著者
韓 哲舜 平崎 能郎 岡本 英輝 植田 圭吾 八木 明男 島田 博文 王子 剛 永嶺 宏一 並木 隆雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.112-118, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
17
被引用文献数
2 7

71歳女性。腰部脊柱管狭窄症の診断の下,長引く腰痛に対して神経・椎間板ブロックや投薬治療が行われていたが改善しないため,漢方治療目的に当科を受診した。身体所見では腰痛の他に頑固な便秘とこむら返り,間欠的な胸痛ならびに全身の強い冷えを認めた。また漢方的所見として強い瘀血と血虚を認めた。当帰四逆加呉茱萸生美湯エキスや通導散エキスにて加療するも改善が得られず入院加療となった。慢性的な瘀血と血虚に対して血府逐瘀湯加減,また間欠的な胸痛に対して烏頭赤石脂丸料をほぼ同時期に開始した所,冷えと腰痛の改善が得られた。本症例は慢性的な冷えと瘀血,血虚を改善する事で血行が促進されたため,冷えと腰痛の改善が得られた可能性が示唆された。
著者
大江 和彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.203-212, 2010 (Released:2010-07-01)
被引用文献数
2 2

国のIT戦略のひとつとして医療情報における標準化が推進されてきた。医療において病名情報は重要であり,病名情報をITにより正確に取り扱うためには,同じ病名にはただひとつの用語を割り当てるという標準化とともに,コンピュータで確実に処理できるように一つのユニークなコードを割り当て流通させる必要がある。標準病名マスターはこの目的で開発されたものである。用語の標準化は日本医学会の用語管理委員会で行われており,コードの割り当ては著者らの委員会が作業を行い,社会保険診療報酬支払基金と医療情報システム開発センターとからマスターコード表として2002年6月からリリースされている。メインテナンスは年に4回実施され,要望にもとづき追加,修正が行われており,用語総数は約22,000語,修飾語が約2,000語となっている。臨床で必要とされる病名情報には,医薬品適応症のようなレセプト請求時に必要となるものもあり,これらを網羅したマスターを作成することは技術的にも困難である。今後は,専門領域の概念の関係データベースであるオントロジーを構築し,それを活用した新しい枠組みが必要になるであろう。
著者
鈴木 達彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.15-24, 2012 (Released:2012-08-24)
参考文献数
25

吉益東洞は臨床経験を積んでいく過程の中で,『傷寒論』や『金匱要略』に収載される湯液方と,丸散方を組み合わせる兼用法による治療体系を確立していった。東洞の丸散方の処方集には古来の楽律である十二律の名称を採って整理した十二律方という独自の丸散方がある。東洞は身体の様々な症状は,飲食の留滞に起因する毒によってもたらされるという万病一毒説を唱え,十二律方は毒である飲食の留滞を取り除く目的で用いられた。また,毒を診断する方法に腹診を,毒によって表れる症状を『傷寒論』の証と対応させ,腹診—毒—丸散,見証—病状—湯液方という東洞の医学体系の枠組みを明らかにした。
著者
小川 恵子 並木 隆雄 関矢 信康 笠原 裕司 地野 充時 来村 昌紀 橋本 すみれ 大野 賢二 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.167-170, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

我々は,腰部脊柱管狭窄症による術後残存症状が漢方治療で軽快した1例を経験した。症例は,69歳,女性。主訴は,下肢のしびれ・冷感・疼痛。67歳時に脊柱管狭窄症と診断され,69歳時に腰椎椎弓除去術および腰椎後側方固定術を受けたが,術後も症状は持続した。また,手術縫合創も完治しなかった。このため,術後26日目に,漢方治療を目的として当科に転科となった。帰耆建中湯加烏頭を投与したところ,下肢冷感は著明に改善した。さらに,縫合創も処方後7日目でほぼ治癒した。帰耆建中湯加烏頭により,脊柱管狭窄症術後の残存症状が改善したばかりでなく,創傷治癒を促進したと推察された。
著者
宮西 圭太 平田 道彦 織部 和宏
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.240-246, 2019 (Released:2020-02-05)
参考文献数
15

手指痛に対して西洋医学的検査を施行した結果,関節リウマチなどの確定診断がつかない症例が一部に存在し未分化関節炎と称される。そのような症例に対する漢方エキス剤による治療成績を報告する。対象は62症例(男性5名,女性57名,平均年齢49.7歳)であった。手指痛症例は寒証の傾向が強く,気血水では瘀血や気鬱と判断された症例が多かった。有効群は29症例(47%),軽度有効群は10症例(16%),無効群は23症例(37%)であった。最も多く使われた方剤は加味逍遥散(30症例)であった。多くの症例で複数の漢方エキス剤を併用で用いており,加味逍遥散と桂枝加苓朮附湯の併用は9症例あり,そのうち8症例が有効だった(有効率89%)。明確な診断がつかない手指痛の漢方治療では,寒証,瘀血,気鬱の傾向が強く,散寒祛湿の効能をもつ方剤や駆瘀血剤・理気剤で対応した症例が多かった。
著者
林 明宗 佐藤 秀光
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.142-146, 2011 (Released:2011-07-08)
参考文献数
14
被引用文献数
5 7

【目的】脳腫瘍治療の合併症である頭皮放射線性皮膚炎は火傷の一種であり,現状ではステロイド製剤がその治療の主役となっている。今回,火傷を保険適応とする紫雲膏の頭皮放射線皮膚炎に対する治療効果を検討した。【方法】悪性脳腫瘍症例22例(全脳照射9例,局所照射13例)を対象とした:男/女=12/10例。51~74歳(平均63.1歳)。疾患内訳:悪性神経膠腫13例,脳悪性リンパ腫6例,転移性脳腫瘍3例。症状内訳(重複あり):発赤18例,灼熱感をともなう疼痛13例,瘙痒感13例,皮膚びらん3例。治療効果は自覚症状の改善度により以下のように判定した:著効(改善度80%以上),有効(改善度50%以上),やや有効(改善度50%未満),無効(改善度30%未満)【成績】著効16例,有効6例で,全例に良好な治療効果を認めた。【結論】紫雲膏は組織修復作用にも優れ,ステロイド製剤にかわる放射線性皮膚炎に対する有用な薬剤として期待できる。
著者
島田 光生 森根 裕二 池本 哲也 吉川 幸造 高須 千絵
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.162-166, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
19

近年,漢方はがん医療において重要な役割を果たしている。免疫チェックポイント阻害剤ががん免疫療法の主流となった新たな時代における漢方の抗癌作用の可能性につき自験例を踏まえ考察した。免疫力強化と漢方に関しては,従来からの癌免疫の増強,特に自然免疫を主眼とする機序に関しては多く報告されてきている。一方,新しい免疫抑制の解除機構(免疫の逃避機構の阻害)における漢方の新たな可能性については,我々の十全大補湯が膵癌患者の調節性T 細胞比率を低下させる報告や免疫チェックポイントタンパクCTLA-4とも密接に関係する分子の発現を回復させるといった報告の如く,漢方が免疫抑制を解除する報告が散見され始めた。漢方の中にはいわゆる免疫チェックポイントを発動し,心臓移植片の免疫寛容誘導や,腸管炎症を抑制するとの報告があり,今後の新たな展望として,漢方を免疫チェックポイントの面から考えることが重要である。
著者
穂積 桜 星野 卓之 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.45-49, 2016-01-20 (Released:2016-05-27)
参考文献数
31

良枳湯は右上腹部痛を目標に処方されてきた方剤であるが,使用目標についてひとつの施設で複数の症例を検討した報告は少ない。今回,10年間の当研究所における良枳湯処方例を後方視的に,症例提示や過去の症例報告との比較を含めて検討した。当研究所で良枳湯が処方された21例中,有効と判断されたのは11例であった。そのうち,10例が右上腹部痛を有していた。また11例中7例において,腹部膨満感を訴える症例が認められた。今回の検討結果から,良枳湯は多くの有効症例において右上腹部痛を目標に処方されており,右上腹部痛は本方の妥当な投与目標と考えられた。その一方で,腹部膨満感を訴える症例も多く認められたことから,本法の投与目標のひとつとなりうる可能性が示唆された。
著者
中村 佳子 田原 英一 三潴 忠道 木村 豪雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.669-674, 2011 (Released:2011-12-27)
参考文献数
21

漢方治療が奏効した再燃性胆管炎の1例を報告した。症例は31歳,女性。先天性胆管拡張症にて肝部分切除と胆管空腸吻合手術を受けたが,29歳頃から頻回に胆管炎を繰り返し,抗生剤による治療を受けていた。患者は挙児希望で,抗生剤の使用量を減らす為に漢方治療を希望し,当科を受診した。茵蔯蒿湯を基本処方とし大柴胡湯などで随証治療を行い,抗生剤の使用量を顕著に減量でき,妊娠出産に到った。妊娠中の経過は良好であった。胆道再建術後の再燃性胆管炎に対し,漢方治療は試みられてよいと考えられた。
著者
木村 容子 佐藤 弘 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.22-28, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
20

片頭痛の治療では発作時の痛みだけでなく,ストレス,月経,疲れなど誘発・増悪因子の治療も重要である。陰虚証で過度の疲労や寝不足,更年期症状などが重なると気血両虚を背景として月経後期に頭痛が起こるがある。全体の経血量が多くない場合でも月経2-3日目で比較的多く出血した後,月経4-5日目から起こる頭痛に補気補血作用のある十全大補湯が有効な症例を経験した。症例1から4を具体的に提示する。症例1では日々の服用を温経湯から十全大補湯に変更し,他の症例では月経期間の7日間のみ,十全大補湯を当帰四逆加呉茱萸生姜湯に追加(症例2)あるいは当帰芍薬散から十全大補湯に変更(症例3-4)した。十全大補湯で月経後期の頭痛が改善した9症例では,冷え(9/9例),易疲労感(9/9例)や乾燥症状(7/9例)を認めた。月経後期の片頭痛には十全大補湯が有効な場合があるが,投与量や服用期間は気血両虚の程度で調整する必要がある。
著者
福嶋 裕造 井藤 久雄 田頭 秀悟 栁原 茂人 中村 陽祐 藤田 良介 山下 和彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.35-41, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

急性腰痛症に対して非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs, non-steroidal anti-inflammatory drugs)を用いたが効果が得られないため,大黄牡丹皮湯と四物湯を併用して用いて効果が得られた3症例を経験したので報告する。 症例1は86歳の男性で,症例2は56歳女性でありいずれも急性腰痛症と診断した。症例3は69歳男性で急性腰痛症,軽度の左根性坐骨神経痛と診断して治療した。全症例とも1から2週間の投薬で腰痛等の症状が軽快した。『万病回春』の調栄活絡湯の方意に準じて,大黄牡丹皮湯と四物湯を併用した。急性腰痛症に対する漢方治療において大黄牡丹皮湯と四物湯の併用による治療は有用であると考えられる。
著者
西田 清一郎 佐藤 広康
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.638-642, 2011 (Released:2011-12-27)
参考文献数
17

症例は,耳鳴りを主訴に来院した70歳の男性。釣藤散の服用後,耳鳴りは,約10ヵ月で改善しそれまでにあった頭痛も改善した。しかし,釣藤散を減量後に,それまで見当たらなかった高血圧症が,みられるようになった。再度,釣藤散を通常量に戻したところ,投与開始日から,速やかに高血圧の改善を認めた。高齢者の耳鳴りを釣藤散はよく改善する可能性がある。また,本例から,釣藤散は,高血圧の程度が軽度で,深刻な合併症がない症例であれば,患者の随伴症状の治療とともに,投与でき,その降圧作用は,即時的に表れる可能性が示唆された。
著者
山本 昇吾 藤東 祥子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.347-358, 2011-05-20
参考文献数
28

再発性眼疾患に対して再発防止の目的で漢方治療を行った症例を呈示し,漢方治療の有効性について考察した。<br>眼科漢方30年の経験の中で,再発予防を目的として漢方治療を施した症例は27例あった。疾患の内訳は,再発性麦粒腫,再発性多発性霰粒腫,再発性結膜下出血,再発性糸状角膜炎,再発性角膜ヘルペス,Posner-Schlossman Syndrome,中心性漿液性脈絡網膜症,再発性硝子体出血であったが,随証治療の原則に従い,継続的に漢方治療を施したところ27例中12例で3年以上にわたって再発を認めなかった。<br>再発性眼疾患に対する再発防止は一般に困難と考えられているが,これらの結果は再発性眼疾患に対する漢方治療の有効性を示唆するもので,漢方は今後も試みるべき治療であると考える。また,今回の検討から,再発性疾患に対して治療を施した場合にその治療が有効であると言えるまでの年数に関する一つの基準として3年~4年が妥当ではないかと思われた。
著者
堀野 雅子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.27-31, 2010 (Released:2010-06-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

リベド血管炎は,日常診療上対応に苦慮する皮膚疾患のひとつである。リベド血管炎と診断され,難治性の下肢の多発性潰瘍が,漢方治療によって奏効した一例を経験した。症例は23歳の女性で,X‐2年春より打撲傷のような皮疹が出現し,他病院にてリベド血管炎という診断を受けた。X年4月より両下肢に有痛性潰瘍が多発しはじめ,西洋医学的標準治療に抵抗した。X年5月6日より当院漢方治療を開始,約4カ月で有痛性潰瘍は消失した。薬剤は当帰四逆加呉茱萸生姜湯を主に,加工附子末,排膿湯,千金内托散,伯州散,当帰芍薬散を使用した。リベド症状は残っており,完治には長期治療を有すると思われるが,激痛を伴う潰瘍から開放されて,日常生活は正常に戻った。
著者
松井 龍吉 小林 祥泰
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.285-290, 2007-03-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

重症肺炎後の呼吸不全状態に対し在宅酸素療法を導入した症例に対し, 清肺湯を投与したところ, 呼吸不全の状態から離脱できた症例を経験した。症例は76歳男性。高血圧症などにて外来治療中, 平成16年2月27日肺炎にて当院入院。抗生剤投与などにより炎症反応の陰性化が見られた後も低酸素血症が続いたため, 在宅酸素治療を導入した。その他の内服薬を変更することなく清肺湯を追加投与したところ低酸素血症が改善し, 画像上も器質的変化が著明に改善し, 在宅酸素治療を中止した。清肺湯は肺の熱をさます作用を持つとされ, 気道のクリアランスを亢進させ肺胞などの炎症反応を抑制するとされている。本症例の場合も肺炎後の変化に対し清肺湯が改善効果を示し, 器質的変化を僅かに残存させるのみで呼吸不全からの離脱に寄与したと考えられた。
著者
西森(佐藤) 婦美子 松川 義純 松田 康平 木田 正博 斉藤 輝夫 藤原 久義
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.721-726, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
2

小半夏加茯苓湯の方意を含む漢方薬治療で症状の著明改善が図れたパニック障害の3例を経験した。症例1:47歳男性,運転士,血圧上昇を伴う一過性脳虚血発作を引き金に発症。身体疾患の発症がストレスを増強させ心下の気水が鬱して痰熱となりパニック発作になったと考えられる。小半夏加茯苓湯に黄連湯の方意をあわせて症状は消失した。症例2:49歳女性,主婦,家庭内のストレスをきっかけに発症。肝血不足,疎泄不良と脾虚が重なり心下の飲を起こしたと考え,小半夏加茯苓湯を含む茯苓飲合半夏厚朴湯エキスに加味逍遙散エキスを合わせて奏効した。症例3:32歳女性,主婦,子育ての疲労をきっかけに発症。疲れによって脾虚から心下の飲がおこるとともに血虚に陥ったと考え,小半夏加茯苓湯と十全大補湯合方を用い奏効した。『金匱要略』の方剤小半夏加茯苓湯は,中焦の飲と気の上逆を引き降ろすことで「心下痞」「眩悸,」を全例で改善し,症例毎に随証治療をあわせおこなうことでパニック発作が消失した。