著者
栗原 まな
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.459-460, 2005-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
1
著者
大滝 悦生 山口 洋一郎 塩月 由子 片淵 幸彦 松石 豊次郎 松浦 伸郎 山本 正士
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.502-506, 1987-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
18

単純ヘルペスウイルス1型脳炎 (以下HSV1型脳炎と略す) 罹患後, 著明な精神運動発達遅滞, 両側片麻痺を認め, 8カ月後シリーズ形成する点頭てんかんを発症した1歳4カ月男児を報告した. 病初期の脳波でperiodic sharp wave, CTで左右側頭葉の低吸収域が認められ, 造影剤注入後にはstreak linear enhancementを認めた. 急性期を過ぎた発症後8週のCTでは著明な左右側頭葉, 視床の低吸収域, 第III脳室拡大, 脳皮質萎縮が認められた.髄液でのenzyme-linked immunosorbent assay (以下ELISAと略す) による抗体測定によりHSV1型脳炎と確定した. HSV脳炎は, 局所症状を呈することがよく知られているが点頭てんかんを認めたという報告はわれわれが調べた範囲では見当たらなく極めてまれと考え病巣についても考察を加え報告した.
著者
北 洋輔 小林 朋佳 小池 敏英 小枝 達也 若宮 英司 細川 徹 加我 牧子 稲垣 真澄
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.437-442, 2010 (Released:2015-11-21)
参考文献数
13
被引用文献数
2

全般的知能正常で読み書きにつまずきを持つ小中学生98名 (発達性読み書き障害, すなわちdevelopmental dyslexia (DD) 群24名と非DD群74名) に対して, 読字・書字各15項目からなる臨床症状チェックリスト (以下CL) を適用し, ひらがな音読能力を検討した. 信頼性分析の結果, CL各13項目の妥当性が示され, 音読4課題成績との関連性が認められた. DD群は非DD群より多くの臨床症状を有しており, 音読課題の成績低下も顕著であった. 臨床症状が7つ該当し, 音読課題2つに異常がみられる場合, DD群は感度 (79.7%) と特異度 (79.2%) がバランス良く, 非DD群と弁別された. 以上より, DDの医学的診断における本CLの臨床的有用性が示された.
著者
生田 陽二 伊藤 麻美 森 貴幸 鈴木 洋実 小出 彩香 冨田 直 清水 直樹 三山 佐保子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.283-284, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
9

6歳女児. 発熱・頭痛で発症 (第1病日), 第7病日に傾眠傾向とけいれんが出現し入院. 頭部MRI拡散強調画像では大脳皮質に広範囲の拡散制限を, 脳波では高振幅徐波と全般性あるいは多焦点性の棘徐波複合を認めた. 入院時より下肢間代発作や全身強直発作が群発し, 人工呼吸管理とした. 発作は治療抵抗性で, 第9病日にthiopental (TP) 持続投与を開始したところ, 臨床発作は消失した. TP開始後, 心機能悪化が懸念されたため他の抗てんかん薬を併用してTPの減量を試みた. しかし部分発作が再発し, 脳波も数十秒間連続する多棘波が5~10分間隔で出現する非臨床発作と考えられる所見となり, TP離脱は困難であった. 第24病日に24時間の絶食期間を経てケトン指数3 : 1でケトン食療法を開始したところ, 絶食開始24時間後には背景脳波活動の改善がみられ, ケトン食開始後は速やかに発作と脳波上の棘波が減少した. 第35病日以降, 発作は消失し第42病日にTPを終了した. 以上の経過より, 本症例はTPからの離脱にケトン食療法が有効であった難治頻回部分発作重積型急性脳炎 (AERRPS) と診断した. AERRPSでは抗てんかん薬の大量かつ長期間の経静脈投与を必要とし, 心機能を含めた臓器障害が問題となる. 抗てんかん薬経静脈投与からの離脱困難例においてケトン食療法は選択肢の一つであり, 輸液中の糖質制限が発作抑制に有効である可能性が示唆された.
著者
市山 高志 西河 美希 林 隆 古川 漸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.466-470, 1997-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

急性脳炎において, 局所の免疫・炎症病態を検討するため, 急性期の髄液中のinter-Ieukin-1β (IL-1β), IL-6, tumor necrosis factor-α (TNF-α), soluble TNF receptor1 (sTNF-R1) をsandwich enzyme-linked immunoassay法で測定した.対象は急性脳炎の24名で, 神経学的後遺症の有無により予後不良群9名, 予後良好群15名に分けて検討した.IL-1β, IL-6, TNF-α, sTNF-R1とも対照群 (23名) に比して予後不良群, 予後良好群とも有意に高値を示した.またsTNF-R1は予後不良群が予後良好群より有意に高値を示した.以上からIL-1β, IL-6, TNF-αは急性脳炎の炎症・免疫病態に関与しており, また急性期の髄液中sTNF-R1値は神経学的予後を推測しうる指標になると考えた.
著者
市山 高志 松藤 博紀 末永 尚子 西河 美希 林 隆 古川 漸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.493-497, 2005-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
19
被引用文献数
4

軽症胃腸炎関連けいれんに対するcarbamazepine (CBZ) の有用性を検討した.対象は当科に入院した軽症胃腸炎関連けいれん16例 (男6例, 女10例, 9カ月~3歳, 平均1.7歳).方法は確定診断後ただちにCBZ5mg/kg/回を1日1回の内服を開始し, 下痢が治癒するまで継続投与した.CBZ投与前に16例中13例はdiazepam製剤を, 1例はdiazepam+phenobarbitalを単回あるいは複数回投与されていたが, けいれんは再発していた.CBZ投与前のけいれん回数は2~8回 (平均4.1回) だった.CBZ投与後15例にけいれんの再発はなかった.1例で15分後に1回のけいれんがみられた.CBZ投与期間は2~9日 (平均6.4日) で, CBZ投与は軽症胃腸炎関連けいれんに対し著効した.
著者
青木 久夫
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.298-306, 1976-07-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
22

知能障害児1, 325名, 知能正常児4, 852名につきシスチン尿症の頻度を調べた結果・本症が有意の差を以って知能障害児に高い傾向が見出された.さらにこれらシスチン尿症患者に経口的リジン負荷テストを行ないリジン吸収能を調べた結果, 知能障害を伴う本症患者では腸管におけるリジン吸収能の低下を示す例が多く認められた.これらの知見により, 本症患者ではリジンの輸送機構の障害, 特に腸管吸収不全という遺伝的障害があり, それに脳発達の旺盛な乳幼児期の栄養条件が加わって知能障害に陥る頻度が高くなるものと推測された.
著者
田中 学 浜野 晋一郎 今井 祐之 奈良 隆寛
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.269-275, 1999-05-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

滑脳症I型は無脳回と厚脳回が混在する型の脳皮質形成異常である.本症の乳児例を5例経験し, 頭部CT所見に基づいた形態学的な重症度分類を用いて, てんかん発症当時の発作間欠時脳波, 発作型および臨床症状を検討した.てんかんの発症は生後2カ月から4カ月で, 広汎性無脳回の症例は全身強直発作で発症し, 厚脳回の混在する例では, 部分発作やtonic spasmsで発症した.全例とも発作はその後tonic spasmsに移行した.頭部CTにおいて脳表に占める厚脳回の比率が増すほど, 脳波では無脳回の症例に多いα波よりも高振幅δ波が優位になる傾向がみられた.その他に全例を通して多焦点性の高振幅徐波, 棘波や鋭波がみられた.これらは厚脳回の形成が不規則であることの影響と考えられ, 画像所見との相関が示唆された.
著者
下澤 伸行
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.128-133, 1998-03-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
16

ペルオキシソームの形成や代謝機構に異常を来す遺伝病のうちZellweger症候群に代表されるペルオキシソーム欠損症とX-linked adrenoleukodystrophy (ALD) について解説する. 前者は哺乳動物細胞や酵母を疾患モデルとしてその病因遺伝子が次々に解明された点で特筆すべき遺伝病であり, 後者はポジショナルクローニングにより遺伝子異常は解明されたもののALD蛋白の機能から脱髄の発症機序, 遺伝子変異と臨床型の不一致から治療に至るまで解決すべき多くの問題を抱えた遺伝病として注目される. 今後, 両者の重症度や発症を規定する新たな因子がモデルマウス等により解明され, より有効な治療法の開発に結びついていくことが期待される.
著者
諸岡 啓一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.131-138, 2005-03-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
23
被引用文献数
1

言語獲得の理論には生得説と経験説がある.言葉の遅れを評価する上で重要なのは, 音声の産出 (発語) と理解 (言語理解) の2つの側面に加えて, 非言語的手がかりとして対人関係を評価することである.遅れありとするには発語の遅れ以外に絵カードや指示の理解など言語理解も含めて遅れがあるか否かを判断すべきである.幼児期に精神・言語発達を評価するには新版K式発達検査法が適しているが, 遠城寺式乳幼児分析的発達検査法は簡便でかつ発達領域の適切な評価ができるので有用である.テレビ視聴の時間が長いと言語遅滞や精神発達障害を来すという意見もあるが, 明らかな精神発達障害を呈するとは考えにくい.東京都大田区での筆者らの調査では, 言語遅滞で頻度が最も高いものは発達性言語障害で, 1歳6カ月児健診では4.3%であった.ことばの遅れを来す疾患には発達性言語障害, 精神遅滞, 自閉症などがある.自閉症を的確に診断するにはチェックリストが有用である.発達性言語障害の診断基準はいくつかあり, 混乱している.この診断基準を提示した.
著者
松尾 雅文
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.92-95, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Duchenne型筋ジストロフィー (DMD) は男児3,500人に1人が発症する最も頻度の高い遺伝性進行性筋萎縮症である. DMDはジストロフィン遺伝子の異常に起因する筋肉のジストロフィン欠損を特徴とする. 多くのDMDでは, このジストロフィン欠損はジストロフィン遺伝子のエクソン単位の欠失の異常によりジストロフィンmRNAのアミノ酸読み取り枠にずれを生じ (アウトオブフレーム), mRNA上にストップコドンが新たに出現し, ジストロフィン合成が翻訳の途中で停止してしまうために生じる. また, 1部のDMDではジストロフィン遺伝子の1塩基置換のためにナンセンス変異を生じ, ジストロフィンの合成が停止し, そのためにジストロフィンが欠損する.  現在DMDの治療としてジストロフィン遺伝子のエクソン欠失に対してはエクソンスキッピング誘導治療が, ナンセンス変異に対してはリボソーマルリードスルー誘導治療が提唱されている. ここではDMDの治療の最近の動きについて紹介する.
著者
吉岡 博
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.317-327, 1983-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
50

新生仔期の低酸素症がその後の脳組織発達におよぼす影響を3H-チミジンオートラジオグラフィーにより細胞増殖動態面から検討した.実験ではJcl: ICR系生後2日目の哺乳マウスに30分間無酸素負荷を行い, 生存マウスを低酸素群とし, 無処置同胞マウスを対照群とした.低酸素群の体重・体長は生後20日目までは増加が不良で対照群に比し有意に低値を示したが, その後は回復し有意差はなくなった. 脳重量も生後10日目では対照群に比べ11%減少していたが, 生後20日目には有意差はなくなった.負荷直後の低酸素群マウスの視床・小脳には神経細胞の変性が存在した. 低酸素群の分裂指数や標識率は, 生後5日目までは対照群より下まわっていたが, 7日目および10日目では対照群より高値をとり, 15日目以後には両群ほぼ等しくなった生後2日目の低酸素群小脳外顆粒層細胞の世代時間は対照群に比べ約2時間延長したが, それは主としてG2期の延長によるものであった. 一方, 生後7日目では低酸素群のそれは対照群に比し約2時間短縮しており, G1期の短縮がその主因であった.以上より, 細胞増殖動態の面で, 生後2日目における30分間の低酸素負荷がおよそ5日目まで抑制をもたらすこと, その後はcatch up現象が生ずること, そしてその抑制と回復は別の機構により行われることが示唆された.
著者
吉岡 誠一郎 須貝 研司 富士川 善直 小牧 宏文 中川 栄二 佐々木 征行
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.432-435, 2007-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
9

乳児期に部分皮質形成異常と診断されていたが, 経過中に片側巨脳症に進展した難治性てんかん男児例を報告した.患児は4カ月時に難治性てんかんを発症し, 発達は退行した.4カ月時の頭部MRI検査では, 右前頭葉弁蓋部周囲の部分皮質形成異常と診断された.この皮質形成異常部位は徐々に肥厚, 拡大し, 5年後には右大脳皮質のほとんどを占め, 右半球全体も大きくなり, 片側巨脳症と診断した.最重度精神運動発達遅滞を呈し, てんかん発作のコントロールは困難であった.FDG-PET, 脳血流SPECTでは片側巨脳症側の糖代謝低下と発作時脳血流量増加を認めた.進行性腫大を呈した片側巨脳症の報告は今までになく, 片側巨脳症の病態生理を考察する上で重要な症例である.
著者
佐久間 啓
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.110-114, 2013 (Released:2014-10-11)
参考文献数
26
被引用文献数
4

難治頻回部分発作重積型急性脳炎 (acute encephalitis with refractory, repetitive partial seizures; AERRPS) は1986年に粟屋らにより報告され, 発熱に伴い顔面を中心とする持続の短い部分発作の頻発が特徴である. けいれんは極めて難治で遷延し, 難治てんかんと知能障害を残し予後不良である. 近年類似の疾患概念febrile infection-related epilepsy syndrome (FIRES) が提唱された. AERRPSの原因は不明だが, イオンチャネル遺伝子の異常や抗神経抗体との関連が示唆されている. 脳波上の周期性放電やMRIでの前障病変を認める例がある. 治療として主に高用量バルビタール酸が用いられているが弊害も指摘されている.
著者
疋田 敏之
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.125-128, 2012 (Released:2014-12-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

小児周期性症候群は国際頭痛分類第2版で片頭痛に分類されている. その中に周期性嘔吐症 (CV), 腹部片頭痛 (AM), 小児良性発作性めまい (BPV) が含まれる. いずれの疾患も診断の決め手となる検査はなく, 臨床経過と発作の特徴および器質的疾患の否定後に診断される. CVの頻度は白人で2%との報告があり, 国内の報告も多い. 海外の報告でAMはありふれた疾患とされ, AMの有病率は1~4%との報告がある. BPVは海外の報告によると学童での有病率は2.6%である. しかし, AMもBPVも国内での報告は少ない. もし, 概念が浸透していないために診断されていないのであれば, 適切に診療される例が増えることを願う.
著者
宇野 彰 加我 牧子 稲垣 真澄
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.395-400, 1995-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
17
被引用文献数
12

漢字書字に特異的障害をもつ学習障害児の1例について報告した. 本症例は13歳で, WISC-RにてVIQ114, PIQ100と全般的知能は正常であったが, 漢字書字に関しては小学1, 2年生レベルの単語のうち35%しか書けなかった. 認知心理学的には本症例の, 漢字失書の障害機序は字形の想起障害と思われた. また, 複雑図形の記憶再生課題の正答率の低下も認められたことから, 漢字と複雑図形の形態想起障害の神経心理学的基盤は共通である可能性が考えられた. このような症状は, 成人での側頭葉後下部損傷によって生じる漢字の純粋失書例の症状と類似しており, 本症例の責任病巣は側頭葉後下部であると推定した.
著者
温井 めぐみ 九鬼 一郎 木村 志保子 服部 妙香 井上 岳司 岡崎 伸 川脇 壽 富和 清隆
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.5-9, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
14

Septo-optic-dysplasia (SOD) は視神経低形成, 視床下部性の下垂体機能低下症, 中枢神経系の正中構造異常を3徴とし, 2徴以上を満たす例を本症とする. 今回我々はSOD患児10例について画像的検討を行った.  両側に視神経低形成を認めたのは6例で, 中枢神経系の正中部構造異常を認めた. 片側に認めたのは4例で, 同側または両側に皮質形成異常を認めた. これはSODの成因として血管破綻説を支持する所見と考えた.  皮質形成異常を認めた4例中3例に99mTc HM-PAO SPECT, 123I iomazenil SPECTを実施し, 正常皮質と同等の集積を認めた. てんかん原性となりうる皮質形成異常では発作間欠期にはどちらも低集積となることが多く, SODに合併する皮質形成異常でてんかん発症率が低いこととの関連が推測された.
著者
犬童 康弘
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.173-180, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
25

神経成長因子 (nerve growth factor ; NGF) は, ニューロンの生存・維持にはたらく神経栄養因子のひとつである. 先天性無痛無汗症 (congenital insensitivity to pain with anhidrosis ; CIPA) の原因は, チロシンキナーゼ型神経成長因子受容体遺伝子NTRK1の機能喪失性変異である. この結果, 患者ではNGF依存性一次求心性ニューロンと交感神経節後ニューロンが欠損する. NGF依存性一次求心性ニューロンは, 温覚・痛覚だけでなく種々の刺激に反応するポリモーダル受容器で, 身体の内部で起こる変化をモニターする内感覚 (interoception) に必要不可欠な役割をはたす. また, アレルギー性炎症を含む種々の炎症にも関与する. さらに, 交感神経節後ニューロンとともに, 脳・免疫・内分泌系との相互作用を介して, 恒常性維持や情動反応にも関与する. 痛みは情動と密接に関連し, 情動は交感神経の活動による身体反応を伴うことが特徴である. 私たちが日常的に抱いているネガティブな印象に反して, 情動はヒトの意思決定や理性的な判断に大きな役割をはたすという「ソマティック・マーカー仮説」が, Damasioにより提唱されている. この仮説によると情動が起こるためには, まず脳と身体の相互作用が起こることが必要である. 本論文では, CIPAの病態をもとにNGF依存性ニューロンが恒常性維持と情動反応の神経ネットワークを形成すること, またこの神経ネットワークが脳と身体の相互作用に必須な役割をはたしていることを紹介する.