著者
才田 祐人 田中 綾 羽山 庸道 曽田 藍子 山根 義久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.437-439, 2007-04-25
被引用文献数
2 2

2ヶ月齢,雄のロングコート・チワワが肺動脈弁狭窄症と診断された.超音波検査における圧較差は158mmHgであった.そこで,経心室的肺動脈弁拡大形成術(Brock法)を試みた.術後,顕著な胸水貯留が認められたが,集中治療により術後5日目にはほとんど認められなくなった.術後2ヶ月目に実施された心カテーテル検査では,施術前と比較して右室収縮期圧の減少が確認されるとともに患畜の一般状態は大幅に改善された.
著者
遠藤 秀紀 九郎丸 正道 林 良博 大迫 誠一郎 松元 光春 西中川 駿 山本 英康 黒澤 弥悦 田中 一栄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.731-733, 1998-06
参考文献数
11
被引用文献数
4 8

徳之島リュウキュウイノシシ(Sus scrofa riukiuanus)の下顎骨7例を計測し, 奄美大島, 加計呂麻島, 沖縄島, 石垣島, 西表島産102例の既存の計測値と比較検討した.島嶼間で下顎サイズの統計学的検定を行うとともに, 主成分分析により, 各集団間の骨計測学的特徴を把握した.徳之島産資料は, 長径および幅径において, 奄美大島産と沖縄島産より有意に大きく, リュウキュウイノシシにおいて従来から提唱されてきたサイズクラインは, 成立していないことが明らかになった.主成分分析の結果, 下顎の大きさと形は, 特に雌で島嶼集団毎に明確に分離された.形の要素として第2主成分得点を見ると, 徳之島集団は沖縄島集団と類似し, その他の集団と区別できることが明らかとなった.今後蓄積される形態学的データを基に, 各島嶼集団における形態変異の適応的意義が検討され, 各集団間の進化学的相互関係が明確になることが期待される.
著者
丸山 総一 平賀 慎也 横山 栄二 直井 昌之 鶴岡 祐二 小倉 吉洋 田村 勝利 灘波 信一 亀山 やすひこ 中村 悟 勝部 泰次
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.997-1000, 1998-09
被引用文献数
11 35

1994年5月から1995年6月にかけて, 神奈川県および埼玉県の7ヵ所の動物病院より採取した総計471検体の飼育猫の血清について, B.henselaeとT.gondiiの感染状況を調査した.さらに, これらの中の無作為に抽出した67頭の猫について, 猫免疫不全ウイルス(FIV)抗体ならびに猫白血病ウイルス(FeLV)抗原の検索を行った.B.henselae抗体価は間接蛍光抗体法で, T.gondii, FIV抗体ならびにFeLV抗原は市販のキットを用いて測定した.調査した猫のうち, 43頭(9.1%)がB.henselaeに対し, 41頭(8.7%)がT.gondiiに対する抗体を保有していた.B.henselaeに対する雄猫の抗体陽性率は12.9%と雌猫の5.2%に比べ有意に高い値を示した(p<0.01).一方、T.gondii抗体陽性率は雄猫の9.1%, 雌猫の8.7%で有意な差は見られなかった.各病院ごとの猫のB.henselae抗体陽性率は0〜19.5%, T.gondii抗体陽性率は4.0〜18.8%であった.B.henselaeおよびT.gondii抗体陽性の猫は1歳以下〜14歳まで見られ, T.gondii抗体陽性率は年齢とともに上昇する傾向が見られた.無作為抽出した67頭の猫血清のうち, 16頭(23.8%)がFIV抗体を6頭(8.9%)がFeLV抗原をそれぞれ保有していたが, これらとB.henselaeの陽性率との間に関連性は認められなかった.
著者
猪熊 壽 大野 耕一 山本 静雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1153-1155, s・vi, 1999-10
被引用文献数
3 35

山口大学家畜病院に来院した犬430頭を対象にEhrlichia canisおよびHepatozoon canis抗体保有状況を調査するとともに,感染に関連する要因(年齢,性,品種,屋外室内飼育,住所)を解析した.E.canisおよびH.canis抗体陽性率はそれぞれ4.7と4.2%であった.両抗体とも性および年齢別の陽性率には差が認められなかったが,高い陽性率を示す市町が存在した.また屋外飼育の犬は室内飼育のものに比べて陽性率が高かった.さらにE.canisではビーグル,ゴールデン・レトリバー,ポインター,またH.canisについては秋田,柴,ビーグル,ポインター,雑種といった品種で陽性率が高い傾向がみられた.
著者
長谷川 晃久 佐藤 文夫 石田 信繁 福島 康敏 向山 明孝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1109-1110, 2000-10-25
被引用文献数
1 51

馬の性判別を迅速に行なう方法としてY染色体性決定領域(SRY)およびアメロゲニン遺伝子(AMEL)を同時増幅する方法を開発した.これによりY染色体の有無とSRY遺伝子の有無を同時に判定することが可能となり, 本法はXY雌馬症例に対して時間と経験を要する細胞遺伝子学的な分析を行なう前の迅速診断法として有効と考えられた.
著者
白井 明志 有嶋 和義 政岡 俊夫 高木 博隆 山本 雅子 江口 保暢 赤堀 文昭
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.413-414, 1994-04-15
被引用文献数
1

ラット胎子動脈管に対するパラコート(PQ)の作用を検索した.PQを25mg/kgの用量で妊娠19〜21日のラットに剖検前3時間に投与した.胎齢19日の午後1時に剖検した胎子では,動脈管の収縮はみられなかったが,胎齢19日の午後4時以降に剖検した胎子では有意な動脈管の収縮がみられた.これらの結果は,PQは胎子動脈管に対して収縮作用をもち,その収縮の臨界期は胎齢19日の前半であることを示すものである.
著者
柳井 徳磨 柵木 利昭 石川 勝行 酒井 洋樹 岩崎 利郎 森友 靖生 後藤 直彰
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.35-40, 1996-01-25
参考文献数
20
被引用文献数
1

食肉検査所で採取した健康なウマの脳に認められたミネラル沈着症の初期像とその形態学的特徴について検討した. 3歳から10歳のウマ20例を検索し, 12例で淡蒼球の血管に種々の程度のミネラル沈着病変を認めた. 3歳では8例中3例に, 4歳以降では12例中9例に病変を認めた. 中等度以上の変化は4歳以降に認められたことから, 加齢との関連が示唆された. 沈着病変の発現形態は大きく2型に分けられた. 毛細血管の周囲における小型球状沈着物; 細動脈, 小動脈および小静脈の血管壁における塊状の沈着物であった. いずれの沈着病変もPAS反応には強陽性, コッサ反応およびベルリン・ブルー染色には弱陽性を示した. 元素分析では多量のアルミニウム, 中等量の燐, 亜鉛, カルシウムおよび鉄, 微量のナトリウムが検出された.
著者
山添 和明 宮本 修治 彦坂 洋子 北川 幸治 渡邊 一弘 酒井 洋樹 工藤 忠明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.611-617, 2007-06-25
参考文献数
35
被引用文献数
1 5

犬の肉球欠損に対する代用物として犬の培養肉球の作成を試み,表皮形態の形成過程の観察に加え,基底膜の構成成分のうち細胞接着分子であるα_6インテグリンと,細胞外マトリクスであるラミニン,4および7型コラーゲンの発現を経時的に検索した.培養肉球表皮は気相下培養5日目において肉眼的に容易に識別される程度の厚さとなったが,7日目には表皮には多くの雛襞が見られ,10および14日目には収縮した.組織学的には気相下培養1日目においてケラチノサイトは4あるいは5層に増加し,基底層への分化が認められた.その後5日目までに顆粒層と厚い角質層がそれぞれ認められ,少なくとも14日目まではその形態は維持された.一方,α_6インテグリンは気相下培養後1日目において真皮-表皮間に元の肉球組織とほぼ同程度の強さで発現した.ラミニンと4型コラーゲンはそれぞれ5および10日目に真皮一表皮間に断続的に発現し,14日目には元の肉球組織とほぼ同様の蛍光強度となった.7型コラーゲンは2日目において真皮-表皮間に断続的に発現したが,14日目時点においても連続性は認められなかった.これより,基底膜におけるアンカリングフィブリルの形成が不完全であると考えられたが,元の肉球組織に類似した犬の培養肉球が作成されたことが示唆された.
著者
TEE Hyang PAKHRIN Bidur BAE Il-Hong SHIN Nam-Shik LEE Su-In YOO Han-Sang KIM Dae-Yong
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.851-852, 2007-08-25
参考文献数
10
被引用文献数
8

Staphylococcus intermediusが分離された腎孟腎炎が4歳,雌のシベリアトラ(Panthera tigris altaica)に診断された.剖検では,左腎孟が大量の化膿性滲出液により拡張していた.顕微鏡的には,腎孟と髄質での病変は,主に多量の変性好中球が混在した壊死巣,少量のリンパ球,形質細胞やマクロファージから構成されていた.細菌学検査では,Sraphylococcus intermediusの存在が確認された.これは野生のネコ科動物でのStahpyococcus inermediusによる腎孟腎炎の初めての報告である.
著者
KIM Kyoo-Tae LEE Seung-Hun KWAK Dongmi
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
The Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1723-1726, 2016
被引用文献数
5

<p>A 4-year-old female Siamese crocodile (<i>Crocodylus siamensis</i>) housed at a zoo died without any prior clinical signs. During necropsy, numerous scattered, well-demarcated, yellowish-white, firm nodules were observed throughout the liver and lungs. Microscopic examination with periodic acid-Schiff staining revealed granulomatous inflammation in the liver and lungs. Liver granulomas were characterized by the presence of a connective tissue barrier and hyphae, and the centers of the granulomas showed signs of necrosis. Lung samples showed characteristics similar to those observed in the liver samples. The fungus was identified as <i>Aspergillus fumigatus</i> based on its appearance on Sabouraud dextrose agar, microscopic examination with lactophenol cotton blue staining and genetic sequencing. Therefore, zoo veterinarians should pay close attention to fungal infections in captive animals.</p>
著者
遠藤 秀紀 日柳 章彦 九郎丸 正道 林 良博 坂本 一則 木村 順平
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.635-640, 1997-08-25
被引用文献数
1 2

シマハイエナ (Hyena hyena) の膵臓の葉区分を肉眼解剖学的に観察し, 膵管と副腎管の走行を検討した. また, 組織学的に外分泌部と膵島の配置を確認し, 免疫組織化学的手法により, 膵島におけるA, B, D, およびPP細胞の分布状態を検討した. 膵臓は胃の大弯付近から十二指腸近傍にかけての間膜に発達していた. 幽門部を境界に鋭く折れるため, 前半部を左葉, 後半部を右葉と判断することができた. 右葉よりさらに後方に, 特徴的な独立した小さな葉が確認され, これを後葉 (caudal lobe) と名付けた. 導管は合計3本確認され, 大十二指腸乳頭近傍に到達するものと, そこからさらに前方に分岐するものを膵管と推定し, 後葉から十二指腸に至る最後部の管を副膵管と定めた. 組織学的には多数の膵島が外分泌部の間に観察された. A細胞およびPP細胞は膵島の辺縁部に限局し, B細胞とD細胞は, 膵島内に偏りなく分布していた. また, 外分泌部に単独で散在するB細胞が観察された. ハイエナ類の膵臓の形態はこれまでに記載されたことがない. 肉眼的には後葉の存在と膵管の分岐が特記された. 組織学的には, B細胞の膵島での均等な分布と外分泌部での散在が, シマハイエナの特徴であるといえる. これらの結果は, 食肉類の中で独特の進化を遂げたハイエナ科における膵臓の形態学的データとして, 今後の比較検討にも用いることができよう.
著者
Sohn H.-J. Kim J.-H. Choi K.-S. Nah J.-J. Joo Y.-S. Jean Y.-H. Ahn S.-W. Kim O.-K. Kim D.-Y. Balachandran A.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.855-858, s・vii, 2002-09-25
被引用文献数
1 101

7歳雄のヘラジカ(Cervus elaphus nelsoni)が体重減少,削痩,過度な流涎,歯軋り,発熱,食欲不振および呼吸困難の症状を3週間呈した後に,安楽殺され,剖検された.このヘラジカは1997年3月9日にカナダから韓国に輸入された.肉眼病変は瀰漫性の線維素性肺炎であった.組織学的には軽度な神経細胞の空胞変性と限局した脳幹部神経核の神経網の海面状変性と広範な星状膠細胞の増生が見られた.プロテアーゼ抵抗性プリオン蛋白質(PrP^<res>)に対する免疫組織化学では全ての脳組織切片で陽性であったが,延髄の閂の切片で最も顕著であった.PrP^<res>は脳および脊髄のウエスタンブロット法でも検出された.本ヘラジカと接触のあった残りのヘラジカおよびシカは淘汰され,慢性消耗性疾患は陰性であった.著者らの知る限りでは,本症例は米国およびカナダ以外の国での最初の症例であった.
著者
上間 匡 池田 靖弘 宮沢 孝幸 林 子恩 鄭 明珠 郭 宗甫 甲斐 知恵子 見上 彪 高橋 英司
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.197-199, 1999-02-25
被引用文献数
2

1998年台湾北部(台北および淡水地区)において, ネコ免疫不全ウイルス(FIV)に対する疫学調査を行った. 調査したネコ32匹の内, 7匹(21.9%)が抗FIV抗体陽性であった. このうち3匹からFIVの分離に成功した. エンベロープ遺伝子のV3-V5領域の塩基配列を決定し, 系統発生の解析を行ったところ, これらの分離株はすべてサブタイプCであることが判明した. 今回の結果と我々の以前の報告(稲田ら, 1997年, Arch. Virol. 142: 1459-1467)から, 台湾北部ではサブタイプCのFIVが流行していると考えられた.
著者
椎橋 孝 奈良崎 孝一郎 吉田 元信 野上 貞雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.327-328, 2004-03-25
被引用文献数
13

熊本県天草地方で害獣駆除のために射殺された野生ニホンイノシシおよび同地域の動物病院に来院した飼育ネコにおけるトキソプラズマ抗体の疫学調査を行った.イノシシにおける陽性率および疑陽性率は1.1% (1/90)および3.3% (3/90)であった.一方,ネコにおいては,陽性率O% (O/50),疑陽性率3.3% (1/50)であった.本地域のトキソプラズマの浸潤状況は比較的低いものであった.
著者
桑村 充 吉田 寛司 山手 丈至 小谷 猛夫 大橋 文人 佐久間 貞重
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.619-621, 1998-05-25
被引用文献数
2 18

A 13-month-old female Newfoundland dog suffered from urinary bladder tumor. Histologically the tumor consisted of round or fusiform cells, occasionally having eosinophilic cytoplasms. Apparent mature rhabdomyoblasts possessing elongated eosinophilic cytoplasm and cross striations were infrequently observed. The tumor cells exhibited immuno-positive for anti-myoglobin, desmin and vimentin antibodies. Ultrastructurally, tumor cells have abundant myofibrils in their cytoplasm and Z bands were also detected. The present tumor was diagnosed as a urinary bladder rhabdomyosarcoma in a Newfoundland dog, which has not been frequently reported in dogs.
著者
大石 英司 北島 崇 中村 久江 松田 知恵子 網本 勝彦 安原 寿雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.421-423, 1997-05-25
被引用文献数
3

Actinobacillus pleuropneumoniae血清型1, 2, および5型菌の培養上清濃縮液にoil-in-water型オイルアジュバントを加えたワクチンを作製し, 野外における効果について検討した. 出荷率は試作ワクチン注射群で91.6%, 市販ワクチン注射群(対照群)で60%であった. 屠殺時の肺病変は, 対照群で重度の充出血, 癒着および結節を認めたのに対し, 試作ワクチン群の病変は軽度であった. さらに, 試作ワクチン注射痕の残留も認められず, 野外における本ワクチンの有効性, 安全性が確認された.
著者
児玉 洋 田倉 中川 剛士
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.405-408, 2007-04-25
被引用文献数
1 19

腐植物質は,腐植土中の有機物が分解されたものであり,かつて有機物や微生物が存在していた広範な土壌環境中に見出される.今回の実験において,コィに腐植土抽出物を経口投与すると,非定型Aeromonas salmonicida実験感染に対する抵抗性が誘導されることを発見した.10%,5%あるいは1%の割合で餌料に混合した抽出物を投与したコィにおいて,死亡率および出血や潰瘍などの皮膚病変形成は顕著に抑制された.10%あるいは5%の割合で投与したコィでは,非投与コィに比べ平均生存日数が有意に延長した.死亡魚の一部から非定型A.salmonicidaが分離されたが,Aeromonas hydrophilaおよびFlavobacteriumも分離され,皮膚病変形成過程で菌種の交代が起きていることを示している.今回の実験結果は,コィへの腐植土抽出物の投与は,A..salmonicida感染症の予防に有効であることを示している.
著者
Salman Mo D.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.761-768, 2003-07-25
被引用文献数
1 25

慢性消耗疾患(CWD)は北米の鹿やオオジカ等の鹿類の動物に見られるプリオン病である。スクレイピーなどの他の伝達性海綿状脳症と異なり,CWDは野生の鹿類の動物やそれらの動物を飼育繁殖した動物にも自然感染を起こすが,羊や牛などの半易獣の家畜に発生した例は報告されていない。本総説では,CWDの歴史,発病機序(病理発生),感受性動物,感染経路,本病の起源に関する考察,野外診断法と室内検査方法,米国およびカナダにおける監視システムと防疫対策,本病の経済に及ぼす影響,食品及び飼料の安全性の問題,人や動物に対するリスクなどを総括的に考察した。いまだ,CWDが人に感染したという証拠は認められていない。
著者
柴田 勲 小野 雅章 森 正史
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.655-658, 2001-06-25
被引用文献数
17

豚流行性下痢(PED)ウイルスに対する高度免疫牛初乳(HCC)の予防効果を子豚を用いた実験感染で検討した.実験1では,中和抗体価512倍のHCCおよび非免疫牛初乳(UCC)を各4頭の2日齢豚に経口投与後,10LD_<50>のPEDウイルスを経口攻撃した.牛初乳は4時間間隔で1日3回投与した.HCC投与グループの半数は下痢を呈した後回復し,全ての豚は生存した.一方,UCC投与豚は全て下痢を示し3頭が死亡した.実験2では,抗体価512,128および32倍のHCCおよびUCCを投与した2日齢豚を同様に経口攻撃した.攻撃後の生存率はそれぞれ100,75,50および0%であった.実験3では512倍のHCCおよびUCCを投与した1日齢豚を攻撃後24,48および72時間後に剖検して病理学的に小腸を調べた.HCC投与豚は臨床症状を示さず,また,小腸上皮細胞内にPEDウイルス抗原が検出されず絨毛の長さも正常であった.一方,UCC投与豚では小腸絨毛の萎縮と上皮細胞内にPEDウイルス抗原が感染後24時間目から認められた.以上の成績から,HCCの豚への経口投与はPEDウイルス感染の予防に効果があり,致死率を下げることが示された.
著者
平尾 秀博 井上 知紀 星 克一郎 小林 正行 島村 俊介 清水 美希 田中 綾 高島 一昭 森 有一 野一色 泰晴 山根 義久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.357-362, 2005-04-25
被引用文献数
2

新型の弁付き導管を犬大動脈弁を用いて作成した.生体代替弁はグルタールアルデヒドとエポキシ化合物(Denacol-EX313/810)により固定した.超極細ポリエステル繊維製人工血管(直径10mm, 全長20mm)を使用した.犬4頭に左心室-大動脈間弁付き導管(AAVC)移植術と大動脈バンディングを行いバイパス群とした.もう4頭にはAAVC移植術は行わず大動脈パンディングのみを行いコントロール群とした.心臓カテーテル検査と心血管造影検査を術後2週間, 6カ月に行い, 血行動態を評価した.左室収縮期圧, 左室拡張終期圧, 左室-大動脈間圧較差それぞれにおいて2群間に有意な差(p<0.01)がみられた.左室心血管造影検査でバイパス群の全頭において弁付き導管の開存が確認された.心臓エコー検査を術前, 術後2, 4, 6カ月に行った.コントロール群では圧負荷による心筋の求心性肥大がみられ, 一方バイパス群では左室の遠心性肥大がみられ, AAVCにより左室圧負荷の軽減が維持されていることが示唆された.