著者
内藤 航 上坂 元紀 石井 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:21882355)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.144-150, 2015-02-01

福島第一原発の事故に伴い放出された放射性物質により汚染された地域において,外部被ばく線量に対する住民の不安軽減や行政による効果的な被ばく低減対策の検討には,外部被ばく線量がどのように評価されているかを正しく理解し,いつ・どこで・どれくらい被ばくしているかを知ることが重要である.1時間ごとに被ばく線量が記録できる小形個人線量計のデータと空間線量データ,更にGPSや個人の行動情報をGIS上で統合し解析した結果は,適切な放射性物質のリスク管理のあり方の検討において貴重なデータとなる.本稿では,福島県の中通り地区に在住する方々に協力を頂き実施している,効果的な管理・対策のための外部被ばく線量の評価研究の内容を紹介する.
著者
原田 康徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.87, no.8, pp.674-677, 2004-08-01
被引用文献数
3

コンピュータはプログラムで動いています.これまでの文字で作られたプログラムは難しかったですが,絵でプログラムを作ると格段に分かりやすくなります.ここで紹介するビスケットはプログラムを絵で表現して,実行した結果をアニメーションにします.動作は簡単な原理ですが,きちんとしたコンピュータらしさも残っています.子供だけでなく,コンピュータが怖いとか難しいと思っている大人の方も,どうぞ楽しんで下さい.
著者
榎並 和雅 岸野 文郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.363-367, 2010-05-01
被引用文献数
4

超高精細大画面映像や立体画像をはじめ,サラウンド音声,五感通信など超臨場感に関する技術によって実現される超臨場感システムは,映画,放送などのエンターテイメントへの応用だけでなく,遠く離れた場所からでも同じ空間を共有し,互いにその場にいるような自然でリアルな対話や作業が可能になるため,遠隔会議,遠隔医療,テレビショッピングなど様々なところに適用できる可能性がある.本稿では,こうした超臨場感システムへの期待と応用分野,実現に必要な技術,普及促進のためのフォーラムの活動について紹介する.
著者
田中 圭介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.90-96, 2009-02-01

特定領域研究「新世代の計算限界-その解明と打破-」(領域代表者:岩間一雄)の主な対象である計算理論における重要な応用分野として暗号理論がある.この暗号理論において,公開鍵暗号や署名などに対して,個人のプライバシーを対象とした匿名性と呼ばれる性質が考察されている.公開鍵暗号が匿名性を満たすとは,暗号文を見ても,それがどの受信者へのものであるか(だれの公開鍵で暗号化されたか)見分けがつかないときをいう.また,署名方式が匿名性を満たすとは,メッセージと署名のペアを見ても,それがどの署名者が作成したペアであるか見分けがつかないときをいう.ここでは,RSAベースの方式に対して,このような匿名性を得るために用いられる主要なアルゴリズムテクニックについて紹介する.
著者
榎本 忠儀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.296-306, 1996-03-25
参考文献数
17
被引用文献数
14

マルチメディア機器の構築に必須なLSIで重要な性能指標に"信号処理性能"と"動作時消費電力"および"待機時消費電力"がある. 本稿では, まず, CMOSおよびGaAs集積回路の消費電力について解説し, 次に低消費電力化技術を詳しく述べる. 動作時消費電力を低減するにはこれを構成する各ファクタ(電源電圧, ゲート稼働率, 回路規模, クロックおよび動作周波数, 負荷容量, 貫通電流, 等)を削減すればよい. そのための方策, すなわち, アーキテクチャ, アルゴリズム, 回路, 等に関する技術の具体例を詳述する. また, 動作時特性を劣化せずに, 漏れ電流, 貫通電流を遮断して, 待機時消費電力を削減する方法についても検討する. なお, 低消費電力化の基本条件は信号処理性能を維持し, チップ面積を増やさないことである.
著者
今井 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.920-926, 1996-09-25
被引用文献数
5

アルゴリズム・計算量分野の成果として,多くの問題が本質的に解くことが難しいことが示されている.一方,本質的に解くのが難しいからこそ,実際に現れるそのような難しい問題をなんとか現実的時間内で良い精度で解くことが要求される.難しい問題を解く近似アルゴリズムの開発の世界では,最近種々の新しいアルゴリズム設計パラダイムの登場があった.本稿では,そのような近似アルゴリズム設計手法の代表的なものとして,線形計画法の主双対アプローチを近似アルゴリズム設計に拡張したもの,線形計画・半定値計画とランダム化を組み合わせたものの二つについて,集合と論理に関する難問を例題に解説する.
著者
村田 嘉利
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.844-849, 1997-08-25
被引用文献数
6

電車の中でPCと携帯電話を使ってデータを送っている人を見かけるようになった. その背景には, PC等の小型・軽量化と相よって, 携帯電話等を使って安定にデータ伝送可能になったことが大きい. モバイルコンピューティングMC市場は, 今後大きく成長すると期待されており, 無線パケット等の新たな通信システムやスマートホン等が次々と提供されている. MCの利用により, いつでも・どこでも端末相互間/端末〜センター間でデータ通信が可能となり, 人々を時間的・場所的制約から解放する新たな利用形態が模索されている.
著者
藤尾 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.728-734, 2006-08-01

画像メディアの感性化を目標としたハイビジョン(HDTV)開拓における創世期の裏話.苦労話の中の三つの話題を採り上げた.第1話:ハイビジョン(当時は高品位テレビ,世界へはHDTV)スタート初期.第2話:HDTV用ワイドCRT(30インチサイズ,メーカの協力)の開発.第3話:米国映画界の支援.この開拓には米国やヨーロッパ諸国の反対に遭ったと世間にけん伝されている.しかしハイビジョンの開発には,世界の多くの国々や組織のサポート・支援があったのである.1999年日本提案の方式が世界の統一標準規格に選ばれた.これは日本の官(郵政省),公(NHK),産(産業界)の協力のもと,放送をはじめ,広い画像産業への導入など,我が国の一貫した取組み,執念が勝ち取った成果にほかならない.
著者
古井 貞熙
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.422-426, 2012-05-01

1950年代以降,半世紀以上にわたって進歩を遂げてきた音声認識技術は,第1,第2,第3,第3.5世代に分けることができる.近年,種々の音声認識応用システムが実際に用いられるようになってきたが,その性能は人の能力に比べるとはるかに劣っており,人の能力に近づくには,第4世代といえるような大きなパラダイムシフトが必要である.そのためには,現在の音声認識技術で扱うことができない複数のレベルでの動的音声特徴の利用と,人が経験する多様かつ膨大な変化をカバーする音声コーパスに基づく,大規模かつ多様な音声言語知識の体系化を行う必要があると思われる.
著者
高橋 善彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.360-365, 1994-04-25
参考文献数
5
被引用文献数
2

当社のネットワークの変遷について簡単に触れる.その中にはどのような課題が与えられてきたのかを整理する.そして,将来の企業ネットワークに与えられている課題が,ネットワークのフレキシビリティという観点から,どのような要因によって解決されるのかを検討し,フレキシブルなネットワークに期待するところを整理する.
著者
鬼頭 達男 鳥居 秀行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.636-642, 1994-06-25
被引用文献数
8

盗聴の心配のいらないパーソナルハンディホン
著者
吉瀬 謙二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:21882355)
巻号頁・発行日
vol.97, no.9, pp.758-763, 2014-09-01

計算機アーキテクチャ分野の研究者及び技術者を対象とする新しい試みとして,ハイパフォーマンスプロセッサ設計コンテスト(The 1st IPSJ SIG-ARC High-Performance Processor Design Contest)を企画・実施した.決められたFPGAボードを用いて,性能の高い計算機システムを設計したチームが優勝である.決勝は2014年1月に行われ,予選を通過した11チームによる戦いが繰り広げられた.本稿では,このデザインコンテストの設計と実現について述べる.
著者
細野 敏夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.168-175, 1993-02-25
被引用文献数
4

電磁気学を難しくしている本質的事情として,(1)電磁気学は現在も進化の途上にある学問であること,(2)電磁現象を弾性現象との類推で理解するといるMaxwell以来の理解法,(3)電磁現象は本質的に相対論的であること,(4)磁荷とか磁流という概念は数学的に余りに便利であるため,物理的と誤解されやすく数学と物理をごちゃ混ぜが起りやすいこと,(5)電磁方程式の表現が代表的なものに限ってもEB,DH,EHの3種類あること,等を指摘した.細野のパラドクスより,静電磁界のPoyntingベクトルの実在性を論じた.
著者
宮内 宏 尾花 賢 森 健吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.331-336, 2003-05-01
参考文献数
6
被引用文献数
2

2002年に電子投票法が施行になり,地方自治体の選挙の電子化が可能になった.電子投票の進展については,第一段階(指定された投票所にて電子投票機での投票),第二段階(任意の投票所での投票),第三段階(自宅等のコンピュータからの投票)が考えられている.電子投票では,有権者認証,無記名性確保,正当性検証の3要件を満たす必要がある.これらの要件を満たすための実現方法や情報セキュリティ技術を上記3段階に対応して述べる.特に第二,第三段階を実現するミックスネット方式について詳しく説明する.
著者
中川 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.643-648, 2001-09-01
被引用文献数
25 3

近年の移動通信の進歩はすさまじいものがある.その中で第3世代以降の変調方式がどのようなものになるのか注目されている.高速, 広帯域な伝送が可能で, かつ周波数効率の高いものが望まれる.本稿ではそうした中で何かと議論の多いOFDMとCDMAの融合方式を分かりやすく解説する.まず, OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)とCDMA(Code Division Multiple Access)の両変調方式に関して別々に取り上げ, 最後にそれらが融合した方式について解説する.
著者
吉田 典彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.319-323, 2003-05-01
被引用文献数
4

ホームセキュリテイシステムは,最近の犯罪件数の増加と凶悪化,核家族化や都市化,高齢化の影響により,ここ数年は前年対比20%増で実施件数が増えている.新築やリフォームをきっかけに導入されるなど,「安全を買う」という意識も広がり,今やホームセキュリティは本格的な普及期を迎えたといえる.ここでは,日本のセキュリティの歩みとホームセキュリティ開発の背景,その仕組みと普及の要因,更には企業・家庭から,個人にまでその領域を広げたセキュリティの現状と今後について紹介する.
著者
大津 繁樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:21882355)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.727-733, 2014-08-01

ブラウザとWebサーバの間をつなぐ次世代のWebプロトコル(HTTP/2)は,IETFにおいて2014年の標準化完了を目指し,現在急ピッチで仕様策定作業が進められている.HTTP/2は,Googleが開発したSPDYプロトコルをベースとして,その無駄な部分を見直し,より効率的で汎用性が高い通信を実現している.2013年8月からプロトタイプを使った相互接続試験が開始され,2014年夏に最終仕様案の候補が提出される予定である.本稿では,HTTP/2のこれまでの歩み,仕様の概要,相互接続試験で見えた現状の課題と今後の展望について述べる.
著者
伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.325-328, 2001-05-13
参考文献数
5
被引用文献数
2

21世紀に到来する超高齢社会と高度情報社会においては高齢難聴者が急増することは必死であり,それをどう解決するかが社会的にも大きな問題になっている.特に老人性難聴と呼ばれる高齢難聴者は言葉は聞こえても,その意味が理解しにくくなるという文章理解能力に支障を来す.その原因として言葉を処理する速度が低下したり,イントネーションやアクセントなどの韻律を処理する能力が低下するという仮説がある.ここでは,老人性難聴者の補聴手段として注目されている音声変換方式を例に取り,その効果や将来の課題について述べる.
著者
藤本 雅清
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.95, no.8, pp.754-758, 2012-08-01

音声区間検出(VAD:Voice Activity Detection)は,音声信号と音声以外の信号(非音声信号)が含まれる観測信号から音声信号が存在する時間区間を検出する技術である.VADは,様々な音声情報処理技術の入り口に位置することから,それらの性能を大きく左右する極めて重要な技術である.本稿では,VADの基本構成と評価方法,応用先について説明し,音声情報処理技術におけるVADの位置付けを明確にする.また,様々なVAD手法を紹介しつつ,過去10年間の世界的な研究動向を振り返り,今後の研究のあり方について述べる.