著者
小枝 達也 汐田 まどか 赤星 進二郎 竹下 研三
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.461-465, 1995-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

We followed children with the risk factors for learning disability (LD) at the three year-old screening prospectively. The five risk factors were speech delay, hyperkinesia, delayed social skill, delayed comparative conception (big and small, long and short) and mutistic behaviour. We evaluated seventeen elementary school children using WISC-R and the Pupil Rating Scale Revised. Six of them were diagnosed as normal, six were learning-disabled, and five were mentally retarded children. We proposed that the screening of LD at three years by the risk factors were effective but only partially.
著者
前田 知己
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.141-146, 2020 (Released:2020-06-30)
参考文献数
36

脳性麻痺の早期介入・支援に向けて, 早期診断の重要性が増している. 乳児期早期に行える脳性麻痺の予測に有用な神経学的評価の文献をレビューすると, general movements (GMs) 評価が最も多く報告されている. 本稿では, 月齢3〜4までの新生児期・乳児期早期に実施できる発達評価法について紹介し, GMs評価法について詳述する. 脳性麻痺の予測には予定日から3〜4か月時のfidgety運動の欠如が最も重要な所見である. GMsに関する知識は小児神経医にとって重要であるが, 本邦ではGMsの評価者が少なく評価能力の研修, 維持が困難なことが普及への課題である.
著者
堀野 朝子 塩見 正司 井上 岳司 温井 めぐみ 九鬼 一郎 岡崎 伸 川脇 壽 天羽 清子 外川 正生
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.275-280, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
15

【目的】小児の抗N-methyl-D-aspartic acid receptor脳炎 (以下抗NMDA受容体脳炎) 6例の臨床像と予後を検討する. 【方法】本脳炎の特徴的な臨床経過を有した症例を後方視的に検討した. 【結果】該当症例は男2例女4例, 年齢は13~16歳, 抗NMDA受容体抗体陰性例が1例含まれた. 女子全例で卵巣腫瘍を認め, 急性期以後の検出が3例, 増大例が1例存在した. 側頭葉病変を認めた1例で高次脳機能障害とてんかんが, 小脳病変を認めた1例で軽度知的障害の後遺症がみられた. 【結論】頭部MRIで異常を認めた2例は後遺症を有した. 腹部MRIによる卵巣腫瘍検索は, 脳炎治癒後最低4年以上は必要である.
著者
中川 栄二
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.91-96, 2019 (Released:2019-05-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1

2017年に国際抗てんかん連盟 (ILAE) の用語・分類委員会は, てんかん発作とてんかん分類に関する新たな提言を行った. てんかん発作型, てんかん病型, てんかん症候群の3段階でてんかんを分類診断し, 可能な限り病因診断を行い, てんかん発作のみならず併存症状を含めて包括的にてんかんを診断し治療すべきであることを提言した. 本邦では, ここ10年間で新規の抗てんかん薬が相次いで発売されるようになり, てんかん治療に用いられる薬剤は20種類を超えるが, 2006年以降に承認された新規抗てんかん薬が10剤を占めている. 小児のてんかん診療と治療は, 新規の抗てんかん薬などの最新のエビデンスや併存症状も勘案して生活の質の向上を目指して包括的に行う必要がある.
著者
橋本 昌典 横田 晃 松岡 成明 島 史雄
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.481-485, 1989-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
18

これまで内服および外科的治療が無効であったchorea-ballism様不随意運動重積状態の9歳女児に対し, 経静脈的に3週間, 最大量533mg/kg/日のGABAを投与して不随意運動を完全に消失させることができた.choreaやballismは大脳基底核GABAニューロンの機能低下が原因と考えられているが, GABA自体は血液脳関門 (BBB) を通過しにくいことからこれらの不随意運動には無効であると言われる.本例の場合, どのような機序でBBBを通過したのかは明らかではないが, GABAの大量静脈内投与はGABAニューロンの機能低下に基づく不随意運動に有効である可能性を示唆している.
著者
温井 めぐみ 九鬼 一郎 木村 志保子 服部 妙香 井上 岳司 岡崎 伸 川脇 壽 富和 清隆
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.5-9, 2011-01-01
参考文献数
14
被引用文献数
1

&emsp;Septo-optic-dysplasia (SOD) は視神経低形成, 視床下部性の下垂体機能低下症, 中枢神経系の正中構造異常を3徴とし, 2徴以上を満たす例を本症とする. 今回我々はSOD患児10例について画像的検討を行った. <br>&emsp;両側に視神経低形成を認めたのは6例で, 中枢神経系の正中部構造異常を認めた. 片側に認めたのは4例で, 同側または両側に皮質形成異常を認めた. これはSODの成因として血管破綻説を支持する所見と考えた. <br>&emsp;皮質形成異常を認めた4例中3例に<sup>99m</sup>Tc HM-PAO SPECT, <sup>123</sup>I iomazenil SPECTを実施し, 正常皮質と同等の集積を認めた. てんかん原性となりうる皮質形成異常では発作間欠期にはどちらも低集積となることが多く, SODに合併する皮質形成異常でてんかん発症率が低いこととの関連が推測された.
著者
大槻 則行 木村 清次 根津 敦夫 相原 雄幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.318-322, 2000-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

インフルエンザウイルス感染に伴う急性脳症は一般的に予後が不良な例が多く, 従来の治療法では重篤な神経学的後遺症を残すことが多い. 今回, インフルエンザウイルス感染に伴って発症した急性脳症の2例に軽度低体温療法とステロイドパルスの併用療法を行った. 1例は中枢神経症状出現後の7日目に入院し, 顕著な脳浮腫および脳波の低電位化を認めたが死亡には至らず, 経口摂取可能の状態で退院できた. 他の1例は入院時に両側前頭部優位の皮質浮腫を認めたが治療の結果, 中等度の知能障害にとどまった. 上記の治療法は新たな一つの手段になると考えられた.
著者
栗原 まな 高橋 佳代子 小萩沢 利孝 山内 裕子 井田 博幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.294-298, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
11

知的障害以外の症状が認められなかった時期より長期経過観察をした歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA) の28歳女性を報告した. 本例の遺伝子診断に家族の了承は得られなかったが, 母と兄が剖検病理診断でDRPLAと診断されていたため, 頭部MRI・脳波・歩行分析・心理検査などを行いつつ経過を観察した. 頭部MRIでは10歳代後半より小脳萎縮が出現し, 脳波では14歳の初診時より全般性棘徐波複合が認められた. 臨床的には歩行障害とてんかんが発症した15歳をDRPLAの発症と考えた. 歩行分析では20歳代後半になって明らかな異常が認められるようになり, その後1年で歩行不能となった. 経過観察において歩行分析は有用なツールであった.
著者
林 安里 熊田 知浩 野崎 章仁 日衛嶋 郁子 宮嶋 智子 藤井 達哉
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.288-293, 2013 (Released:2014-10-11)
参考文献数
12

【目的】ケトン食療法中は微量元素が欠乏しやすい. しかし, 特殊ミルクであるケトンフォーミュラ (明治817-B) を使用したケトン食療法中の微量元素の欠乏に関する報告はない.  【方法】ケトンフォーミュラを用いたケトン食療法を行った6人における治療前と6カ月後の血清セレン, 亜鉛と銅濃度の変化を調べた. おのおのの1日摂取量を調べた.  【結果】セレンの血清濃度と1日摂取量は有意に低下した. 亜鉛と銅の血清濃度は有意には低下しなかったが, 1日摂取量は低下した.  【結論】ケトンフォーミュラを用いたケトン食療法中は血清セレン濃度が低下, セレン, 亜鉛と銅の1日摂取量の減少を認め, 定期的な評価と不足例での補充が必要である.
著者
伊予田 邦昭 満田 直美 小川 和則 岡崎 富男
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.401-406, 2004-09-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は6歳8カ月の男児.インフルエンザワクチン接種後16日目頃から, 一過性発熱, 頭痛などに引き続き, 歩行失調, 四肢筋力低下を来し入院した.髄液検査では髄膜炎および脱髄抗体を認め, fluid attenuated inversion recovery法によるMRIで脳白質に散在性高信号域を確認した.急性散在性脳脊髄炎と診断, ステロイドパルス療法により, 比較的すみやかに後遺症なく神経症状は軽快し, 単相性で予後は良好と考えられた.
著者
中村 好一 飯沼 一宇 岡 英次 二瓶 健次
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.316-320, 2003-07-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
13

わが国における亜急性硬化性全脳炎 (SSPE) の疫学像を明らかにする目的で, 臨床調査個人票の解析を行った. 患者の重複を除外して, 125人 (男: 66人, 女: 59人) の臨床調査個人票を集めることができた. SSPE発病時の年齢分布は5~14歳にピークがみられた. 麻疹の罹患は109例で時期が明らかにされており, 80%以上が2歳未満で罹患していた. 麻疹罹患からSSPE発病までの期間の分布は5年から10年の問に集中していた. 平均は8.8年 (標準偏差=4.3年), 中央値は7.8年, 最短は2月, 最長は23.6年であった.
著者
山田 謙一 郡司 哲己 松井 俊晴
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.70-74, 1999-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
14

臭化ピリドスチグミン, 副腎皮質ホルモン剤による治療に抵抗性を示したが, A型インフルエンザ感染を契機に症状の急速な改善を認めた眼筋型重症筋無力症の男児を経験した.経過中の末梢血リンパ球サブセットでは, 治療開始後にCD3, CD4, CD4/CD45RA陽性細胞が増加し, 感染後は減少した.逆にCD19陽性細胞は治療後に減少し, 感染後は増加していた.インフルエンザ感染により免疫学的変化がおこり, 症状の改善がもたらされたと推測した.
著者
齋藤 和代 渡邉 幸恵
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.122-128, 2016 (Released:2016-03-26)
参考文献数
19

【目的】Down症児は早期からの療育が開始されることが多く, 運動発達促進やシャフリングベビーの減少が知られている. また, Down症児と自閉症スペクトラム (autism spectrum disorder ; ASD) の合併に関する報告も注目されている. そこで, 今回, Down症児の早期療育における問題点を調査する目的で, シャフリングベビーを含む粗大運動発達と精神発達について調査した. 【方法】対象は, 外来診察を行ったDown症児のうち, 1歳以上の男児79例女児42名の計121例で, 診療録による後方視的調査を行った. 【結果】シャフリングベビーは14例 (11.6%) であった. 粗大運動発達では, シャフリングベビー群で, 頚定, 四つ這い, 独歩が遅い傾向にあった. 精神発達の調査では, シャフリングベビー群で, ASD傾向が認められることが多かった. 【結論】早期介入にも関わらずシャフリングベビー群に移行する症例では, ASD傾向の合併に注意を払い, その特性に合わせた療育的介入が望ましい.
著者
二木 康之 安部 治郎 田中 順子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.222-228, 1987-05-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
14

新生児期, 乳児期早期から経過観察しえた31例の脳性麻痺症例について, 筋緊張, 姿勢反応, 原始反射の月齢による推移について検討した.原始反射については正常小児から得られた結果と比較した.筋緊張は乳児期早期から半数以上の症例で異常を示した.Vojtaの提唱する7つの姿勢反応では多くの症例で乳児期早期から6つ以上の異常を示したが, 生後4~5カ月の時点で4~5の異常にとどまる症例もみられた.原始反射では, 痙直型脳性麻痺において, 交叉性伸展反射, 恥骨上伸展反射, 踵骨反射の各反射で長期残存の傾向, 足把握反射で早期消失の傾向がみられた.しかし, 一方では上述のいずれの評価法においても正常児と区別しえない反応が脳性麻痺児の少数例においてみられ, 脳性麻痺の早期診断のためには, 総合的評価と定期的フォローアップが不可欠と考えられた.
著者
小谷 治子 日野 弘之 武市 知己 白石 泰資 小倉 英郎
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.473-478, 2005-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3

気管切開後に呼吸障害が再出現した重症心身障害者4例で, 原因とその対策を検討した.全例でカニューレ下端が気管狭窄部に接し, 同部に動脈性拍動を伴う肉芽が認められ, 3例で気管軟化症を合併していた.3例でカニューレ下端を病変部より口側固定に変更し (うち気管軟化症を伴う1例にはステントを併用), 経過は良好である.高度の気管軟化症を伴い, ステント留置のみを行った1例は気管腕頭動脈瘻のため死亡した.重症心身障害者の気管切開の合併症予防には, 解剖学的検討による長さや角度が適切なカニューレ選択が重要であり, 高度の気管軟化症がない場合は, 狭窄部や動脈近接部の口側に固定できる短いカニューレが適切であると考えられた.
著者
松石 豊次郎 山下 裕史朗
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.245-248, 1999-05-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

学習障害 (learning disability; LD) およびその周辺の病態を明らかにするため, LD, 注意欠陥/多動性障害 (attention deficit hyperactive disorders; ADHD), 精神遅滞 (mental retardation; MR), 自閉症および対照群で1日蓄尿中の尿中3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol (MHPG), phenylethylamine (PEA) を測定した.LD (N=6), ADHD (N=16), MR (N=4), 自閉症 (N-5), 対照群 (N-6) のMHPG値は差がなかった.LD (N-6), ADHD (N-5), 対照群 (N=3) のPEA値は91±17.3, 65±53, 6,340±264.5と3群間で有意差があり (p=0.0187), LD, ADHDで有意にPEAが低値を示した.PEAはADHD治療薬のmethylphenidate類似の物質であり, 代謝上重要と考えられた.
著者
市場 尚文
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.370-378, 1982-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
28
被引用文献数
1

3-11歳の小児1,009名, 重度精神遅滞59名, 微細脳障害症候群71名の手・足・目の利き側を検討し, 利き側の混乱と脳障害との関連についての知見をえたので報告した.1. 厳密な意味での正常小児674名の手・目の左利きの頻度並びに利き側の混乱の割合は, それぞれ5.5%, 29.2%, 28.2%で, 年齢発達とともに減少し, 7歳以降でほぼ一定化する傾向がみられた。なお, 利き側の混乱の要因は左目利きであった.2. 左手利きの頻度は, 重度精神遅滞 (32.2%) においてのみ, 正常少児に比し有意の高値を示した.3. 左目利きの頻度は, 行動異常 (48.1%), 微細脳障害症候群 (45.1%) においてのみ, 正常小児に比し有意の高値を示した. しかし, 読字障害との関連はみられなかった.4. 非正常小児, すなわち学業不振・精神発達遅滞, 行動異常, 痙攣, 言語発達遅滞の既往, 重度精神遅滞, 微細脳障害症候群をもつ小児のいずれにおいても, 利き側の混乱は正常小児に比し有意の高値を示し, しかも脳障害の重篤度に応じて高値を示す傾向がみとめられた.5. 小児の神経学的診断上, 手・足・目の利き側の検討が, 脳障害の摘発に有用であることを指摘した.
著者
大田原 俊輔 石田 喬士 岡 鎮次 山麿 康子 井上 英雄
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.270-280, 1976-07-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
38

脳波上suppression-burstを示し, 乳児期早期 (生後3ヵ月以内) 発症, 頻回のtonic spasms, 著しい難治性と重篤な予後を特徴とする8症例につき臨床的脳波学的に検討した結果をのべこれをthe early-infantile epileptic encephalopathy with suppression-burstと名づけ, 一臨床単位として提示した。これは年齢依存性てんかん性脳症の最幼弱型と見做される.1) 症例は男児5例, 女児3例の計8例であるが, 内6例は生後1ヵ月以内に発症していた.2) 発作型は短いtonic spasmsで, シリーズ形成をするもの, しからざるもの共にみとめられ, 覚醒時, 睡眠時を問わず出現した.3) 基礎疾患ではAicardi症候群1例, 孔脳症2例, 亜急性広汎性脳症1例を含み多彩であった.4) 脳波では全例, 覚醒, 睡眠時を問わず, 顕著なsuppression-burstをみとめるのが特徴であり, 発作時にはdesynchronizationを示した.5) 追跡的研究でsuppression-burstは生後3ヵ月以後不明瞭となり次第に消退する.経過中5例においてhypsarhythmiaを発現し, その中4例ではWest症候群への変容がみとめられた.6) 3年におよぶ追跡調査では, 極めて難治で, 4例は早期に死亡し, 残り4例は重症心身障害児であった.7) Burst-burst間隔を計測し, 正常新生児にみられるtracé alternantのそれと比較することによって本症候群の病態生理を推測した.
著者
山本 俊至
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.131-135, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
21

近年のDNA解析技術の著しい進歩により, これまでまったく原因がわからなかった疾患の原因遺伝子や染色体異常などが明らかになってきた. 特にマイクロアレイ染色体検査の普及により新たに明らかになったゲノムコピー数異常, あるいは染色体微細構造異常においては, 自閉症スペクトラム障害を示すものが多い. 患者レベルで見つかる変異は様々であり, 1つの原因では説明ができない. しかし, 神経細胞のシナプス機能に関連している遺伝子のコピー数変化が関与していることが多いということがわかってきた. 今後研究が加速し, さらに多くのことが明らかになると思われる.