著者
髙山 みさき 大西 英雄 城本 修 村中 博幸
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.143-151, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1

平仮名と片仮名の文字刺激処理における脳活動に差があるか,fMRI(functional magnetic resonance imaging)を用いて検討した.健常成人17名(平均年齢21.4±0.5歳)を対象に,平仮名または片仮名で表記した高親密度単語および低親密度単語の音読を行い,課題遂行時の脳賦活部位と脳賦活量を評価した.両課題に共通して,両側上前頭回,両側内側前頭回,両側中側頭回,左紡錘状回,左角回,左帯状回の賦活を認め,平仮名課題では,両側下側頭回,両側楔前部,左後方帯状回に,片仮名課題では,両側下前頭回,左下側頭回,右中心後回,左前方帯状回に賦活が観察された.脳賦活量は平仮名が片仮名を上回り,高親密度課題で13.1倍,低親密度課題で2.7倍を示した.平仮名および片仮名の音読時における脳活動は共通する点が多く,二重神経回路仮説における背側経路を介して処理されるが,文字刺激処理における処理負荷は平仮名のほうが強いと示唆された.
著者
香田 千絵子 濱川 幸世 森 一功 中島 格
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-7, 1999-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
18

過去10年間に当科を受診した機能性発声障害患者129例 (心因性発声障害15例, 痙攣性発声障害13例, 変声障害10例, 音声振戦6例, 男性化音声5例, その他80例) を対象とし, その臨床像を検討した.これらの症例について, 年齢, 病悩期間, 性差, 主訴, 声の使用度, 心因的要因について調査し, またその他例のうち61例について器質的疾患の有無を喉頭ストロボビデオで詳細に調査した.さらに, 音声治療を行った症例99例中45例の治療成績について, 主観的評価と客観的評価を用いて検討した.その結果, 痙攣性発声障害, 男性化音声, その他には女性が多く, 音声振戦と変声障害は病悩期間が長く, ほとんどの発声障害が声の使用度が高いことがわかった.さらに喉頭には何らかの器質的疾患を合併していることがわかった.また, 心因性発声障害, 変声障害は訓練効果が高いことが判明した.
著者
廣瀬 肇
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.121-128, 2001-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

中枢神経疾患の臨床症状として構音・プロソディの障害とともに音声障害の存在が注目されている.わが国において, これらの障害は一括して運動障害性構音障害と呼ばれることが多い.ここでは各種の疾患における音声症状について最近の報告を中心に概説した.
著者
見上 昌睦
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-8, 2007-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
38
被引用文献数
3 4

発話困難の意識があり重症度の高い発吃3歳3ヵ月, 初診時年齢5歳1ヵ月の男児1例に対して環境調整, 遊戯療法とともに流暢性を促すために以下の直接的言語指導による治療を実施した.1) ゆっくり, ひき伸ばし気味の発話 (カメの玩具を動かして) , 2) タッピング (蛙の玩具を弾ませて) , 3) 柔らかな起声・発話: 吸気後に呼気にのせて軟起声で, ゆっくりと母音部をひき伸ばし気味に発声・発話 (発話困難な語音に焦点を当てて実施) , 4) 自由会話.言語指導終了後, 遊戯療法に並行して母親面接を実施し環境調整を図った.家庭でも本言語指導を実施してもらった.本治療を通して, 指導および家庭場面の吃音症状は顕著に改善した.また工夫・回避反応は消失した.吃音の進展した幼児に対する遊戯的要素を取り入れた直接的言語指導に焦点を当てた治療の効果が示唆された.さらに, 言語指導と遊戯療法を組み合わせて実施することの効果も示唆された.
著者
見上 昌睦
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.21-28, 2005-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
30
被引用文献数
8 9

吃音の意識があり重症度の高い発吃3歳6ヵ月, 初診時年齢8歳10ヵ月の男児1例に対して環境調整, 遊戯療法とともに流暢性を促すために以下の直接的言語指導による治療を実施した.1) “ゆっくり, ひき伸ばし気味に”, “力を抜いて, 柔らかな声で”などをカメの玩具, 柔軟性に富むぬいぐるみの動き等にたとえて発話, 2) メトロノームを用いたリズム効果法, 3) 主症状である吸気発声への対応として, 吸気後に呼気にのせて軟起声で, 柔らかな声を用いながらゆっくりとひき伸ばし気味に発声・発語, 4) 劇遊びを斉読, 復唱など吃音症状が抑制されやすい条件をとり入れて実施した.言語指導終了後, 遊戯療法に並行して親面接を実施し環境調整を図った.家庭でも本言語指導を実施してもらった.本指導開始後, 指導および家庭場面の吃音症状は顕著に改善した.また回避反応は消失, 行動・心理面についても好転した.重度吃音学童に対して, 環境調整, 遊戯療法とともに, 遊戯的要素をとり入れ, 核となる吃音症状を踏まえて直接的言語指導を試みることの効果が示唆された.
著者
大橋 佳子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.209-223, 1984-07-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
65
被引用文献数
3 3

本研究は吃音に対する明確な自覚, 問題意識, 恐れ, 回避行動をいまだ発達させていないと目された29名の吃音児の自由会語における吃音の頻度と一貫性を測定し, 一貫性が有意に高かった語頭音の音声学的特徴を分析し, 吃音の発生機序について検討したものである.結果は次のとおりである. (1) 吃音頻度の個人差は大きかったが, 吃音の97~98%は語頭に生起した. (2) 吃音頻度が20%を超えると, 吃音の一貫性をもつ音素の数は増加し, その指数も高くなった. (3) 全般的に一貫性が有意に高かった音素は/n/, /k/, /t/, /h/, /m/, /b/, /a/, /o/, /i/, であった. (4) このうち子音音素に共通な特徴は〔-軋音性〕と/h/を除く〔-継続性〕である.以上から, 吃音反応は声道の形状, 呼気の使用法, 口腔内圧等の諸条件と関連して特定の音に生じやすいことが判明した.ゆえに, 吃音の一貫性は必ずしも従来考えられてきたような学習要因による現象とはいえないという結論に到達した.
著者
髙原 由衣 佐藤 公美 竹山 孝明 坂本 幸 青木 俊仁 伊藤 美幸 池田 美穂 田上 真希 吉田 充嬉 岡田 規秀 宇高 二良 島田 亜紀 武田 憲昭
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.326-332, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

小中学校の耳鼻咽喉科定期健康診断を受診した1384名について,嗄声の出現率とスポーツ活動との関連を検討した.嗄声の出現率は,女児(5.2%)に比べて男児(17.7%)が高く,男児は小学校3年生まで高く4年生以降に減少し,女児は小学校2年生まで高く以降減少したが中学校2,3年生では高かった.小学校の高学年ではスポーツ活動を行っていない児童(男児4.9%,女児0.6%)に比べて,スポーツ活動を行っている児童(男児21.2%,女児5.8%)は嗄声の出現率が有意に高かった.スポーツの種類と嗄声とのオッズ比は,男児の小学校低学年の野球が2.88,小学校高学年でサッカー2.29,野球2.92で高く,強い声門閉鎖を伴う屋外の団体スポーツであることが要因と考えられた.小学校の男児に野球やサッカーを行わせる場合には,声の衛生を行い嗄声の予防が必要である.中学生は,対象者を増やして再検討が必要である.
著者
遠藤 康男 粕谷 英樹
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.338-341, 1993-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

嗄声における基本周期 (周波数) , 振幅系列のゆらぎを定量化するために比較的良く用いられるさまざまなゆらぎパラメータについて比較検討を行った.パラメータとしてjitter/shimmer factor, 変動指数, ジッタ/シマーパラメータを用いた.これらのパラメータと熟練した耳鼻科医がGRBAS尺度に関して評定した聴覚的評点との関係という観点から比較検討を行った.喉頭癌, 声帯ポリープ, 反回神経麻痺患者が発声した持続母音の52例を用いた実験により, ジッタ/シマーパラメータが病的音声の聴覚的印象と最も対応が良いことを示した.
著者
八幡 英子 伊福部 達
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.309-315, 1989-10-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

電気人工喉頭音声の不自然性を改善するために, 音声のゆらぎが自然性にどのように寄与するかを調べた.その結果, ピッチパターンについては, 発声直後のピッチ周波数の変化速度が0.45Hz/msec, 上昇時間は60msec程度が最適であることがわかった.また, 定常部ではピッチを直線的に減少させると自然性が高くなるという評価が得られた.さらに, 音声の自然性には, 波形のゆらぎが大きく寄与していることがわかった.これらの結果に基づき, 自然性を高めるようなピッチパターンが付与された電気人工喉頭を試作した.とれには, ピッチパターン設定の他に使用者が任意にピッチ周波数を制御する機能が付いている.本装置を使用して単語発声中にピッチ周波数を制御することにより正常音声に近い抑揚を付けることができた.
著者
福迫 陽子 遠藤 教子 紺野 加奈江 長谷川 和子 辰巳 格 正木 信夫 河村 満 塩田 純一 廣瀬 肇
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.209-217, 1990
被引用文献数
2 2

脳血管障害後の痙性麻痺性構音障害患者のうち, 2ヵ月以上言語訓練をうけた24例 (平均年齢61.6歳) の言語訓練後の話しことばの変化を聴覚印象法 (日本音声言語医学会検査法検討委員会による基準) を用いて評価し, 以下の結果を得た.<BR>(1) 0.5以上の評価点の低下 (改善) が認められた上位7項目は, 順に「明瞭度」「母音の誤り」「子音の誤り」「異常度」「発話の程度―遅い」「段々小さくなる」「抑揚に乏しい」であった.<BR>(2) 重症度 (異常度+明瞭度の和) は24例中16例, 約7割に何らかの改善が認められた.<BR>(3) 一方, 「音・音節がバラバラに聞こえる」「努力性」「速さの程度―遅い」などでは評価点の上昇 (悪化) も認められた.<BR>(4) 症状の変化は症例によって多様であった.
著者
金 東順 伊藤 友彦
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.125-130, 2004-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
19
被引用文献数
2 5

本研究は子音で始まる語と母音で始まる語で吃音の生起率が異なるかどうかを中心に韓国語と日本語の吃音を比較したものである.対象児は韓国語を母語とする吃音児15名と日本語を母語とする吃音児20名であった.6コマの連続絵と1枚の情景画を用いて発話を収集し, 分析した.本研究の結果, 以下の点が明らかになった.1) 韓国, 日本の対象児における吃音の生起率はともに母音で始まる語のほうで高い傾向があった.2) 吃音の繰り返し単位をC (頭子音) , (C) V (核母音まで) , (C) VC (尾子音まで) の3つに分けて比較した結果, 韓国, 日本の対象児はともに (C) Vを単位とする繰り返しの生起率が有意に高かった.上記2点は従来の英語において得られている結果と異なるものであった.これらの結果から, 吃音は音節構造など, 個別言語の言語学的特徴と密接に関連して生じている可能性が示唆された.
著者
岩田 重信 竹内 健司 岩田 義弘 戸田 均 大山 俊廣
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.14-21, 1995-01-20
被引用文献数
10 1

われわれは声の強さの調節に関し, 声門下圧を経声門的に抽出し, PS-77発声機能検査装置とPI-100自動解析プログラムにより, 声の強さ, 高さ, 呼気流率, 声門下圧, 声門抵抗, 声門下パワー, 喉頭効率を求めた.対象は正常者9例 (男性4例, 女性5例) で, 楽な発声と胸声とファルセットにて, crescendo発声を行わせた.楽な発声条件では, 声門下圧, 声門抵抗, 喉頭効率の値は性差を認めず, 声門下パワーは女性に比し, 男性に高い値を示した.crescendo発声では, 胸声区は声の強さの増加に比し, 呼気流率はほとんど変化を認めないが, 声門下圧, 声門抵抗, 喉頭効率は直線的な比例関係を示し, ファルセットでは, 胸声の同じ強さで比較すると, 呼気流率, 声門下圧, 声門下パワーは増大しているが, 喉頭効率は著しく低下していた.
著者
村上 健 深浦 順一 山野 貴史 中川 尚志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.27-31, 2016

変声は14歳前後に完了するといわれている.今回,20代で声の高さの異常を他者に指摘されて初めて症状を自覚し,当科を受診した変声障害2症例を経験した.2症例とも第二次性徴を完了しており,喉頭に器質的な異常は認められなかった.話声位は男性の話声位平均値よりも高い数値を示したが,声の高さの異常に対する本人の自覚は低かった.初診時にKayser-Gutzmann法,咳払い,サイレン法により低音域の話声位を誘導後,低音域の持続母音発声から短文まで音声訓練を行い,声に対する自己フィードバックも実施した.訓練は1~2週に1回の頻度で実施した.2例とも訓練初回に話声位を下げることが可能であったが,日常会話への汎化に時間を要した.個性を尊重するなどの学校社会における環境の変化が,本人の自覚を遅らせ,診断の遅れにつながったのではないかと推測した.
著者
今泉 光雅 大森 孝一
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.209-212, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
11

外傷や炎症,術後に形成される声帯瘢痕は治療困難な疾患である.その治療は,動物実験や臨床応用を含めて,ステロイド薬や成長因子の注入,種々の細胞や物質の移植などにより試みられているが,現在まで決定的な治療法がないのが実情である.2006年,山中らによってマウス人工多能性幹細胞(iPS細胞)が報告された.2007年,山中らとウイスコンシン大学のDr. James Thomsonらは同時にヒトiPS細胞を報告した.iPS細胞は多分化能を有し,かつ自己由来の細胞を利用できるため声帯組織再生の細胞ソースの一つになりうると考えられる.本稿では,幹細胞を用いた声帯の組織再生について述べるとともに,ヒトiPS細胞を,in vitroにおいて声帯の上皮細胞に分化誘導し,声帯上皮組織再生を行った研究を紹介する.
著者
岡ノ谷 一夫
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.367-371, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
6

音声言語はヒトに特有な行動であるが,音声言語を構成する下位機能はヒト以外の動物にも同定可能である.これら下位機能を多様な動物において同定し,それらがどう組み合わされば言語が創発するのかを考えるのが,言語起源の生物心理学的な研究である.ここでは,発声学習,音列分節化,状況分節化の3つの下位機能について,鳥類と齧歯類を用いた研究を紹介する.これら下位機能が融合して音声言語が創発する過程として,相互分節化仮説を紹介する.この仮説では,音声言語の起源として歌を考える.歌が複雑化して多様な社会的状況と対応をもつようになると,複数の状況の共通部分と,歌の共通部分が相互に分節化され,歌の一部が意味をもつようになる.これが繰り返され,音声言語の基盤ができる.
著者
内山 美保 藤原 百合 小島 千枝子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.382-390, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
20
被引用文献数
1

発話速度の調整に伴う構音運動の変化について明らかにするために,エレクトロパラトグラフィ(EPG)を用いて舌と口蓋の接触動態を分析した.対象は健常者9名.発話課題は「北風と太陽」冒頭の1文とし,語頭に位置する歯茎破裂音/t/について分析した.発話速度の調整には,口頭指示と強制的な発話速度の調整法を用いた計8条件を設定した.その結果,通常の発話に比べ,「ゆっくりと」「口を大きく開けて」と指示した場合と,モーラ指折り法・ペーシングボードを用いた場合に発話速度の低下を認めた.その際,/t/構音時の舌の接触時間の延長と接触範囲の拡大を認めた.ペーシングボードで文節単位に区切った際には,直前の音からわずかに舌の接触のない時間が生じており,時間的なゆとりをもって構音運動が行われたと考えられた.EPGを用いた分析により,発話速度の低下によって構音運動が変わることを客観的に捉えることができた.
著者
藤本 憲正 中村 光 福永 真哉 京林 由季子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.201-207, 2016

比喩文の理解課題を作成し,健常高齢者(統制群),コミュニケーション障害を認めない右半球損傷者(右なし群),それを認める右半球損傷者(右あり群),左半球損傷の失語症者(失語群),それぞれ15名に実施した.比喩文は一般的になじみの低い直喩文30題とし(例:道は,血管のようだ),検者がそれを読み上げた後,その意味に最も合う文を4つの選択肢から選ぶよう求めた.さらに同じ比喩の口頭説明課題とトークンテスト(TT)を実施した.結果は,統制群と比較し,右なし群では比喩理解課題,TTともに同等の得点であり,右あり群では特に比喩理解課題で有意な低下を示し,失語群では比喩理解課題,TTともに有意な低下を示した.比喩理解課題と比喩説明課題の得点には有意な相関関係が認められた.右半球損傷における比喩理解障害を議論する際は,コミュニケーション障害の有無を考慮する必要があると考えた.
著者
城本 修 池永 絵里
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.254-262, 2011 (Released:2011-10-06)
参考文献数
33
被引用文献数
5 8 10

【目的】音声障害の自覚的評価尺度VHI 日本語改訂版とV-RQOLの日本語版を作成し, その信頼性と妥当性を検討した. 【方法】協力者:中・四国と関西に位置する4病院の耳鼻咽喉科外来を受診した患者のうち同意の得られた音声障害患者112名と音声障害のないそれ以外の耳鼻咽喉科通院患者163名. 信頼性の検討: Cronbachのα係数を求め, 内的整合性を検討. 妥当性の検討:音声障害群と非音声障害群との得点差から基準連関的妥当性を検討. 【結果と考察】VHIとV-RQOL日本語改定版のCronbachのα係数は, それぞれ0.97, 0.93となり, 高い内的整合性が示された. また, 各尺度について音声障害群と非音声障害群の間に, 有意な差 (p<.001) が認められ, 基準連関的妥当性が示された. 【結論】VHI日本語改訂版とV-RQOL日本語版は, ともに諸外国語翻訳版の先行研究と同等かそれ以上の信頼性・妥当性を示し, 有用性が認められた.
著者
羽石 英里
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.177-182, 2012 (Released:2012-10-09)
参考文献数
4
被引用文献数
1 3 1

職業歌手における音声障害の意味を知るために,オペラ,ミュージカル,ジャズ,ポピュラーを含むさまざまなジャンルの職業歌手9名を対象にインタビューを行った.インタビューでは,まず望ましい歌唱時の状態・身体感覚・筋感覚を言語化してもらい,次に望ましくない状態,すなわち音声障害の様子と,耳鼻咽喉科の受診等について語ってもらった.望ましい歌唱時には,呼吸の適切なコントロールにより,発声・共鳴も含めた歌うことのシステム全体が調整されていること,喉頭がリラックスした状態にあることなどが,歌手たちの言語表現から推察された.職業歌手は歌うためにさまざまな筋肉を使う「アスリート」であり,音声障害には,身体全体の調整不良が背景にある場合が考えられる.コンサートをキャンセルできない等の職業歌手に特有な「労働環境」,歌うことを職業とするがゆえの不安・ストレスへの理解も,職業歌手の音声障害への対処にあたって重要と思われる.