著者
一言 広 諸角 聖 和宇慶 朝昭 坂井 千三 牛尾 房雄 道口 正雄 辺野 喜正夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.273-281_1, 1978

「紅茶キノコ」と呼ばれる嗜好飲料の安全性の解明を目的として微生物学的ならびに有機酸組成の検討を行った.「紅茶キノコ」液から検出した微生物は <i>Acetobacter xylinum</i>, <i>Saccharomyces cereviciae</i>, <i>S. inconspicus</i>, <i>Candida tropicalis</i>, <i>Debaryomyces hansenii</i> などであった. これらの菌の凝塊形成至適温度は26~27°で, 菌の発育により紅茶液のpHは最終的に3.1以下となった. また, 本液に各種病原細菌を接種し生存性を検討した結果, いずれも48時間以内に死滅したことから, これらの菌により汚染される危険はほぼないものと考えた. 一方,「紅茶キノコ」液中に存在した有機酸の95%以上は酢酸で, 他に微量の乳酸およびギ酸が認められた.
著者
荻原 博和 露木 朝子 古川 壮一 森永 康 五十君 靜信
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.109-116, 2009-06-25 (Released:2009-07-15)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

E. sakazakii における感染リスクの低減対策として,PIFの調乳湯温による殺菌効果とその保存温度に対するE. sakazakii の消長を検討した.加熱の指標とされているD 値は,ATCC 29004株が60℃で3.6分,HT 022株が1.9分で,HT 028 株については52℃において1.6分であった.PIFの調乳湯温におけるE. sakazakii の殺菌効果については,湯温60℃では1 log CFU/mL以下,湯温70℃では1~2 log CFU/mL,湯温80℃では5 log CFU/mL以上の殺菌効果が得られた。室温ならびに低温下でのE. sakazakii の増殖は,5℃ではすべての供試菌株の発育が抑制され,10℃ではHT 028株のみ増加する傾向が認められた。25℃では保存4時間後には供試3菌株とも増殖し,保存16時間後には8 log CFU/mLに増加した.以上のことから,調乳に使用する湯温は70℃以上で調製することが E. sakazakii の死滅に有効と考えられた.さらに調乳後は5℃以下での保存が好ましく,2時間以上の保存は避けることが E. sakazakii の感染リスク低減に有効と考えられた.
著者
新矢 将尚 紀 雅美 山口 之彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.58-62, 2020
被引用文献数
1

<p>指定外着色料の一つであるパテントブルーVによる,輸入食品の食品衛生法違反は後を絶たない.パテントブルー色素の名称で市販されているものには,化合物名が異なるものがある一方,複数の異なる化合物がパテントブルーの名称で市販されている場合もあるため,注意が必要である.パテントブルー色素と推察される市販色素9品について,TLC,HPLC,LC-MS/MSで分析したところ,いずれの方法でもパテントブルーV,アズールブルーVX,イソスルファンブルー,アルファズリンAの4種に識別され,製品情報が不明瞭な試薬も同定された.パテントブルー群については,命名法を統一することで誤認の可能性を軽減できると考えられる.</p>
著者
ニー ライミトナ 谷山 茂人 柴野 啓輔 余 振輝 高谷 智裕 荒川 修
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.361-365, 2008
被引用文献数
20

カンボジア・シアヌークヴィル沿岸に生息する<i>Lagocephalus</i> 属フグ3種,シロサバフグ<i>L. wheeleri</i>&ensp;(20個体),モトサバフグ<i>L. spadiceus</i>&ensp;(15個体) およびドクサバフグ<i>L. lunaris</i>&ensp;(82個体) 計117個体につき, マウス試験法により部位別毒性を調べたところ,シロサバフグとモトサバフグは全個体が無毒(2 MU/g未満),ドクサバフグは全個体ないしロットが有毒であった.最高毒性値は, 皮 25 MU/g, 筋肉 67 MU/g, 肝臓 257 MU/g, 腸 127 MU/g, 精巣52 MU/g, 卵巣238 MU/gで,いずれも食用可否の目安となる10 MU/gを上回っていた.LC/MS分析により,毒の本体はフグ毒テトロドトキシン(TTX)と関連成分で,TTXがマウス毒性の80%以上を占めることが示された.
著者
渡邊 裕子 赤星 千絵 関戸 晴子 田中 幸生 田中 和子 下条 直樹
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.98-104, 2012
被引用文献数
3

全卵・卵白・卵黄を用いた菓子・肉団子・パスタ・プリンモデル食品を作製し,調理による卵タンパク質の検出値の変化を,抽出液にトリス塩酸緩衝液を用いたELISAキットにより測定した.菓子,肉団子では揚調理が最も低下し,肉団子はレトルト処理によりオボアルブミン(OVA)は検出限界以下(<1 μg/g)となり,オボムコイド(OVM)も最も低下した.ゆえに,調理温度とともに均一な加熱処理が加わる調理方法が卵タンパク質の検出に影響した.また,卵黄使用の肉団子レトルト処理とパスタでは,いずれの卵タンパク質も6 μg/g以下となり,さらに患者血清中のIgE抗体によるウエスタンブロット法では,OVA,OVMは検出されなかった.一方,抽出液に可溶化剤を用いたELISAキットでは,前述のキットに比べ定量値が上がり,加熱処理したタンパク質が検出された.
著者
佐藤 昭子 寺尾 通徳 本間 ゆかり
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.328-332_1, 1990-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
16
被引用文献数
5 6

主な食中毒菌及び腐敗細菌23菌種25株を供試し, ニンニク抽出液の抗菌作用を検討した. その結果, 大部分の供試菌に対するニンニク抽出液のMICは, 0.62~1.25%の範囲で, 強い抗菌作用を有することが認められた. なお, 検液1mlはニンニク0.5g水抽出液に相当する. 次に, 抗菌活性の安定性について, 加熱及びpHによる影響について検討した. その結果, 抗菌活性は加熱による影響が顕著で, 100°10分間の加熱で半減し, 20分間加熱で完全に失活した. また, pH 6.0~7.0付近の抗菌活性は最も強く安定していたが, pH 5.0やpH 8.0以上では減少することが認められた.
著者
桐明 絢 石崎 松一郎 長島 裕二
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.203-208, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

日本で頻発する巻貝によるテトラミン食中毒のリスク管理に資することを目的に,日本沿岸で採集した5科16種巻貝唾液腺中のテトラミン含量をLC-MS/MSで定量した.バイ以外の15種の巻貝唾液腺からテトラミン(0.700~9,410 μg/g)が検出され,本研究により,エゾバイ科ウスムラサキエゾボラ,ミクリガイ,トウイト,ヒモマキバイ,アニワバイならびにイトマキボラ科ナガニシ,コナガニシ,イトマキナガニシの唾液腺にテトラミンが含まれることが初めて明らかにされた.特に,ウスムラサキエゾボラは,調べた5個体全てがテトラミン含量1,000 μg/gを越えていたため,他のエゾボラ属巻貝と同様にテトラミン食中毒を起こす可能性が高いと考えられ,テトラミン食中毒のリスク管理上重要な種であることがわかった.
著者
渡邊 裕子 秋山 晴代 大澤 伸彦 井村 香織 伊関 直美 植田 壽美子 政岡 智佳 赤星 千絵
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.193-202, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
3

大豆の調理・加工によるタンパク質定量への影響を検討した.リン酸緩衝食塩水抽出画分はビシンコニン酸法で測定し,ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と2-メルカプトエタノール(ME)含有緩衝液抽出画分は2-D Quant Kitで測定し,各画分のSDSポリアクリルアミド電気泳動分析を行い,さらに各種ELISAで測定を行った.豆腐調理過程では浸漬大豆と生呉でタンパク質濃度が変動し,試料均一化時の水分量によるタンパク質溶解性の変動が要因と考えられた.豆乳作製時の生呉の加熱でのタンパク質濃度の低下は熱変性を表すと考えられた.豆腐ではSDS,ME抽出による測定系への影響が考えられた.加熱調理では炒り豆を除き50 kDa付近以上と20 kDa付近のタンパク質が変性し,2度揚げ豆腐で40 kDa付近のタンパク質が変性したが,煮豆を除いたタンパク質濃度は低下しなかった.さらに炒り豆,ゆば,炒りおから,揚げ豆腐では調理時間に伴いタンパク質濃度が増加したことから,水分の低下に伴いタンパク質の変性温度が高温にシフトしたと考えられた.食品表示法に準拠した2種のELISAは大豆調理加工品や納豆を除いた発酵食品,健康食品中のタンパク質とペプチドを検出し,大豆タンパク質の検出に有用であった.
著者
Sabina Yeasmin 高畠 令王奈 鍵屋 ゆかり 岡﨑 法子 峯岸 恭孝 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.180-186, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

食品あるいは飼料において,遺伝子組換え(GM)作物の検出法を開発するためには,種特異的な内在性配列が不可欠である.本研究では,ナス科作物のβ-fructosidase遺伝子の部分配列を用いて,loop-mediated isothermal amplification (LAMP)法によるナスの種特異的検出法を開発した.LAMP法は,迅速,特異的かつ低コストで実施可能な検出技術である.開発したプライマーセットを用いて,ナスの種特異性および安定性を,18品種のナスおよびナス科植物を含む作物種を用いて検討した.また,検出限界を評価した.その結果,本LAMP検出法は,ナスに特異的であり,かつナス品種間で安定した増幅を示した.以上の結果から,LAMP法によるGMナス検出法が開発される際には,有用な陽性コントロールとして利用可能であることが示された.
著者
穐山 浩 高木 彩 井之上 浩一 鈴木 美成 伊藤 里恵 涌井 宣行 浅井 麻弓 杉浦 淳吉
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.187-192, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

食品中の残留農薬に関する正確な知識を促進するために,残留農薬のリスクコミュニケーションに関するシンポジウムプログラムをWeb開催した.リスクコミュニケーションプログラムは,プログラム前後のオンラインアンケート調査を使用して統計学的に評価した.105名の有効な参加者のアンケートを回収した.リスクコミュニケーションプログラムは,プログラム後のアンケート結果の分析により,プログラム後の理解と関心の点において効果的であったことが示された.プログラム前の残留農薬のリスク認知や安全性評価の認知は,残留農薬の基準値を確立に関する認識と有意に正の相関性があった.プログラム後のリスク認知はプログラム前よりも有意に高く,プログラムによりリスク認識が増加したことが示唆された.重回帰分析では,プログラム前に残留農薬の安全性評価に関する意識や基準値設定に対する認知が高い参加者ほど,プログラム後の理解度やリスク認知が高くなることが示唆された.
著者
城戸 浩三 渡辺 忠雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.238-243_1, 1977

トリプシンおよびキモトリプシン活性に対するキサンテン系色素の影響について, 初速度の解析から検討した. まず光の照射の強さの影響は, 照射が強くなるとともに阻害度も増した. 次に両酵素活性を50%阻害する色素濃度および時間について検討し, いずれもローズベンガル>フロキシン>エリスロシン>エオシンの順に阻害した. また<i>K</i><sub>m</sub>およびた<i>K</i><sub>cat</sub>について検討し, その結果より両酵素の活性は色素にょる活性中心部位の阻害によって低下したものと推定した.
著者
森 葉子 植田 康次 櫻井 有紀 青木 明 岡本 誉士典 神野 透人
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.162-165, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
7

食品中のシアン化合物の簡便,迅速な測定法を確立する目的で,日本産業規格(JIS)工場排水試験法で採用されている通気法を参考に,小型インピンジャーを用いる前処理について検討を行った.その結果,シアン化物イオンとして10 ppmに相当するアミグダリンをビワ種子粉末に添加して実施した分析法の性能評価では,真度83.9%,併行精度1.18%,室内精度4.67%の良好な結果が得られた.本法を用いて,市販されている食品中のシアン化合物を調査した結果,10食品中のビワ種子粉末3食品において10 ppmを超えるシアン化合物が検出された.
著者
鈴木 知華 野村 昌代 奥富 幸
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.139-147, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1

愛玩動物用飼料中の無機砒素の濃度測定について,液体クロマトグラフ-誘導結合プラズマ質量分析計(LC-ICPMS)を用いた定量法を開発した.2 w/v%TMAH溶液を試料に添加後,加熱抽出し,試料溶液をpH調整しLCICP-MSに注入した.共同試験は,5種類の愛玩動物用飼料を用い9試験室で実施した.ドライ製品及び素材乾燥ジャーキーに2 mg/kg相当量を,ウェット製品に0.5 mg/kg相当量を,成型ジャーキーに1 mg/kg相当量を,ビスケットに0.2 mg/kg相当量のAs (III)を添加した.その結果,平均回収率,繰返し精度及び室間再現精度の相対標準偏差(RSDr及びRSDR)並びにHorRatは,それぞれ95.4%から98.3%,2.9%以下及び9.1%以下並びに0.51以下であった.
著者
大門 拓実 田村 彩 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.166-167, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
1

著者らは,農産物中の残留農薬をQuEChERS (EN 15662:2008)の原理で抽出後,希釈のみ行い,LC-MS/MSで測定を行うという,迅速性,簡便性,汎用性の高い分析方法について,全21種の農産物を対象にその妥当性確認を実施した.その結果,全210成分中194~210成分において妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,本法は迅速的かつ効果的な分析法として適用可能であることが考えられた.
著者
長沢 寛弥 國吉 杏子 谷川 敏明 小林 直樹 小西 良子 朝倉 宏 大城 直雅
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.157-161, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
32
被引用文献数
2

小笠原群島(聟島列島,父島列島および母島列島)におけるシガテラの実態を調査するために,周辺海域で漁獲されたバラハタVariola louti 65個体の筋肉を試料としてLC-MS/MSによるシガトキシン類(CTXs)分析を実施した.すべての試料からCTX1Bに近接するピークが検出されたが,CTX1Bの前駆体である52-epi-54-deoxyCTX1B,54-deoxyCTX1Bや,他のCTX類縁体は検出されなかった.バラハタ試料では通常,この3物質が同時に検出されることから夾雑物による影響を考え分析カラムを変更して分析した結果,全試料においてCTX1Bとは保持時間が異なったため夾雑物由来であると判断した.本研究に供したバラハタは体重2,170~7,000 gと大型の個体であったにも関わらず,65個体のいずれからもCTXsは検出されなかった.そのため,小笠原群島周辺海域のバラハタによるシガテラのリスクは低く,CTXs産生性渦鞭毛藻の分布密度は沖縄・奄美海域に比較して極めて低いことが示唆された.
著者
福光 徹 脇 ますみ 萩尾 真人 林 孝子 桑原 千雅子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.168-174, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1

畜水産物中のキノロン系およびテトラサイクリン系薬剤18成分を対象としたLC-MS/MSによる高精度な一斉分析法を確立した.n-ヘキサン存在下,EDTA含有クエン酸緩衝液–メタノール–アセトニトリル(3 : 1 : 1, v/v/v)混液で試料から対象薬剤を抽出し,Oasis PRiME HLBミニカラムで精製した.本分析法は,n-ヘキサンを用いることで,脂肪を含む固体試料中の対象薬剤も抽出可能であることが示唆された.また,ミニカラムからの溶出液に0.1 vol%ギ酸含有・メタノール–アセトニトリル(3 : 7, v/v)混液を用いることで,回収率の低下を最小限にしつつ精製効果を向上させることができた.6種類の食品試料を用いて妥当性評価を実施した結果,選択性および添加濃度におけるS/N比は良好であり,真度70.6~113.8%,併行精度9.0%以下,室内精度15.5%以下とガイドラインの目標値を満たした.
著者
大石 晃史 永富 康司 鈴木 康司
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.108-112, 2019
被引用文献数
6

<p>飲料中への意図的な植物毒の混入を想定し,LC-MS/MSを用いた植物毒一斉分析法を開発した.分析対象には日本で中毒事例の多い,もしくは過去に事件に用いられた植物毒18成分を,分析試料にはビール,焼酎,ブレンド茶,缶コーヒー,乳性飲料を選択した.分析成分の抽出および精製にはQuEChERS法を用いた.バリデーション試験の結果,日内精度,真度,回収率について良好な結果が得られた.いずれの成分も5~200 ng/mLの範囲で良好な直線性を示し(<i>r</i>>0.990),低濃度での検出が可能となった.</p>
著者
成田 弘子 奈良 正人 馬場 啓輔 大上 皓久 阿井 敬雄 野口 玉雄 橋本 周久
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.251-255_1, 1984
被引用文献数
10

巻貝ボウシュウボラ <i>Charonia sauliae</i> のテトロドトキシン (TTX) 毒化機構を解明する目的で同じくTTXをもつトゲモミジガイ <i>Astropecten polyacanthus</i> によるその飼育試験を行った. 1~4週間後には, 供試した全ボウシュウボラ個体の中腸腺に毒性が認められ, TTXの蓄積率は平均33%であった. ボウシュウボラ中腸腺の総毒量は, ある水準までは投与したトゲモミジガイの毒量に応じて増加した. また, いったん毒化したボウシュウボラは, さらに40日間無毒の餌で飼育しても特に毒力は低下しなかった.