著者
那須 義次 枝恵 太郎 富沢 章 佐藤 顕義 勝田 節子
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.77-85, 2016-07-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
31

日本で初めてコウモリのグアノを摂食するチョウ目ヒロズコガ科の3種,アトウスキヒロズコガMonopis crocicapitella,スカシトビイロヒロズコガ(新称)Crypsithyrodes concolorellaとウスグロイガNiditinea tugurialis,およびメイガ科の1種,カシノシマメイガPyralis farinalis,が記録された.アトウスキヒロズコガは越野(2001)によりMonopis sp.とされていたもので,今回学名が判明した.本種はキチン食性が強いと考えられた.スカシトビイロヒロズコガは日本新記録種であった.今回の調査においてケラチン食性が強いと考えられる種がコウモリのグアノから発生しなかったのは,グアノがコウモリの餌である昆虫の細破片からなり,主にキチン質であるためと考えられた.また,グアノから発生するヒロズコガ類の個体数が比較的多かったことから,グアノの分解者としてヒロズコガ類は重要であることが推測された.
著者
河上 康子 村上 健太郎
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-66, 2014-04-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
27

1996年から2002年の期間に海岸性甲虫類の調査を行った,播磨灘・大阪湾・紀伊水道沿岸部の43地点の海浜について,それぞれの面積および孤立度(近接する海浜までの距離)と,海岸性甲虫類の種構成の関係について解析を行った.海浜の面積を説明変数に,海岸性甲虫種の種数,および出現した全甲虫種の種数を目的変数にした単回帰分析の結果,いずれも有意な決定係数がえられ,面積が広いほど出現種数が増加する傾向が見られた.しかし,海岸性種数,全種数ともに決定係数は弱く,面積以外の要因も種数に影響する可能性が示唆された.さらに,調査地点のうち3地点以上の海浜から出現した22種の海岸性甲虫種について,種の在/不在データを目的変数に,海浜の面積と孤立度を説明変数にしたステップワイズ変数選択によるロジスティック回帰分析を用いて解析し,海岸性甲虫の在否に海浜の面積や孤立度が影響するかを検討した.その結果,9種が面積によって有意に説明され,同様に孤立度により1種が有意に説明された.
著者
矢後 勝也
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.48-58, 2018-03-05 (Released:2019-10-08)
参考文献数
18

これまで日本昆虫学会が保全生物学・自然保護に果たしてきた成果・役割について概説した.その内容は以下の通りである:1)英文誌「Entomological Science」には,2016年までに保全生物学やこれに関連する論文・短報が約60本掲載されており,しかも年々増加傾向にあった.特に学会賞が授与されたInoue(2003)やKitahara and Fujii(2005)による研究では,保全生物学分野の重要性が高く評価されている.和文誌「昆蟲(ニューシリーズ)」でも保全生物学関連の論文・報文等が40本程度掲載されている他,年次大会でも毎年多くの発表が行われるなど,本学会は保全生物学・自然保護に関する研究発信の場を長く提供してきた.2)1966年の自然保護委員会の創設以来,本学会は自然保護に深く関わってきた.年次大会での本委員会主催の自然保護シンポジウム・小集会の開催の他,環境省レッドリストやレッドデータブックに寄与し,侵略的外来種への対応でも強く発言してきた.優先保全地域を提示した「昆虫類の多様性保護のための重要地域」シリーズの発行は本委員会最大の功績として挙げられる.また,様々な環境問題に対して国・地方自治体等に要望書を提出してきたことも注目すべきである.3)与那国島でのヨナグニマルバネクワガタや希少な水生昆虫の保全,ゴイシツバメシジミやツシマウラボシシジミのような希少チョウ類の保全など,本学会や他学会からの要望書により実際に進められた絶滅危惧昆虫の実践的な保全活動とその後の成果等も紹介した.その一方で,日本昆虫学会が保全生物学・自然保護に資するべき今後の役割や展望として,研究を主体とした科学的データの提供だけでなく,希少昆虫の回復,保全活動の推進,環境教育の普及などの社会貢献にも供することが必要であることを述べた.具体的には下記の通り:1)希少昆虫の絶滅を招く様々な環境問題に対して,これまで以上に速やかに対処し,科学的知見から得られたデータに基づいて該当機関に要望書を提出したり,学会ホームページや学会機関誌に要望書の内容を公開発信することが重要となる.2)生物多様性条約等の世界情勢も鑑みて,国内希少野生動植物種の昆虫の指定数および指定割合も増える可能性が高く,学会等の意見・対策が一層要求される.3)環境省「種の保存法」の一部改定で「特定第二種国内希少野生動植物種」制度の導入が決定されたが,この制度を機能させていくためには,本学会発行の「昆虫類の多様性保護のための重要地域」シリーズを含む科学的な基礎情報の提供や実践的な保全活動への寄与が必須となる.4)今後の希少昆虫保全のあり方を考える上で,本学会への社会的要請がより強く求められることが予想される他,侵略的外来種等にも迅速に対応するネットワークの構築が急務であり,他の専門機関と連動した新たな体制が不可欠となるだろう.
著者
富沢 章 大宮 正太郎 福富 宏和 林 和美 石川 卓弥
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-14, 2013-01-05 (Released:2018-09-21)

シタベニハゴロモの野外における生態を調査した.本種は年1化で,卵越冬する.幼虫は5月下旬から8月初旬にかけて出現する.成虫は7月下旬から11月下旬まで認められ,寿命は3-4ヵ月と推定された.幼虫はおもに新梢部の枝や葉軸から吸汁するので枝先に多く,成虫は樹幹部に集団を形成する傾向が認められた.交尾および産卵行動は9月後半から11月まで認められ,夕方から夜間に行われた.卵は被覆物質で被われた卵塊としてシンジュの枝や幹の雨が直接当たらない下面に産み付けられた.幼虫・成虫を通しての寄主植物としてシンジュとセンダンが確認された.また,エゴノキとアカメガシワでは,成虫においてのみ樹幹部からの吸汁が認められた.
著者
大庭 伸也
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.157-164, 2002-12-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
13

孵化の様子を観察した結果,タガメの卵が孵化するとき,卵殻と薄い膜を破って幼虫が出てくる.卵殻を破って出てくることを「卵殻孵化」,透明な膜を破って出てくることを「胚脱皮」と称することとした.卵塊中の全ての卵が卵殻孵化を終えるのに約20分を要するのに対して,それらの卵が胚脱皮を終えるには約5分しかかからない.その後,体を出して前脚を広げた幼虫のうち,1匹の幼虫が中後脚を動かし,卵殻から出て落下しようとすると,その接触刺激が隣接する幼虫へと連鎖的に広がっていき,卵塊レベルで孵化した幼虫が一斉に水中へと落下した.常に湿った状態では,卵殻孵化が胚脱皮よりも時間を要したのに対し,オスが保護してきた,つまり乾燥と給水を繰り返した,孵化直前の卵に水をかけると,全ての卵の卵殻が割れたことから,保護オスが給水により,卵殻孵化のタイミングを調節可能であることが示唆された.胚脱皮は破裂音を伴うので,その振動を感知した他の卵も胚脱皮すると考えられ,1個の卵の胚脱皮が周辺の卵の胚脱皮を誘発し,全ての卵の胚脱皮が短時間で起こる.以上の結果から,タガメの卵塊における一斉孵化のメカニズムには,卵殻孵化については保護オスが,胚脱皮と幼虫の水中への落下については,卵または幼虫のコミュニケーションが関わっていることが明らかになった.
著者
野村 周平
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.14-26, 2018-03-05 (Released:2019-10-08)
参考文献数
5

我が国における昆虫学の状況の中で,昆虫形態学は体系学または系統学の中での存在感を失ってきたように見える.しかし一方で,昆虫形態を詳細に観察し,記録し,検討することのできるツールは着実に進化している.マイクロフォーカスX線CT(通称マイクロCT)は,昆虫の微細な内部形態を非破壊的に観察し,記録することのできる革新的な技術である.例えば,カブトムシの飛翔筋,セミの♂の発音器や♀の卵巣,また虫入りコハク中の昆虫化石までも,その形態を詳細に観察,記録することができる.昆虫の表面微細構造を観察する方法としては,走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)がすでに普及している.しかし近年,乾燥試料ではなく,新鮮な(水分を多く含んだ),あるいは生きている試料さえSEM観察することのできるナノスーツ法®や,100,000倍以上のSEM観察を可能にする電界放出型SEM(FE-SEM)が登場してきた.これらはこれまで十分に研究されていない昆虫のサブセルラー(細胞未満の)構造をより自然な状態で観察することのできる強力なツールである.このような方法によって記録された昆虫内部の,または表面の微細構造の画像は,昆虫研究者ばかりでなく,昆虫の構造をヒントに新たな工学技術を開発しようとするバイオミメティクス(生物模倣技術または生物規範工学)の研究者にとっても極めて有益である.科学分野間の言葉の壁を超えて,このような昆虫の微細形態画像をきわめて簡便に比較解析するツールとして,「画像検索システム」が開発されつつある.これらの新しい技術を開発し,活用することによって昆虫形態学は,昆虫の進化をさらに研究し,よりよく理解する新たな時代の,大きな潮流となる可能性がある.
著者
直海 俊一郎
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.136-142, 2023-06-25 (Released:2023-06-28)
参考文献数
11

『生物体系学』(直海 2002)で展開した体系学の構造論とは,「私が独自に創出した理論」ではなく,分類学と系統学が別学問に変わっていった時代(1970~1980年代)における,体系学の5分科の「実際上の構造」についての理論と,若干の齟齬はあるものの,基本的には再解釈できると考えている.体系学の構造論を論じた第1章第5節では,体系学を5分科(分類学,系統学,狭義体系学,分布学,生物地理学)から構成される学問ととらえ,それらの分科がどのような学問であるかを論じ定義し,そしてそれらの学問の目的と仕事を明らかにした.しかし,専門用語の適切な解説なしで論を進めていったので,実際的にわかりにくいと思われる.そこで,この小文では,体系学の構造論について若干の解説を行った.第1に,分類学と狭義体系学をよりわかりやすく解説した.分類学と狭義体系学の違いとは,それぞれが構築する分類体系の質の高さの違いであり,単に,「第1の分類学」と「第2の分類学」というふうに区別する方がよいように思われる.第2に,自然理解のために有用な体系学的情報の系統学と狭義体系学での分割管理,およびその実例について解説した.第3に,体系学における哲学的行為としての実体変換(「クラス変換」と「個物変換」)について解説した.分類学(および狭義体系学)と系統学では,取り上げられ議論の対象となる哲学的実体は異なっている.実体変換とは,論理的に一貫性のある実りの多い議論を行うために,その実体が取り上げられる分科に相応しい用語を選択することによって,実体をその分科に相応しい哲学的実体に変換するという哲学的行為である.
著者
吉田 匠 野田 聖 東城 幸治 竹中 將起
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-114, 2023-06-25 (Released:2023-06-28)
参考文献数
17

甑島列島は九州南西部に位置し,上甑島,中甑島,下甑島とそれらの周辺の小さな島々から成る.甑島列島は,最終氷期に形成された陸橋により九州島と接続したとされるが,多くの固有種が報告されている.これは,甑島列島において独自の生物相が形成されてきたためと考えられる.しかし,甑島列島では水生昆虫類の報告は少なく,本研究で着目したカゲロウ類に関する報告はない.そこで,甑島列島に生息するカゲロウ目昆虫を調査した.その結果,4科(Baetidae, Ephemeridae, Heptageniidae, Dipteromimidae)にわたる少なくとも5属7種のカゲロウ目昆虫を採集した(属種の同定ができなかったコカゲロウ科がBaetis属以外であれば6属となる).また,採集した甑島列島のカゲロウ類はすべて九州島との共通種であり,上甑島と下甑島で採集したカゲロウ相に違いはなかった.本報は,甑島列島におけるカゲロウ目昆虫類の最初の記録である.
著者
鈴木 邦雄
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.133-150, 2012-07-05 (Released:2018-09-21)

A posthumous work Animal Evolution in Changing Environments with Special Reference to Abnormal Metamorphosis (1987) by a great authority on insect morphology, the late Dr. Ryuichi Matsuda (1920-1986), has been re-evaluated recently by many evolutionary biologists especially in the fields of the so-called 'evo-devo' (evolutionary developmental biology: e.g. Hall 1999; West-Eberhard 2003; Hall et al. 2004 eds.) and 'eco-evo-devo' (ecological evolutionary developmental biology: e.g. Gilbert & Epel 2009). Matsuda himself named his fundamental idea of animal evolution 'pan-environmentalism'. Based on a historical survey of Matsuda's works (a total of 92 titles including original articles, reviews, and books compiled by Suzuki 1988b), the background of his 'Pan-environmentalism' was outlined.
著者
上田 紘司 藤本 泰文
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.153-164, 2022-12-25 (Released:2022-12-25)
参考文献数
30

宮城県北部の伊豆沼・内沼の周辺に位置する2つの池において,絶滅危惧種に指定されているオオセスジイトトンボParacercion plagiosum(トンボ目:イトトンボ科)の季節消長,繁殖期および生息環境を調査した.オオセスジイトトンボは,両池において6月上旬から8月中旬まで確認され,個体数のピークは6月下旬であった.繁殖行動(タンデム連結・交尾器の結合・産卵)は6月下旬から8月上旬にかけて両池で確認された.2つの池の水生植物の構成種は異なり,両池とも水際にはヨシPhragmites australisやミクリ属の1種Sparganium sp.など数種の抽水植物,水面には浮葉植物のヒシ類Trapa spp.が確認された.しかし,浮遊植物のイヌタヌキモUtricularia australisは一方の池でのみ確認された.本種の産卵は,ヒシ類が優占する池ではすべてヒシ類で行われたが,ヒシ類とイヌタヌキモが混生する池では,産卵行動の70%がイヌタヌキモで行われた.このことから,イヌタヌキモへの産卵はヒシ類と比較して本種の適応度を高める何らかの要素を持つ可能性を示唆した.伊豆沼・内沼では,富栄養化により沼の広い範囲をハスNelumbo nuciferaやヒシ類が優占する水環境となっており,イヌタヌキモが生育するような環境は貴重となっている.この個体群を保全していくには調査池の環境管理や伊豆沼・内沼で実施されている湖岸植生帯の復元活動が重要となるだろう.
著者
小川 直記
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.96-105, 2019-09-25 (Released:2021-09-25)
参考文献数
52

昆虫には,跳躍機能を持つものがしばしば知られる.強力な跳躍を行う昆虫は,大きな跳躍筋だけでなく,その収縮で産み出されるエネルギーを弾性のある組織に一度蓄え,一気に放出することのできるカタパルト機構という仕組みを持つ.多くの昆虫はこの仕組みを脚に持つが,半翅目は,全昆虫の中でも珍しく,飛翔機能のある胸部内にカタパルト機構を用いた跳躍機能を獲得している.さらに,このような特殊な機能の発達が,同じ目の中で複数回起こっていることもわかってきた.本稿では,昆虫の跳躍機能について概説するとともに,このような半翅目における跳躍機能の進化史について,これまでに得られている知見をまとめた.
著者
阿部 純大 久末 遊
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.63-65, 2022-06-25 (Released:2022-06-29)
参考文献数
8

We newly record Foenatopus cinctus (Matsumura, 1912) from Honshu, Shikoku, Kyushu, Yaku Island, and Iriomote Island, Japan. The variation on this species is reported by Hong et al. (2011) as vein 2-cu1 is 0.5–1.2 times as long as vein cu-a. However, some specimens we examined have vein 2-cu1 less than 0.5 times as long as vein cu-a or almost disappeared. We identified them as F. cinctus based on other characters.
著者
杉本 美華
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-29, 2009-03-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
34

日本には約50種のミノガ科が生息しており,幼虫の携帯型の巣筒であるミノは大きさや概形,表面に使われる素材等の特徴で属あるいは種までの同定が可能である.成虫が脱出後の空になったミノの保存性が高いことから,ミノでの同定によって過去の生息範囲を推測することができる.若齢幼虫期のミノは,形態が単純で種の特徴が十分現われていないために正確な同定は期待できず,これまで主に中齢幼虫期から終齢幼虫期のミノが同定に用いられた.しかし,日本産のミノガについて,このような識別形質を含むミノの形態の詳細な記載とその比較はこれまでほとんど行なわれてこなかった.そこで本研究では,ミノの形態から属あるいは種の同定を容易にすることを目的として,日本産ミノガ科23属30種について,成長した幼虫あるいは終齢幼虫のミノの写真を示し,その形態的特徴と蛹化状況を記述するとともに,これまで発表されていなかったミノによる種や属の検索表を2論文に分けて発表する.第2報では,害虫として注目されている種やレッドデータにリストアップされている種を含めた大型種10属11種について記載を行なった.その結果,ミノの本体は円筒形,紡錘形,または円錐形で,表面には種特異的な被覆物がつけられていた.中齢ないし老齢幼虫期のミノは,種や属を同定するための有効な特徴を備えており,これらの特徴に基づいて,30種についてミノの検索表を付けた.