著者
小枝 達也 内山 仁志 関 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.384-388, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
16

通常学級に在籍する小学1年生69名 (男/女=33/36) に実施した単文音読検査によって発見されたディスレクシア児に対して, 2段階方式の音読指導を行った. はじめに文字の解読が容易にできるようになることに力点を置いた解読指導を行い, 次に単語形体の認識を高めるための語彙指導を実施した. その結果, 解読指導は誤読数の減少に, 語彙指導は音読時間の短縮に効果があることが示唆された.
著者
山内 秀雄 野田 泰子 須貝 研司 高嶋 幸男 黒川 徹
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.492-496, 1991-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

前頭葉起源の自動症を呈する2例を報告した.共通した自動症の臨床的特徴は,(1) 開始, 終了が突然である,(2) 発作時間が短い,(3) 動作停止ないし凝視期がない,(4) 腹臥位になり四肢および体幹を激しく不規則に動かす, うなり声ないし悲鳴様の大きな発声を伴うあるいは急に走りだすことがある,(5) 群発する傾向をもつ,(6) 発作時に意識が保たれていることがあり, 発作直後より意識は清明である,(7) 難治性である,(8) 偽性てんかんと誤診されやすい, などであった.自動症時の脳波は激しい運動活動のためartifactのみしか捉えられなかった.自動症開始直前に前頭部, 前頭極部の低振幅律動性速波を認め, また直後の脳波所見は覚醒閉眼時で両側前頭部, 前頭極部に高振幅徐波を認め, 同時に後頭部を中心にα波を認めた.これらの脳波所見は発作の中心が両側前頭葉に限局し, 他の部位に波及しなかったことを示唆するものと考えられた.
著者
鷲見 聡
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.220-224, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
14

自閉症心因論などの間違った環境要因説の影響により, 発達障害 (神経発達症群) と環境要因に関する議論が停滞してきた. しかし, 発達障害児を含むすべての小児にとって環境要因は重要であり, 科学的視点からの検討が必要である. 10年程前に「メディア視聴による言葉遅れ」が議論され, 日本小児神経学会などが提言を発表した. その後, 夜更かし型の生活, 外遊びの減少など様々な生活習慣が変化してきた. それらの変化が発達障害児により深刻な影響を与えている可能性もあるが, それに関する科学的データは得られていない. 現時点では発達障害児に限定して考えるのではなく, すべての小児を対象に適切な生活環境作りに努めるべきと思われる.
著者
親里 嘉展 中川 温子 西山 敦史 足立 昌夫
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.323-325, 2013 (Released:2014-10-11)
参考文献数
9

乳児期に小児交互性片麻痺と診断した7歳男児, 寝返り以上の粗大運動は不能で言語も獲得していない. てんかんを合併し, 4歳半以降は片麻痺発作に嚥下障害を伴うようになり重症な経過を辿っていた. Flunarizine hydrochlorideと抗てんかん薬による治療では効果は乏しく, 重度の片麻痺発作やてんかん発作に対してはdiazepam坐薬で対応していた. 検査入院時に嚥下障害を伴う片麻痺発作を呈していたが, 五苓散を投与したところ短時間で症状は消失した. その後も五苓散の使用を継続したところ, 片麻痺発作短縮と回数減少, 発作時の嚥下障害の消失といった発作の軽症化を認めた. 本症例には五苓散が有効であり, 五苓散が小児交互性片麻痺の治療薬の1つとなる可能性が示唆された.
著者
藤野 秀策 深井 博志 梅田 昭正 梶谷 喬 藤原 順子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.321-325, 1976-07-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
9

才女児の頭蓋内腫瘍の一例.頭蓋内雑音を両側眼瞼上と側頭部に聴取し, 心音図に記録した.雑音は患総側頸動脈圧迫により減少した.腫瘍は左中心領野を広範に占めるEpendymoblastomaで, 亜全別 (2009) のあと雑音は消失した.われわれの症例では頭蓋内雑音を発生し易い次のような特徴的所見を呈していた. (1) 太い少なくとも3本の導入動脈がみられ, (2) 脳表に存在し, (3) 開頭術中にredveinを認めたこと.頭蓋内雑音に関しての文献的考察を加え, 頭蓋内雑音の意義と病態生理について述べ, 頭蓋聴診の重要性を強調した.
著者
瀬川 昌也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.170-180, 1989-03-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
76
被引用文献数
1

自閉症の睡眠・覚醒リズム障害の特徴から, 縫線核群の早期の障害が自閉症の主病因と考え神経回路を検索した.縫線核 (Rph) 群は脳幹, 橋の背側正中部に位置し, やや外側に位置する青斑核 (LC) 群とともに, 上位中枢に広汎かつ並列的に軸索を送り, おのおのの機能の制御に重要な役割をもつ.また, 黒質線条体および背側被蓋ドーパミン (DA) 神経系に抑制性支配をなし, また下行枝は脊髄運動系, 感覚系の調整に重要な役割を有している.Rph, LCとも乳児期早期に発達の臨界齢をもち, また, Rphは男性に易障害性が高い.Rphの早期障害は, LCの障害を伴い, 社会性の欠如, 同一性の保持, 優れた機械的記憶, 睡眠・覚醒リズム障害を, DA系の障害は幼児期初期より出現する多動, 常同運動をもたらし, パニックには, RphとLCに加えDA系神経系の異常が加わった状態として説明できる.反響言語は右半球優位の表現であり, これも早期のRph, LCの障害に起因する左右大脳半球の機能分化障害によると考えられる.利き手決定の遅れ, 人称の逆転も同様の機序による.乳児期の筋緊張低下, 這行障害はRphとLC下行枝の異常によるlocomotionの障害, 幼児期の上下肢協調運動障害は前頭葉徴候の存在とともにこれら神経核障害による前頭葉の機能障害が関与すると考えられる.この考えはこれらの症状に, 5-hydroxytryptophanおよび微量のL-dopaがそれぞれ奏効することから支持される.前者は幼児期早期でより有効, 後者は0.5mg/kg/dayの少量投与が有効であったことは, Rphの障害は早期に治療する必要性が, DA系障害は後シナプス過敏症による可能性が示唆された.
著者
杉山 直子 杉江 秀夫 五十嵐 良雄 伊藤 政孝 福田 冬季子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.51-55, 1998-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

小児自閉症の一部において, 脳内セロトニン, カテコラミンの低下がありうるという仮説に基づき, 自閉症児に対しカテコラミンの前駆物質である1-dopa少量投与を行い, 症状改善の有無をcross-over designによる二重盲検試験により検討した.Cross-over analysisでは順序効果, 時期による効果, 薬剤効果を検討したが, 薬剤の有効性は認められなかった.しかし症例によっては, 一部症状の改善の認められた例が20%あった.
著者
小野 浩明 高橋 幸利
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.58-60, 2010 (Released:2016-05-11)
参考文献数
10

インフルエンザ脳症では情動異常や行動異常などの側頭葉辺縁系症状が前駆症状として出現することがある. しかし, インフルエンザ罹患に伴う辺縁系脳炎自体の報告例は稀である. 今回, インフルエンザ感染を契機に情動障害, 異常行動を呈した12歳女児例を経験した. 症状が遷延したためステロイドパルス療法を施行し, 以後軽快した. 頭部MRIでは異常を認めなかったが, 脳血流検査において側頭葉辺縁系の血流増加と髄液中抗グルタミン酸受容体抗体陽性を示したことから本例を辺縁系脳炎と診断した. インフルエンザで異常行動が遷延する場合は辺縁系脳炎の可能性も考慮し, 自己抗体の検索, ステロイドを含めた治療法の選択を検討するべきかと思われた.
著者
伊予田 邦昭 粟屋 豊 松石 豊次郎 永井 利三郎 田辺 卓也 栗原 まな 山本 克哉 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.456-458, 2007-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
6

難治なけいれん発作をもつ小児に対する予防接種基準最終案を検証するため, 全国多施設共同で予防接種後健康状況調査を施行した (112例, 229件, 回答率:52.4%).1)観察期間: 日・週単位群で1カ月, 月単位群で2~3カ月程度, 重積症後では, 各々1~3カ月, 3~6カ月程度. 2)接種後1カ月以内の副反応: 身体面は17件 (7.5%; 1件以外すべて発熱), 50%以上発作が増悪した例はわずか4件 (1.7%; 麻疹・インフルエンザ各2件), 計21件 (9.2%) で, すべて外来対応が可能であった. 3)自然罹患入院例: 麻疹2/5例, インフルエンザ3/7例でけいれん重積を合併した. 以上より各種予防接種は安全に実施されており, 主治医(接種医)が“適切”な時期に個別接種を行う本基準案は妥当と考えられる.
著者
児玉 浩子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.5-9, 2014

&emsp;経腸栄養剤や特殊ミルク・治療用ミルクには, いくつかの必須栄養素がほとんど含まれていないものがある. 主なものとしては, エンシュア・リキッド<sup>&reg;</sup>にはカルニチン, セレン, ヨウ素 ; エレンタール<sup>&reg;</sup>にはカルニチン, セレン ; ラコール<sup>&reg;</sup>にはカルニチン, ヨウ素 ; 牛乳アレルゲン除去ミルク・乳糖除去ミルク・MCTミルク・ケトンフォーミュラ・先天性代謝異常症用ミルクなどにはビオチン, カルニチン, セレン, ヨウ素がほとんど含まれていない. これらを単独で使用すると, 含有量の少ない栄養素の欠乏をきたすおそれがある. これら栄養剤・ミルクを単独で使用する場合は, 欠乏症に注意し, 必要に応じて補充することが大切である.
著者
遠藤 千恵 三宅 進
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.442-444, 2001-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

痙攣頻発治療のため静注したphenytoinにより血栓性静脈炎を伴った重篤なpurple glove syndrome (PGS) を生じた1例について報告した.本症例ではphenytoinによる広範な血管内皮細胞障害に加え, 赤血球増多, 肥満といった血流をうっ滞させる因子が加わり病変の一部に血栓性静脈炎が生じ, より重篤となったと考えられた.
著者
大野 耕策
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.92-102, 2010 (Released:2016-05-11)
参考文献数
47

Niemann-Pick病C型 (NPC) は小児期の神経変性を特徴とするまれな疾患である. 約20年間この疾患の研究に細々とかかわってきた. この間, NPCの遺伝子, 蓄積脂質, 神経病理, 細胞機能異常などの解明や治療法の開発に大きな進歩があった. 会長講演では, 鳥取大学とその共同研究グループが行った研究成果を中心に報告した.  これまで, 全く治療法がない疾患であったが, ここ数年, 蓄積脂質を減少させ, 神経症状を改善し, モデルマウスの寿命を延長させる複数の方法が開発された. 2009年, 欧米ではmiglustatがNiemann-Pick病の神経症状に有効な薬剤として承認され, 米ではシクロデキストリンが一部の患者さんにFDAから「人道的使用」として使用が承認されている. 日本でも早期に厚生労働省の承認が得られるような努力が求められている.
著者
井之上 寿美 河野 芳美 河野 千佳 白木 恭子 塩田 睦記 雨宮 馨 中村 由紀子 杉浦 信子 小沢 愉理 北 洋輔 小沢 浩
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.356-358, 2022 (Released:2022-10-13)
参考文献数
10

神経発達症児の血清亜鉛値について健常児の参照値と比較検討した.血清亜鉛値を測定した学齢期の神経発達症児63名(男児49名,女児14名)を患者群とし,先行研究において年齢分布が一致する380名の健常児のデータを用いて解析を行った.その結果,患者群のうち19名(30%)が亜鉛欠乏症,また39名(62%)が潜在性亜鉛欠乏,亜鉛値正常は5名(8%)であり,血清亜鉛値は健常児の参照値と比較して有意に低値であった(p<0.001).患者群の診断内訳では,ADHD(36名,54%)と自閉スペクトラム症(22名,39%)の2疾患が大部分を占めたものの,血清亜鉛値は疾患間で有意な差はなく(p=0.32),性差も認められなかった(p=0.95).神経発達症児は亜鉛欠乏傾向にあると考えられ,疾患や性別による血清亜鉛値の明らかな違いはなかった.
著者
高見 勇一 佐竹 恵理子 伴 紘文
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.427-432, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
16

【目的】小児の初回無熱性発作の再発率を検討する. 【方法】2008年11月1日から2012年10月31日までに初回無熱性発作があった生後1カ月以上16歳未満の250例を無治療で前方視的に観察した. 再発率はKaplan-Meier法を用いて計算し, 再発リスク因子の単変量解析はCox proportional hazards modelを用いた. 【結果】135例 (54%) が再発した. 再発例のうち, 37例 (27%) が1カ月以内, 71例 (53%) が3カ月以内, 95例 (70%) が6カ月以内, 118例 (87%) は1年以内に再発していた. 初回発作後の再発率は, 0.5年, 1年, 2年, 5年でそれぞれ38%, 47%, 54%, 58%であった. 再発リスク因子では, 症候性, てんかん性脳波異常, 8歳以上, 部分発作の熱性けいれん既往で再発率が高かった. 【結論】原則的に初回発作で抗てんかん薬治療を開始すべきではないが, 再発率や再発リスクを考慮することは重要である.
著者
金澤 治 白根 聖子 早川 さゆり
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.424-429, 2000-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6

Shuddering attacks (SA, 身震い発作) は乳幼児期に発症する稀な良性疾患といわれ, てんかんとの鑑別を要する.発作は意識消失のない何秒間かの身震いで日単位で反復する.Essential tremor (ET, 本態性振戦) と同様の発現機序といわれ脳の未熟性による表現様式の違いとされるが, 報告は稀で本邦では皆無である.SAを呈する生後8~14カ月の乳幼児4例で, ビデオないしビデオ・脳波同時記録で発作時をとらえ病態を検討した.1例でSAに同期した筋電図より, ETの周波数とほぼ一致した.全例で発作減少ないし消失をみたが, MRI上脳の未熟性, トルコ鞍扁平, てんかんの家族歴, のある例もあった.従来SAは良性疾患で検索不要といわれるが, 神経系発達に関連した何らかの問題が潜む可能性がある.
著者
住友 典子 石山 昭彦 竹下 絵里 本橋 裕子 齊藤 祐子 小牧 宏文 佐々木 征行
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.303-308, 2019 (Released:2019-10-26)
参考文献数
15

【目的】慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー (chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy; CIDP) の臨床的特徴を後方視的に再考し, 診断の要点を探る. 【方法・対象】2か月以上進行する末梢神経障害で, 電気生理学的もしくは神経病理所見から脱髄を認め, CIDPと確定診断しえた8小児例を対象とした. 診療録より調査し, 障害部位から典型例, 遠位型 (distal acquired demyelinating symmetric; DADS) と非対称型 (multifocal acquired demyelinating sensory and motor; MADSAM) に分け臨床症状, 検査所見, 治療反応性を検討した. 【結果】典型例4例, 非典型例4例 (DADS 3例, MADSAM 1例). 全例で電気生理学的に脱髄所見が確認され, 3例では節性脱髄を認めた. 非典型例2例は髄液蛋白細胞解離と神経根腫大を共に認めなかった. 非典型例では, 典型例に比べ診断に時間がかかり (p=0.029), 遺伝性ニューロパチーとの鑑別に病理検査が有用であった. 治療反応性は全典型例, 非典型2例において免疫修飾治療により症状寛解を認めた. 【結論】小児の緩徐進行性の末梢神経障害ではCIDPの非典型例も鑑別に挙げ, その診断には電気生理学的な節性脱髄所見や病理所見が有用である.
著者
奥村 彰久
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.159-161, 2019 (Released:2019-05-08)
参考文献数
2

小児急性脳症診療ガイドラインは, エビデンスに基づいて策定された. 冒頭に診療フローチャートが提示されており, 実際の臨床の流れに沿ってガイドラインを参照できるように工夫されている. 小児急性脳症におけるエビデンスが確立している項目は多くなく, 高い推奨度を持つ項目は限られている. 特に現時点でエビデンスが確立した治療法は少ない. ガイドラインは改訂を行うことが求められるが, ガイドラインをより良いものにするには小児の急性脳症に対する研究が進展し, 学術論文として報告されることが必要である.
著者
安部 昌宏 前田 泰宏 本田 隆文 安川 久美 武藤 順子 髙梨 潤一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.275-278, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
10

臨床経過および特徴的なMRI所見から可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症 (clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion; MERS) と診断した2症例に対し, 急性期および回復期に脳梁膨大部をMR spectroscopyにて解析した. 2例ともにcholine/creatine比が回復期に比して急性期に高値となり, 髄鞘代謝に何らかの変化が生じていることが示された. みかけの拡散係数の低下が一過性であることと合わせ, MERSの病態として髄鞘浮腫が示唆された.
著者
長澤 哲郎 木村 育美 阿部 裕一 岡 明
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.295-298, 2006-07-01 (Released:2011-12-15)
参考文献数
12

ヒトヘルペスウイルス6型 (HHV-6) による脳炎・脳症のうち, 解熱・発疹期に短時間のけいれんが群発する症例の報告が散見される. 今回,この「けいれん群発型HHV-6脳症」において,急性期にsingle photon emission computed tomography (SPECT) にて患側の脳血流量増加が示された.これまで, けいれん群発型HHV-6脳症におけるSPECTでは全例で脳血流量の低下が報告されているが, いずれも慢性期に測定されていた. 本症例では,けいれん群発当日に患側大脳半球で血流量増加が認められた. けいれん群発型HHV-6脳症は予後不良例も報告されており, 今回はじめて血流量増加が確認されたことは, この脳症の病態解明と治療を検討する上で意義があると考えられた.