著者
木下 康昭 阪本 泰男 佐藤 千明 青木 敏 野本 真一 篠原 弘道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.204-213, 2002-03-01
被引用文献数
5

ダイヤルアップ時代から常時接続の時代に向け,ラストワンマイルのブロードバンド化がインターネット通信で最大の課題となっている.加入者から集配局に至るアクセス系の伝送媒体と網トポロジーを,電話用対ケーブルを用いるADSL,CATV同軸ケーブル網の利用,アンテナ系を用いる無線アクセス,光ファイバを用いる光アクセスの4種類に分類し,そのブロードバンド化の内外動向と技術課題を横断的に論じた.IT国家基本戦略は,今後の政策課題の実行で十分に達成の見込みである.
著者
田中 圭介 岡本 龍明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.613-617, 2002-08-01
参考文献数
9

量子計算機が実現された場合においても安全な公開鍵暗号(秘匿,ディジタル署名)を構築するために,暗号の新しいパラダイムである量子公開鍵暗号を提案する.このパラダイムにおいては,通信者は多項式時間量子チューリング機械であるとし,通信路は古典的であるとする.また,部分和問題(ナップサック問題)を基礎とした公開鍵暗号(秘匿)の具体的な実現方式を示す.更に,量子公開鍵暗号のパラダイムを一般化することにより,量子計算暗号という新しいパラダイムが構築されることを示す.
著者
森田 清三 菅原 康弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.858-865, 2002-11-01

半導体デバイスの評価装置には加工寸法の100分の1の空間分解能が要求され,2014年ごろには原子分解能が要求される.2020年ごろには,加工寸法は原子サイズに到達して,原子や分子から新ナノ物質や新ナノデバイスを組み立てる微細組立の時代に突入する.ここでは,21世紀前半に到来するミクロ極限の原子・分子時代に要求される原子分解能評価装置として,また,原子や分子から新ナノ物質や新ナノデバイスを組み立てる微細組立装置として,非接触AFMの空間分解能や様々な機能など,何がどこまでできるようになりつつあるかを紹介した.
著者
坂本 比呂志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.96, no.7, pp.501-506, 2013-07-01

データをどれだけ小さくできるかという根源的な問いは,現在もデータ圧縮の主要テーマであり統けている.一方で,データ圧縮は時代とともに新しい価値を獲得してきた.例えば,文字列データを圧縮することで高速検索する理論が1990年代に提案され,様々な分野で活用されている.そして現代は,圧縮しなければならない巨大なデータ,圧縮データに高速アクセスするための理論,それを実現するハードウェアの全てがそろっている.そこで,文字列圧縮について解説し,初学者の道標としたい.
著者
高畑 文雄 小野里 好邦 嶋本 薫 初田 健 三橋 龍一 青木 由直 棚橋 真 村井 純 佐藤 亨 木村 磐根 藤崎 清孝 大迫 陽二 立居場 光生 都築 伸二 田崎 三郎 岡 育生 藤原 値賀人 越後 宏 康 健 大沼 孝一 佐藤 利三郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.435-456, 1997-05-25
被引用文献数
28

衛星の高機能化,無線周波数帯Kuバンドの使用,地球局設備の小型化・低廉化,電気通信事業法の改正に伴う民間企業の衛星通信ビジネスの参入などによって, 衛星通信に関する大学独自の実験・研究が可能になったことをふまえ, 大学を中心とした多数の教育機関と電気通信事業者からなる組織化された研究・実験機関である「ディジタル衛星通信の大学間高度共同利用研究協議会」を設立した. 本報告では, 上記協議会について概説した後, 協議会のもとで衛星を介して実施されている主要な実験・研究として, マルチメディア衛星通信, 北海道統合通信網, 知的通信による手話画像伝送, インターネットアーキテクチャにおける衛星通信の利用などを取り上げて, その内容を紹介する.
著者
前川 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.96-100, 2000-02-25
被引用文献数
7

米国は国家安全保障のために高度な暗号技術の輸出を厳しく規制してきた.しかし1995年以降, 輸出規制は徐々に緩和され, 1999年9月に米国政府は大幅な規制緩和を行うと発表した.これはかつて国防上や外交上の機密を守るために使われてきた暗号技術が, 急速に発展する電子商取引に必要不可欠な技術であることを米国政府が認識したからだと考えられる.暗号技術は, ネットワーク上を流れる商取引情報を盗聴や改ざんから守り, 取引相手の確認(認証)を可能にし, ディジタルコンテンツの不正コピーを防ぐなどの重要な役割を果たしている.
著者
山村 清隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.981-988, 2005-12-01
被引用文献数
7

SPICE指向型数値解析法は「式を回路で記述する」という逆転的発想に基づく方法論である.すなわち, 一般に非線形システムの数値解析ではシステム(例えば回路)を方程式で記述し, それに数値解法を適用するが, この方法では数値解法の式を回路で記述し, それに回路シミュレータSPICEを適用する.本稿では, 非線形方程式の数値解法であるホモトピー法をSPICE上で実現する方法とその応用例を中心に, SPICE指向型数値解析法に関する最近の研究動向とその可能性について解説する.SPICEは様々な機能や効率化手法が集積されている非常に優れたソフトウェアであるため, この方法により「かなり高度なホモトピー法を」, 「ホモトピー法のことをよく知らなくても」, 「複雑なプログラミングを行うことなく」, 「手軽に」, 「無料で」, 「広範囲の問題に」適用することができる.
著者
前田 惟裕 佐藤 直樹 長谷川 義幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.12, pp.1020-1026, 2010-12-01
参考文献数
18

国際宇宙ステーション(ISS)への有人輸送に関しては,米国ではスペースシャトル,ロシアではソユーズが使用され,中国では独自の神舟シリーズを成功させている.米国ではISSの運用延長とスペースシャトルの2010年の退役が決定された.日本では有人関連技術を習得するため,ISSに結合する有人宇宙実験施設JEM,宇宙ステーション補給機HTVの開発・運用が成功裏に行われ,各分野で大きな成果が得られている.米国では2010年4月にオバマ大統領から小惑星・火星への有人探査についての声明が発表された.宇宙用周波数調整会議(SFCG),国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)での検討に加え,我が国は将来有人技術の発展が必要と考えられるので関連事項について解説する.
著者
赤木 正人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.450-453, 1995-05-25
被引用文献数
8
著者
守谷 健弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.133-138, 2010-02-01
被引用文献数
1

オーディオ信号の圧縮符号化技術は,CD(コンパクトディスク)のオーディオ信号の品質をほぼ維持したまま,およそ10分の1の情報量への情報圧縮を実現するものである.1990年代までの基礎研究の成果を結集して,ISO/IECのMPEGで国際標準化が行われ,このうち特にMP3やAACはフラッシュメモリを使った携帯オーディオプレーヤやディジタル放送に不可欠な技術として,日常生活の中に深く定着してきている.これらの技術の基本と最近の国際標準化の動向を中心に解説する.
著者
赤羽 誠 水野 秀之 平沢 純一 中嶌 信弥 田中 和世
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.1060-1066, 2011-12-01
参考文献数
12

JEITA規格IT-4006「日本語テキスト音声合成用記号」は,テキスト音声合成技術の利用拡大を目的として(社)電子情報技術産業協会(JEITA)音声入出力方式標準化専門委員会において,特定のハードウェアやプラットホームに依存せず,様々なアプリケーションやサービスで汎用的に利用可能な日本語テキスト音声合成用記号として規格化されたものである.本稿では,本規格策定の経緯と位置付けについて概説するとともに,テキスト音声合成用記号の構成とその記述方法について解説する.また,国内外におけるテキスト音声合成技術に関連する規格の動向についても解説する.
著者
奥 英之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.1026-1033, 1998-10-25

本年2月7日から16日間にわたり, 長野オリンピックが開催され, 多くの感動とドラマを残し, 大成功のうちに幕を閉じた.今回の長野オリンピックは, 「ハイテクオリンピック」と銘打ち, 1市2町2村の広域に分散した競技会場等が光ファイバネットワークで結ばれ, CCTVシステム, VODシステム, Info'98等の様々なハイテクの情報通信システムが駆使され, 選手の活躍や大会の運営を支え, オリンピックの感動を世界に伝えると共に, 我が国のハイテク技術を世界にアピールした大会でもあった.また, 大会期間中, 競技ならびに大会の運営, 更には国際映像の制作等の面で無線通信が大変重要な役割を果たした.
著者
宮脇 健三郎 尾関 基行 木村 穣 相澤 清晴 北村 圭吾 山崎 俊彦 森 麻紀 武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.48-54, 2010-01-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

本稿では,「食べる」ことを「健康」と「楽しさ」の二つの側面からとらえ,携帯電話による遠隔食事指導,画像処理を応用した食事ログ,拡張現実感による食卓演出,遠隔共食システムの4件の研究事例を紹介する.
著者
高木 英明 吉瀬 章子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.94, no.9, pp.756-759, 2011-09-01
被引用文献数
2

2005年頃からサービスサイエンスと称する「サービス」の科学的研究が世界各地で始まった.本稿では,その背景となっている社会経済のサービス化,サービスの特徴と品質に関する基本的概念と最近の「サービスドミナントロジック」の考え方,国内外における研究と人材育成の取組みの動向,サービスへの科学的アプローチを概観する.最後に,情報通信技術に支えられるサービスイノベーションへの期待を述べる.
著者
荒川 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.844-852, 1994-08-25
参考文献数
40
被引用文献数
4

信号処理の分野では,雑音除去,信号復元などを行うために,従来,線形ディジタルフィルタが主に用いられてきた.しかし,このフィルタは,相乗性雑音や非定常・非ガウス性の信号および雑音に対して有効ではない.そこでこのような線形フィルタの能力の限界を打破するため,種々の非線形ディジタルフィルタが提案されてきた.これには,信号の大きさの順位に基づくもの,信号の局所的性質に応じてフィルタパラメータを変化させるもの,線形式を高次多項式に拡張して信号モデルを表すものなどがある.これらの非線形ディジタルフィルタは画像および音声の雑音除去,画像強調,および各種システム同定に対して効果的である.
著者
星 岳彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.779-783, 2012-09-01

少子化,高齢化に伴って,我が国の農業,植物生産のあり方も大きく変化しようとしている.植物工場などの施設植物生産も例外ではなく,施設面積の減少,競争の激化,内需の縮小に対応し得る,新たな植物生産システムの構築が急務である.植物の成育には環境が大きな影響を及ぼす.生産現場における,この環境の低コストセンシングによる可視化,ディジタル化と,植物生体情報・労務情報・市場情報との連携は重要である.そこで,自律分散環境計測制御システムであるユビキタス環境制御システム(UECS)を中心とした,施設植物生産における今後のセンシング・コントロール・アプリケーション開発の方向性について解説した.
著者
赤松 幹之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.1176-1182, 1993-11-25
被引用文献数
15

形は視覚で知覚できるが,指で触ってでもできる.この異なるモダリティの間の対応関係は,能動的に触る運動をしたり,その運動が眼で見えたり,また触っている形の縁の触覚刺激があると,より正しく獲得される.その一方,視覚だけでなく触覚もあると,触る運動が速くなったりする.すなわち,視覚と触覚と運動とは相互に結び付きを強めるように働いている.そこで,視覚だけでなく触覚呈示もできるマウス型インタフェース装置を構築して,ポインティング操作の評価をしてみると,操作時間が短くなるなどの効果があることがわかった.