著者
米元 耕輔 鳥尾 倫子 酒井 康成 酒田 あゆみ 大賀 正一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.360-361, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
8

Pallister-Hall症候群 (PHS) は, 多指症, 視床下部過誤腫を含む多発奇形と精神運動発達遅滞を特徴とする遺伝性疾患である. 視床下部過誤腫に伴う笑い発作がてんかん発作の特徴として知られるが, 初発時の診断に苦慮する場合がある. 症例は3歳女児. 新生児期に多指症, 直腸腟前庭瘻および視床下部過誤腫が認められPHSと診断された. 生後2か月から, 表情変化のない, 咳き込み様の症状が出現し, 10か月および2歳2か月時に同症状の頻度が増加したが, 脳波上異常所見なし. 3歳時, 同様の咳き込み症状は笑い表情を伴うようになり, 症状に一致して全般性徐波が認められた. Valproateとclobazamを併用し, 笑い発作は良好にコントロールされた. 乳児期早期の笑い発作は, 必ずしも表情変化を伴わない場合がある. 笑い発作は本症例のように無治療で増減を繰り返すことがあり, 症状減少後も長期的フォローアップが必要である.
著者
吉岡 三惠子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.433-437, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

【目的】乳児健診で運動発達遅延を指摘されたフロッピーインファントには種々の疾患が含まれる. この中には筋緊張低下が改善し, 後方視的に先天性良性筋緊張低下と診断される一群があるが, 知的障害や他の脳障害が明らかになる例が多い. 今回, 2歳以上まで経過観察された症例の神経学的予後を検討した. 【方法】乳児健診後, 直接または他院を経て当センターをこの8年6カ月間に受診した症例の内, 全身の筋緊張低下を認め, 腱反射が正常または低下している例で, 在胎37週以上, 生下時体重2,500g以上, Apgar score (5分) 7点以上で出生し, 家族歴・大奇形・頭部画像所見・染色体検査 (Gバンド・fluorescence in situ hybridization) ・血清creatine kinase値・血中乳酸・ピルビン酸・血液アミノ酸分析に異常がない32例 (男15, 女17) を対象とした. 4カ月健診から16例 (以下, 4健群), 9カ月健診から16例 (9健群) が該当した. 【結果】頚定は4健群, 9健群で全例可能. 座位は4健群では全例で, 9健群では14例で可能だが, 2例は不可で, それぞれRett症候群, 脊髄性筋萎縮症と遺伝子診断された. 独歩は4健群の14例, 9健群の13例で可能となり, この27例中知的障害を18例 (67%) に, 自閉症スペクトラムを5例 (19%) に認めた. 独歩不可は4健群2例, 9健群3例で, 先天性ミオパチーや奇形症候群が疑われた. 【結論】筋緊張低下が改善し独歩可能となった例にも知的障害や自閉症スペクトラムを示す例が多く, 早期から知的や行動面に留意した療育が必要であった.
著者
加賀 佳美
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.243-249, 2017

<p> 注意欠陥・多動性障害 (attention deficit/hyperactivity disorder; ADHD) は, 近年症例数の増加に伴い, 均てん化された診断と治療や介入法の確立が急務となっている. 現状のADHD診断は質問紙などを用いて保護者から聞き取り, 問診や診察を通して下される. しかし質問紙は主観的な評価に基づいているため信頼性に乏しい. 従って客観的評価が可能な神経生理学的バイオマーカーの開発が重要と考える. 本稿は非侵襲的脳機能検査法のうち頭皮上脳波の周波数解析, 事象関連電位 (ERP) や近赤外線スペクトロスコピー (NIRS) の研究成果がADHD診断におけるバイオマーカーに活用可能であるかどうかをまとめた. その結果, ①覚醒安静時脳波でADHDのθ/β帯域パワー値の比率増大を診断に利用する試みがある一方, 信頼度に賛否がある点も事実である. ②ERPのうちP300, NoGo電位やmismatch negativityはADHDの診断や薬物効果判定に用いられている. ③NIRSは装着が簡単で, 特に前頭部皮質の計測が行いやすい. 幼児から学童の前頭葉機能評価に適しており, ADHDの認知特徴 (不注意, 実行機能) の評価に長けている. 以上のように, 脳波, ERP, NIRSはADHDの神経生理学的state markerとしての可能性があり, 診断補助, 重症度判定, 治療効果判定等に活用されると考えられる.</p>
著者
福田 光成
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.327-335, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
45

熱性けいれんの病態や熱性けいれん重積後の内側側頭葉てんかんの発症機序については未だ多くの議論があり, 神経免疫学的機序もその候補である. 熱性けいれんの動物モデルでの検討では, interleukin (IL)-1βは発作を促進し, 逆にIL-1 receptor antagonistやIL-6, IL-10は発作を抑制することが明らかとなった. また熱性けいれん重積の動物モデルを用いた検討では, 重積発作の誘発後にIL-1βを投与すると成熟期の後天性てんかんの発症が促進された. また, high mobility group box 1 (HMGB1) についても検討し, HMGB1は前述の実験的熱性けいれんや熱性けいれん重積誘発後の後天性てんかんの発症を促進させた. ヒトの熱性けいれん患者や熱性けいれん重積の既往を持つ内側側頭葉てんかん患者の一部ではIL-1βやHMGB1を過剰に産生してしまう素因があり, これら炎症性メディエーターの過剰産生が病因として関与している可能性が示唆された.
著者
延時 達朗 庵原 俊昭
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.51-52, 2016 (Released:2016-03-26)
参考文献数
5

症例は1歳2カ月男児. 微熱出現の2週間後に体幹失調を来し受診. 急性小脳失調症が疑われるも運動機能は回復せず, MRI fluid-attenuated inversion recovery像の小脳虫部, 皮質の萎縮と高信号所見から小脳炎の慢性期と診断された. リハビリテーションにもかかわらず認知, 運動機能ともに後遺症を来した. 乳幼児期の小脳炎では, 病初期には潜在的に重症であること, 回復期に認知機能障害を来すことに留意して診療にあたることが重要である.
著者
田中 恭子 會田 千重 平野 誠
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.19-24, 2006-01-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1

いわゆる動く重症心身障害児 (者) 病棟における, 強度行動障害を有する例の医学的背景と薬物療法の現状について調査した. 状態像としては「走れる」, かつ最重度の精神遅滞がある青年で, 自閉症の合併例が多かった.薬物療法では抗精神病薬や抗てんかん薬の使用が多かった. 行動障害が重度なほど多剤併用になりやすく, 自閉症合併例では有意に薬剤使用量が多かった. 薬剤使用量が多い行動障害は粗暴性であった. 非定型抗精神病薬などの新薬の使用が約15%の症例でみられた.有効な薬物治療の構築のためには, 標的症状に照準を合わせた前方視的な効果判定と評価が必要であり, 対象者の生活の質に注意すべきと考えられる.
著者
木村 三生夫
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.113-118, 1971-03-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
13

During 1967 to 1970, 65 cases of postvaccinal central nervous system diseases were reported to Smallpox Vaccination Committee.Among these, 40 cases were classified as postvaccinal encephalitis or encephalopathy. Incubation periods of these cases were between 4 to 17 days (mean 8.7 days). 31 cases were under 1 year of age, 8, 1 year and 1, 12 years of age, respectively. These case distribution accounted for age were thought to be paralleled to age distribution of smallpox vaccination performedThough it would be often difficult, from the clinical grounds, to distinguish encephalopathy from encephalomyelitis, 14 cases were thought to be typical encephalopathy, and many of the others showed only slight cerebrospinal fluid abnormality. It was suggested that the clinical manifestations of those very young children were belonged to encephalopathy.The prognosis were relatively good, 20 were completely recovered, 3 died and 16 left central nervous system sequeles. It was thought that few severe or fulminant cases were reported here.The other types reported were, mild transient encephalopathy 3, acute infantile hemiplegia, 3, aseptic meningitis type, 11, myelitis, 1 and neuropathy, 2.
著者
坂田 一記 田中 千凱
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.637-644, 1971-11-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
24

Comparative studies were performed on effects, complications and shunt impairments of ventriculo atrial shunt (V-A shunt) and ventriculo-peritoneal shunt (V-P shunt) operations, mainly on the basis of our experiences with 62 V-A shunt and 19 V-P shunt operations. From the standpoint of shunt effect and durability, V-A shunt was definitely superior. From the standpoint of safety, V-P shunt was superior. We consider that, in hydrocephalic cases where both V-A shunt and V-P shunt have good indications, V-A shunt will be the operation of choice. However, in cases where any occult infection of CSF is suspected for, V-P shunt will be the operation cf choice. Various attempts hitherto performed by us for preventing postoperative complications and shunt impairments following V-A shunt, were mentioned. Remote prognosis of our hydrocephalic cases treated with shunt operations, as revealed by enquete method, was also reported.
著者
高橋 宏佳 高橋 幸利 美根 潤 向田 壮一 池上 真理子 池田 浩子 大谷 英之 下村 次郎 久保田 裕子 藤原 建樹
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.273-276, 2010-07-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

&emsp;Dravet症候群に対するtopiramate (TPM) の治療効果を検討した. Dravet症候群と診断された11症例 (7.1&plusmn;6.2歳) を対象とし, 投与前2カ月と投与後2カ月, 投与後6カ月目を含む2カ月間の発作回数を比較した. けいれん発作に対する投与後2カ月での評価は, 発作消失が1例, 50%以上発作減少が6例, 50%未満~無効が3例, 悪化が1例であった. 服用を6カ月間続けたのは10例で, 発作消失が1例, 50%以上発作減少が7例, 50%未満~無効が2例, 悪化が0例であった. TPMはDravet症候群のけいれん発作抑制に有効と思われた.
著者
堀口 寿広 加我 牧子 宇野 彰 稲垣 真澄 秋山 千枝子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.349-354, 1999-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4

発達障害児・者を支える家族の精神健康度を調べ, その向上を図るために調査を行った.彼らは高い士気をもって介護にあたっていたが, 一般人口, 専門医師よりも高い頻度で燃え尽きや神経症と呼べる状態にあった.精神的に健康度の高い人は, 子供のことだけでなく子供のこと以外でも配偶者に相談をしており, 介護を手伝ってもらっていた.また, 家族以外に手助けをしてくれる人がいる方が, 精神的な健康度が高かった.施設利用については, 就学前に施設入所を体験した群では周囲への期待感が高かった.したがって, 発達障害医療においては, 家族の協力を軸とした支援が家族の精神保健の向上に大きくつながると考えた.
著者
中村 由紀子 島崎 真希子 小松 祐美子 中野 瑛子 松岡 雄一郎 宮田 世羽 岡 明
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.259-264, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
12

【目的】反社会的行動の症状を持つ発達障害の症例の特徴について検討する. 【方法】当院小児神経外来に受診した発達障害のうち, 平成21年10月から平成24年10月までに就学年齢以上であった110例を対象とした. DSM-Ⅳ-TRの素行障害の診断基準の症状が1項目以上あるものを反社会的行動群とし, その症状を持たない群と背景, 行動の特徴, 治療による症状改善の有無について比較した. 【結果】反社会的行動は38例にみられ, そのうち素行障害に該当するものは7例で全体の5.5%であった. 反社会的行動の要因は, 注意欠陥/多動性障害, 虐待, 施設入所歴, 家族の精神・発達的問題, 不安定な家庭であり, 統計学的に有意であった. 投薬や環境改善の指導を行ったところ, 66%の症例で, 反社会的行動について何らかの改善を認めた. 素行障害7例のうち4例が虐待により児童養護施設等に入所しており, 3例が社会性に強い困難さを抱えた広汎性発達障害で, 全例が治療的介入を行っても反社会的行動の改善はみられなかった. 【結語】発達障害児の反社会的行動には主診断が注意欠陥/多動性障害であることや虐待, 施設入所歴, 家族の精神・発達的問題, 不安定な家庭の要因が関与していた. 最も効果的な治療は, 保護者に対する子どもへの関わりの指導であった. 素行障害まで進行している症例は改善が極めて困難であり, 反社会的行動がみられた場合は早期介入する必要がある.
著者
西河 美希 市山 高志 林 隆 古川 漸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.15-19, 1998-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
9

山口県下の小中学校, 養護学校の養護教諭391名を対象とし, てんかん児の水泳を中心とした学校生活の対応について, アンケート調査を行った.対象人数391名中, 回答人数278名で, 回収率71%だった.82.7%の養護教諭がてんかん児を経験していたが, 学校行事の中で水泳を制限するという回答が全体の24.5%にみられた.また, 医師から制限不要の指示がでた場合でも, 20%以上の養護教諭が何らかの制限をするという回答だった.これらの結果より学校現場の中で医学的知識に詳しいと予測される養護教諭でも, てんかんに対する知識で不適切と思われる考え方が根強く残っていることがわかった.今後, 養護教諭に対するてんかんの正しい知識の普及が望まれる.
著者
仲宗根 瑠花 宇都宮 英綱 影山 悠 原田 敦子 福屋 章悟 前野 和重 来田 路子 大西 聡 起塚 庸 南 宏尚
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.261-265, 2019 (Released:2019-10-26)
参考文献数
11

MRI所見が症候性developmental venous anomaly (DVA) の病態をよく反映していた症例を経験したので報告する. 症例は11歳, 男児. 炎天下で遊んでいたところ突然の嘔気・嘔吐に続き意識障害が出現し, 救急搬送された. 入院時, 左共同偏視と左顔面のけいれんを認めた. 入院時のCTで, 右側頭葉から側脳室三角部まで連続する火の玉状の高吸収域を認め, 脳血管奇形が疑われた. 入院3日目のMRIでは, 磁化率強調画像で右側脳室に向かって集簇する髄質静脈を認め, 集簇点から側頭葉脳表に向かって浅中大脳静脈と連結する著明に拡張した中心髄質静脈を認めた. この所見から, 表在還流型DVAと診断した. 同時に行った造影MRIでは, 中心髄質静脈の増強効果はみられず血栓化が示唆された. 第8病日の造影MRIでは中心髄質静脈は描出されており再開通と考えた. 抗凝固薬は使用せず点滴加療のみで症状は改善し, 入院10日目に独歩退院した. 症候性DVAの症状発現機序は未だ不明な点が多い. 本症例では, 中心髄質静脈に血栓化をきたし, 局所の脳静脈圧が亢進したことによる灌流障害を生じたことが症状発現の一因になったと考えられた. また, 血栓化の要因としては元来中心髄質静脈の還流障害があり, これに脱水が加わって血栓形成を助長したと推察された.
著者
林 隆
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.203-206, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1

学習の障害に起因する行動特徴は学校現場で支援の対象というよりも否定的な評価を受ける対象となっている可能性がある. 一般集団では, 読みに障害があっても, そのことが直接的に情緒の発達に強く影響を及ぼすことがないことが示唆された. 読み障害の中でも不登校を主訴とする児は読み障害の程度は軽いが, 抑うつ度が高く特有の支援ニーズをもつ可能性が示唆された. 不登校を示す読み障害児のWISCの特徴は他の指数に比べて, 処理速度が高いことで, 言えばできるが, 自分では行動できないことが状況から, 教員からは怠け・やる気がないと捉えられ, 支援ではなく強い指導を受ける可能性が高く, これが不登校の引き金になっている可能性がある.
著者
杉浦 千登勢 呉 博子 田辺 文子 汐田 まどか 前垣 義弘 大野 耕策
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.294-298, 2013 (Released:2014-10-11)
参考文献数
20

【目的】けいれん重積型急性脳症に伴う神経心理学的後遺症の臨床的特徴を明らかにする.  【方法】本症8例の臨床経過を後方視的に検討した.  【結果】全例に運動麻痺はなかった. 亜急性期に5例で不随意運動が出現し, 4例は一過性であった. 5例で口唇傾向, 6例で左半側空間無視が一過性に出現した. 慢性期以降では, 独歩可能となった7例中6例で歩容の不安定性, 7例で注意障害, 7例で対人技能面の問題, 2例で感情失禁が持続していた. 頭部画像所見では, 一過性症状の出現期に皮質下病変, 慢性期持続症状の出現期に大脳皮質萎縮所見を認めた.  【結論】これらの臨床的特徴を把握することは, 適切なリハビリテーションを行ううえで有用である.
著者
難波 栄二
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.112-116, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

脆弱X症候群 (FXS) はトリプレットリピート病の1つで, FMR1遺伝子の異常によって発症する. FXSは遺伝性知的障害の代表的な疾患で, 知的障害を引き起こすシナプス障害の分子メカニズムが解明されており治療法の開発が進んでいる. FXSはFMR1遺伝子のリピートの異常伸長 (200 CGG繰り返し以上) によって発症する. 現在, mGluR5阻害剤など, この異常を改善するための治療法が開発されつつあり, 臨床治験も開始されている. 我々は, FXSの遺伝子診断を行い患者さんの収集を行っているが, 日本では患者が少ない. 今後, より多くの患者さんを診断し登録する必要がある.
著者
加藤 雅子 荒井 洋 小松 光友 ラトン 桃子 立山 清美 西川 隆
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.10-14, 2021 (Released:2021-02-05)
参考文献数
18

【目的】日本における青年期脳性麻痺児・者の主観的QOLを評価するため, 国際的に普及しているCerebral Palsy Quality of Life Questionnaire for Adolescents (CPQOL-Teen) 自己回答版を和訳し, その臨床的有用性を検討した. 【方法】原著者の許可を得て和訳したCPQOL-Teen自己回答版を脳性麻痺児・者57名 (cerebral palsy ; CP群) と定型発達児・者58名 (typically developing ; TD群) に実施した. 【結果】日本語版CPQOL-Teen自己回答版は, 両群で十分な検査-再検査信頼性と内的整合性およびJ-KIDSCREEN-27こども版を外的基準とした妥当性を示した. CPQOL-Teenの5領域のうち『機能についての満足度』は, CP群においてJ-KIDSCREEN-27のいずれの領域とも相関せず, CPの特性を反映する可能性が示された. 『コミュニケーションと身体的健康』『学校生活の満足度』『機能についての満足度』の3領域でCP群の得点はTD群よりも低く, 『全体的満足度と参加『社会生活の満足度』の2領域では両群で差がなかった. 【結論】日本語版CPQOL-Teen自己回答版は, 青年期脳性麻痺児・者の特性を踏まえた主観的QOLを把握できる有用な評価尺度であり, 有効な包括的支援の基盤になり得る.
著者
吉村 伊保子 佐々木 淳 秋元 博之 吉村 教皋
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.379-384, 1989-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

典型的な先天性筋緊張性ジストロフィーに自閉症を伴っていた症例 (11歳女児) を報告し, その臨床像, CT像, 筋生検 (光顕, 電顕) 所見を述べるとともに, 本例の示す意味について考察した.電顕所見によると, 歪に分葉した中心核と, その周辺部の筋原線維の変性を特徴としていた.本例は, 精神遅滞と脳波およびCT像の異常を認め, 他の剖検例の所見をあわせて考えると, その脳器質障害は明らかである.したがって, 本例は, 自閉症がいくつかの病因をもった器質性症候群であるという仮説を支持する症例のひとつに加えられ得ることを述べた.
著者
服部 旬里
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.484-490, 2002-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
17

中心・側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん (BCECT) と小児の非定型良性部分てんかん (ABPE) の高次脳機能障害の有無について包括的心理検査を複数用いて検討した.BCECT, ABPEともに全般的知能に問題は認められなかった.BCECTにおけるITPA (イリノイ言語学習能力診断検査1993年改訂版) の「ことばの表現」と「数の記憶」の成績が悪かった。しかし, 他の言語機能を必要とする検査の成績は必ずしも低くなく, その解離から, 要素的な言語機能の障害ではなく, 柔軟性, 流暢性, 作業記憶などの複雑な情報を処理する実行機能系の障害によるものと推測された。ABPEのプロフィールも類似し, 共通した認知機能障害の存在が示唆された.