著者
松尾 武清
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1671-1682, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
33

質量スペクトロメトリーによる生体高分子,とくにタンパク質の一次構造解析法について検討した。最近のイオン源と質量分析装置本体の高性能化によりペプチドの分子イオンを検出し,その正確な分子量を決める技法が確立された結果,タンパク質の構造解析を行なうことが可能となった。未知試料のアミノ酸配列を決定するにはEdman分解法と組み合わせるのが有効である。さらに大きなタゾパク質を解析するには酵素消化後HPLCで数グループに分離iし,質量分析によりその中に含まれる成分ペプチドの分子量を決める。つぎにシークエネーターでそのペプチド混合物から得られる複数個のPTHアミノ酸を同定する。得られた結果をコンピゴーターで解析し一次構造を決める方式が最適である。一方,構造変異タンパク質中の置換アミノ酸の決定には質量分析による方法が大変有効である。ヒトグロビンの場合を例にとっていくつかの技法を具体的に説明する。合成DNA,RNAの分析にも質量分析は役に立つのでこれについても簡単にふれる,
著者
木下 武 中村 健道 名垣 秀実
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1665-1670, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

質量分析法を極性化合物や熱的に不安定な化合物の解析へ応用可能にしたFABイオン化法と,GC/MSやLCIMSのGCやLCに相当する分離手段をもMSで行なうMS/MS法との組み合わせによるFABMs/MS法の構造解析ぺの応用の基礎検討を行なった。その結果,FABMS/MS法を用いることによって分子量決定がきわめて容易に行なえること,部分構造の決定が構造異性体の判別も含めて比較的容易に行なえること,さらにフラグメントイオン相互間のかかわり合いを容易にかつ明確にすることができることヵミわかった。したがって,FABMS/MS法から得られる情報を組み立ててゆくことによって,有機化合物の構造決定がなされ得ることを明らかにすることができた。
著者
本吉谷 二郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.32-35, 2007-01-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

化学発光(ケミルミネッセンス)とは,化学反応によって高エネルギー状態(励起状態)の分子が生成し,これが光としてエネルギーを放出する現象である。これまで,ルミノールをはじめとする多様な有機化合物の化学発光が知られており,すでにケミカルライトや微量分析などにも応用されている。また,化学発光のしくみはホタルなどの生物発光と類似し,その研究の成果が生物発光のメカニズムの解明などに役立っている。本稿では生物発光との関連を意識しつつ有機化学発光のしくみについて解説する。
著者
花屋 馨 男沢 和郎 村松 隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1643-1649, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1

cis-2-置換5,8-ジメチル-4-クロマノール誘導体の立体配座を検討する目的で,それらの赤外部におけるOH伸縮振動スペクトル(YOH)を四塩化炭素の希薄溶液で測定した。2-位の置換基として,メチル基〔6〕およびフェニル基〔7〕~ 〔10〕を有する場合には,3623~3625と3596~3599cm-1に2本の吸収を示し,エトキシカルボニル基〔11〕を有する場合には,3608と3595cm-1に2本の吸収を示した。〔7〕~〔10〕では,フェニル基に電子供与基を導入してもYOHにあまり変化が認められなかった。これらの結果から,〔6〕~〔10〕では2-位の置換基がエクアトリアル,4-位のヒドロキシル基が擬エクアトリアルであるジエクアトリアル配座が優位立体配座であり,一方,〔11〕はジアキシアル配座が優位立体配座であろうと考察した。これらの結果は1H-NMRスペクトルに基づく検討結果からも支持されることがわかった。
著者
都築 誠二 田辺 和俊 名川 吉信 中西 洋志 大沢 映二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1607-1612, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
30
被引用文献数
6

分子力場計算プログラムMM2'をビフェニルとナフタレンに適用し,構造と内部回転障壁エネルギーの実験値を再現するようにパラメーターの調節を行なった。結合次数が0.5から大きく異なっていると考えられるビフェニルの中央のC-C 結合およびナフタレンのC-C結合のパラメーターを変更した。ビフェニルでは結合距離定数ro,伸縮の力の定数ks,ねじれポテンシャルV2の変更を行ない,ナフタレンでは結合距離定数だけを変更した。その結果,構造と内部回転障壁エネルギーの実験値をよく再現できた。あまり大きなひずみをもたない誘導体は今回使ったパラメーターを使いMM2'による計算が可能であり,この方法は一連のよく似たタイプの分子の計算について一般的に利用可能と考えられる。
著者
菊池 修 石井 美佐子 守橋 健二 中山 光宣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1587-1593, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
33
被引用文献数
1

ESRパラメーターの実験値とINDO-UHF法によって計算した理論値を比較することにより,遊離基の構造を決めることを試みた。遊離基の9値,等方性および異方性超微細結合定数の実験値と理論値の差を最小にして,得られた分子構造をESRパラメーター最適化構造とした。12種の遊離基について計算した分子構造,ESRパラメーターを実験値およびエネルギー最適化構造と比較することにより,この方法の有効性と問題点について考察した。
著者
岩下 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1601-1603, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
1

The specific line-broadening effects caused by the addition of a small amount of acid were noted for some 'H-NMR of stemotinine [1] and isostemotinine [2]. The molecular structure of [1] has recently been established by X-ray analysis, we could correlate the line-broadening effect with the stereochemistry of the spiro-lactone moieties of [1] and [2]. Since line-broadening was found to be induced by partial salt formation of the tertiary amino group, it may be widely observed with other alkaloids and may afford a versatile supplementary tool for the stereochemical study of alkaloids.
著者
春山 英幸 高田 知芋 近藤 三千男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1604-1606, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

The three-dimensional structure of rifamycin SV in solution was constructed by the combination of distance geometry and NMR spectroscopy. The dihedral angles derived from the analysis of the vicinal coupling constants and NOEs were used to restrict the possible conformations of the ansa chain moiety. The restricted spatial arrangements of the ansa chain and the naphthohydroquinone ring were demonstrated by the NOEs observed at H3 on irradiating 20-CH3, 24-CH3 and 26-CH3 group. Based on the above observation a set of the upper and the lower bounds of the interatomic distances was assigned and converted to the corresponding three-dimensional coordinates. Fig.3 shows the three-dimensional drawing of the resulting geometry, which is consistent with the observed NMR data as shown in Tables 1 and 2.
著者
大岳 望
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1579-1586, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8

ノトネソマイシンAは,Streptomyces aminophilus subsp.notonegenes647-AV1の生産物であり,イネ紋枯病に対する有効物質検索の過程で発見された抗かび性抗生物質である。ノトネソマイシンAは,C68H109NO30SNa2の分子式を有し,mp194~195℃,〓310nm(ε9700),〓3400,1720,1700,1600と1080cm-1の諸性状を示す。1H-NMRおよび13C-NMRのデータから,マクロライドであること,配糖体で芳香環置換基が含まれていることが判明した。分解反応により,2,6-ジデオキシ-4-O-メチル-α-D-アラビノニキソピラノースとL-rhodinoseが構成成分であることが判明した。主として,1H-NMRと13C-NMRによるスピンデカップリング実験,NOE実験,差スペクトル測定およびCOSYなどのスペクトルデータと13C-13C二重ラベル実験により,ノトネソマイシンAの構造がユニークな32員環マクロライドで硫酸エステルが置換している化合物であることを決定した。
著者
馬越 啓介 木下 勇 松本 圭司 大井 俊一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1517-1520, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The violet bis(2-aminoethyl 2-pyridyl sulfide)cppper(II) perchlorate [1] and blue bis(2-aminoethyl 2-pyridyl sulfoxide)copper(II) perchl3fate [2] were synthesized and have been characterized by means of X-ray crystallography. The Cu(II) atom in 'the cation o[1] is located at the center of symmetry and has a square-planar coordination by 4 N atoms. The S atom in Cu-NH2CH2CH2S-C-N ring lies in the position near to the axial site. The Cu…S distance is 2.832(1) Å and the Cu→S vector intersects the coordination plane at 59.8°. The Cu atom in the centrosymmetric cation of [2] has an elongated octahedral coordination by 4 N (equatorial) and 2 O atoms (axial). The Cu-O distance is 2.301(7) Å.
著者
内田 希 前川 尚 横川 敏雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1414-1424, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
38
被引用文献数
2

半経験的分子軌道法MNDOを二元系ホウ酸塩ガラスに適用し,その構造と塩基度に対する考察を進めた。ホウ酸塩ガラス中に存在するとされるpentaborate,triborate,diborate構造のクラスターを組み立て構造の最適化を行なった。計算結果は実験的に決定された構造をよく再現した。四配位ホウ素(4B)あるいは非橋かけ酸素(NBO)の形成にともなうB-O結合長の変化は電荷の移動と対応し, Gutmannの結合長変化則による予想と一致した。これらを基に分子式[H8B12O23]2-をもち種々の組成における構造を反映した異性体を組み立てた。これらのクラスター中の,軌道相互作用による非局在化エネルギー,Sparkle親和力,陽子親和力を求め塩基度の尺度とした。ハードおよびソフト酸・塩基の考え方にしたがった場合,クラスター中のBO4-構造単位はハード塩基に分類され・非橋かけ酸素はむしろソフト塩基に分類された。二元系ホウ酸塩中の4Bの安定性は対となる塩基性酸化物の種類に依存し,アルカリ酸化物とH2Oの場合で大きく異なることが示された。
著者
大作 勝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1371-1376, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
68

種々の基底関数を用いたメチルシランチオールに関するab initio SCF MO計算の結果を報告する。分子構造パラメーターの実測値は,3-21G+d(0.8C+0.6S+0.4Si)の基底によって非常によく再現されることが判明した。得られた分子構造パラメーターを他の構造類似分子について得られているものと比較,検討した。この分子ではSi-S結合軸のまわりでトランス,ゴーシュの回転異性が考えられ,STO-3G,STO-3G*の基底ではゴーシュ形がやや安定,3-21G,3-21G*,3-21G十dの基底ではトランス形がやや安定と計算され,これから,両者の間の熱力学的安定性の差異は,あまり大きぐないことが判明した。これは得られているエネルギー差の実験結果,40±30cm-1,ca.0.11kcal/mol(ゴーシュ形がトランス形よりやや安定)をよく説明している。Si-S結合軸のまわりの回転のポテンシャルを計算し,これを実測データ,その他のチオール類の場合におけるものと比較,検討した。双極子能率の計算値は,基底関数の違いによってかなり変化した。しかしながら,どの基底による計算値も実測双極子能率の傾向,μ(ゴーシュ)>μ(トランス)をよく説明した。これらの傾向は,構造類似化合物であるCH3SiH2SHにおける実測値,計算値の傾向とも一致した。
著者
長村 吉洋
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1384-1387, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
3

abinitioMCSCF法を用いてベンゼンの基底状態(1A1g)および最低励起一重項状態(1B2u)の構造を求め,解析的エネルギー勾配法によって振動解析を行なった。基底関数はSTO-3Gを用い,MCSCFにおいては6個のπ軌道におけるすべての可能な電子配置を考慮した。1B2u状態におけるベンゼンのゆゆ構造ばD6h対称性を保持し,C-CおよびC-H結合距離はそれぞれ1。4498Å および1.0818Å が得られた。 基底状態から1A1g状態へのO-O遷移エネルギーは4.727eVと計算された。MCSCF法によって計算した基準振動数の順序は実験値とよく対応し,一部不明確な実験値に対する示唆を与えるであろう。
著者
田代 浩二 海野 美奈子 永瀬 茂 寺前 裕之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1404-1408, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

Allingerの分子力場計算(MM2)のための飽和ケイ素化合物の力場定数を,分子軌道法を用いて決定した。決定した力場定数を用いて計算した構造と生成熱は実験値およびab initio計算値と非常によい一致を与えることを示した。ケイ素化合物の構造と安定性を明らかにするために,環状化合物としてヘキサシラシクロヘキサン(Si6H12)とその誘導体を,鎖状化合物としてボリシランSinH2n+2(n=1~30)を取り上げ,類似の炭素化合物と比較した。ケイ素化合物の立体配座異性体間のエネルギー差は炭素化合物の場合よりもきわめて小さいことを見いだした。とくに興味深い結果は,直鎖パラフィン(CnH2n+2)では炭素鎖がまっすぐに紳びた直鎖構造をとるのに対して,ポリシランではn=7以上になるとケイ素鎖がらせん構造をとることである。
著者
菊池 修 古崎 輝也 守橋 健二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1409-1413, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2

溶媒効果を扱う有効電荷モデルにおいて,分子中の各原子に対する構造因子を導入した。溶媒殻に占める溶媒の割合から求める溶媒殻体積因子と,溶媒と接する原子球の表面積から求める表面積因子である。有効電荷モデルを取り入れたCNDO/2計算によると水中でのアセチルコリンの立体配座は,構造因子を導入しない場合には真空中の立体配座とほぼ等しくなるが,溶媒殻体積因子を導入すると実験および他の理論的モデルで計算されている立体配座とよい対応を示すようになった。溶媒殻体積因子には結合していない原子の立体的効果も含まれているので,溶媒中の分子の立体配座の計算には重要である。
著者
山辺 信一 田中 徹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1388-1394, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
8

隣接基関与の有機反応で生ずるフェノニウムイオン中間体の構造を理論的に調べた。STO-3G基底の非経験的分子軌道計算により構造の最適化を行なった。アリール基のパラ位に六つの置換基Xを付けた場合,XC6H4+…2H4の点線部分の橋かけ結合の強さが規期的に変化した。XC6H4X+→C2H4の逆電荷移動(back CT)が大きくなれば,その結合が強化される。メチル基がエチレン側に付くと,構造変化が大きい。古典open型と非古典橋かけ型の境界的な構造が得られた。
著者
寺井 忠正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.10, pp.1333-1337, 1986-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

ツツジ科植物に含まれる有毒成分であるGrayanotoxin(G)類は鉱酸に対して不安定であり,従来これらのアセタール化には無水硫酸銅が助剤として用いられてきた。本実験において,Cu(II)にかぎらず,Ce(IV),Fe(III),Ni(II),Sn(II)などの硫酸塩でもアセタール化が進むことがわかった。 そこでモデル化合物としてcis-1,2-Cyclohexanediolを用い,種々の硫酸塩について定性的にアセタール化の可否を調べた。一方,G-II,G-IIIの場合二,三の脱水反応をともなうが,各種硫酸塩を用いた場合の反応経過をTLCによって調べ効率のよいアセタール化条件の検討および,これらの反応の図式について考察を行なった。各反応速度は硫酸塩によって差異はあるが,相対的にC-10-OHの脱水はもっとも速ぐ,つぎにC-5-OH,C-6-OHのアセタール化,C-16-OHの脱水の順となっている。G-IIIアセタールを得るためには硫酸ニッケル(II)を用い65.0℃,30分間,G-IIアセタールを得るためには,硫酸鉄(III)あるいは硫酸ニッケル(II)を用いて70~100分間反応させるのが適している。
著者
長谷川 一希
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.524-527, 2018-11-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
3

苛性ソーダ (NaOH) および金属ナトリウム (Na) は,いずれも化学的に非常に活性なアルカリ金属の化合物および単体である。これら製品は,塩化ナトリウム (NaCl) を原料にして生産されて,幅広い産業分野の原料や反応剤などに利用されている。現在,NaOHとNaの生産には,電気分解法が用いられる。前者はNaClの水溶液,後者はその溶融塩を用いた電解法である。これら製造には電気分解という共通手法を適用するが,操業に対する取り組みは当然異なる。本稿では,NaOHとNaの製造法を解説する。
著者
金沢 孝文 梅垣 高士
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.2, pp.335-338, 1972-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
3

乾式合成したβ-リン酸カルシウム,フッ素アパタイト,β-ピロリン酸カルシウム,レナニットおよび湿式合成した水酸アパタイト,リン酸-水素カルシウム二水塩の計6種のリン酸カルシウム塩類を,塩酸,クエン酸液,中性クエン酸塩溶液に投入して溶解熱の測定を行った。β-リン酸カルシウムは同じ程度のpHの塩酸およびクエン酸液に対する溶解発熱量が等しく,水素イオン濃度と溶解熱とは密接な関係がある考えられる。しかし,カルシウム塩類のクエン酸液への溶解のさいには,溶触にいちじるしい特徴が認められず,クエン酸基とカルシウムとの錯形式を熱化学的に検知し論議することが困難であることがわかった。β-リン酸カルシウムの溶解量を変化させても,2%クエン酸液と10%クエン酸液でカルシウム塩溶解量が小さい場合とでは,モル溶解熱がほぼ一定で,発熱量はβ-リン酸カルシウムの溶解重量に比例するとみなせる。0.5%塩酸への溶解のさいの発熱量は,乾式合成試料では,β-リン酸カルシウムがもっとも大きく,ついでレナニット,フッ素アパタイト,β-ピロリン酸カルシウムの順となった。
著者
榎本 俊樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.134-135, 2019-03-20 (Released:2020-03-01)
参考文献数
4

ハチミツはグルコースとフルクトースが主成分の,ミツバチにより花蜜から生産される天然の調味料である。また,ハチミツには,これらの糖以外に,多様なオリゴ糖やポリフェノール,遊離アミノ酸などが含まれているが,特にオリゴ糖については,不明な点が多い。本稿では,オリゴ糖を含むハチミツ成分について解説する。