著者
山川 正 鈴木 淳 永倉 穣 重松 絵理奈
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.28-33, 2015 (Released:2015-06-29)
参考文献数
33
被引用文献数
1

糖尿病患者の不眠の頻度は高く,睡眠の質の低下はHbA1c の上昇との関連が認められており,不眠の改善が重要である。今回,酸棗仁湯が2型糖尿病患者の不眠に有効であった2症例を経験した。症例1は58歳男性。罹病期間10年の糖尿病で,インスリンにてHbA1c は7%代であった。数ヵ月前より不眠となり,酸棗仁湯を投与し2週間で不眠は消失した。症例2は79歳男性。罹病期間15年の糖尿病で,経口薬にてHbA1c は7%代。1年前より不眠症となり,酸棗仁湯投与にて,不眠は徐々に改善した。酸棗仁湯は2型糖尿病患者の不眠に有用であると思われた。
著者
寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.57-66, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
10

三焦は漢方医学における六腑の構成要素のひとつである。このものと体内の如何なる臓器が関連するかについての論考は『井見集』に初出し,その後大友一夫により臓側腹膜(腸間膜)と対応するとの学説が呈示されている。 最近,腸間膜に関する総説が The Lancet 誌に公表されたが,これには腸間膜を一つの臓器として認識すべきことが提案されている。大友学説は1980年に公表されたものであるが,本稿は最新の解剖学的知見を基にその学説の妥当性を論じる事を意図した。
著者
村井 政史 矢野 博美 大竹 実 岩永 淳 犬塚 央 貝沼 茂三郎 田原 英一 三潴 忠道
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.906-911, 2010-11-20
参考文献数
24

通脈四逆湯の附子を烏頭に変更し奏効した2例を報告した。1例目は33歳の女性。皮疹および瘙痒感を認め,通脈四逆湯を投与し白河附子を14gまで漸増したが改善しなかった。そこで冷えが極めて強いために,通脈四逆湯の白河附子を烏頭に変更したところ,皮疹および瘙痒感が改善した。2例目は42歳の男性。泥状便および全身倦怠感を認め,通脈四逆湯を投与し炮附子を10gまで漸増したが改善しなかった。そこで冷えが極めて強いために,通脈四逆湯の炮附子を烏頭に変更したところ,普通便となり全身倦怠感が改善した。附子を用いた通脈四逆湯では改善しない寒の強い病態においては,附子を烏頭に変更すると有効な場合がある。
著者
木下 恒雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.607-611, 1994
被引用文献数
1 2

柴葛解肌湯 (浅田家方) は小柴胡湯と葛根湯の合方から人参と大棗を去り石膏を加えた合方的薬方であり, 薬方の構成や出典の記載内容から太陽病と裏的少陽証の併病に運用されるべきものと思われる。一方, 併病の治療において, このような病態に対しては太陽病と陽明病の治療原則に倣い先表後裏で対応するのが原則と思われるが, 本方証では例外的に表裏双解的効果を狙ったものと思われる。呈示した, かぜ症候群の症例は当初麻黄湯証と思われたが, 初診の翌日には裏的少陽証への転属すなわち太陽病と裏的少陽証の併病に移行したと診断した。そこで本方を用いたところ, 短時日で症状軽快をみた。このことは太陽病と裏的少陽証の併病の一病態に対する本方の有意性の一端を示すものではないかと思われる。併病治療に際しては治療原則を勘案の上, 本方証の如き例外的な薬方の運用もあることを念頭に置いておくべきではないかと思う。
著者
木村 容子 清水 悟 杵渕 彰 稲木 一元 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.897-905, 2010-11-20
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

緒言:桂枝湯エキスと麻黄附子細辛湯エキスの併用が有効な冷えのタイプを検討した。<BR>症例提示:麻黄附子細辛湯エキスに桂枝湯エキスを追加して,胃もたれの軽快とともに,長年の冷えも改善した一例を挙げた。この症例を参考にして当初より同処方を併用し,症例1は冷え,食欲不振,倦怠感や関節の動きが悪い,症例2は冷え,悪寒しやすい,疲れやすい,胃もたれ,風邪を引きやすいなど,症例3では悪寒を伴う全身の冷えや倦怠感,月経痛などが改善した。<BR>対象と方法:冷えを訴え,随証治療にて桂枝湯エキスと麻黄附子細辛湯エキスを投与した患者43名を対象とした。随伴症状,体質傾向や診察所見など52項目を説明変数とし,冷えの改善の有無を目的変数として多次元クロス表分析により検討した。<BR>結果:「悪風または悪寒」と「全身の冷え」を含む組み合わせが臨床的に最適な効果予測因子となった。<BR>考察:悪寒や悪風を伴う全身の冷えがあり,頭痛を訴え,下痢がない場合に有効な可能性が高い。
著者
矢野 博美 田原 英一 山田 靖子 山内 俊彦 吉永 亮 犬塚 央 久保田 正樹 平田 道彦 栗山 一道 三潴 忠道
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.13-22, 2014 (Released:2014-07-22)
参考文献数
22
被引用文献数
1 3

58歳男性。20年来の2型糖尿病を放置し,糖尿病足病変を発症した。HbA1c10.8%(JDS)でトリオパチーを合併していた。発症12日後に漢方治療を希望して当科に転院した。右足全体は浮腫状で,第4・5趾間と足背に潰瘍(約7 × 4 cm と 5 × 4 cm)を認め,骨髄炎を合併していた。抗生剤,インスリン,プロスタグランディン製剤とともに,漢方治療は小腹不仁を目標に八味地黄丸料を用い,瘀血を改善する目的で桂枝茯苓丸大量投与(自家製剤2 g × 24丸/日)を7日間行い漸減した。その後,八味地黄丸料を自家製剤に変更し,肉芽形成促進を期待して帰耆建中湯(黄耆20 g)に転方した。経過中に右第5趾の骨が露出したが,潰瘍は退院時(発症50日)に2.5 × 1.8 cmに縮小した。発症約2ヵ月後には潰瘍部分が上皮化して包帯が不要になり,4ヵ月後に治癒した。漢方治療は糖尿病足病変に有効で治癒を早める可能性があると考えた。
著者
山本 篤志 福永 智栄 新沢 敦 堀江 延和 米谷 さおり 長濱 通子 藤原 進 山田 陽三 福永 淳 錦織 千佳子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.133-139, 2018 (Released:2018-11-08)
参考文献数
18

ステロイド忌避を含む難治性のアトピー性皮膚炎(AD)患者で顔面に皮疹を有する12名を対象に,白虎加人参湯エキスに石膏末を加味した方剤を4週間投与し,AD 診療ガイドラインに基づく皮疹の重症度スコア,痒みVAS,生活の質(Quality of life)の指標であるSkindex-16および各種血液検査を行い,有効性を前向きに評価した。 また,どのような証(漢方医学的に把握した病態)に有効かを後ろ向きに調査した。 その結果,内服4週間で重症度スコアとSkindex-16の平均が有意に低下した。好酸球数,IgE 抗体,TARC 値は有意な低下を認めなかった。白虎加人参湯と同様で「暑がり」,「汗かき」の証を有する患者に有効であった。4週間という短期間で皮疹が改善したことより,ステロイド忌避を含む難治性アトピー性皮膚炎患者に使用する内服薬の選択肢の1つになりえると考えた。
著者
磯部 哲也
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.264-273, 2016 (Released:2016-11-22)
参考文献数
19

【緒言】月経前症候群(PMS)は月経前3∼10日に限定する愁訴と定義されイライラが精神的症状の中で最多である。【対象】月経前のイライラを主訴に受診し鍼治療を行なった30人を治療群とし,同症状で無治療の22人をコントロール群とした。【方法】精神症状の程度はSRS—18質問票を用いて測定した。治療群に対して1週間に1回のペースで計6回(1 クール)の施術を行った。SRS 合計点数20以上40未満の症例を両群から選出して連続する月経周期での点数を比較検定した。【結果】SRS 合計点数に関して,選出治療群17症例と選出コントロール群7症例の間および選出治療群の治療前後で統計学的有意差を認めた(P = 0.0080,P = 0.00025)。73.3%(22/30)の症例が治療効果に満足されイライラを含むすべての症状が平均43%の程度に改善した。【結論】PMS の精神症状が1クールの鍼治療によって改善した。
著者
篁 武郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.161-163, 2016 (Released:2016-08-18)
参考文献数
11

症例は54歳女性。約1年前に職場で殴られて以降,全身の痛みが出現し,元来よりあった冷えが増悪した。恐傷腎による陽虚水泛と診断して桂枝加苓朮附湯を主体に八味丸を兼用したところ症状が軽快した。主として桂枝加苓朮附湯の補腎利水作用による効果と考えられた。
著者
大岡 均至
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-6, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】スニチニブ投与に合併する口腔粘膜炎(OM)に対する半夏瀉心湯(HST)含嗽の臨床的有用性につき検討する。【対象と方法】対象はOM を発症した22例。12例に対してはHST を2.5g∗3回,食後30秒間含嗽後飲食を控えるよう指導(HST 含嗽群),他の10例に対しては含嗽以外の治療を行った(HST 非含嗽群)。治療前後における,KPS・OM グレード・体重・アルブミン(Alb.),ヘモグロビン(Hb.)・摂食状況の変化につき検討した。 【結果】HST 非含嗽群におけるOM グレードや摂食状況の改善は不良であったが,含嗽群では,開始翌日からOM は改善,摂食も好転し,体重・Alb.・Hb. 低下を認めなかった。【考察】HST は,含嗽により癌化学療法に伴うOM に対しても有効である。含嗽によりOM がより早期に改善し,摂食が好転することで,全身状態の増悪が軽減されたものと考えられる。
著者
笠原 裕司 小林 豊 地野 充時 関矢 信康 並木 隆雄 大野 賢二 来村 昌紀 橋本 すみれ 小川 恵子 奥見 裕邦 木俣 有美子 平崎 能郎 喜多 敏明 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.519-525, 2009 (Released:2010-02-23)
参考文献数
16
被引用文献数
4

奔豚と思われた諸症状に呉茱萸湯エキスと苓桂朮甘湯エキスの併用が奏効した症例を6例経験した。5例はパニック障害,1例は全般性不安障害と推定され,6例いずれも,動悸,吐き気,めまい,頭痛やそれらに随伴する不安感などを訴えて,肘後方奔豚湯証と考えられた。呉茱萸湯エキスと苓桂朮甘湯エキスの併用投与で症状軽快し,あるいは肘後方奔豚湯からの変更で症状は再発しなかった。呉茱萸湯エキスと苓桂朮甘湯エキス併用は肘後方奔豚湯の代用処方として奔豚の治療に有効である可能性が示された。
著者
山本 修平 西森(佐藤) 婦美子 大前 隆仁 武原 弘典 松川 義純
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.89-92, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
3
被引用文献数
2

芎帰調血飲は,気血両虚から来る様々な症状,特に出産後に用いられる処方であるが,代表的な補気剤である人参,黄耆は含まれていない。万病回春には様々な加減法の記載があり,人参,黄耆を加える方法も述べられている。 今回,無月経加療中の労作時呼吸困難,全身倦怠感の33歳女性の1例と出産後の全身倦怠感,月経不順,頭痛の39 歳女性の1例を報告する。いずれも気虚の症状が強く前者では芎帰調血飲エキスに補中益気湯エキスを,後者では停飲の所見も伴ったため,芎帰調血飲エキスに六君子湯エキスを併用し短期間で症状改善を得ることができた。芎帰調血飲を使用する際は,気虚の要素が多くみられる場合,補気剤の併用が有効である可能性が示唆された。
著者
井上 博喜 岡 洋志 八木 清貴 野上 達也 小尾 龍右 引網 宏彰 後藤 博三 柴原 直利 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.861-865, 2007-09-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
28

呉茱萸湯が奏効した難治性のあい気の一例を報告した。症例は74歳の女性。あい気, 腹部膨満感, 食欲不振のため7回の入院歴があり, 様々な方剤で加療されたが, 症状は消長を繰り返していた。呉茱萸湯を投与したところあい気はほぼ消失し, 食欲も改善した。あい気に使用される方剤は少陽病の方剤が多いが, 陰証で心下痞こうと胸脇苦満を伴うあい気には呉茱萸湯が有効である可能性が示唆された。
著者
伊藤 隆 渡辺 賢治 池内 隆夫 石毛 敦 小曽戸 洋 崎山 武志 田原 英一 三浦 於菟 関矢 信康 及川 哲郎 木村 容子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.195-201, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
1

東洋医学論文には東洋医学を西洋医学のルールで論じることに起因した特異性がある。西洋医学に比較すると,人文科学的要素の多い東洋医学では記述が主観的になる傾向がある。目的,方法,結果,考察は,論文内容を客観化させ,査読者と読者の理解を容易ならしめるために必要な形式と考えられる。より客観的な記述のためには,指定された用語を用いることが理想であるが,現実的には多義性のある用語もあり,論文中での定義を明確にする必要がある。伝統医学では症状と所見と診断の区別が不明瞭な傾向があるが,科学論文では明確に区別して記述しなくてはいけない。新知見を主張するためには,問題の解決がどこまでなされているかをできるだけ明らかにする必要がある。投稿規定の改訂点である,漢方製剤名の記述方法,要旨の文字数,メール投稿について解説した。編集作業の手順について紹介し,再査読と却下の内容に関する最近の議論を述べた。
著者
高木 嘉子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.541-545, 1995-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
3
被引用文献数
1 7

治打撲一方は, 香川修庵により創方された処方であるといわれ, 打撲, 捻挫, 疼痛等に用いられる薬方である。打撲直後より, 数日経たものに用いる場合が多い。打撲や捻挫の既往のあるもの18例に, 臍右横1~2横指附近に放散する圧痛と抵抗を認め, 本湯の服用により症状の改善・軽減とともに, 圧痛・抵抗の軽減または消退を認めた。また1例ではあるが, 打撲の新しいものでは, 圧痛・抵抗は認められず, 日を経てから出現していた。既往の古いもの, 40年経過しているものにも, 圧痛と抵抗を認め, 本湯の服用により, 症状も圧痛, 抵抗も消退した。打撲歴と, 圧痛抵抗を目標に投薬して著効を得たことから, 治打撲一方の腹候の一つとして有効性があると思われるので報告したいと思う。
著者
藤本 誠 森 昭憲 関矢 信康 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.655-660, 2004-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

帰耆建中湯が有効であった潰瘍性大腸炎の2症例を経験した。症例1は35歳, 男性。他院にて潰瘍性大腸炎と診断され, ステロイド治療などの内科治療を受けたが寛解に至らず, 漢方治療を希望して当科紹介受診。帰耆建中湯を投与したところ約2週間の内服で腹痛・粘血便・下痢が消失して退院した。症例2は28歳, 女性。他院にて潰瘍性大腸炎と診断され, ステロイドパルス療法, 顆粒球除去療法などを繰り返し, 発症後10年が経過していたが寛解に至らず, 1日10回以上の腹痛を伴う粘血便・下痢を主訴に当部を受診した。帰耆建中湯加文葉山東阿膠の約4週間の服用で腹痛・粘血便・下痢が消失した。今回の経験から, 帰耆建中湯が潰瘍性大腸炎の治療方剤の一つになり得る可能性が示された。
著者
玉木 香 谷口 典正 松畑 出 金井 成行
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.555-560, 2005-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

糖尿病に対して灸と牛車腎気丸がどのような効果を及ぼすかを糖尿病が自然発症するOLETFラットと発症しないLETOラットを用いて検討した。雄性OLETFラット5週齢18匹と雄性LETOラット5週齢6匹を4群に分けた。I群は, 腎兪と脾兪相当部位に週2回灸を行った。II群は, 牛車腎気丸 (1000mg/kg) を週5回強制経口投与した。III群 (OLETF) とIV群 (LETO) は, 無処置にした。刺激前後の体重, 血糖値, 尿中微量アルブミン, 痛覚域値, 血流量を測定し, 32週齢の腎臓と膵臓の組織を観察した。I II III群は, 生長とともに体重, 血糖値および尿中微量アルブミンともIV群に比べて, 有意な増加が認められた。ただしI II群はIII群に比べて増加抑制がみられた。痛覚閾値では, I II群はIII群に比べて, 遅延抑制が認められた。血流量は, I群でのみ低下抑制が認められた。組織では変化が認められなかった。灸及び牛車腎気丸は, 糖尿病の発症・進行抑制に少なからず効果があると考えられた。
著者
神谷 浩
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.147-150, 1994-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12
被引用文献数
2

抜歯後の疼痛発現時に, 立効散エキス顆粒を1包 (2.5g) 服用させ, 鎮痛効果を調べた。被験対象は20例である。鎮痛効果の判定では, 有効が13例 (65%), やや有効が4例 (20%), 無効が3例 (15%) であった。抜歯後疼痛が軽度の場合, 服用後13例すべて無痛になった。抜歯後疼痛が中等度の場合, 5例のうち4例は服用後軽度になったが, 1例は服用後も疼痛が軽減しなかった。抜歯後疼痛が強度の場合,服用後2例とも疼痛が軽減しなかった。立効散エキス顆粒は, 普通抜歯で抜歯後疼痛が軽度と予想される場合は十分な鎮痛効果が期待できるが, 難抜歯で抜歯後疼痛が中等度以上と予想される場合は十分な鎮痛効果が期待できないと思われる。自覚的な副作用は20例すべてに認められなかった。