著者
濱地 正嵩 吉本 則子 山本 修一
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.187-191, 2017-12-15 (Released:2017-12-29)
参考文献数
17

拡散係数(分子拡散係数あるいは相互拡散係数)Dmは,クロマトグラフィーや乾燥などさまざまな分離操作・装置の設計に必要な重要な物性値である.また,物質の大きさを知るための重要な情報でもある.拡散係数の測定のために,さまざまな方法が開発され使用されているが,とくに分子量の大きいタンパク質やDNA,さらにはバイオナノ粒子のDmは,ほとんど報告されていない.本研究では,タンパク質および修飾タンパク質(PEG化タンパク質)のDmを比較的簡単な測定操作と装置が簡便である細管内層流速度分布を利用したTaylor法と動的光散乱法で測定した.どちらの方法でもほぼ同じDm値を得ることができた.ただし,それぞれの方法には特徴と問題点があるので,よく理解して相補的な方法として使用することが望ましい.
著者
牧野 義雄 藤澤 浩子
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.147-154, 2001-12-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

近年, 醤油の消費量が漸減する一方, 嗜好の多様化を反映して加工調味料の需要が増える傾向にある [1] .とくに, 高濃度の天然調味料を含むストレートつゆの需要が増加している.しかし, 微生物の増殖を抑制する成分が希薄であるため, 主原料の醤油から移行する微生物によって容易に腐敗する [2, 3] .さらに, 消費者が食品添加物を敬遠する傾向があるため, 製造者は保存料の使用を控えざるを得ない現状にある.このため, ストレートつゆに対しては, 厳密な衛生管理が必要となる.そこで本研究では, 醤油中に生存する耐熱性菌を分離・同定し, つゆ中での残存および増殖状況を調査した.醤油工場から提供された濃口醤油を100℃で10min加熱し, 市販ストレートつゆの平均値と同じ成分[4] に調製した栄養寒天培地上に塗抹した.出現した2種のコロニーを再度塗抹・培養した.それぞれKP-991およびKP-992株と命名し, 斜面培地上で冷蔵保存した.分離株及び基準株であるBacillus amyloliquefaciens (Fukumoto) Priest et al.IFO-15535, B.subtilis Cohn IFO-13719, B.megateyium de Bary ATCC-14581を以後の試験: に供した.なお, 分離株の生理活性試験と16srDNA解析は, (株) NCIMBJapan (静岡県清水市) に依頼した.既報 [5] に準じて調製した5種の菌株の芽胞懸濁液を90℃で0~45min加熱し, 生存芽胞数を計測した.次に, 野口 [4] の方法でストレートつゆを試作し, 各段階での生存芽胞数を計測した.濃口醤油, 味醂, 上白糖およびグルタミン酸ナトリウムを混合・溶解し, 滅菌濾過して調製した“かえし”2.5mlに, 先に調製した芽胞懸濁液0.1mlを添加し, 80℃で1min加熱した後の生存芽胞数を計測した.鰹節, 宗田節, 鯖節を水道水とともに加熱し, 滅菌濾過して“だし”を調製した.2.6mlの“かえし”と7.5mlの“だし”を混合し, 85℃, 15minおよび90℃, 30min加熱した後の生存芽胞数をそれぞれ計測した.肉汁培地 [6] で前培養した供試菌株を2種の市販ストレートつゆS-AおよびS-B (別に成分分析を実施) に添加して, TN-2612バイオフォトレコーダー (アドバンテック東洋 (株) , 東京) で培養し, 660nmでの吸光度を経時的に測定するとともに, 検量線から乾燥菌体質量 (g・1-1) を算出した.KP-991およびKP-992株の性状をTable1に示した.カタラーゼ陽性を示し, 好気条件下で生育可能な有芽胞桿菌であることから, Bacillus属細菌と考えられた [7] .また, 50℃での生育性, 10%食塩中での生育がともに陽性で, 絶対好気性, 硝酸塩還元陽性を示すことから, 両株はB.subtilisまたはB.amyloliquefaciensである可能性が示唆された [7] .さらに, β―ガラクトシダーゼ陰性およびクエン酸を利用しないことから, B.amyloliquefaciensと同定された [7] .しかも, 16srDNA解析の結果, 両株ともB.amyloliquefaciensとの相同率が最も高いと判定された (MicroSeqTM (Applied Biosystems Japan (株) , 東京) のデータベース) .主な醤油の汚染菌はB.subtilisであると報告されているが [8, 9] , B.aynyloliquefaciensの汚染に関する報告は過去に見当たらない.ただし, この種は以前, B.subtilisに含まれていたため [10] , 醤油から分離されたB.amyloliquefaciensがB.subtilisと報告されていた可能性がある.KP-991およびKP-992株およびB.amyloliquefaciensの基準株は, B.subtilisおよびB.megateriumの基準株よりも熱に対して安定であった (Fig.1) .さらに, 前者の3株は, ストレートつゆの試作品中に最終的に残存することが確認された (Fig.2)
著者
高橋 康明
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.171-175, 2015-06-15 (Released:2015-11-16)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
岡本 佳乃 野村 明 山中 晶子 丸山 進
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.149-154, 2009-09-15 (Released:2015-06-27)
参考文献数
13

エンドセリン-1(ET-1)は強力な血管収縮因子や表皮メラニン細胞の分裂促進因子として知られており,紫外線刺激による色素沈着の原因物質の一つとして知られている.我々は,以前にハヤトウリ(Sechium edule)果実抽出物に紫外線で誘導される表皮角化細胞でのET-1産生を抑制する効果があることを報告した.今回,ハヤトウリ果実抽出物のメラニン生成への影響を検討し,さらに,含まれているポリフェノール量を測定したので報告する.本実験では表皮角化細胞と表皮メラニン細胞から構成されているヒト皮膚三次元モデルを使用し,色素沈着の観察とメラニン定量を行った.ハヤトウリ果実抽出物は黒色化を抑制し,メラニン生成量も抑える効果が観察された.また,ハヤトウリ果実抽出物にはチロシナーゼ酵素活性の阻害は見られなかった.ポリフェノールのHPLC-クーロアレイ法での分析結果から,乾燥物重量1gあたり,ルテオリン6.6μg,フェルラ酸5.6μg,p-クマル酸3.3μg,バニリン酸6.1μg,プロトカテク酸1.5μg,p-ヒドロキシ安息香酸0.8μgが含まれていることが明らかとなった.これらのポリフェノールなどの複合物がメラニン生成抑制作用を示しているのではないかと考えられる.
著者
酒井 孝 幸田 理恵 新海 陽介 大楠 秀樹
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.35-40, 2019-06-15 (Released:2019-06-29)
参考文献数
7

パスタが押し出される時に,パスタの押出し用ダイスは様々な方向にいくつかの応力を受ける.この応力を定量的にかつ正確に見積もることができれば,パスタダイスと押出しマシンの設計において役立つ.このような背景のもとで,塑性加工シミュレーションソフト・DEFORM-3Dを用いて,応力の定量評価とパスタ流れの可視化を行った.その結果,(1)パスタの変形抵抗式をσ=0.033 MPaと見積もった.(2)ダイスの応力分布を定量的に評価したところ,ダイスの縁で最大σeq=18.3 MPaであることがわかった.(3)コンテナ内のパスタ流れを明確に可視化した.(4)パスタダイスの異なる穴で流速が異なることを明らかにした.
著者
井口 亮 川井 清司 羽倉 義雄
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.13-20, 2012-03-15 (Released:2015-06-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1

誘電特性は試料の構造,組成,相,温度などの物理的な要因と関連がある.そのため,これらの物性を利用した測定法は試料の構造を把握する有効な手段となる.また,この測定法では非破壊測定が可能である.この研究において,我々はヨーグルト中の気泡が誘電特性(複素静電容量)に及ぼす影響を調べた.ベースヨーグルトに気泡を分散させることにより試料を準備し,ヨーグルト内の気泡量や気泡サイズが誘電特性に及ぼす影響を検討した.その結果,ヨーグルト内の気泡量の増加に伴って静電容量は増加した.さらに,ヨーグルト内の気泡径の減少に伴って静電容量は増加した.これは,気-液界面における界面動電現象が静電容量の増加に寄与していると考えられる.一方,50 Hz-1 MHz範囲でベースヨーグルトと気泡含有ヨーグルトの複素静電容量の測定を行い,これらの測定値を基にCole-Coleプロットを描いたところ,両サンプルの円弧の大きさに明瞭な違いが見られた.Cole-Coleプロットの円弧部分の周波数範囲内では,空気含有ヨーグルトの静電容量は,常にベースヨーグルトよりも大きかった.以上の結果から,誘電特性の測定によりヨーグルト内の気泡を定量化できる可能性を示すことができた.
著者
三好 扶 佐藤 秀太 佐々木 誠 明石 卓也 小笠原 正勝 津田 保之
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.173-184, 2018-09-15 (Released:2018-09-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

食品加工業は労働集約型産業であり,原材料処理工程に近いほどその作業工程は人手に頼らざるを得ないのが現状である.しかしながら人手不足,後継者不足が顕在化している昨今では,ロボットシステムによる人手不足解消が喫緊の課題となっており,作業工程をロボット化することで省人化・省力化を図る意義は高い.本研究では缶詰製造工程の定量充填作業を具体の事例とし,作業者によって実施される「定量となる適正な組み合わせ判別」を機械学習によって判別アルゴリズムとして構築し,このアルゴリズムを実装した定量充填作業用ロボットシステムの試作機の開発を目的とする.適正な組み合わせ判別アルゴリズムは焼成切身の3次元特徴量(平均高さ,水平投影面積,およびこれらの積として得られる体積)を教師データとし,その正答率は約95%を得た.このアルゴリズムを実装したロボットシステムは,1缶分(焼成切身腹部および尾部1対を充填)を30秒程度で把持・搬送・充填を可能としたが,現時点では75%の作業精度(達成率)となった.作業者が1缶あたり5秒程度で充填することから,動作速度向上ならびに作業精度の向上といった課題を残すが,作業者による定量充填作業の作業代替となるロボットシステム化が可能であることが示唆された.
著者
鈴木 成宗 坂宮 章世 金澤 春香 栗田 修 矢野 竹男 苅田 修一
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-69, 2016-06-15 (Released:2016-09-29)
参考文献数
36
被引用文献数
1

特徴的なクラフトビール用酵母を得ることを目的とし,三重県伊勢市の椎の樹液から採取した微生物群を用いて,ビール醸造を行い,発酵性態の良好であった菌叢からコロニーを単離した.得られた菌株は,ITS-5.8S rDNA-ITS2領域(ITS領域)の遺伝子解析を行い,新規のSacchromyces cerevisiae(S. cerevisiae)に属する株であることを確認し,KADOYA1と命名した.KADOYA1の実用性および特徴を評価するため,実用エール系ビール酵母株1056および3068を対照に,実用規模(1,000 L)でのビールの試験醸造を行った.KADOYA1は1056株および3068株と比較すると,醗酵速度がやや遅かったが,醗酵力は十分な実用性があることが確認できた.それぞれの酵母で醸造したビールの香気成分をGC-マススペクトロメトリーにより分析したところ,KADOYA1は1056株および3068株とは異なる特異的な香気成分の生産性をしていることが明らかとなった.さらに,におい識別装置で香気特性は評価したところ,1056株および3068株で醸造したビールとは異なる香気特性であることが確認できた.以上のことから,KADOYA1は実用ビール酵母として有用であると判断できたので報告する.
著者
羽倉 義雄
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-12, 2015-03-15 (Released:2015-05-12)
参考文献数
21

食品素材は,一般に複数の組織(部位)から構成されている.各部位は,生物学的機能などの違いにより,化学的組成(水分,たんぱく質含有量,脂質含有量など)が異なることが多い.これらの組織の化学的組成の違いは,材料力学物性の温度依存性にも影響を及ぼす.そこで,食品を構成する組織の材料力学物性の温度依存性を理解した上で,食品の加工温度や加工方法を工夫することにより,従来の方法では困難であった機械的な加工が比較的簡単にできる場合がある.筆者らは,食品素材の温度を制御し,食品を構成する複数の部位の材料力学物性(破壊応力,弾性率,ポアソン比,脆化温度など)を最も加工に適した状態とすることにより,機械的加工を容易にする新たな食品加工技術を検討してきた.本稿では,温度変化に伴う食品素材の材料力学物性の変化を食品の機械的加工処理に積極的に利用する方法について紹介する.
著者
藤田 昌寛 室山 勝彦 西村 武俊 長島 正明 林 順一
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.85-90, 2003-09-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

本研究では反応溶媒として超臨界水または亜臨界水を用いたおからの無触媒可溶化に関して, 回分操作によってその分解挙動を検討した.到達温度および圧力がそれぞれ250℃程度, 30MPa程度 (主に亜臨界状態) に設定されたおからの加水分解反応では, 水溶性総有機体炭素量 (TOC) は反応保持時間や昇温速度にほとんど影響されず, きわめて短時間で反応が終了した.全糖は保持時間の増大とともに, また昇温速度が遅いほど生成量が減少し, 逐次的に有機酸, アルコールに二次分解された.有機酸成分中, 乳酸の生成量が大きかった.到達圧力20~30MPaのもとでのおからの可溶化の挙動は温度に大きく依存し, 300℃付近でTOCが最大値を示し, 有機酸やアルコール等も最大量が得られた.また, 全糖は低温ほど多く生成し, 200℃付近でのその生成量は仕込みの乾燥おから重量に対しては20%程度, 元来おから中に含まれる糖に変換可能な成分に対しては約30%の収率となった.300℃以上の加圧処理によって残渣の量は5%程度以下になり, さらに350℃以上の高温での加圧処理ではガス化生成物の比率が30%を越えた.
著者
萩原 知明
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-8, 2009-03-15 (Released:2015-06-27)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

ガラス転移の食品科学・工学への応用について,研究事例を述べながら解説した.初めにガラス転移の応用についての概要を述べ,次にガラス転移と食品の諸性質との関連を調べた研究例の説明を行った.熱分析測定の結果,カツオ節は,ガラス状態を取りうることが確認され,また,ガラス状態とカツオ節の切削性には密接な関係があることが確かめられていることを述べた.凍結濃縮相をガラス状態にすることで,マグロ魚肉中の酵素反応,スクロース溶液中の氷結晶の再結晶化は劇的に進行が抑制された.この結果は,凍結濃縮相のガラス転移温度以下で顕著な品質安定性が得られることを示唆していることを説明した.種々の糖溶液に関して,凍結濃縮相の水の自己拡散係数と氷結晶の再結晶化速度との間には良好な正の相関関係あることを述べた.以上,ガラス転移現象に着目することで,食品の製造・貯蔵時にみられる現象や食品の諸性質の理解が進展する可能性を示した.
著者
佐藤 眞直 梶原 堅太郎 佐野 則道
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.83-88, 2016-09-05 (Released:2016-10-25)
参考文献数
6
被引用文献数
8

食品の冷凍保存技術において,氷結晶による食材組織のダメージを低減するために氷組織形態を制御する技術の開発は重要である.その氷組織形態を非破壊観察する技術としてX線CT測定の応用を検討した.従来の実験室X線CT装置では,使用されている管球X線光源で十分な輝度のX線を得るために白色X線を用いる必要があることに起因して,密度差の小さい氷と食材の識別が困難である.そこで高輝度X線光源である放射光を用いることにより得られる高輝度の単色X線を活用して,X線CT像の高コントラスト化を検討した.まずこの技術検討のために,X線CT測定装置上で測定試料を凍結保持する液体窒素吹付冷凍装置を,大型放射光施設であるSPring-8において開発した.この装置を用いることにより,放射光X線CT測定技術を冷凍したマグロおよび豆腐試験片に応用し,各試験片中の3次元的な氷結晶組織を非破壊で観察することに成功した.また単色X線を用いることにより,試験片のX線CT像の画素値を,物質の密度を反映するX線の線吸収係数の分布として解析することが可能となった.これにより,得られた結果から凍結凝縮による密度の変化などの定量的な評価が可能となることも示唆された.
著者
吉井 英文
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.119-124, 2013-09-15 (Released:2015-06-18)
参考文献数
17
被引用文献数
2

噴霧乾燥は,機能性食品粉末を作製する手法として非常に重要である.噴霧乾燥粉末中緩和現象であるフレーバー,水の拡散係数に関する重要な研究報告を概観した後,噴霧乾燥粉末からのフレーバー徐放挙動結果の一例を示し,徐放挙動がAvrami式で良好に相関できることを示した.噴霧乾燥粉末の構造がフレーバー徐放挙動に影響を及ぼす例として,噴霧乾燥機への供給液温を変えて作製した粉末の空孔の大きさと殻厚みが異なる粉末のフレーバー徐放速度と安定性が異なることを示し,噴霧乾燥粉末の特質に粉末構造が重要であることを示した.噴霧乾燥粉末からのフレーバー徐放挙動を観察する手法として,一定温度で湿度を直線的に変化させた空気を噴霧乾燥粉末に流して徐放するフレーバー量を測定する定速昇湿法フレーバー徐放測定法について示した.噴霧乾燥粉末の特質を調べる上で,粉末構造を考慮した研究の重要性を指摘した.
著者
今村 維克
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.229-238, 2008-12-15 (Released:2011-01-31)
参考文献数
11

著者らは汚れの付着した金属表面上で集中的にOHラジカル (・OH) を発生させることを原理とする新たな洗浄手法を開発した.すなわち, 過酸化水素を含む水溶液に汚れの付着した金属表面を浸し, その状態で負電位を印加する.H2O2分子が金属表面で電子を受け取ることにより, きわめて酸化力が高い・OHが発生し, 汚れ物質を速やかに酸化分解し, 金属表面から除去することができる.すでに, タンパク質をモデル汚れ物質として, H2O2-電気分解洗浄における洗浄機構と有効性を検証している.本稿では, H2O2-電気分解洗浄における諸因子の影響の把握と洗浄効率のさらなる効率化を図るため, (1) 支持電解質の種類および濃度の影響, (2) 基板材質の影響, (3) 吸着物質 (タンパク質および脂質) の種類の影響, (4) 共存物質の影響について検討した.その結果, H2O2-電気分解洗浄においてアンモニウム化合物やリン酸イオンが存在するとモデル汚れ物質 (タンパク質) の除去速度が格段に向上することを明らかにした.また, 各種モデル汚れ物質や基板材質に対する有効性についても検証した.