLのシーケンス図はオブジェクト相互のメッセージのやりとりを図示することを目的としている.この図では,自分自身あるいは自分と同じクラスへのメッセージ送信の表現が難しい.調査の結果,そのようなメッセージ送信はプログラム中に約10%存在する.OOPの視覚化を目的として,この点に関するUMLの拡張を提案する.
著者
水戸 成 有澤 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス
巻号頁・発行日
vol.95, no.475, pp.25-30, 1996-01-24

実用的なマルティメディアのタイトルとして、ハイパーテキストによる総合鉄道時刻表の電子版を研究開発した。モックアップを作成し、列車情報の取得可能性と、その変更を容易に実現し得るシステム橋造、および、従来の紙メディアを超える操作性の獲得について検討した。これは、市販されている汎用表計算ソフトウェアMicrosoft Exce1とその開発言語環境Visual Basic for Applications上で開発を行うものである。時刻表示や、列車間および異なる交通手段への乗り換え案内をはじめ、広告などのマルティメディアオブジェクトにもリンクできる機能を有している。
著者
冨田 一郎 石井 直宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス
巻号頁・発行日
vol.95, no.475, pp.17-24, 1996-01-24

強く型付けされたオブジェクト指向プログラミング言語では,バイナリ・メソッドが存在すると,様々な問題を起きる.特に,バイナリ・メソッドが継承される場合や,それをオーバーロードする場合には,サブクラスとサブタイプとが一致しないという,直観に矛盾する状況が生じる.そこで我々は,このバイナリ・メソッドの型に関する問題を回避するための方法として,「メソッドの追加」という機構を提案する.本稿では,この機構の形式的な定義を試みる.
著者
多田 昭雄 中村 良三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.97, pp.25-32, 2001-05-21

並列タスクスケジューリングにおいて, タスク依存グラフよりタスクの実行順序を効率よく求める並列アルゴリズムを提案する. 具体的には, はじめに2つのタスク間の実行順序を示す有向辺を出節点と入節点の組で表したタスク依存グラフすなわちDAGを入出次数が高々1の節点からなる線形リストに分割する. 次に, 線形リストをリストの最終節点に至る流れの単位でグループに分割し, グループ内のリストの細を併合しながらタスクの実行順序を求め, 最後にタスク全体の実行順序を求める並列アルゴリズムである. すなわち, タスクの並列Topological Sortingを提案する.
著者
アハロム レダ 外村 慶二 バルーク ダニエル 中島 震 鵜林 尚靖
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.231, pp.13-18, 2009-10-08
被引用文献数
1

Webアプリケーションは一般の利用者にとってわかりやすいことから機能変更の要求が多い。プロトタイピング中心の繰り返し開発の方法が採用され、その結果、プログラム構造が悪くなり保守性が低下する。アスペクト指向プログラミングを用いると、横断的な関心事を含む多様な観点からプログラムを良構造化することができ、繰り返し開発と保守性を両立させることを期待できる。本稿ではWebアプリケーション構築にアスペクト概念を適用することで、開発スタイルがどのように変わるかを考察する。
著者
和泉 諭 栗山 大 三浦 祐太朗 安田 尚史 四倉 涼 加藤 靖 高橋 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.523, pp.19-24, 2007-01-26

高血圧や肥満といった生活習慣病の人々が増加している現代において,その予防策が求められている.本研究では,健康に関するオントロジを導入し,生活習慣病改善を目指す人々を支援するシステムの構築を行う.このシステムでは,センサデバイスやモバイル端末を利用し,ユーザの身体データの取得や管理を行い,さらに,取得した身体データを利用し,健康に関するドメインオントロジに基づいて推論を行うことで,ユーザに適した健康アドバイスを導出する.本稿では,支援システムの設計と実装について述べる.
著者
落水 浩一郎 門脇 千恵 藤枝 和宏 堀 雅和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス
巻号頁・発行日
vol.94, no.135, pp.1-8, 1994-07-08
被引用文献数
4

本稿は、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科落水研究室で開発中のソフトウェア分散開発支援環境「自在」に関して、その構想、アーキテクチャ設計結果、およびプロトタイプ開発の計画をまとめたものである。本文中においては、まず、分散開発における問題点と「自在」開発の狙いを述べ、さらに、プロセスモデルに基づく統合環境、CSCW、ソフトウェアリポジトリ、オブジェクト指向技術等の関連技術との関係を明らかにする。次に、「自在」アーキテクチャの概要を説明したあと、グループウェアベース「栞」、グループウェアサーバー「飛翔」、分散サーバー「群舞」、オブジェクトサーバー「万巻」等各種サーバーのプロトタイプ計画をまとめる。
著者
中西 恒夫 グリーペントローク ハンス・ヴェルナー イェーガー・ハンセン クラエス 久住 憲嗣 福田 晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.23, pp.1-6, 2012-05-03
参考文献数
10

製品をまたがってソフトウェア資産を再利用するソフトウェアプロダクトライン開発方法論(SPL: Software Product Line)はその導入障壁の高さが常に問題となる。近年, SPL同様,派生製品の開発を容易にする開発プロセスとして,派生開発プロセスXDDP (eXtreme Derivative Development Process)が注目され,産業界での事例が多く報告されている。SPLはプロダクトラインの大域的かつ将来的な製品計画,システムの全体理解,コア資産の開発と保守を要する計画駆動の全体最適化的パラダイムである。一方, XDDPは派生製品において生じる追加・変更部分の分析に集中し,追加・変更部分の改変手順を明示的に与える変更駆動の部分最適化的プロセスである。XDDPは導入障壁の低さではSPLに勝るが,派生製品導出にかかるコストや複雑さの削減の面ではアプリケーションエンジニアリングでの派生製品開発の自動化を図るSPLが有利である。本稿では,導入障壁の低いXDDPから派生製品の開発を始め,派生製品開発のたびにSPLへの漸次的移行を進めるプロセス, XDDP4SPLを提案し,自律走行車両での試験的実施例を示す。
著者
坂本 一憲 和田 卓人 鷲崎 弘宜 深澤 良彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.107, pp.41-46, 2011-06-23

The amount of test code has increased as the test technology has developed and the amount of duplicated test code that is redundant has also increased. Duplicated test code that does not change defects which are found when testing software even if it is removed. This increases the size of test code and decreases the efficiency of execution and maintenance of software testing. We therefore propose techniques of detecting duplicated test code based on test coverage supporting multiple programming languages. We define the inclusion relation of test code based on test coverage and present techniques of detection and the implementation of a detection tool supporting three programming languages: Java, C and Python. We explain an experiment for detecting duplicated test code in open source software with the detection tool and discuss the benefits of the proposed techniques. Moreover, we show that the duplicated test code that is detected with the detection tool does not influence the results obtained from measuring the test coverage and demonstrate that the change in using test coverage can change the measurement criteria.
著者
藤木 哲也 早瀬 康裕 井上 克郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.169, pp.65-69, 2010-07-29

ソフトウェア開発者はプログラム理解の際に,ソフトウェア中の識別子から関数や変数の役割や振舞いを類推する.識別子名中の単語の意味や用法は自然言語とは異なる場合があるために,作業者は類推を行うためにソフトウェア開発の経験からソフトウェア独特の意味や用法を学ばなければならなかった.本稿では,類推を支援するために,識別子名に出現する名詞の説明文を自動的に生成する手法を提案する.名詞の説明文の生成には,ソースコード中に記述されたコメントを利用する.コメントに対して自然言語処理を行い,名詞の説明を行っている箇所を抽出することで説明文生成を行う.また,実際に提案手法を適用した結果についても示す.
著者
藤田 房之 高田 義広 松本 健一 鳥居 宏次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス
巻号頁・発行日
vol.93, no.244, pp.73-80, 1993-09-21

ソフトウェアの生産性や品質は,プログラマの能力に大きく依存することが指摘されている.しかし,プログラマの能力を客観的に測定するために収集すべきデータの種類や収集の方法は明らかになっていない.本報告では,プログラマのテスト・デバッグ能力を評価するための準備段階として,テスト・デバッグ過程の状態遷移のモデルを提案する.更に,提案するモデルのパラメータの推定に必要となる状態遷移時刻を,プログラマが入力したキーストロークのデータから自動的に推定する計測環境について述べる.評価実験の結果,開発した計測環境を用いることにより,プログラマの作業状況を撮影したビデオを観察することなしに,プログラマの状態遷移時刻の特定が可能であることが分かった.
著者
松本 充広 二木 厚吉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.98, pp.25-32, 2001-05-22

近年, ソフトウェアの生産性向上が期待できることから, コンポーネントを組合せる手法によるソフトウェア開発(コンポーネントソフトウェア開発)が普及し始めている. しかし, コンポーネントを再利用し生産性を向上させるには, コンポーネント作成者とソフトウェア作成者との間で, コンポーネントがどのような状況で使用され, どのような振舞いをするか等についての合意が形成されている必要がある. この合意形成を行う方法論として, カタルシス法がある. カタルシス法では, UML図+OCL記述を形いてビジネスモデル, ソフトウェア仕様を記述する. しかし, どの程度フォーマルに記述するべきかまでは定めていない. 本発表では, (1)仕様間の一貫性検証を行うためにどの程度フォーマルに記述すべきか, についてのガイドライン, (2)クラス図制約の検証手法, (3)ズームイン・ズームアウトの一貫性検証手法, (3)仕様からのコネクタ生成手法, について議論する.
著者
平野 陽介 鈴木 貢 渡辺 坦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス
巻号頁・発行日
vol.98, no.675, pp.15-21, 1999-03-18

従来のデバッガは、ブレークポイントの設定やデータの表示などの基本的な機能は有していたが、使う際に多くの手数を必要とし、使用者の負担が大きかった。デバッガは、使用者や用途に合わせ、自由に変更できる方が使いやすい。また、データは、視覚的に表示できる方が人間にとって直感的で判りやすい。本論文では、デバッグシステムをインタプリ夕上に実装し、デバッガとGUIの機能をスクリプト言語で制御することによる、拡張可能なデバッグ支援システムについて紹介する。これを用いると、デバッグのための指示をソース画面上で直接与えることや、データを表やグラフなどの形による動的な判りやすい表示が可能となるので、使用者の手間が減り、快活に作業できる。
著者
カマルゴ クルズ アナ エリカ 落水 浩一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.505, pp.43-48, 2008-02-25

Several studies, in the field of object-oriented software quality, have been performed to define models for predicting fault-prone code. However, their predictions take place after the implementation phase, using design-complexity metrics measured from the code. The primary aim of this paper is to provide the foundations for building a model, that predicts fault-prone code in the early phases of the life cycle of the software, using UML metrics. We found that some UML metrics, approximations of traditional design-complexity metrics, can bew acceptable predictors of fault-proneness, as they showed similar performance to the performance of those metrics measured from the implementation.
著者
曹 宇 佐藤 匡正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.678, pp.17-22, 2001-03-09

書物など印刷物を電子化するには, OCR文字認識が簡便である. しかし, ルビ文字の混ざっている文書は認字率が低下する. この改善を図るため, 地文とルビ文字を別々に認識させる方式を考案した. この方式においては, 地文とルビの自動的に識別方法が必要となる. ここでは, 「文字寸法」の考えを新たに導入し, この違いによる識別する方法を用いる。本論文では, 文字寸法の特性についての測定結果, システムの実現方法, および試作したシステムの効果について述べる。
著者
市井 誠 松下 誠 井上 克郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.491, pp.37-42, 2005-12-13
被引用文献数
1

スケールフリー性とはグラフ中のノードの接続辺数がべき分布に従う性質であり, インターネット上のノードなど様々な対象において確認されている.ソフトウェア部品間の利用関係をあらわす部品グラフにおいても, 大部分の部品はほとんど利用関係を持たないのに対してごく少数の部品が非常に多くの利用関係を持つスケールフリー性をもつことが知られている.利用関係はソフトウェアの設計が反映されたものであることから, 部品グラフにおける接続辺数の分布から設計に関する情報が得られると考えられるが, 設計による接続辺数の分布の違いは知られていない.本研究では, ソフトウェアによる接続辺数の分布の違いを入力辺数と出力辺数に分けて調査をおこない, ソフトウェアおよび含まれる部品の性質との関連について調査する.その結果, 入力辺数および出力辺数の分布はソフトウェアの設計や含まれる部品により異なることが判明した.また, 得られた結果より, 理解支援やソフトウェア評価を目的として, 部品グラフの接続辺数の分布からソフトウェアの設計に関する特徴の分析をおこなう手法について考察する.