著者
村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.362-370, 1998-04-25
被引用文献数
10

ATM技術の進展に伴い, マルチメディアの通信品質に関する研究がこれまで盛んに行われてきた.一方, インターネットにおいてはコンピュータ会議システムやインターネット電話などの実時間アプリケーションが既に利用されつつあるが, その品質が問題になっている.本稿では, まず, 現在のインターネットで用いられているベストエフォート型サービスについて説明し, その問題点を明らかにする.次にネットワークが通信品質(QoS)を保証するために必要な機構を述べる.最後に今後の課題として, 通信品質を保証するためにエンドシステム(コンピュータ)も含めたQoSアーキテクチャが必要であることを述べる.
著者
石田 修
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.782-790, 2009-09-01
被引用文献数
10

可変長のデータパケットを運ぶリンク規格Ethernetに,40及び100ギガビットの超高速インタフェースが追加される.電気処理速度とコストを勘案し,マルチレーン(並列伝送)技術が採用される.本稿では,まず,Ethernet規格の歴史を振り返り,「ネットワーキング」から「リンク提供」への役割変化と,その特徴である「プラグアンドプレイ」「パケット転送への最適化」「技術進歩への適応」を支える技術を紹介する.次いで,2010年6月に標準化完了予定のIEEE802.3ba 40/100ギガビットEthernet(40GE/100GE)について,そのインタフェース規格の概要と,多様な並列数に適応するレーン振り分け技術を解説する.最後に,40GE/100GEの登場を契機に,従来のSDH中心からEthernet向けに進化しつつある,広域光転送網規格ITU-T G.709 OTNの標準化動向を展望する.
著者
田中 穂積
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.1035-1042, 1994-10-25
被引用文献数
1

プログラム言語のコンパイラで,LR法とよばれる構文解析法がよく使われている.これは,(1)LR法は決定的に解析を進めることができるので高速な構文解析が可能であること,(2)プログラム言語の文法を設計段階でLR文法に限ることができることによる.しかし,自然言語の文法としてLR文法の記述力は十分であるとはいえず,少なくとも文脈自由文法(CFG)の記述力が必要である.一般のCFGを扱うことができるようLR法を拡張したものに一般化LR(GLR)法があり,最近自然言語の高速な構文解析法として注目されている.まず1.では,GLR法の基本的な考え方を説明する.2.ではGLR法の原理を具体例を用いて説明する.3.では,解析結果の妥当性を確率的に計算する確率CFGとGLR法との関連を簡単に説明する.最後の4.では,GLR法に関するいくつかの問題を取り上げて将来の研究課題を展望する.
著者
澤田 宏 荒木 章子 牧野 昭二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.292-296, 2008-04-01
被引用文献数
4

音源分離技術は,実環境におけるハンズフリー音声認識やコンピュータによる音環境理解のために必要不可欠な技術である.音源の位置や話者の特徴など,事前知識を必要としない,いわゆるブラインド処理に関する技術がこの10年で大きく進展した.本稿では,独立成分分析やスパース性など,ブラインド音源分離に必要な基本技術を分かりやすく解説し,研究動向や現状での到達点を述べる.
著者
横澤 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.433-439, 2004-05-01
被引用文献数
4

情報技術の進展により,社会の仕組みや経済活動も次第に変曲点を迎えつつあることが明らかになっている.国の政策や企業活動の場では「ユビキタスネットワーク社会」とも呼ばれる,新しい社会パラダイムは,有線系のネットワークインフラよりもむしろ,無線通信技術を中心としたコミュニケーション技術(以下,ユビキタスコミュニケーション技術)により支えられるものである.Always Best Connected (いつでも最良の状態でネットワークに接続されている)を担保するとともに,情報技術が生活のスタイルや,ビジネスのスタイル,そして働き方のスタイルを変化させるためには,無線通信技術の持つ柔軟で身近な部分からのネットワーク化を可能とする性質が,今後も重要な役割を持つことになるだろう.無線通信技術の進展に伴って,近い将来,人々のライフスタイル,ワークスタイル,そして企業のビジネススタイルはことごとくITインフラをベースとするものに変ってゆくと思われる.いつでも,どこでも,だれでも,何でもがつながる環境により,情報のあり方そのものも大きく変りつつある.この過程は,次の三つのステップで進行するだろう.(1)今後数年で,ITを使うことのできる人の数,場面の数の増え方が最大となると考えられる.IT利用に一定の「数」が必要なビジネスモデルが,次々に現実化してくるだろう.(2)RFIDやセンサと,それらを制御するソフトウェアやネットワークの働きにより,ネットワーク仮想空間が現実世界と協働するようになる.(3)人間の知的活動を高め,企業全体の知的活動をサポートする技術が台頭する.今後ユビキタスコミュニケーションの研究開発については,自律性,完全性,社会性を重視した新しい発想に向かうと考えられる.
著者
西本 卓也 西田 昌史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.1030-1035, 2008-12-01
被引用文献数
1

視覚障害者がインターネットを利用するための技術の現状,視覚障害者のための早口音声合成に関する研究,Webページを音声化する技術,漢字を見たことがない方のための仮名漢字変換技術などを紹介する.
著者
竹田 玄洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.1174-1177, 1998-11-25

20年以上前, ピンポンゲームでTVを使った遊びが始まり, そして日本のファミコン, さらにスーパーファミコンが世界中で愛用されるようになった.これらすべての基本技術は画面を移動する物体や背景の平面上の衝突という同じものである.時代とともにゲームソフト制作者の更なる飛躍にこたえる今までの方式とは異なった「新しい仕掛け」が要望されるようになった.そんな中弊社は, 当時の最先端の0.35μm半導体技術をもとに, コンピュータグラフィックスを駆使したビデオゲーム機「N64」を開発した.ここではそれを例にとったシステムLSIについて述べる.
著者
今村 文彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.198-202, 2009-03-01

我が国では,50年以上も前から地震観測に基づく津波警報システムが稼動し,現在では,地震発生直後に,津波の高さや到達時間を定量的に予測し,その結果はメディアなどを通じて提供されている.これに基づき,適切な避難を実行すれば津波による人的な被害はゼロにすることも可能であるが,実態として,現在の我が国ではわずか1割しか避難できていない.何をどのように改善したらよいであろうか?
著者
高部 佳之 清水 隆文 大和 忠臣 後藤 浩一 山口 弘太郎 伊藤 公一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.41-50, 1998-01-25
被引用文献数
2

ワイヤレスカードシステムは, 電波を利用することにより, カードをデータ読み書き装置に接触させることなく, 情報のやり取りを行うことを目的とする。ワイヤレスカードの技術は, 料金徴収, ID管理, 履歴管理および位置管理等の広範な利用分野において様々な応用が可能であり, 社会生活の利便性を向上させ, 高度情報通信社会推進の一翼を担う技術として大きく期待されている。本稿では応用例として, 有料道路の自動料金収受システム, 鉄道の自動改札システム, FA生産ラインシステムおよび特定区域への入退場管理システムに関する現状を紹介すると共に将来を展望する。
著者
竹内 正男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.1213-1218, 1996-12-25
被引用文献数
8

生体粒子のような壊れやすく微小な粒子を非接触で操作する技術は,バイオテクノロジーやマイクロマシンなどの分野における次世代の重要な要素技術になるものと期待されている.最近,音の放射力を駆動力として,溶液中の微小粒子の移送・捕そく・分類・濃縮などを行うマニピュレーション技術が盛んに研究されている.このような超音波マニピュレーション技術の原理,具体例などについて述べる.
著者
Bogue Barbara
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.88, no.11, pp.861-867, 2005-11-01

While the demand for engineers in the United States remains high, large population groups remain outside of the engineering workforce. Women graduation rates hover around 20 percent at all levels (B.S., 20.1 percent; M.S., 21.8 percent; Ph.D. 22.3 percent). During the past 30 years, the U.S. government and industry leaders have come to identify the recruitment and retention of women and other groups underrepresented in engineering (African Americans, Hispanic/Latino Americans, Native American Indians, Asia Americans, and Pacific Islanders) into engineering careers as the key to addressing predicted shortfalls. The drive to increase the number of engineers and scientists in the U.S. began as a Cold War strategy in the U.S. after the launching of the Russian satellite Sputnik in 1957 but has since been re-defined as necessary to national competitiveness. Initial efforts to increase the science, technology, engineering and mathematics (STEM) pool were aimed at increasing traditional candidates, white males. As educational opportunities opened for women, and policy makers, advocacy groups and industry identified diversity as a competitive advantage, major efforts were launched to attract women into STEM careers, particularly engineering where they were severely underrepresented. A key tool in this effort has been the creation of Women in Engineering Programs (WEP) in major engineering schools throughout the country, a movement supported by government, primarily through the National Science Foundation (NSF), non-profit foundations, and private industry. The WEP movement was and is a major player in the increase of numbers of women, in Engineering, rising from four percent of students enrolled at the undergraduate level in 1965 to approximately 20 percent today. However, the increase has not only reached a plateau but appears to be decreasing, raising questions about why the upward growth has ceased and how to continue to increase the numbers of women entering and completing engineering education.
著者
西野 豊 相川 清明 中嶌 信弥
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.324-331, 1999-04-25
被引用文献数
8

人間と機械との自然なインタフェースを実現する技術として, 音声認識と音声合成に対する期待は大きい. 複雑な設定や操作を行わず, あたかも人間と会話をするように使用できるシステムを実現することは永年の夢である. 本稿では, 音声認識と音声合成を応用したシステムの開発例, 両者を用いて対話的に使用できるシステムの開発例について概説する. システムを, より人間的な"気の利いたシステム"とするためには, 音声認識・音声合成技術の一層の性能向上と自然言語処理や知的対話処理技術と合わせたシステム開発が必要である.
著者
臼井 澄夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.768-774, 2009-09-01
被引用文献数
1

GPSはカーナビや携帯電話をはじめとして世界中で広い分野にわたって使用されるようになっている.GPSは,衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一つであり,世界ではそのほかにロシアのGLONASS,欧州のGalileoなどのGNSSが運用ないしは計画されている.GNSSは空間情報社会と呼ばれる地理情報・位置情報を活用した社会においては必須のインフラである.一般に利用されるGPS端末による測位は10〜20m程度の誤差を含むが,誤差を低減する各種の測位補強技術が用いられるようになり,高精度の測位を必要とする様々な分野で使用されている.本稿では,衛星を用いた高精度測位技術の現状,世界のGNSSの動向,及び応用分野などについて概観する.
著者
坂井 邦夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.722-727, 2006-08-01

本稿では,パターン認識技術とその応用に関するれい明期の状況を,筆者自身の経験や体験を織り込みながら,現在の状況と関連付けて紹介している.前半では,産・学・官の連携を起点として情報化の追い風に乗って成長した一時期,更にはその後の事業的な見地からの見直しなど,当時の研究開発環境の移り変りを振り返って述べている.後半では,本稿が単なる昔話に終わることのないよう,これまでの努力が現在どのような形で実を結んでいるか,またパターン認識の更なる発展にとって今後は何が必要かなどを筆者の見解も含めて述べている.
著者
井上 創造 野原 康伸 安浦 寛人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.390-394, 2006-05-01
被引用文献数
3

本稿では,自動認識技術の中でもRFIDを用いたシステムについて,プライバシーと個人情報保護に関する問題を,技術的に明確化することを試みる.近年,RFIDを初めとした自動認識技術が注目されているが,ここで必ずといっていいほどプライバシーが問題にされる.しかし,利用者やRFIDタグベンダやRFIDにかかわる情報システム技術者にとって共通の理解がされているわけではない.本稿ではプライバシーと個人情報保護を区別した上で,匿名性とリンク不能性という性質の異なる概念を導入する.更に既存の技術をこれらの観点及び,システムやRFIDタグのコストの観点から比較する.