著者
忍久保 洋
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.268-269, 2020-06-20 (Released:2021-06-01)
参考文献数
6

反芳香族化合物は不安定な化合物であるが,それを上下に接近させて重ねると芳香族化合物になり,安定化することが分かってきた。これまで,芳香族性の起源は二次元的なπ電子の広がりであると考えられてきた。しかし最新の研究により,2つの分子の間の三次元的なπ電子の広がりによっても芳香族性が生じることが示された。また,反芳香族化合物が芳香族化合物よりも互いに接近しやすいことも分かってきた。分子が近づいて電荷が移動しやすくなるため,有機半導体などへの応用が期待される。
著者
伊藤 敏幸 佐藤 俊夫 藤沢 有
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1414-1423, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
51
被引用文献数
8

α-位にメチルチオ基を導入したβ-ケトエステル類をパン酵母で還元すると,3-位がS-配置であるヒドロキシエステルがきわめて高い光学純度で得られることを見いだした。また,β-ケトジチオカルボン酸エステルのパン酵母還元では,とくにα-位に置換基を導入する.とβ-位のエナンチオ選択性のみならずα-位とβ-位のジアステレオ選択性も対応するカルボン酸エステルのパン酵母還元の場合にくらべていちじるしく向上することを明らかにした。このようにして得られた光学的に純粋なβ-ヒドロキシエステルは硫黄官能基の反応性の特長を活かして,マツハバチの性フェロモンである(2S,3S,7S)-2-アセトキシ-3,7-ジメチルペンタデカンを簡便な工程で立体選択的に合成することができた。
著者
堀 勇治 永野 義彰 福原 隆 寺本 修二 谷口 宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1408-1413, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
11

水あるいはアルコール存在下のDBUは,CO2を可逆的に吸収してDBUの炭酸塩あるいは炭酸水素エステル塩を生成した。また,この塩は温和な条件下でアルキル化剤と反応し,好収率で炭酸ジアルキルを生成した。一方,水とCS2とDBUの(モル比2:3:4)混合物を,80℃ に加熱すると,1モル当量のCO2を発生して,2モル当量のDBUのトリチオ炭酸塩が生成し,さらにこれはアルキル化剤と反応して,好収率でトリチオ炭酸ジアルキルを生成した。これらのCO2とCS2の場合の反応の相違は,生成するS-イオンの求核性がO-イオンよりも大きいためと考察した。
著者
林 俊雄 池田 一也 大石 武
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1403-1407, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

アリルニジチオカルバメートのリチウム塩とアルデヒドの反応における添加物のレギオ選択性に対する影響を検討した。添加物として4種の典型金属元素の塩,3種のクラウンエーテル,および4種のLewis酸を選び,実験した。これら添加物中Ti(OPri)4がもっともいちじるしい効果を示し,98%の選択率でα-付加体を与えた。この反応の機構としてカルボニル基がチタン原子に配位した六員環いす形遷移状態を仮定し,結果を説明した。
著者
江口 昇次 竹内 久人 江崎 俊之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1250-1254, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23
被引用文献数
11

ω-アジドカルボニル化合物[2],[4],およびω-クロロ酸アジド化合物[6]の分子内aza-Wittig型閉環反応性について検討した。出発原料であるアジド化合物は,対応するクロロ化合物の相間移動触媒存在下,NaN3の求核産換反応により,または,HN3のα,β-不飽和ケトンへのMichael付加反応により合成した。一般に,分子内aza-Wittig型反応による五員環への閉環反応は容易に進行したが,四員環への閉環反応は進行しなかった。しかし,2-フエニル-1-アギチン[18]のβ-アジドプロピオフェノン[2a]の分子内aza-Wittig反応による生成は,1-フエニルシクロピロピルアジド[23]の熱分解による別途合成,および,[18]のLiAlH4還元体[19]の生成により確認できた。
著者
山本 巌 田中 距聰 藤本 哲也 太田 和親 松崎 啓
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1227-1230, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4

1,1-ジフェニルポスホリナニウムプロミド[1]を出発物質として,二硫化ジメチルによるα-位へのメチルチオ基の導入,それにつづくデカナールとのWittig反応を行ない,対応するビニルスルフィド[4]を収率56%で得た。つぎに[4]を,ヘキサナールとWittig-Horner反応すると,アルコール[5]が収率67%で得られた。ついで,[5]を水素化ナトリウムで処理すると,Douglas Fir Tussock Moth(Orgyiapseecdotsugata)の性フェロモン前駆体であるジエン[6]が収率31%で得られた。さらに,[6]を塩酸水溶液で加水分解し,目的の性フェロモンて[7]を収率82%で得た。
著者
鹿島 長次 原田 和雄 加藤 明良 清水 政男 表 美守
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1194-1198, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2

オルトおよびパラ位にヒドロキシ勉基,メトキシル基,メチル基を有するN-フェニルピリミジン-2(1H)-チオン類の金属水素錯化合物(水素化アルミニウムリチウム,水素化ホウ素リチウム,水素化ホウ素ナトリウム)による還元について検討した。2種のジヒドロピリミジンおよびテトラヒドロピリミジンの生成比が大きく置換基と金属水素錯化合物に依存することがわかった。とくにオルト置換基がヒドロキシル基とメトキシル基の場合,水素化アルミニウムリチウムおよび水素化ホウ素リチウムを用いたところ,3,6-ジヒドロ体が位置選択的に得られた。この高い3,6-ジヒドロ体への選択性は,まず,オルト置換基が金属ヒドリドと反応してフェノキシドあるいは配位結合を生成したのちに,ピリミジンチオンの6-位に分子内からヒドリドが優先して攻撃しているためだと思われる。
著者
山本 嘉則 山田 順一 西井 真二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1177-1182, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2

ステロイドアルデヒド〔3〕と(2R,4R)-(-)-2,4-ペンタンジオールから合成したキラルなステロイドアセタール〔8〕,S-R,R体,とアリルシラン〔12a〕,9-アゾル-9-BBN〔12b〕,またはアリルトリブチルスタンナン〔12c〕との塩化チタン(N)存在下での反応を行ない,つづいて常法にしたがって処理すると,ホモアリルアルコール〔14〕,S,S体,がきわめて優先的に生成する。ある場合には,S,S体が圧倒的(>99%)に生成する。〔3〕と(2S,4S)-(+)-2,4-ペンタンジオールから合成したアセタール〔9〕,S-S,S体,と〔12a〕または〔12b〕とを同様に反応させると,やはり〔14〕が優先的に生成した。これは,従来のアセタールテンプレートを用いる不斉誘導り結果からは理解しがたしこ現象である。一方,〔9〕と〔12c〕との反応では〔16〕,S,R体,のアルコールが得られた。また同様に,スタンニルアセチレン,〔11a〕,と〔11b〕と,〔8〕との反応ではS,S体〔13〕が得られ,〔9〕との反応ではS,R体〔15〕が得られた。一方〔9〕とシリルアセチレン〔1Zc〕とからはS,S体〔13〕,が得られた。これらの結果は,不斉誘導率のみならず不斉誘起の方向さえも有機金属化合物の求核性に大いに支配されることを示している。合成的にはC-22位の立体制御をスズ化合物を用磁れば可能であることを示している。機構的には,アセタールテンプレートによって高い不斉誘起を達成するためには,アセタールの結合開裂と結合生成とのタイミングが同一でなければならないことが明らかとしなった。
著者
古川 尚道
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1118-1129, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
77
被引用文献数
3

1,5-ジチアシクロオクタン1-オキシドを濃硫酸に溶解し,活性な1,5-ジチオジカチオン(1)およびカチオンラジカルを発生させた。(1)はD2SO4中で1H-,13C-NMRで存在を確認,単離した。(1)はモCF3SO3-塩として安定な結晶となつた。同様に1,n-ジチア環状,非環状モノスルポキシドの濃硫酸溶液中でも,1,n-位の硫黄-硫黄の渡環相互作用による,ジカチオンの生成が見られた。とれらのスルポキシドとAc2Oを用いたPginmerer友応でも,1,n-位の硫黄-硫黄相互作用に基づく活性なジチオジカチオンが生成するかめ原応が加速され,転位がスルフィニル基のα-位のみならずω-位にも起こった。芳香環をもつ鎖状,環状のジチア,トリチア体からも硫黄一硫黄相互作用による安定なジチオジヵチオンが生成し,NMRで確認した。また,これらの活性ジカチオンの反応を行なった。
著者
小沢 文幸 山本 明夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.5, pp.773-784, 1987-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
61
被引用文献数
5

ジオルガノパラジウム錯体(PdRR'L2.R,R'=アルキル基,アリール基などの有機基.L=第三級ホスフィン配位子)の還元的脱離反応は,パラジウム錯体触媒を用いる有機合成反応の重要な素反応の一つである。本研究では,トランス,および,シス構造をもつ,一連のジメチル-,ジエチル-,メチル(アリール)-,および,ジアリールパラジウム(II)錯体を,立体選択的に合成単離した。さらに,合成した錯体の還元的脱離反応,ならびに,有機ヨウ化物との反応について,系統的な機構論的研究を行ない,反応に対する,錯体の立体配置,有機基,,および,配位子の影響を明らかにした。
著者
菅原 享 飯田 武揚 河野 淳夫 宮下 晃 三田村 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.4, pp.719-724, 1987-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

cis-ジクロロジアンミン白金(II)錯体(以下cis-DDPと略記する)には制がん作用があり,現在臨床治療に広く使用されている.このcis-DDPは生体内において特異的にがん細胞のDNAと結合し,そのDNAの複製を阻害することが知られている。このようなことから,白金錯体の配位子を種々変えた新規の白金錯体の研究が数多くなされているが,担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金錯体についての研究は,ほとんど報告されていない。そこで担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金錯体であるジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体を薪規に合成し,IRおよび13C-NMRスペクトル,元素分析,原子吸光分析などでその構造を解析し,この白金錯体とDNA構成ヌクレオシドとの相互作用をUV差スペクドルおよび解離塩化物イオン濃度を測定して研究した。その結果,ジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体とDNA構成ヌクレオシドのUV差スペクトルには等吸収点が観測され,この系でのUV差スペクトルに関与する化学種が二成分存在し,それらが平衡をなしていることが示唆された。また,DNA構成ヌクレオシド存在下で,この白金錯体から解離する解離塩化物イオン濃度を測定したところ,白金錯体1molに対して塩化物イオンが2mol相当解離していることが明らかになり,この白金錯体は塩化物イオンを解離し,DNA構成ヌクレオシドと錯形成を行なっていることがわかった。さらに合成した白金錯体はアドリアマイシン耐性白血病細胞に対して特異的ながん細胞増殖抑制・障害性を示すことがわかった。
著者
井上 英夫 井村 明弘 大塚 栄子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1214-1220, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
20
被引用文献数
21

糖部を保護した5-ヨード-2'-デオキシシチジン[3]とトリメチルシリルアセチレンとの縮合をPd触媒存在下行なうと,5-(トリメチルシリル)エチニル体[4a]が好収率で得られた。[4a]のN4-アセチル体[5a]は,CuI存在下DMF中加熱すると収率よく閉環体[6a]を与え,[6a]は脱保護により3-(β-D-2-デオキシリボフラノシル)ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2(3H)-オン[7a,dF*]を与えた。同様にして1-ヘキシンを用いることによりdF*の6-位ブチル置換体[7b]も合成することができた。dF*を含む部分的に自己相補的なオリゴデオキシリボヌクレオチドdGGGAAF*NTTCCC(N=T,C,AまたはG)は固相リン酸トリエステル法により合成した。4種のドデカマーの熱的安定性(Tm値)の測定結果から,このピロロピリミジン塩基(F*)はグアニン塩基と塩基対を形成することがわかり,F*・G対を含む二本鎖ドデカマーは比較としたC・G対を含む二本鎖ドデカマーと同様な熱的安定性を有することが明らかとなった。dF*の発蛍光性についても述べる。
著者
鈴木 仁美 中村 貴代美 丸山 和博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.955-958, 1966-05-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
35

t-ブチル基を保護基に用い,m-キシレン→5-t-ブチル-m-キシレン→2-クロル-5-t-ブチル-m-キシレン→2-クロル-m-キシレンの経路で-m-キシレンから2-クロル-m-キシレンを合成した。最終段階でt-ブチル基の受容体にm-キシレンを用いれば5-t-ブチル-m- キシレンが再生し, 循環操作が可能となる。この反応につき各種のルイス( Lewis ) 酸触媒を用いてこのt-ブチル基の転移の容易さを検討した。その結果塩化アルミニウムが触媒として最も有効で,塩化鉄(III),塩化アンチモン(V)は脱t-ブチル化反応の触媒と同時に,それによって再生された5-t-ブチル-m-キシレンのクロル化剤としての作用も示し,2-クロル-m-キシレンの見かけ上の収率は高くなる。
著者
阿部 幸紀
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.448-451, 2013-09-20 (Released:2017-06-30)

本編では,全世界的なリチウムの資源とその採掘法,および炭酸リチウムへの変換法とその需要について述べる。リチウムの埋蔵量(リチウム金属換算,以下同)はおおよそ1,300万tから3,472万t,そのうち鉱石とかん水の比率は3:7程度と見積もられている。鉱石を用いる場合,製品化までの期間が1ヵ月程度と短いものの,採鉱・選鉱等でコストがかかる。一方,かん水からは自然界の天日濃縮などで製品化まで1年ほどかかるものの,生産コストは安い。国内で生産ないし消費されるリチウム金属とリチウム化合物は,出発原料,製品の全量を輸入に依存している。輸入品の主体は炭酸リチウムで,そのままで使われるほかに,臭化リチウム,酸化リチウム,塩化リチウムなどの二次加工製品の原料としても用いられる。近年,リチウムイオン二次電池の正極材および電解液中の電解質材料として急速に需要が拡大しているほか,添加剤としてさまざまな用途に使用されている。
著者
穐田 宗隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 : 化学と工業化学 = Journal of the Chemical Society of Japan : chemistry and industrial chemistry (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.12, pp.783-793, 1998-12-10
参考文献数
36

触媒的CO水素化反応の素反応過程を遷移金属モデル錯体上で再現することを目的として, ヒドロシランによる有機金属錯体の還元反応を研究した. ヒドロシラン類はそのH-Si結合が水素のH-H結合に似た反応性を示すのに加えて, ケイ素部分が酸素官能基に対して高い親和性を示して脱酸素還元反応が進行することが期待される. 研究の結果, Pichler-Schulz機構を経る増炭反応, Fischer-Tropsch機構を経るメタン化など, 触媒的CO水素化反応に対して提案されている素反応 (CO還元, C-Cカップリングなど) を有機金属錯体上で再現することに成功した.
著者
萩原 恒夫 山浦 道雄 岩田 薫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1989, no.10, pp.1791-1801, 1989
被引用文献数
1 4

アニリン(A),ジフェニルアミン(DPA),N-フェニル-P-フェニレソジアミン(PPD),N,N'-ジフェニル-P-フェニレンジアミン(DPPD),N-イソプロピル-N'-フェニル-P-フェニレンジアミン(PrPPD)およびN,N'-ジフェニルベンジジン(DPBz)を含む各種芳香族アミンの化学酸化重合,重合体の構造および導電性について検討した。2mol・dm<SUP>-3</SUP>塩酸中,ペルオキソニ硫酸アンモニウムを用いて化学酸化重合して得られた重合体は,A,PPD,DPPDおよびPrPPDから得られた重合体(タイプII)と,DPAおよびDPBzから得られた重合体(タイプII)の二つのタイプに分類された。前者は比較的高い電気伝導度(10-1~10<SUP>1</SUP>S/cm)を示し,後者は比較的低い電気伝導度(10-6~10<SUP>-4</SUP>S/cm)を示した。タイプIIの重合体は基本的にアニリン重合体と同じ構造からなっており,タイプIIの重合体はN-Cカップリングに基づくN-フェニルアニリン-N,4-ジイルおよびC-Cカップリングに基づくジフェニルアミン4,4'-ジイルとからなる共重合体であることが元素分析や赤外吸蚊スペクトルからわかった。ESRスペクトルから,AおよびDPPDから得られた重合体中には,それぞれ2.3×10<SUP>20</SUP>個/gおよび1.2×10<SUP>20</SUP>個/gの高いスピン濃度が観測されたのに対して,DPAから得られた重合体中には7.1×10<SUP>19</SUP>個/gのスピンしか観測されなかった。前二者は,後者に比較して,motional narrowingに基づくと推定される4Hの大きな温度依存性が認められた。
著者
鈴本 勉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.402-405, 2003-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

ヒトはそれぞれ顔や体型が異なるように個性を持っている。このような個性はしばしば親から子へ遺伝することを,我々は経験的に知っている。これは,各個人のDNAに書き込まれた情報が微妙に異なることに由来している。最近では,体質や性格までもがDNAの仕業であることがわかってきており,ゲノム配列の解読が終了した今,これまで以上に遺伝子とヒトの個性の関係について,関心が高まっている。また,そのような遺伝子の違い(遺伝子多型)はしばしば病気のなりやすさや,治療薬に対する副作用の強弱に関わることが知られ,遺伝子多型の研究は病気の発症原因の探求と治療法の開発にも大きな貢献をしている。