著者
大庭 伸也
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.92-93, 2012-04-05 (Released:2018-09-21)

The giant water bug, subfamily Lethocerinae, which has the largest body size among Belostomatidae, is known to be a vertebrate specialist that preys mainly upon fish and amphibians. Here, I report that a giant water bug, Kirkaldyia (=Lethocerus) deyrolli (Heteroptera: Belostomatidae), was catching hold of a Japanese mamushi, Gloydius blomhoffii, in a pond. This is a first report of Lethocerinae eating a Viperid snake.
著者
伴 光哲 山内 健生
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.41-49, 2016-04-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
34

1. 屋久島の原生的照葉樹林,約40年生スギ人工林,および常緑針広混交老齢林において,Townes型マレーズトラップによってナガカメムシ上科を捕獲し,その環境指標性を検討した.2. 3科11属16種182個体が採集され,それらのうちの6属8種(ヨツボシチビナガカメムシ,ヒゲブトナガカメムシ,クロツヤナガカメムシ,キモンナガカメムシ,ルイスチャイロナガカメムシ,オオモンシロナガカメムシ,ムラサキナガカメムシ,イシハラナガカメムシ)は屋久島から初記録であった.3. 捕獲個体数が多かったヤスマツチビナガカメムシとオオモンシロナガカメムシはいずれも盛夏に捕獲の極大があった.4. 種数,個体数は島西部の原生的照葉樹林で最も高く,島東部の約40年生スギ人工林で最も低い値を示した.5. 多様度指数は島東部の原生的照葉樹林で最も高く,島東部の約40年生スギ人工林で最も低い値を示した.6. 重複度指数(R0)を基にクラスター解析を行った結果,隣接した地域の異なった植生タイプの森林より,距離が離れていても共通の植生タイプの森林の方が種構成の共通性が高く,種構成は植生に影響されることが示唆された.
著者
杉浦 真治 深澤 遊 山崎 一夫
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.143-144, 2002-12-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
6

Platurocypta punctum (Stannius) (Diptera: Mycetophilidae) was firstly recorded from Japan based on the adult specimens emerged from a fruiting body of Fuligo septica (L.) (Myxomycetes: Physarales: Physaraceae). We observed the larvae feeding on spores within the fruiting body at Kamigamo Experimental Forest in Kyoto, central Japan. P. punctum may be closely associated with slime molds.
著者
山内 健生 渡辺 護 林 成多
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.24-30, 2013-01-05 (Released:2018-09-21)

島根県産アブ類について,野外調査と標本調査を実施し,20種を記録した.島根県におけるジャーシーアブの記録は,誤同定に基づいている可能性が非常に高いため,島根県のアブ科の種リストから本種を削除することを提案した.タイワンシロフアブ,マツザワアブ,アカバゴマフアブ,トヤマゴマフアブは島根県本土新記録となる.アカウシアブ,シロフアブ,ハタケヤマアブは隠岐諸島新記録となる.既知の記録と新記録を合計すると,28同定種が島根県に分布していることが明らかとなった.
著者
髙須賀 圭三
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.11-23, 2019-03-25 (Released:2020-03-25)
参考文献数
41

クモの飼い殺し外部寄生というユニークな生態を獲得したクモヒメバチのクモに対する特異的な攻撃的産卵行動を概説した.いずれの種も,それぞれの寄主クモが作る網型に極めて特化した適応的行動(戦術)を有することが報告されている.クモヒメバチ全体で見ると非常に多彩な戦術が進化しているが,いずれもクモに気づかれないように(能動的接近型,突入型,待ち伏せ型),あるいは敵として認識されないように(攻撃的擬態型)行動しており,クモを狩る有剣類に見られるようなクモを追い立てて追跡するという戦術は知られていない.
著者
中村 剛之
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.132-137, 2017-07-05 (Released:2019-07-05)
参考文献数
9

エタノールなどの中で保存された液浸標本は時間の経過とともに体や翅が軟弱化したり,退色したりするため,長期保存のためには乾燥標本とすることが望ましい.しかし,すでに保存液中で長期間保存された標本はそのまま乾燥させたのでは体や翅が萎れるなどの変形がおこり,良い状態で乾燥標本とすることが困難であった.体が軟弱化した標本ではなおさらである.このような標本を整形しながら乾燥させる方法として,水を弾く性質がある剥離紙の上で保存液に濡れたまま展翅する方法を紹介した.この方法は双翅目,毛翅目,長翅目,脈翅目類,セキ翅目,咀顎目では有効であった.鱗粉が剥がれやすい鱗翅目,翅がこわばる膜翅目,一部の双翅目ではこの方法で展翅することが難しく,展翅法の更なる工夫が必要と考えられた.
著者
船本 大智 大橋 一晴
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.3-18, 2017-01-05 (Released:2019-01-05)
参考文献数
118

植食性昆虫は,自由摂食,虫えい食,潜葉,種子捕食といった多様な摂食様式をとる.摂食様式の進化的な転換は,植食性昆虫の適応放散において重要な役割を果たす.我々はこの総説で,植食性昆虫において摂食様式を多様化する要因や,摂食様式の転換パターン,それぞれの摂食様式のコストと利点,摂食様式の転換に関連した形質の変化について議論する.特に虫えい食と潜葉への転換に注目し,それぞれの摂食様式の適応的意義に着目した既存の仮説について議論する.最後に,この研究領域において今後行われるべき研究を提案する.
著者
阿部 志保 森 貴久
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.50-60, 2016-04-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
26

コナラシギゾウムシCurculio dentipesやクヌギシギゾウムシCurculio robustusなどのシギゾウムシ類はブナ科堅果の内部に産卵し,幼虫は産み付けられた堅果のみを資源として利用し成長する.成虫の体サイズは幼虫期の成長量によって決まるので,メスは産卵の際に資源を評価していることが期待される.また,1個の堅果を複数のシギゾウムシ類幼虫が利用したり,他種の幼虫も利用することがある.このとき堅果内の資源は限られているため,堅果内に複数個体が存在した場合,競争が生じることになる.したがって,雌は産卵の際に産卵個数や他種の昆虫の存在などに応じて堅果を選択し,競争を低減させている可能性がある.本研究ではクヌギ堅果を用い,シギゾウムシ類の雌が産卵する時に選択する堅果の大きさと脱出幼虫の数と大きさの関係について,同種他個体や他種個体の存在との関連について明らかにし,シギゾウムシ類雌の堅果選択と産卵戦略について考察した.2012年11月と2013年11月に野外でクヌギ堅果を無作為に収集した.堅果は直径と長さを計測した後,個別に仕切られたケースの中に入れ,研究室にて保管した.堅果から脱出してきたシギゾウムシ類幼虫は,個体数と重量を記録した.また,2013年に収集した堅果については脱出してきた他種の昆虫の記録も行った.結果は,シギゾウムシ類が産卵した堅果はしなかった堅果に比べて大きく,球体に近い形状をしていた.また,大きな堅果にはより多く産卵をしており,堅果の大きさと幼虫の重量には弱い相関があった.シギゾウムシ類幼虫が複数個体脱出した場合,幼虫の平均重量は1個体のみの場合と比べて小さいが,脱出個体が多くなっても1個体あたりの平均重量は減少しなかった.また,4個体以上が脱出してきたときの幼虫重量の変動係数は2–3個体のときよりも大きくなった.他の昆虫の存在はシギゾウムシ類の幼虫の数や重量に影響しなかった.これらの結果は,シギゾウムシ類の雌は産卵の際に堅果の大きさを評価することで,利用個体数が他種昆虫を含めて複数いても,幼虫1個体あたりの重量が大きく減少したりばらついたりすることがないように産卵できていることを示している.ただしこの調整は,1個の堅果の利用個体が4匹以上になると不十分になり,利用する昆虫の間に重量のばらつきが大きくなる.以上から,シギゾウムシ類の雌の産卵戦略として,堅果の大きさを評価して産卵することで幼虫間の資源競争を低減して幼虫の大きさと個体数をコントロールし,適応度の増加を図っている可能性が示唆された.
著者
徳田 誠
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.76-83, 2023-06-25 (Released:2023-06-28)
参考文献数
33

Drawdown zones in lakes and marshes are ecotones between terrestrial and aquatic environments and many organisms inhabit the boundary areas. In addition, drawdown zones can serve as temporary refuges for terrestrial and aquatic organisms. Evaluating the role of drawdown zones as refuges is an important topic of study in terms of regional biodiversity conservation. In this study, I focused on the drawdown zone in the dam lake of the Kasegawa Dam. From 2016 to 2018, I surveyed the fruit galls induced by the aucuba fruit gall midge Asphondylia aucubae Yukawa et Ohsaki (Diptera: Cecidomyiidae) on an evergreen shrub Aucuba japonica Thunb. var. japonica (Garryaceae) in an area where terrestrial plants had died due to the initial impoundment between October 2010 and February 2012 (submerged area) and the adjacent non-submerged area. Galled fruit rates were significantly lower in the submerged area (about 60%) than in the non-submerged area (more than 95%). In contrast, there was no significant difference in the parasitism rate of the gall midge by a hymenopteran parasitoid Syntomernus asphondyliae (Hymenoptera: Braconidae) among sites. These results suggest that the drawdown zones can act as refuges for the plant to escape fruit infestation by the gall midge but do not function as refuges for the gall midge to escape from their hymenopteran parasitoids. Such differences may be due to the differences in the dispersal and host-seeking abilities of the insects.
著者
渡辺 恭平 郷右近 勝夫 前田 泰生
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.49-57, 2023-06-25 (Released:2023-06-28)
参考文献数
14

島根大学に標本が収蔵されている日本産コンボウヤセバチ類の寄主,訪花植物および分布を報告した.オオコンボウヤセバチGasteruption japonicum Cameron, 1888の寄主としてスミスメンハナバチHylaeus(Nesoprosopis)floralis(Smith, 1873),ヨーロッパメンハナバチH.(N.)pectoralis Förster, 1871,ニッポンメンハナバチH.(N.)transversalis Cockerell, 1924)(ムカシハナバチ科)およびオオジガバチモドキTrypoxylon malaisei Gussakovskij, 1933(ギングチバチ科)を初めて記録した.ヒメコンボウヤセバチG. boreale(Thomson, 1883)の寄主としてスミスメンハナバチとニッポンメンハナバチを初めて記録した.ミナミヒメコンボウヤセバチ(新称)Gasteruption sinicola(Kieffer, 1924)を西表島産の標本に基づき日本から新たに記録した.日本から5例目となるクボミコンボウヤセバチG. oshimense Watanabe, 1934を島根県から記録した.12科19種の植物を日本産コンボウヤセバチ科の訪花植物として記録した.日本産コンボウヤセバチ科の生態について考察した.
著者
小西 和彦 阿部 芳郎 佐々木 由香 宮浦 舞衣 小畑 弘己
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.117-120, 2022-09-25 (Released:2022-09-29)
参考文献数
9

We report that a nest of mud-dauber wasp, Sceliphron sp., was found in the Yagibara Shell Mound of Jomon cultural age in Chiba Prefecture, Honshu, Japan. This is the first record to be found nest of Aculeata from shell mounds. Though all Sceliphron species recorded from Honshu, Japan have been considered to be invasive insects, at least one species is considered to be native.
著者
溝端 丞之介 奥山 永 清 拓哉 高橋 純一
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.2-7, 2023-03-25 (Released:2023-04-13)
参考文献数
20

The yellow-legged hornet Vespa velutina was accidentally introduced into near Oita port in Japan, and firstly founded the colony in 2018. We estimated its origin by the morphological comparison among the subspecies of V. velutina, and also by the mitochondrial DNA sequence analysis. Our results revealed that the hornet which was collected in Oita was V. v. nigrithorax, and its mitochondrial DNA haplotypes unmatched the unique haplotype which present in Taiwan, China (Jiangsu), South Korea, and Japan (Tsushima, Iki, and Kitakyushu). These findings suggest that the origin of V. velutina in Oita is other regions, and seems to be introduced via the regular routes of cargo ships.
著者
浅野 涼太 小橋 皐平 小川 和也
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.92-96, 2020-09-25 (Released:2021-10-26)
参考文献数
21

We report the oviposition behavior, the time for the larvae to reach maturity, and the larval feeding behavior of Trox mitis fujiokai (Coleoptera: Trogidae) under laboratory conditions. A total of 89 eggs were obtained from seven females. The oviposition was continued 15.6±4.4 (mean±SD) days, and the number of eggs a day was 1.9±1.0. Eggs were separately laid in the soil (6.6±2.3 cm depth). The larvae hatched 10.1±0.4 days after oviposition. Hatched larvae moved to the ground surface and fed on chicken feathers. After feeding on a part of the feathers, each larva made a single tunnel, carried the uneaten feathers into the tunnel, and consumed them there. Mature larvae moved deeper into the soil and pupated (8.9±3.0 cm, N=3). Two adults emerged 11 days after pupating.
著者
尋木 優平 藤田 将平 原 秀穂 安達 修平 口木 文孝 徳田 誠
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.142-144, 2018-06-25 (Released:2019-10-09)
参考文献数
7

Outbreaks of two sawfly species were often observed at an urban park in Saga City, Kyushu since 2009. Their larvae severely defoliated Quercus dentata and Q. acutissima trees planted in the park from middle April to early May. One is Fagineura quercivora, which had been known only from the type locality, Ishikawa Prefecture, Honshu. This is the first record of F. quercivora from Kyushu, and Q. dentata and Q. acutissima are new host records for the sawfly. Its outbreak was observed in 2016 and 2017. This is the first report of the sawfly as a pest. The larvae of F. quercivora were also found in a secondary forest in Taku City, Saga Prefecture. Although the other sawfly was observed in 2009, 2010 and 2016 and defoliated only Q. acutissima, it has not been identified up to the present.
著者
阿部 東 寺山 博
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.93-103, 2009-09-25 (Released:2018-09-21)

日本産のクワガタムシ科7種の染色体を調査した.ツヤハダクワガタCeruchus ignariusは再調査に当たるが,精原細胞と減数第2分裂における染色体について,Gバンド染色,Cバンド染色,NOR染色による結果を新しく付け加え,核型構成はn=10,メタ8,サブメタ1,アクロのXY;ルイスツノヒョウタンクワガタNigiidius lewisiの染色体構成は,n=16,メタ15,サブメタX,点状Y,XYp;ルリクワガタPlatycerus delicatulusは雌の核型構成n=10,メタ8,アクロ1,アクロのX,精母細胞における染色体および性染色体の対合様式XYpなどを新しく付け加えた.ネブトクワガタAegus laevicollisはn=13,染色体構成はメタまたはサブメタ3,サブメタ6,サブメタまたはアクロが1,アクロ2,アクロのX,点状のXYp;キンオニクワガタPrismognathus dauricus n=13,サブメタ1,メタまたはサブメタ9,アクロ2,アクロX,点状Y,XYp;ヒラタクワガタの未調査の2亜種(ツシャヒラタクワガタDorcus titanus castanicola,イキヒラタクワガタD.t.tatsutai)n=6,メタ3,サブメタ2,サブメタX,点状Y,XYp;マグソクワガタNicagus japonicus n=10,メタ6,サブメタ3,メタのX,点状Y,XYpを明らかにすることができた.