著者
山田 実
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.200-202, 1988-04-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

One of the causes of voice disorder, especially among professional singers or voice students, is overstraining of vocal folds due to improper vocalization, especially breathing. Natural breathing, i.e. inhalation and exhalation, is caused by contraction and relaxation of the diaphragm. For speech or singing, this exhalation has to be done slowly, and in normal speech this is controlled by closing the glottis autmatically and unconsciously. The air pressure and the glottis closure should be well balanced at all times. When a person trys to increase the volume of his voice by stopping the air at the glottis by contracting the vocal folds, the disorder arises. Therefore, the decreasing of the air flow speed must be done solely by the breathing organs themselves. In singing the exhalation can be controlled by the intervention of the muscles used in inhalation, not by closure of the vocal folds alone.The best abdominal exhalation control may be achieved by using the air from the neutral position towards the exhalating direction rather than from the inhalating position to the neutral, and this practice requires special exercise.The exercises should cover three different fields, namely breathing, phonation and articulation. Each exercise should have two parts, recognition and training. The training may be further classfied as partial, co-operative and comprehensive. For example, the contractions and relaxations of both costal and abdominal muscles should first be felt individually and then be trained one after the other separately and co-operatively. Singing /a/ is already considered a comprehensive exercise involving the mustles of costal inhalation, abdominal inhalation and exhalation, laryngeal control muscles, and closing and expanding of the vocal folds.The age and the singing experience of the trained should also be considered.
著者
春原 則子 宇野 彰 朝日 美奈子 金子 真人 粟屋 徳子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.263-270, 2011 (Released:2011-10-06)
参考文献数
21
被引用文献数
11 7

近年発達性dyslexiaにおいて注目されている音読の流暢性に関して, 音読所要時間を評価尺度として, 872名の小学1年から6年生の典型発達児を対象に, その発達と背景にある認知機能を検討した. 刺激として, ひらがな, カタカナの単語と非語, および文章を使用した. 単語の音読速度は小学3年生までに急速に発達し, その後も緩やかに発達すること, 非語と文章の音読速度は高学年になっても発達する可能性のあることが示された. 日常生活上の必要性を鑑みて, 音読速度も文章での評価が重要と考えられた. 重回帰分析の結果, 音読速度に影響する要因として自動化能力と音韻認識力が示されたが, それぞれの寄与率は学年によって変化し, 単語の音読速度に対する音韻情報処理能力の影響は学年が上がるにつれて小さくなり, 自動化能力の影響が大きくなった. また, 単語と文章については語彙力の寄与も示唆された.
著者
明石 法子 宇野 彰 春原 則子 金子 真人 Taeko N. Wydell 粟屋 徳子 狐塚 順子 後藤 多可志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-7, 2013 (Released:2013-04-03)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

発達性読み書き障害児における漢字単語音読の特徴を明らかにすることを目的とし,小学校2年生から6年生の発達性読み書き障害児37名と典型発達児991名を対象に,「小学生の読み書きスクリーニング検査(STRAW)」漢字単語音読課題における誤反応の分析および単語属性効果の検討を行った.誤反応分析の結果,発達性読み書き障害児は典型発達児に比べ,課題語を他の実在語に読み誤る語性錯読および無回答が多く,文字と音の対応は正しいが語単位では誤っている読み方である類音性錯読の出現率が低いという特徴が認められた.単語属性効果に関しては,親密度の高低にかかわらず,心像性の低い語,すなわちイメージが思い浮かべにくい語で誤りやすいことが明らかになった.こうした特徴には,音韻情報処理過程と視覚情報処理過程双方の障害という発達性読み書き障害児の認知能力が背景となっている可能性があり,診断の補助的指標や有効な学習法の開発に役立つと考えられた.
著者
田中 美郷 針谷 しげ子 加我 君孝
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.344-356, 1997-10-20
被引用文献数
10 4

本論文は高度難聴を有する一重度精神遅滞児の聴覚およびコミュニケーションの発達にもたらす補聴器の効果について述べるのが目的である.<BR>子供は女児で, 生後11ヵ月のとき, 難聴が疑われてわれわれの臨床を訪れた.behavioral audiometryおよび聴覚発達テストからみて, 聴力は比較的良好であると推測された.しかしながら, 2歳7ヵ月のとき, 本児には進行性難聴があることがわかり, behavioral audiometryおよび脳幹反応聴力検査で80dB程度の高度難聴と判明した.本児はただちにわれわれのホームトレーニングに参加してもらい, ここで箱型補聴器を装用させた.補聴器活用によって最初に見れた効果は, 自発的な, 自己中心的発声活動であった.本児は落ち着きのない子であったが, 羊齢が増すにつれて若干指示に従えるようになってきた.16歳のとき, 精神遅滞が重度なため言語はまだ獲得できていなかったが, 母親によると本児が補聴器を活用しているかぎり親はコミュニケーションに困難を感じないとのことであった.この例の経験からわれわれは, 本児のような高度難聴を有する重度発達遅滞児に聴覚的コミュニケーションを保障するためには, 長期にわたる忍耐強い, リハビリテーションないし教育的サービスと, 親や学校教師およびその他の関係者の協力態勢の確立が不可欠であることを強調したい.
著者
向井 將 永杉 さよ子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.349-356, 1999-10-20
被引用文献数
1 1

われわれは新生児・乳児の疳泣は病的な心理的印象を与え, 音声分析では, 音声波形の立ち上がりが急激で, そのスペクトログラムは調波構造の形成が不十分で基本周波数が不安定であることを前回報告した.<BR>今回は, 疳泣と幼児虐待との心理的関係を調べるために虐待に繋がる心理的傾向を軸に多重評価法を用い音声分析との比較, 内観をみた.2名の疳泣児の局麻下レーザーによる舌・喉頭矯正術前後の泣き声を採取し, 10秒間再生した.多重評価軸には「不快だ―快感だ」, 「憎い―可愛い」, 「怒りたい―あやしたい」を7段階とした.術前は不快方向に―25で, 憎い方向に―4.5, 怒りたい方向に―4という評価であった.術後はすべてプラス方向へ24~30移動していた.音声分析による内観においては, (不快) に感じた部分は音の急激な立ち上がりと強いエネルギー, 調波構造が形成されていない部分であった.また (憎い・怒りたい) と感じた部分は共通しており, 不快な音の頻回の繰り返しに感じていた.<BR>さらにわれわれの観察している疳泣児の問題点を述べ, 疳泣は放置すべきでないことを明らかにした.
著者
能登谷 晶子 鈴木 重忠
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.140-146, 1984
被引用文献数
8 5

2歳2ヵ月から6歳7ヵ月まで聴能訓練と文字言語を並行して指導した, 聴力レベル98dBの一重度聴覚障害幼児の言語発達を検討し, 音声言語に及ぼす文字言語の効果について考察した.<BR>主な結果は以下のようであった.1) 文字言語は音声言語より習得が容易であった.2) 文字言語から音声言語への移行が認められ, 5歳0ヵ月に音声言語の発達は文字言語のそれに追いついた.3) 本例が6歳7ヵ月までに獲得した受信語彙数は, 音声・文字言語とも約4, 000語に達した.同時期の音声発信語彙数は約3, 000語であった.4) 本例の6歳代におけけ語彙, 文, 機能語の発達は同年齢の健聴児の発達レベルにほぼ相当した.<BR>以上の結果より, 先行して習得された文字言語は, 音声言語の発達を促進したと考えられ, 早期からの文字言語の導入は, 聴覚障害幼児の言語発達遅滞の改善に有効であることがわかった.
著者
三田地 (堀) 真実
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.435-442, 1996-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
15

人工呼吸器を装着しているために発声が困難で, かつ, 重度の四肢麻痺を呈している高位頸髄損傷患者に対して, (1) 患者の口唇の動きを読み取る, (2) 家族が考案した文字版, (3) 喉頭摘出患者用の電気喉頭, (4) 口唇・舌などを用いたサイン法, (5) 漢字Pワード, (6) ベンチ・ボイス, (7) 酸素を使用した方法, (8) 吸入器を使用した方法, (9) 人工呼吸器の呼気部を利用した方法の9種類のコミュニケーション方法を試みた.その結果, おのおのの方法にはそれぞれ利点・欠点があり, 最終的に患者は二っの方法を併用して使うに至った.つまり, ごく簡単な決まりきった内容であれば, (1) 口唇の動きを読み取る方法を, 多少複雑な内容であれば, (8) 吸入器を使用した方法を実用的に用いた.この経過から, 各コミュニケーション方法が実用的な使用に至る要因, その場合の患者の条件について検討した.
著者
藤原 加奈江
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.252-256, 2010-07-20

自閉症スペクトラムのコミュニケーション障害は語彙, つづり, 音韻などは良好な一方で複雑な文の理解や暗喩や皮肉の理解が困難であるなど偏りが見られる. さらに独り言は言うのに会話しない, あるいは会話のルールがわからないなどさまざまなレベルでの言語使用の障害がその特徴となっている. その背景には中枢性統合理論と親和性の高い低連結性理論や社会脳の障害など脳の情報処理の違いが論じられている. さまざまな高次脳機能障害を併せもつ自閉症スペクトラムの言語訓練は神経心理学的検査などの包括的な評価を基に, その障害特徴を考慮し効果的に行えるよう工夫が必要になる.
著者
斉田 正子 斉田 晴仁
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.153-160, 2009-04-20
被引用文献数
1 2

声楽発声指導は, 今日まで経験に基づいた主観的な方法で行われてきた. 呼吸法の指導は, 声楽発声指導において重要な課題であるが, 見るだけではわかりづらいため, 指導者によっては, 胸腹部の動きを手で確認して行っていた. しかし歌唱中の動きの確認は難しく, またセクハラの問題もあり, 客観的に呼吸運動を知る方法の開発が望まれていた. ストレインゲージは伸展による電気抵抗の変化で伸展度を計測できる機器で, これを胸部と腹部にベルトの一部として取り付け, リアルタイムに呼吸運動を調べるシステムを考案した. データはオシログラフを模したソフトで表示し, 客観的な呼吸運動の観察が可能で, 声楽発声の指導や音声治療の発声訓練に有効であることがわかった.
著者
鈴木 重忠 能登谷 晶子 古川 仭 宮崎 為夫 梅田 良三
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.280-286, 1988-07-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

文字言語も早期から指導する文字・音声法 (金沢方式) で言語治療を受けた難聴幼児の言語発達を客観的に知ることを目的に, 就学前に行った修正版絵画語い発達検査, 聴覚障害児用単語了解度検査, 音読明瞭度, 幼児・児童読書力テスト, 改訂版教研式全国標準新読書力診断検査成績を検討し, 以下の知見を得た.1) 音声言語の了解は従来の指導法による成績を上回る傾向を示した.2) 発音の明瞭度は従来の指導による成績を下まわることはないと推測された.3) 読書力は学齢前でも普通小学校2年相当を獲得できることがわかった.4) この読書力は先に行った幼児・児童読書力テスト成績と強い相関を示した.以上より, 文字・音声法は難聴幼児の言語発達促進に有用であることが示された.
著者
小田 侯朗
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.294-297, 2006-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

わが国の聴覚障害教育における手話の活用とリテラシーの関係について, 近年の聾学校を対象としたコミュニケーション手段の比較研究等を基に概括した.聴覚障害児のリテラシーについては過去から現在に続く聴覚障害教育の主要なテーマであり, また手話や口話といったコミュニケーション手段がリテラシーの伸展に与える効果の比較についても関心がもたれてきた.本論では国立特殊教育総合研究所が行ったコミュニケーション手段とリテラシーの関連についての研究を紹介した.結果的には聴覚障害児のリテラシーに影響を与える要因はさまざまであり, 多様な手段を複合したアプローチが求められる.本論では最近わが国でも話題になってきた聴覚障害児のバイリンガル教育におけるリテラシーへのアプローチについても解説を行った.
著者
大石敬子
雑誌
音声言語医学
巻号頁・発行日
vol.40, pp.378-387, 1999
被引用文献数
3

1 0 0 0 OA 緘黙児症例

著者
板倉 秀 斎藤 きくゑ
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.43-47, 1976-07-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
6

A case of mutism with sudden onset was reported. A 5 year-old boy developed mutism while looking at TV screen. No definite cause was disclosed though psychogenic origin was strongly suggested. The patient became able to talk in whisper after speech training and play therapy for 2 years. A discussion on the course and training was made based on the clinical observation.
著者
苅安 誠 大平 芳則 柴本 勇
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.354-359, 1991-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
19

吃音 (発達性・後天性) , 失語症 (伝導・ブローカ) および健常成人の4コママンガの説明課題の発話サンプルをもとに, 発話流暢性を比較した.この結果, 非流暢率では脳損傷群, 吃音率は吃音群の方が高く, 健常群はいずれも低かった.主な非流暢性のタイプは, 後天性吃音で語句のくり返し, 発達性吃音で語の一部分のくり返しとブロック, 失語症群は語句のくり返しと挿入, 健常群は挿入であった.非流暢性の質的側面からみると, 後天性吃音は, 吃音の類型ではなく, 同じ脳損傷後遺症である失語症と発話の障害メカニズムが似ていると考えられる.
著者
山本 真由美
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.7-13, 2008-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
8
被引用文献数
4 5

平成16年4月から平成19年3月までの3年間に, 市立砺波総合病院において入院治療を受けた患者のうち, 廃用による摂食嚥下障害が認められ, 摂食嚥下訓練が行われた廃用症候群患者30名を対象として, 摂食嚥下訓練の効果を調査し, その効果に影響する因子について分析した.摂食嚥下訓練として, 筋力向上訓練と嚥下機能向上訓練を行った.訓練前は全例が絶食状態だったが, 訓練により30名中23名 (76.7%) が摂食可能となりおおむね良好な効果が得られた.摂食嚥下訓練の効果に影響しうる因子として, 性別, 年齢, 発症・手術から訓練開始までの期間, 訓練期間, 認知症の有無, 入院前の身体機能, 退院時の身体機能, 入院前と退院時の身体機能の変化, 空嚥下の9項目について分析した.訓練効果に影響する因子は, 空嚥下の程度 (p=0.015) のみで, 空嚥下のできなかった患者では半数以上が経口摂取不能であった.摂食嚥下機能障害を早期に評価して, 特に空嚥下が起こらなくなる前の訓練介入が有効と思われた.
著者
五十嵐 浩子 宇野 彰 小嶋 知幸 加藤 正弘
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.297-306, 1992-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
16

本研究の目的は, 脳損傷者の筆算障害の有無と特徴, および“純粋”な計算障害の概念について再検討することである.検査課題は1) 数字の系列的表出, 2) 数字と丸の数とのマッチング, 3) 九九, 4) 筆算などである.対象は左半球損傷失語群 (以下失語群) , 左半球損傷非失語群, 右半球損傷左半側無視群 (以下USN群) , 右半球損傷非左半側無視群, アルツハイマー型老年痴呆群 (以下痴呆群) および非脳損傷群である.その結果, 失語群, USN群, 痴呆群の3群は非脳損傷群に比べ筆算力が有意に低下していた.失語群では言語情報処理過程の障害が, USN群では空間情報処理過程の障害が, 痴呆群では大脳の全般的処理過程の障害が筆算障害を生じさせる要因になっていると考えられた.従来爪純粋”な計算障害と報告されている症例も前述の処理過程のいずれかの障害で説明可能なことが多いことからも, 筆算障害はおのおのの高次脳機能障害に起因した障害であり独立した“純粋”な障害ではない可能性が考えられた.
著者
安田 菜穂 吉澤 健本郎 福田 倫也 雪本 由美 秦 若菜 原 由紀 正來 隆 頼住 孝二
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.27-32, 2012-01-20
参考文献数
13
被引用文献数
1

吃音2例(30代,10代)に流暢性スキル(呼吸コントロール,フレーズ内の語と語の持続的生成,母音の引き伸ばし,軟起声,構音努力の修正)の獲得を目標とした言語聴覚療法(ST)を実施し,ST初回と最終回の文章音読を比較検討した.所要時間中の音読・症状・休止部分を音声分析ソフトで測定し,症状および休止部分を除いた音読部分から音読速度を算出した.音読速度は症例1:初回5.29モーラ/秒→最終回3.29モーラ/秒,症例2:8.86モーラ/秒→6.16モーラ/秒.所要時間中の休止部分の比率は症例1:19.4%→46.7%,症例2:26.2%→38.4%,症状部分は症例1:13.5%→0%.症例2:7.2%→0%.2例の音読の特徴は,初回時の「短く途切れた音読」から,最終回には吃症状の消失に加え,音読速度の低下した「音節,休止の各持続時間の延長した音読」へと変化し,流暢性スキルの獲得が確認された.
著者
西尾 正輝 田中 康博 阿部 尚子 島野 敦子 山地 弘子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.215-224, 2007-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
76
被引用文献数
3

dysarthria263例 (言語治療実施群187例と言語治療を実施しなかった対照群76例) を対象とし, 言語治療成績について検討し以下の結果を得た.1.脳血管障害, 脊髄小脳変性症, パーキンソン病に起因する言語治療実施群では言語治療前後で比較して有意に明瞭度が改善したが, 対照群では有意差は認められなかった.2.脳血管障害に起因する言語治療実施群では, 重症度にかかわりなく有意な明瞭度の改善が認められ, 重症化するほど, 改善の程度が大きくなる傾向が認められた.また, 病期にかかわりなく有意な明瞭度の改善が認められた.3.ALSに起因する言語治療実施群では言語治療前後で比較して有意差は認められなかった.軽度例は経時的に明瞭度がほぼ確実に低下し, 重度例のほとんどは最重度の段階で停滞した.以上の結果に基づいて, dysarthriaの臨床において有効な言語治療手法について検討を加えた.
著者
熊倉勇美
雑誌
音声言語医学
巻号頁・発行日
vol.26, pp.224-235, 1985
被引用文献数
2