著者
猪狩 裕紀 牛田 享宏
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1216-1220, 2021-11-18 (Released:2022-01-14)
参考文献数
2

痛みは誰もが日常生活の中で経験する現象である.痛みは,ヒトだけでなくあらゆる生物が,生存競争を勝ち抜いていくために欠かせないものであるが,一方で,性状や持続時間はさまざまで,個人差も大きく,特に慢性的に続いているもの(慢性疼痛)については防御的な意義は乏しくなっている面もあり,病態は複雑である.したがって,慢性疼痛の治療にあたっては神経メカニズムに基づいた分類(侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,痛覚変調性疼痛)や現象学的な要素も含めた病態分類(ICD-11における慢性1次性疼痛や慢性2次性疼痛)などを行い,適切な治療を行っていく必要がある.
著者
上田 敏
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.890-897, 2020-10-16 (Released:2020-12-05)
参考文献数
27
被引用文献数
3 1

「障害の受容」の概念はリハビリテーション医療におけるキーコンセプトであり,筆者は1980年代初頭に論文・著書でこれを詳しく論じたが,これまで誤読・見落としによる「批判」を受けてきた.また,臨床の現場では正しい意味が忘れられ,患者・家族を非難する用語として誤用・悪用されてきた.本論文ではそれを批判するとともに,正しい理解を促進し,誤用を防ぐ方策を論じた.その中で当事者の障害受容と社会・家族による当事者の受容との相互作用(プラス方向とマイナス方向の)の存在を指摘した.また,今後のあるべき姿として,この語の使用をやめるのでも,類似の概念で置き換えるのでもなく,この語の正しい理解の普及に努めるべきことを述べた.
著者
若林 秀隆
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.627-632, 2021-06-18 (Released:2021-08-16)
参考文献数
12

サルコペニア肥満とは,サルコペニアと肥満を合併した病態である.サルコペニア肥満に関する論文は多数あるが,現時点で統一した定義,診断基準,カットオフ値は存在しない.欧州と日本で現在,検討中である.回復期リハビリテーション病棟では,サルコペニアと体脂肪率で診断したサルコペニア肥満が,ADL自立度や自宅退院率と関連するため,その評価と対応が重要である.運動療法ではレジスタンストレーニングと持久性トレーニングが重要である.栄養療法では栄養のゴールを設定して,1日エネルギー必要量=1日エネルギー消費量-1日エネルギー蓄積量とした攻めの栄養療法が重要であり,ケアプロセスを活用すべきである.
著者
先崎 章
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.298-304, 2016-04-18 (Released:2016-05-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

軽度外傷性脳損傷(mild traumatic brain injury,以下MTBI)は情報処理速度,注意,記憶の機能障害と関連していて,決して症状が軽いというわけではない.これらの損傷は受傷直後からあらわれ,数週間続く.スポーツによるMTBIでは,脳震盪後症候群の症状が1 カ月程度の間に急速に改善するが,一方,数%の例で長い期間,後遺症が持続する.交通外傷によるMTBIでは,かなりの割合で自覚症状が持続しうる.患者にMTBIは認知機能に低下を生じうるとの危惧を伝えると,検査の値の一部が低下傾向を示すという報告がある.改善がみられず,回復が遅れることに関連する要因として,微細な神経病理学的な損傷のほかに,受傷時の年齢,ある種の合併症,受傷前に患っていた精神医学的疾患や受傷による精神医学的疾患の発症や悪化,他の身体系統の損傷,心理社会的な要因などが考えられる.受傷後の脳神経外科的症状,精神医学的症状の両方を,MTBIによって直接生じる症状として扱うことが欧米のスタンダードになっている.
著者
田島 明子
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.913-919, 2020-10-16 (Released:2020-12-05)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本稿は,第56回日本リハビリテーション医学会学術集会における指定パネル:障害受容の教育講演に大幅な加筆・修正をした内容となっている.「障害受容」のリハビリテーション医療の臨床場面での使用法について,2007年時と2020年時のインタビュー調査結果の比較検討を行い,「障害受容」の使用法からみえる今後の課題について考察を行った.大きな傾向として「障害受容」の使用を控える療法士が増えていた.今後,人権を基盤としたリハビリテーション医療の推進が重要であり,そのための倫理感(観)の醸成には,「障害受容」の使用法について,障害のある当事者による講演機会や関連書籍の参照,事例検討会などを通した職場の組織体制や風土の変容が有効である.
著者
大高 恵莉 大高 洋平 森田 光生 横山 明正 近藤 隆春 里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8-9, pp.565-573, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
20
被引用文献数
1 5

目的:システム理論に基づくバランス機能評価,Balance Evaluation Systems Test(BESTest)の日本語版を作成し,その妥当性を検証した.方法:翻訳と逆翻訳を経て日本語版BESTestを作成した.バランス障害群20 名及び健常群5 名(平均年齢71.2±13 歳,66.0±1.2 歳)に日本語版BESTest,Berg Balance Scale(BBS),国際版転倒関連自己効力感尺度(FES-I),Activities-specific Balance Confidence Scale(ABC Scale)を実施し,Spearmanの順位相関係数を求めた.またBBSと日本語版BESTestによるバランス障害群と健常群との判別能をROC解析により比較した.結果:日本語版BESTestはBBS(r=0.84),FES-I(r=-0.61),ABC Scale(r=0.63)と有意な相関を認めた(p<0.01).BBS及び日本語版BESTestのROC曲線下面積(AUC)は0.75,0.94(p<0.05)であり有意差を認めた.結論:日本語版BESTestは既存の評価法との妥当性を示し,BBSよりも軽度のバランス障害の検出に優れると考えられた.
著者
木村 由佳 石橋 恭之 津田 英一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.784-790, 2019-10-18 (Released:2019-12-02)
参考文献数
14

膝前十字靱帯(ACL)損傷は大多数がスポーツ活動中に発生する.治療としては,再建術が行われており,近年,手術手技には種々の改良が加えられ,安定した術後成績が期待できるようになった.一方で,スポーツ復帰後の再損傷やパフォーマンスの回復など,安全なスポーツ復帰という点に関しては,いまだ解決されていない課題が残されている.再損傷には複数の因子の関連が考えられているが,危険因子の1つとして不良な神経筋コントロール機能が,術後も長期間にわたり継続していることが指摘されている.不良な動作パターンは介入を行うことで修正可能であると考えられ,再損傷の予防を考慮したリハビリテーション治療が重要である.
著者
菊地 章子 金子 聡一郎 高山 真
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.978-983, 2018-12-18 (Released:2019-01-21)
参考文献数
16

嚥下障害に対する鍼灸治療に関して,海外では有効性を示した研究報告が数々報告されている.鍼灸治療は基本的に患者の状態に応じて治療法を選択するオーダーメイド医療であるため治療の標準化は難しい.本邦では主に太渓と足三里という下肢の経穴に刺激を加えることで嚥下反射が改善するという研究が報告されている.一般の医療・介護施設で通常の鍼灸治療を行うことはさまざまな面で困難を伴うが,簡便に用いることのできる円皮鍼が有用となる可能性がある.鍼灸治療の作用機序はいまだ十分に解明されておらず,鍼灸が嚥下障害に対する治療法の選択肢として広く認識されるには,今後さらに研究を進め,臨床経験を蓄積することが必要である.
著者
宮尾 益知
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.989-993, 2018-12-18 (Released:2019-01-21)
参考文献数
16

発達障害は1980年代初めのDSM-Ⅲからわが国において認知されるようになり,2005年の発達障害者支援法を機に注目されるようになってきた.精神科の領域においても発達障害の併存障害として二次障害として精神疾患が考えられるようになり,小児期における発達障害の治療に注目が集まるようになってきた.筆者は小児神経科医としててんかん,脳性麻痺,変性疾患などの治療に携わり,2002年の成育医療研究センターの開院が発達障害の勃興期にあたっていたり,発達障害と直接かかわり合うようになった.てんかん,錐体外路疾患などの神経生理学と薬理学,脳性麻痺を基盤としたリハビリテーション医学,同部門の児童精神科医,臨床心理士などとの共同作業として発達障害に対する独自の治療体系をつくり上げた.既存の治療だけにこだわらず,発達障害の病理,病態から推測される治療法として「代替医療」も積極的に取り入れ有効性を確認してきた.
著者
高橋 秀寿 中里 康子
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.6-11, 2016-01-18 (Released:2016-02-10)
参考文献数
22

急性期脳卒中患者の下肢麻痺に対するリハビリテーションを行う場合,早期からの長下肢装具や体重免荷トレッドミルなどを用いた立位歩行訓練を行うことで,機能障害としての麻痺の改善,歩行機能の改善だけでなく,日常生活動作の自立度の改善,心臓血管フィットネスの改善にも,有意に寄与することが報告されている.この歩行機能改善のメカニズムとして,筋電図を用いた報告でも,重度の下肢麻痺患者で立ち上がり動作でみられなかった下肢筋の筋放電が,歩行動作時のみに認められることから,脊髄に内在する中枢パターン発生器(CPG:central pattern generator)の関与が有力視されている.
著者
星野 高志 小口 和代 伊藤 正典 小笠原 沙映 田中 元規 松田 華加
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.22005, (Released:2022-08-17)
参考文献数
38

目的:回復期リハビリテーション病棟入院中の片麻痺患者における病棟内杖歩行自立の客観的判定基準を,決定木分析を用いて明らかにする.方法:対象は3年間の脳卒中片麻痺患者のうち,退院時の杖歩行が監視以上の者とし,病棟内杖歩行自立群と非自立群に分けた.評価項目はSIAS下肢運動合計(SIAS-LE),Trunk Control Test(TCT),Berg Balance Scale(BBS),10 m歩行速度(m/s),入院時FIM認知合計(FIM-C)とし,自立群は歩行自立時,非自立群は退院時の評価を用いた.さらに歩行自立後の転倒状況も調査した.統計分析は単変量解析および決定木分析を行った.結果:自立群101名(平均68±13歳),非自立群47名(平均79±12歳)で,歩行速度,TCT,BBS,FIM-Cに有意差を認めた.決定木分析では歩行速度,FIM-C,BBSの順に選択され,①歩行 ≧ 0.42 m/s,FIM-C ≧ 22点(自立者割合97%/転倒者割合5%),②歩行 ≧ 0.42 m/s,FIM-C<22点,BBS ≧ 50点(100%/0%),③歩行 ≧ 0.42 m/s,FIM-C<22点,BBS<50点(52%/8%),④歩行<0.42 m/s,BBS ≧ 28点(49%/28%),⑤歩行<0.42 m/s,BBS<28点(0%/0%)に分けられた.転倒者割合は全体で8.9%,うち④が最も高かった.結論:歩行自立には歩行速度,FIM-C,BBSの順に関与し,各基準値が明らかになった.歩行速度の低い者は易転倒傾向であり,特に慎重な自立判断が求められる.
著者
水尻 強志
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.207-211, 2015 (Released:2015-04-23)
参考文献数
23

In recent decades, natural disasters have increased markedly. A large-scale disaster can cause not only severe injuries but also stress-related diseases such as cardiovascular events. Particularly, the elderly and persons with preexisting disabilities are at greater risk for injuries, worsening disabilities and deaths in a disaster. The Great East Japan Earthquake 2011 revealed that rehabilitation medicine had some essential roles for people requiring assistance in a large-scale disaster. Firstly, in the acute phase immediately after the disaster, it was important to protect elderly and disabled people from dangerous situations. In this instance, even though significant numbers of vulnerable people requiring assistance remained in the affected area, there were insufficient sheltered locations available, because a large number of medical and welfare facilities were destroyed. Secondly, in the post acute phase after the earthquake, the medical rehabilitation needs for disaster-related disease such as cerebrovascular accidents increased. Finally, in the chronic phase of the disaster, the community based rehabilitation needs to prevent deconditioning syndrome had gradually grown. The aging of the Japanese population is a crucial issue. In this regard, disaster rehabilitation for vulnerable people is similar to comprehensive community care in many aspects. To support disaster victims, the Disaster Acute Rehabilitation Team (DART) and the Japan Rehabilitation Assistance Team (JRAT) have been proposed to take the lead in disaster rehabilitation. To support these and other ongoing efforts and to better prepare for the future, the Japanese Association of Rehabilitation Medicine and other related rehabilitation professional societies should provide specialized training on disaster rehabilitation.
著者
徳永 誠 鵜飼 正二 伊勢 眞樹 永田 智子 宮越 浩一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.305-308, 2018-04-18 (Released:2018-05-21)
参考文献数
13
被引用文献数
2

日常生活動作(ADL)の改善を比較するには,ADL改善指標の特徴を理解する必要がある.Functional Independence Measure(FIM)利得は,ADL改善指標として本邦で頻用されているが,天井効果という課題があり,層別化や制限が必要になる.天井効果のないFIM effectivenessは,欧米ではFIM利得以上に頻用されている.FIM effectivenessを重回帰分析に用いた報告は少ないが,これを目的変数にした重回帰分析の予測精度は高い.ADL改善を病院間で比較するために数種類の方法が考案されている.ADL評価の信頼性が重要であることを強調したい.
著者
緒方 徹
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.764-767, 2017-10-18 (Released:2017-12-04)
参考文献数
12

筋肉および神経への電気刺激による筋収縮誘導の知見は,すでに臨床の現場で活用されている技術となっている.健常者に対する筋力増強の効果はすでに確立しているが,下肢を中心とする運動器疾患での臨床成績への効果については報告にばらつきがあり,高いエビデンスとはなっていない.こうしたばらつきは,対象とする疾患の重症度や廃用の状態に影響されていると考えられる.最大随意収縮との比較(%MVIC)など刺激強度を確認する方法と,介入する筋肉の状態を把握したうえでの介入研究の蓄積が求められる.
著者
若林 秀隆
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.270-281, 2011-04-18 (Released:2011-05-09)
参考文献数
46
被引用文献数
11 4

Malnutrition often occurs in patients with disabilities. The prevalence of malnutrition in geriatric rehabilitation was higher than in hospital (50.5% vs 38.7%) according to MNA classification. Nutrition care management of patients with disabilities is often inappropriate. As nutritional status is associated with rehabilitation outcome, a combination of both rehabilitation and nutrition care management may be associated with a better outcome. This concept is defined as rehabilitation nutrition. Rehabilitation nutrition aims to assess patients according to the International Classification of Functioning, Disability and Health including nutrition status and to practice a rehabilitation nutrition care plan under adequate prognosis prediction. It is not enough for patients with disabilities to coordinate only their rehabilitation or clinical nutrition. Rehabilitation nutrition care management is important to improve their activities of daily living and quality of life. Sarcopenia is a syndrome characterized by progressive and generalized loss of skeletal muscle mass and strength. Primary sarcopenia is considered to be age-related when no other cause is evident, other than ageing itself. Secondary sarcopenia should be considered when one or more other causes are evident, such as activity-related sarcopenia, disease-related sarcopenia, or nutrition-related sarcopenia. Activity-related sarcopenia can result from bed rest, deconditioning, or zero-gravity conditions. Disease-related sarcopenia is associated with invasion (acute inflammatory diseases), cachexia (cancer, advanced organ failure, collagen diseases, etc.), and neuromuscular disease. Nutrition-related sarcopenia results from inadequate dietary intake of energy and/or protein. Treatment, including rehabilitation and nutrition care management, differs according to the causes of sarcopenia. No nutrition care, no rehabilitation. Nutrition is a vital sign for rehabilitation.
著者
Nobuyuki Sano Makoto Kyougoku
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
Progress in Rehabilitation Medicine (ISSN:24321354)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.20170003, 2017 (Released:2017-02-25)
参考文献数
29

Objective: Elderly people’s success in attaining rehabilitation goals may be heavily dependent on their achievement motive, but research has not identified the factors that impact on achievement motive or suggested any effective interventions to enhance it. This study demonstrated the effects of personality traits, theories of intelligence, and other factors on achievement motive among community-dwelling elderly people. Methods: The dataset consisted of questionnaire responses from 281 elderly people in day-service or day-care centers. A hypothetical model, based on previous research, proposed that achievement motive would be affected by personality traits, theory of intelligence, and other factors (such as drinking and smoking habits, going out for activities, marital status, and hobbies); that personality traits would have some effect on the theory of intelligence and other factors; and that the theory of intelligence would affect personal factors. The hypothetical model was analyzed using a structural equation modeling approach. Results: The model was modified by removing statistically insignificant paths to achievement motive. The modified model exhibited an excellent fit and showed that achievement motive was affected by personality traits, going out for activities, and marital status (although, surprisingly, single people had stronger achievement motive). The model had an adjusted R2 of 0.593 (P < 0.001) for achievement motive. Conclusion: The results indicated that three of the Big Five personality traits (extraversion, conscientiousness, and openness to experience) tend to enhance elderly people’s motivation to achieve their goals; moreover, going out more frequently and being single were also associated with achievement motive.
著者
津田 英一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.740-745, 2017-10-18 (Released:2017-12-04)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

骨格筋は身体運動を行うための最終的な出力器官としての役割を担っている.その最小単位は筋原線維を構成する筋節であり,収縮タンパク質であるミオシンとアクチン間で滑走が生じることで筋は収縮する.筋に発生する張力はその生理的断面積と,筋収縮速度はその筋長と相関し,筋の基本的な機能的特性を決定づける.臨床的に測定される筋力は,関節運動によって発生するモーメントによって提示されることが多く,筋張力以外にも関節の構造や屈曲角度の影響を受ける.筋力増強にはさまざまな原則や特異性が存在するため,それらを十分理解したうえで処方することが効率よく増強効果を得るために必要である.
著者
岡 久仁洋
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.758-761, 2016-10-18 (Released:2016-11-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

肘関節には腕尺関節,腕橈関節,近位橈尺関節の3つの関節があり,屈伸運動と前腕回旋運動を行うことができる.安定した関節運動を行うための機構として内側側副靱帯,外側側副靱帯複合体があり,靱帯機能が破たんすることにより,肘関節拘縮,不安定性の原因となる.屈伸運動の回転軸の通過する位置は,上腕骨滑車中心の内側側副靱帯前斜走線維の付着部に一致するが,外側は屈曲肢位により外側側副靱帯付着部面に分布し,回転軸の軌跡は円錐状となる.前腕回旋軸は尺骨小窩と橈骨頭中心を通過し,前腕は,ほぼ一軸性の回旋運動を行う.これらの肘関節における解剖学的特徴と3次元的動態解析に基づいた運動機能について述べる.