著者
堀江 正一 石井 里枝 小林 進 中澤 裕之
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.234-238, 2002-08-25
参考文献数
7
被引用文献数
4

LC/MSによるフグ毒テトロドトキシン(TTX)の分析法を検討した.TTXは高極性物質であることから,イオン化にはエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を採用し,ポジティブモードとした.LC条件は,カラムにTSKgel ODS 80Ts (25 cm&times;2 mm i.d.),移動相には5 mmol/L HFBA-メタノール(99 : 1)を用い,流速は毎分0.2 mLとした.検出には,プロトン化分子[M+H]<sup>+</sup>を用い,結果をより確かなものとするために水脱離イオン(<i>m/z</i> 302.1)も同時にモニターした.本法の検出限界は1 &mu;g/gであり,無毒とされる10 MU/g (2.2 &mu;g/g)レベルの分析が可能であった.
著者
鈴木 学 大和 康博 渡辺 忠雄
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.160-167, 1973-04-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

土壌に残留する農薬の野菜への移行を検討しつぎのような結果を得た.1) 土壌中に残留する各BHC異性体は, ニンジン, カブ葉, ダイコン葉, ホウレンソウなどに多く移行し, トマト, キャベツなどへの移行は少なかった. 現在の土壌残留量から考えるとニンジン, カブ葉などで残留許容基準をこえる可能性がある.2) アルドリンとディルドリンのキュウリ, ニンジン, ホウレンソウへの移行率は, それぞれ16.6%, 9.6%, 4.4%であった. アルドリンは野菜中でディルドリンの型で検出された. 移行率はキュウリについて文献値にほぼ一致したが, ダイコン, ニンジンについてはかなり低い値を示した.3) エンドリンのキュウリ, キャベツ, ダイコンへの移行率は, それぞれ21.8%, 14.5%, 9.1%であった. エンドリン, アルドリン, ディルドリンの野菜への移行率と土壌残留量から考えると, 日本の残留許容基準をこえる可能性が多い.4) DDTは土壌中にかなりの濃度で残留していたが, 野菜への移行は極めて少量であった.
著者
渕 祐一 帆足 喜久雄 赤枝 宏 牧野 芳大 野口 玉雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.80-89, 1999-02-05
参考文献数
16
被引用文献数
7

筋肉摂食による死者1名を含む食中毒事例が過去にある大分県国東沿岸産ヒガンフグ及びコモンフグについて, 部位別及び季節別の毒性を検討した. 1983~96年に漁獲されたヒガンフグ46個体とコモンフグ34個体中, 筋肉の有毒率及び最高毒力はヒガンフグが6.5%及び55MU/g, コモンフグが41.2%及び84MU/gであった. 食用不可とされる三陸沿岸産の両種より筋肉の毒性は低いものの, ヒガンフグは毒力の個体差が著しく, コモンフグは活魚でも有毒率が高いことから, 食用に供するには検討を要する魚種と考えられた. また, 両種とも皮膚, 肝臓及び卵巣の毒力相互間に相関関係が認められた.
著者
中村 優美子 外海 泰秀 辻 澄子 伊藤 誉志男
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.251-260_1, 1987

ラットを用いて, クエン酸及びそのナトリウム塩, カルシウム塩, カリウム塩の代謝を調べた. 伊藤らによって算出されたクエン酸の日本人の一日摂取量37.78mg/kgを基準として投与量を設定した. クエン酸及びその塩類の<sup>14</sup>Cでラベルされたものあるいはされていないものをラットに経口投与して, 尿中へのクエン酸排泄量, 呼気中の<sup>14</sup>C放射活性及び血中の<sup>14</sup>C放射活性の経時変化を調べた. その結果, 投与されたクエン酸及びその塩類は, いずれも体内へ吸収された後ほとんどが代謝されて体内へは蓄積せずに, 主として呼気中にCO<sub>2</sub>として排泄されることがわかった. また, 塩の違いによる差は顕著ではなかった.
著者
田中 智哉 木村 圭介 觀 公子 新藤 哲也 笹本 剛生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.119-124, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

チョコレート中のカフェイン,テオブロミンおよびテオフィリンの同時分析法を検討した.試料にアセトニトリル–水(1 : 1)を加え,超音波抽出(15分間,50℃)を2回行い,得られた抽出液をOasis HLB SPEカートリッジで精製し,LC-MSで測定することによりこれらの同時分析が可能であった.検討した分析法は真度97.4%~100.2%,併行精度1.0%~2.8%,室内精度2.0%~7.9%であり,定量性は良好であった.既存の分析法に比べ,本法は簡便かつ選択性の高い分析法であり,チョコレート中のカフェイン,テオブロミンおよびテオフィリンの分析に有用である.
著者
森 哲也 岸野 かなえ 田原 麻衣子 守山 隆敏 和田 真太郎 伊藤 武
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.129-132, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
13

3MTM病原菌検出アッセイ2 STEC遺伝子スクリーニン-stx用キットを,食品からの腸管出血性大腸菌検査におけるVT遺伝子スクリーニングに使用することを目的に,検出感度を調べた.純培養菌での検出感度,食品として牛スライス肉やタンドリーペースト,きゅうりなどを供試して食品培養液を調製し検出感度を調べた.食品培養液中の検出感度は,BPW,mEC培地ともに3から4 Log CFU/mLレベルであった.3MTM病原菌自動検出システムを用いたVT遺伝子検出は,通知法が要求する検出下限値(4 Log CFU/mL)を満たしていた.本手法は食品からの迅速簡便なVT遺伝子スクリーニング法として有用であった.
著者
大門 拓実 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.133-137, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2

筆者らは迅速性,選択性,汎用性を勘案し,QuEChERS (EN 15662:2008)の原理で抽出を行い,抽出液を固相カラムで精製せず,希釈のみでLC-MS/MSを用いて測定する枝豆中の残留農薬一斉分析法について妥当性確認を実施した.その結果,202成分の農薬について,妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,本法は迅速的かつ効果的な分析法として適用可能であることが考えられる.
著者
岡部 亮 久保田 晶子 根本 了 青栁 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.113-118, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
8

畜産物中のアルベンダゾール代謝物(代謝物I)の分析法として,試料を塩酸酸性条件下で加熱した後,酢酸エチル–n-ヘキサン(1 : 1)混液で脱脂し,代謝物Iをアセトニトリルで抽出後,塩基性条件下で塩析し,スルホン酸塩修飾ジビニルベンゼン-N-ビニルピロリドン共重合体カートリッジカラムで精製する方法を開発した.測定はLC-MS/MSを用い,イオン化はESI法(ポジティブモード)により行った.また,分析カラムはODSカラム(Inertsil ODS-4),移動相は0.05%(v/v)ギ酸および0.05%(v/v)ギ酸含有アセトニトリルを用いた.4種類の畜産物(牛の筋肉,牛の脂肪,牛の肝臓および牛乳)に対して代謝物Iを残留基準値濃度および定量下限値濃度(0.01 mg/kg)で添加し,開発した分析法により回収試験を行った結果,真度83.6~97.9%,併行精度1.6~6.1%の良好な結果が得られた.
著者
大門 拓実 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.125-128, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
4
被引用文献数
4

筆者らは迅速性,簡便性,汎用性を勘案し,アセトンを用いて抽出後,n-ヘキサンによる脱脂精製,分析種のアセトニトリルへの分配,塩析効果による精製を同時に行うことが可能となる三層分離抽出の原理を応用し,TBHQ迅速分析法の検討を行った.本法は,固相抽出カラムを用いた精製や溶媒の濃縮,転溶操作をせずに試験溶液を調製可能であった.妥当性確認の結果,多種多様な11種の試料において妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,迅速的かつ効果的なTBHQ分析法として適用可能であることが考えられる.
著者
福田 弘美 植田 勤 大仲 輝男 佐藤 伸哉 神藤 正則 田中 智之
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.117-120, 2011

苦情検体の味付け海苔からチアベンダゾール(TBZ)が検出された事例を経験した.原因調査の結果,味付け工程で調味液を塗布する機械に使用されるスポンジロールに,抗菌目的で使用されていたTBZが海苔に移行したことが判明した.今回,LC-MS/MSを用いて味付け海苔中のTBZの定量法を検討した.味付け海苔の製造工程でこのスポンジロールが広く普及していたことから,改良した定量方法を用いて同時期と翌年の市販品についてTBZの調査を実施した.苦情事例のあった平成20年3月では6検体中5検体で0.014~1.736 μg/g,翌年の平成21年7月では6検体中1検体で微量のTBZが検出された.以上のことから味付け海苔の製造工程が見直され,現在では改善していると考えられた.
著者
菅野 陽平 坂田 こずえ 中村 公亮 野口 秋雄 福田 のぞみ 鈴木 智宏 近藤 一成
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.113-123, 2017
被引用文献数
8

<p>ツキヨタケは,シイタケやヒラタケ,ムキタケと誤認されやすい毒キノコの一種で,日本でのキノコによる食中毒の主要な原因キノコである.本研究では,ツキヨタケを迅速に判別する分子生物学的手法としてPCR-RFLPを用いた判別法を構築した.Sau96I, Bpu10I, SfcI, DrdI/HincIIの4組の制限酵素を用いたPCR-RFLPにより,有毒のツキヨタケと食用キノコのシイタケ,ムキタケ,ヒラタケを明確に判別することに成功した.また,加熱調理や消化によりDNAの一部が断片化した試料でも判別可能な200 bp程度の領域を対象としたShort PCR-RFLPも構築し,リアルタイムPCRによる確認試験法についても検討した.これらは,ツキヨタケが疑われる食中毒事例の原因究明に有効な検査法として有用と考えられた.</p>
著者
近藤 一成 坂田 こずえ 加藤 怜子 菅野 陽平 武内 伸治 佐藤 正幸
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.144-150, 2019
被引用文献数
3

<p>日本国内で食中毒事例が多いクサウラベニタケと考えられてきたきのこは,3種類の近縁種から構成される.これら近縁種を特異的に感度よく検出できるリアルタイムPCR法を開発した.有毒と考えられるクサウラベニタケ近縁3種および食用のウラベニホテイシメジに特異的なプライマーおよびプローブ(FAM,VIC,Texas Red,Cy5標識)を用いて検討した.クサウラベニタケ近縁3種とウラベニホテイシメジITS全領域を有する標準プラスミドを用いた検討から,いずれの検出系も12.5コピーまで検出可能あり,目的以外の標的には反応しなかった.本法を用いて中毒事例から回収した検体を分析したところ,PCR-RFLP法では十分解析できない検体でも確実に種の同定検出が可能であることが分かった.食中毒の防止および中毒発生時の原因種特定に役立つと考えられる.また,北海道内におけるクサウラベニタケ近縁種は,本州のものとは異なり<i>Entoloma eminens</i>または<i>Entoloma</i> sp.であることを同時に明らかにした.</p>
著者
新藤 辰二 佐々木 義幸 三木 啓道 江口 通 萩原 清和 市川 富夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.419-422_1, 1988
被引用文献数
34

新しい天然甘味料として期待されるエリスリトールのイオン交換樹脂カラム CK 08SHを使用した, 示差屈折計付き高速液体クロマトグラフィーによる迅速, 簡便な定量法を検討し, 良好な結果を得た. この方法により, 清酒, ワイン, しょう油, みそそしてビール中の含量を測定した. この結果エリスリトールは清酒, ワイン及びしょう油0.015~0.09w/v%, みそ0.13%, ビールには微量含まれていることが分かった.
著者
岡村 保 松久 次雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.382-385, 1965-08-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2 6

筆者らは紙巻タバコのフッ素量を測定した結果, 意外に多量のフッ素がタバコ中にあることを知った. しかもそれが, 煙となって大半が吸煙されると考えられるのでかくれた煙害として再検討されるべきではないかと思われる.
著者
池内 隼佑 Bui Thi Hien Nguyen Khanh Thuan Ly Thi 工藤 由起子 谷口 隆秀 林谷 秀樹
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.94-99, 2021-06-25 (Released:2021-07-02)
参考文献数
37
被引用文献数
1

2017年7月から2019年1月に,ベトナム・メコンデルタの市場やスーパーマーケット19か所から購入した計645検体の市販新鮮野菜における腸管出血性大腸菌 (EHEC) ならびに毒素原性大腸菌 (ETEC) の汚染状況を調べた.供試検体645検体中,EHECおよびETECがそれぞれ1検体の計2検体 (0.3%) から分離された.病原性大腸菌が分離された野菜はいずれもヘッドレタスであった.分離されたEHECの血清型は市販抗血清では型別されなかったが,ETECはO20であった.EHECとETECの2菌株は,用いた9種の抗生物質に対し,いずれも4と7薬剤に耐性を示す多剤耐性株であった.これらの結果から,ベトナム・メコンデルタにおいては,市販生鮮野菜はEHECとETECの感染源としては重要でない可能性が示された.
著者
古賀 敬興 平川 周作 石橋 融子 堀 就英
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.100-104, 2021-06-25 (Released:2021-07-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

マイクロ波分解装置を用いたミネラルウォーター類以外の清涼飲料水のスズ,ヒ素,鉛分析法の検討と性能評価を実施した.3元素を通して,真度93~100%,併行精度0.7~6.1 RSD%,室内精度0.9~8.6 RSD%であった.スズの試料調製においては,マイクロ波分解処理後に硫酸を添加する操作を追加することによって添加回収率および再現性の向上が確認された.また,本手法の適用性を検証するため,性状の異なる5種類の清涼飲料水について添加回収試験を実施した結果,回収率は92~102%であった.本手法によって幅広いミネラルウォーター類以外の清涼飲料水の分解処理およびスズ,ヒ素,鉛の定量分析への適用が期待でき,さらに既開発法と比較して作業時間の短縮および作業の簡便化が実現できた.