著者
川西 美穂 末永 和也 平野 智博
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.117-121, 2022-06-25 (Released:2022-07-21)
参考文献数
12

かび毒とは,植物病原菌であるかびや貯蔵穀物などを汚染するかびが産生する化学物質で,人や家畜の健康に悪影響を及ぼすものをいう.赤かび病の病原菌であるFusarium属のかびが,農作物,特に麦類や豆類に付着し,不適切な生産管理や収穫・乾燥などを行うことでこのかびが増殖し,フザリウム毒素であるトリコテセン類かび毒,デオキシニバレノール(DON),ニバレノール(NIV),T-2トキシン(T-2),HT-2トキシン(HT-2),ジアセトキシスシルペノール(DAS),ゼアラレノン(ZEA)等のかび毒を産生する.穀類であるハトムギ,ソバ中のフザリウム毒素について,一斉分析法について検討を行い,単一試験室における妥当性評価を実施した.その結果,ハトムギおよびソバにおける単一試験室におけるこの一斉分析法の妥当性が確認され,信頼性の高い分析が可能となった.
著者
武田 然也 倉島 ちなみ 杉本 泰俊 関口 好浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.122-127, 2022-06-25 (Released:2022-07-21)
参考文献数
15

飼料中に残留するクロルプロファムのLC-MS/MSによる定量法を評価するため,13試験室における試験室間共同試験を実施した.子豚育成用配合飼料,乳用牛飼育用配合飼料,えん麦,大麦,小麦およびとうもろこしの6種類各1濃度の試料を用いて,各試験室2点併行分析とした.試験の結果,真度は75.3~87.0%,併行精度および室間再現精度はそれぞれ7.3%以下および33%以下,HorRatは0.39~1.5であり,分析法の妥当性が確認された.また,クロルプロファムの定量下限および検出下限は飼料中でそれぞれ0.008 mg/kgおよび0.003 mg/kgであった.本分析法は,飼料中のクロルプロファムを検査するための方法として適用が可能と考えられた.
著者
高木 恭子 宮崎 仁志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.105-108, 2022-06-25 (Released:2022-07-21)
参考文献数
7

食品による健康危機事案が発生した際に対応可能な金属類の分析法を,マイクロ波分解装置と誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)装置を用いて検討した.水道水質基準項目および水質管理目標設定項目に設定されている元素を含む18種類の元素(アルミニウム,ヒ素,ホウ素,カドミウム,コバルト,クロム,銅,鉄,水銀,マンガン,モリブデン,ニッケル,鉛,アンチモン,セレン,スズ,タリウム,亜鉛)を対象とし,食品試料として飲料5種類(緑茶,ブラックコーヒー,牛乳,オレンジジュース,ビール)および加工食品7種類(ビーフカレー,ぎょうざ,えびのチリソース和え,さばの塩焼き,えびピラフ,お好み焼き,果実缶詰)を使用した.添加回収試験の結果,真度は88~108%であり,室内精度は0.2~11.3%であった.本法では試料の秤量から測定終了までの所要時間は3時間以内であり,健康危機発生時における金属類の分析法として適用可能であると考えられた.
著者
都丸 亜希子 登田 美桜 工藤 由起子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.109-116, 2022-06-25 (Released:2022-07-21)
参考文献数
43

1998年から2020年に国内で発生したヒスタミン食中毒事例の傾向を解析した結果,ヒスタミン食中毒は毎年発生し,1年あたりの平均事例数は9.7件,患者数は195.3名であった.施設別による事例数は,飲食店が最も多く,患者数では給食施設が最も多かった.食中毒の原因となった魚種は,マグロ,カジキおよびサバが主であった.文献情報調査の結果,国内に流通する魚種から単離されたヒスタミン生成菌は,23属であり,最も報告が多かった菌種は腸内細菌科であるMorganella morganiiであった.また,海洋性細菌であるPhotobacterium damselaeの報告も多かったが,低温性のMorganella psychrotoleransやPhotobacterium phosphoreumの報告もみられた.
著者
山崎 幹夫 堀江 義一 宇田川 俊一 越後 多嘉志 君 政子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-6_1, 1975-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

国内および国外のはちみつ, 合計23試料について着生菌類の分離を試みたところ, はちみつ病原菌として知られる Ascosphaera apis のほか Chaetomium, Eurotium, Aspergillus, Cladosporium, Penicillium 属などの菌が分離された. 酵母に比べると一般に菌出現頻度は低く, 輸入試料に比べると国内産試料の出現頻度が低かった. グルコース, ショ糖の各濃度添加培地における分離菌の生育は可能であり, はちみつ自体における生育も可能であった. したがって, はちみつが発黴しにくい原因は単なる糖高濃度, 低pH性にあるだけでなく, 酵母による優先型環境のために菌の発育を妨げられるのであろうと推定される.
著者
坂 真智子 飯島 和昭 西田 真由美 狛 由紀子 長谷川 直美 佐藤 清 加藤 保博
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.150-159, 2008-06-30 (Released:2008-07-17)
参考文献数
14
被引用文献数
10 7

小麦の加工および調理による計13種の農薬の残留濃度変化に伴う調理加工品への移行率(玄麦に残留する農薬の絶対重量に対する生成試料中の残留農薬重量の比率,%) について,プレハーベスト処理試料(Pre, 9薬剤)とポストハーベスト処理試料(Post, 6薬剤)を調製して調査した.また,玄麦中に残留する農薬の濃度に対する生成試料中の残留農薬濃度の比(以下,加工係数と称する)も求めた.製粉工程において,玄麦に残留していた農薬のうちPreでは70%以上,Postでは80%以上がふすまとともに除去され,60%粉に残っていたのはPre 1.7~23%, Post 4.0~11%の範囲であった.60%粉の加工係数はPre 0.030~0.40, Post 0.069~0.18を示した.これらの数値は,PreのほうがPostよりも高い値を示した.移行率の薬剤間での値の差は少なかった.調理加工における農薬の残留濃度変化を調査することは,基準値設定に役立つばかりでなく,農産物に残留する農薬が食品に移行する量を把握する上で重要である.
著者
油谷 藍子 仲谷 正 尾崎 麻子 山口 之彦 山野 哲夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.85-91, 2022-04-25 (Released:2022-06-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

2013年から2018年に大阪市内で購入した魚介加工品112検体について,加熱気化水銀計を用いて総水銀を測定した.その結果,マグロ加工品の総水銀濃度は平均0.115 µg/g(中央値0.070 µg/g)であった.中でもビンナガマグロを原材料とした加工品の総水銀濃度は高く,平均0.301 µg/g(中央値0.296 µg/g)であった.今回調査した魚介加工品の総水銀濃度はマグロ類を原材料とした加工品および混合削り節(サバ,イワシおよびアジの削り節)を除いて概ね低く,0.1 µg/g未満であった.今回の調査結果と日本人の平均的な食生活での魚介加工品摂取量から推定した体重50 kgの人の総水銀摂取量は0.13 µg/kg体重/週であり, FAO/WHO合同食品添加物専門家会議が評価した総水銀の暫定的耐容週間摂取量4.0 µg/kg体重/週の3.3%に相当する量であった.以上より魚介加工品の摂取は通常の摂食では問題ないが,妊婦が総水銀濃度の比較的高いビンナガマグロを原材料としたツナ缶を日常的に摂食した場合には食品安全委員会が評価した妊婦に対するメチル水銀の耐容週間摂取量(2 µg/kg体重/週)を超過する可能性が示唆された.
著者
曳埜 忍 矢島 智成 逆井 美智子 冨山 成人 飯島 和昭 大山 和俊
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.62-69, 2022-04-25 (Released:2022-06-01)
参考文献数
11

国内3圃場で16種農薬を散布してビワを収穫し,果肉,果皮および種子を分位別に分析した.果皮では全農薬について全例で検出値(n=144)を得たが,果肉および種子での検出割合は,それぞれ42%(n=61)および36%(n=52)に減少した.ビワ果実中の残留農薬は,主に果皮に分布し,可食部である果肉への分布は少なく,種子への分布は果肉よりも少なかった.部位別の分析値を用いて,果肉での不検出値(<0.01 mg/kg)と種子での実残留値の取り扱いが異なる3つの計算方法により全果実中の残留農薬濃度を算出した.全ての不検出値を定量限界とし,種子中の実残留値を用いた場合(H),種子中の残留値を全て0 mg/kgとし,果肉中の不検出値を定量限界値とした場合(C),全種子中残留値と果肉中の不検出値を0 mg/kgとした場合(L)で算出した.これら算出値の比率は,74%(L/C)~106%(H/C)の範囲であった.比率が90%未満の7例は,全果実中の残留濃度が0.06 mg/kg以下の場合であり,両算出値の差は最小単位0.01 mg/kg以下であった.ビワ果実中の残留データでは圃場間変動などが認められたが,果肉中の不検出値や種子中の実残留値の取り扱いが,ビワ全果実中の残留農薬濃度の算出結果に与える影響は小さいことを確認した.
著者
橋本 博行 池田 達哉 吉光 真人 清田 恭平
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.70-78, 2022-04-25 (Released:2022-06-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

バッター液を調製した調理器具の洗浄後,スポンジたわしに小麦粉が残留することがある.このようなスポンジたわしを洗浄に使用すれば,調理器具間で小麦アレルゲンの二次汚染が懸念される.そこで本研究では,バッター液調理後の洗浄方法として,スポンジたわしによるボウルの洗剤洗浄の条件設定を行って調査を行った.繰り返し試行の結果,バッター液10 gを塗布したボウルから,小麦アレルゲンがスポンジたわしを介して別の未使用ボウルへ陽性率約80%で二次汚染した.洗浄・すすぎ操作後のスポンジたわしにはバッター液由来の残留物が認められ,残留率は20%程度であった.残留状態を詳細に観察したところ,グルテン等のタンパク質がスポンジたわしのセル骨格や骨格間に付着し,そのタンパク質にデンプン粒が付着していた.この状態のスポンジたわしに対してすすぎ条件を追加したが,小麦アレルゲンの完全除去は困難であった.このことから,アレルゲン混入リスクを回避すべきアレルギー対応食等の調理施設では,スポンジたわしは小麦を使用した食品調理器具の洗浄用に専用化することが望ましいと考えられる.
著者
大場 由実 中島 崇行 神田 真軌 林 洋 永野 智恵子 吉川 聡一 松島 陽子 小池 裕 林 もも香 大塚 健治 笹本 剛生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.92-96, 2022-04-25 (Released:2022-06-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1

筆者らが開発したLC-MS/MSによるはちみつ中殺ダニ剤一斉分析法を用いて,2015年4月から2021年3月までに都内に流通していたはちみつについて,残留実態調査を実施した.127検体中,85検体からアミトラズが1.1~34.1 µg/kgの範囲で検出され,3検体からプロパルギットが2.4~3.8 µg/kgの範囲で検出された.いずれの検出事例も食品衛生法における残留基準値または一律基準値未満であった.6年間にわたる本調査の検出結果を解析したところ,アミトラズは毎年高い検出率で推移している.しかし,検出濃度は基準値を上回ることなく変動も小さかったことから,養蜂の現場で適正に使用されていることが示唆された.一方で,プロパルギットは2020年の国産はちみつから初めて定量下限値を超えて検出されており,新しい薬剤として養蜂分野で使用されている可能性が考えられた.
著者
小林 麻紀 高野 伊知郎 田村 康宏 富澤 早苗 立石 恭也 酒井 奈穂子 上條 恭子 井部 明広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.35-40, 2007-04-25 (Released:2008-04-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

1995年4月から2005年3月に東京都内で市販されていた玄米を中心とした国産米および輸入米375検体について残留農薬調査を行った.その結果,国産米では343検体中47検体から,有機リン系,有機塩素系,カルバメート系,ピレスロイド系,含窒素系農薬および総臭素が検出された.輸入米では32検体中18検体からジクロルボスおよび総臭素が検出された.農薬を検出した米について国民栄養調査の食品群別摂取量から農薬の摂取量を算出し,おのおののADIと比較した.算出された農薬の摂取量はADIの17/10,000∼2/5といずれも低く,通常の喫食状況からみて特に問題となるものはなかった.
著者
里見 正隆 山口 敏季 奥積 昌世 藤井 建夫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-34_1, 1995-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
17
被引用文献数
7 9

大腸菌の培養条件 (増殖段階, 培養温度, 培地) 及び加圧条件 (温度, pH, 浸透圧) の変化が加圧耐性に及ぼす影響について検討した. 大腸菌に対する圧力の効果は1,500atm 以上でみられ, 特に, 1,800から2,000atmの加圧で生残率が急激に減少した. 生育時の培地及び酸素の有無と耐圧性の間に相関はみられなかったが, 増殖段階が進むにつれ大きく耐圧性を獲得した. また, 44°培養で得られた菌体の耐圧性は低かった. 加圧時のpHは耐圧性に大きな影響を与えなかったが, 加圧時の温度は44°で生残率が減少した. また, 浸透圧が高いほど生残率が高く, 損傷及び細胞内物質の漏えいも少なかった.
著者
佐藤 洋 町野 諭 藤井 達也 吉田 緑 浅野 哲 横山 央子 美谷島 克宏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.34-42, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
39

残留農薬のリスク評価において,発がん性の評価は人への健康にとって最重要課題の一つである.透明かつ一貫性のある評価のためには評価手法の公表は必要不可欠である.本稿は,残留農薬の海外のリスク評価機関や食品安全委員会の農薬評価書など,公表された評価手法を参考に,リスクアナリシスの原則に則り,農薬の発がん性試験評価の考え方と,評価にあたり留意すべき点を提言するものである.本稿ではげっ歯類を用いた発がん性試験の評価で考慮すべき点を,毒性評価のステップごとにまとめた.構成は,げっ歯類を用いた発がん性試験を評価する目的やこれらの試験の有用性に始まり,発がん性を示唆する根拠や影響を与える因子,げっ歯類の発がん性を評価する際に留意すべき点を挙げた.毒性評価のステップであるハザードの特性評価として,これらの知見を総合し判断すべきげっ歯類の発がん性と人への外挿性の考え方を記載した.さらに次のステップとして用量反応関係から判断すべき発がん性についてまとめた.本稿は毒性評価に主眼をおいたものであるが,発がん性評価の今後の展望と課題についても言及した.
著者
朝倉 敬行 北村 真理子 安本 三穗 竹内 理貴 中里 光男 安田 和男
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-11, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
25

LC-MS/MSを用いた鶏組織およびその加工品中からの7種の抗ウイルス剤(アマンタジン,リマンタジン,アルビドール,ラニナミビル,オセルタミビル,ペラミビル,ザナミビル)の分析法を確立した.試料からメタノール–水(9 : 1)で抽出し,InertSep MAXミニカラム(上側)及びInertSep MCXミニカラム(下側)を連結したタンデム型のミニカラムで精製した後,LC-MS/MSで測定した.鶏組織および鶏卵など6試料に適用した結果,真度77.9~97.5%,併行精度1.7~9.2%の良好な結果が得られた.また,焼き鳥,唐揚げなどの加工品9試料に適用した結果,真度72.6~99.2%,併行精度3.0~11.2%の良好な結果であった.開発した試験法を鶏の組織と鶏卵の12試料および焼き鳥,唐揚げ,サラダチキン,チキンステーキ,チキンカツなど30試料の加工品の実態調査を行ったところ,抗ウイルス剤は検出されなかった.開発した試験法は,鶏組織だけではなく加工品等にも適用できることが確認された.本分析法における定量限界値は,0.01 mg/kgであった.
著者
吉光 真人 内田 耕太郎 小阪田 正和 松井 啓史 上野 亮 藤原 拓也 阿久津 和彦 新矢 将尚
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.43-46, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
3

食品中のアフラトキシン分析法として,平成23年8月16日付け厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知(通知)に基づく分析法が定められている(以下,旧分析法).本研究では,アフラトキシン分析法の操作性と分析性能を向上させるために,イムノアフィニティカラム(IAC)の種類と精製条件の最適化,および旧分析法からIAC精製後の濃縮乾固の操作の省略を検討し,改良法の構築を目的とした.改良法を用いて,9種類の試料にアフラトキシンB1,B2,G1,G2の4種類を2.5 ng/gの濃度で添加して添加回収試験を実施したところ,真度は77.0~99.7%,室内精度および併行精度はそれぞれ,1.7~5.6%,0.9~3.6%となり,通知の目標値を達成した.また,旧分析法と比較して,改良法はアフラトキシン4種類の回収率が4.3~10.5%向上し,前処理時間が約1.5時間短縮された.以上から,改良法は9種類の食品に適用可能で,食品中のアフラトキシン分析法として有用であると考えられた.
著者
千葉 剛 種村 菜奈枝 西島 千陽 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.20-26, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

健康被害が多発したことをうけ,食品衛生法が一部改正され,プエラリア・ミリフィカは「指定成分等」として管理されることとなったが,現在も多くのプエラリア・ミリフィカ含有食品が出回っている.そこで,消費者を対象に「指定成分等」の認知度および「指定成分等」含有食品の利用実態についてインターネット調査を行った.その結果,「指定成分等」の認知度は45.9%であった.「指定成分等」という言葉の印象は,効果がありそう32.7%,身体に良さそう18.9%といい印象を持つ者が多かった.しかしながら,「指定成分等」の説明文を読ませたところ,概ねいい印象が減少し,注意すべき成分である印象が増えていた.また,プエラリア・ミリフィカ含有食品の利用率は4.3%であり,その内,利用が原因と思われる体調不良を経験した者は41.3%であった.本調査において,消費者は指定成分等を正しく認知しているとは言えないことが明らかとなったことから,「指定成分等」に関する情報を提供し,正しく認識してもらう必要があると考えられた.
著者
見上 葉子 高木 優子 宮川 弘之 山嶋 裕季子 坂牧 成恵 小林 千種
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.12-19, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
16
被引用文献数
3

食品添加物であるジブチルヒドロキシトルエン(BHT),ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびtert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)のHPLC分析条件について検討した.内径2.1 mmのカラムを用い,タイムプログラムを使用し各至適蛍光波長に切り替えることにより,25分間で一斉分析が可能となった.蛍光検出をUV検出と併用することにより選択性が向上し,夾雑ピークの影響を大幅に改善できた.また,ガス供給不足に対応するため,GC-MSによる確認法の代替としてLC-MS/MSによる確認法を作成した.さらに,上記3化合物標準溶液の長期安定性について検討した.その結果,0.1%アスコルビン含有メタノールを用い−20℃の条件で,TBHQは約1年間保存が可能となったが,BHT, BHAは著しく減少する場合があった.BHA, BHT混合標準溶液の場合は,メタノール溶液で4℃,BHA, BHT, TBHQ混合標準溶液は0.1%アスコルビン酸含有メタノール溶液で−20℃としたときいずれも約1年間安定であることを確認した.
著者
大門 拓実 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.47-50, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
6

著者らは迅速性,簡便性,汎用性を勘案し,アセトンを用いて抽出後,n-ヘキサンによる脱脂精製,分析種のアセトニトリルへの分配,塩析効果による精製を同時に行うことが可能となる三層分離抽出の原理を応用し,6種の防かび剤迅速分析法の検討を行った.本法は,固相カラムを用いた精製や溶媒の濃縮,転溶操作をせずに試験溶液を調製可能である.妥当性確認の結果,対象とした6種全てにおいて農薬等の妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,迅速的かつ効果的な防かび剤迅速一斉分析法として適用可能であることが考えられる.
著者
関田 寛 武田 明治 内山 充
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.57-63, 1983
被引用文献数
1

多種多様の果実野菜類が世界中で大被害をこうむっているミバエ類に対して, 唯一有効なくん蒸剤であるとして植物検疫上世界各国で使用されているEDBには近年発癌性のあることが判明して以来, 食品衛生上重大な危ぐの念が抱かれるに至った. これを契機として, 著者らはEDBくん蒸後に輸入された生鮮果実類中のEDBの簡便迅速な残留分析法の確立を検討し, あわせて著者らの方法を用いて実態調査を行った.<br>1) EDBは果実類 (可食部) の均一化試料の水混和物から Dean-Stark 蒸留装置を用いて留出し, ヘキサン層に移行させ, ヘキサン層を液相分離用ロ紙を用いてろ過したものをECD付きガスクロマトグラフィーを行うことにより, 簡便かつ迅速に, しかも, 高感度かつ高精度に定性及び定量することができた. 本法におけるEDBの検出限界は0.005ppmであった.<br>2) 今回検討した果実類のうちで, グレープフルーツ以外の全ての果実試料検液のガスクロマトグラム上にそれらの果実成分に由来する大小多様のきょう雑ピークが観察された. これらのきょう雑ピークの除去法を検討したところ, 残留農薬分析に常用されている活性化フロリジルを検液中に直接添加することにより, レモン, オレンジ及びマンゴー試料の場合には, きょう雑ピークのみを完全に除去することができた. この方法により, レモン及びオレンジの場合には, ガスクロマトグラフイーの所要時間を大幅に短縮することができ, マンゴーの場合には, 保持時間が近接しているためにEDBとまぎらわしいきょう雑ピークを除去することができた. しかし, このフロリジル添加法は, パパイヤの成分に由来する検液注入約3時間後に出現する巨大なきょう雑ピークを消失させる効果は, 全く認められなかった.<br>3) 今回の調査結果では,1981年10月に米国から輸入されたレモンから0.045~0.617ppm, ネーブルオレンジから0.042~1.890ppm, 同時期にハワイ州から空輸されたパパイヤから0.084~0.465ppmのEDBが検出された. そしてこれらの一部のものには, 厚生省が定めたEDBの残留許容値 (0.13ppm) を越えるものがあった. 他方, 同時期にメキシコから輸入されたグレープフルーツからは0.040ppm以下の極めて低いEDB残留が認められたに過ぎなかった. また, 1982年3月フィリピンから空輸されたマンゴーからは, EDBは全く検出されなかった.<br>4) 生鮮果実類中に残留するEDBは, その初期濃度が同一でも, 果実の種類, 果実の保管貯蔵場所の室温あるいは通風換気の状況によって, その経時的減衰の動向が大きく異なることが推測された.