著者
栗山 幸子 青島 正浩 戸倉 新樹
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.7, pp.1263-1271, 2016-06-20 (Released:2016-06-18)
参考文献数
15

発汗低下を主訴に最近当科を受診し,特発性後天性全身性無汗症または減汗性コリン性蕁麻疹と診断した7例について,温熱発汗テスト,アセチルコリン皮内反応テスト,組織学的検討を行い,ステロイドパルス療法を行った.全例男性で体表面積の63%以上が減汗であり,6例が点状膨疹を伴っていた.無汗部位は下腿に,低汗部位は上肢・体幹に主に認められた.治療後,全例で発汗回復部位が現れ,同低汗部位に一致して点状膨疹が出現した.減汗性コリン性蕁麻疹は無汗部位ではなく低汗部位に生じ易いことを裏づけた.
著者
児浦 純義 太良 光利 徳永 正義
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.1333, 1991 (Released:2014-08-11)

IFN-γ吸入療法の奏効したKi-I陽性ATLの1例を報告した.症例は56歳,男性で,HTLV-I抗体陽性,皮膚腫瘤はCD2,CD3,CD4,CD25並びにCD30を発現した大型リンパ球の増殖を示した.PCR法で腫瘍細胞にHTLV-I Provial DNAを証明した.治療として,IFN-γ吸入療法を実施し,皮膚腫瘤の消褪をみとめるとともに,併発していた汎発性白癬もほぼ治癒した.文献的見地から,Ki-I抗原の意義について述べるとともに,あわせてKi-Iリンパ腫にも言及した.又,IFN-γ吸入療法の意義を述べた.
著者
市川 竜太郎 伊藤 絵里子 寺尾 浩 福田 英三
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.1527-1532, 2008-07-20 (Released:2014-12-03)

2004年10月から2005年10月までの1年間で消化性潰瘍に対するヘリコバクター・ピロリ(HP)除菌療法中もしくは療法後に多形紅斑型薬疹を呈した症例を5例経験した.5例中4例は3製剤(ランソプラゾール(60mg/日),アモキシシリン(1,500mg/日),クラリスロマイシン(400mg/日)の1日服用分を1シートにまとめた組み合わせ製剤(商品名:ランサップ®)によるものであった.5例中3例(アモキシシリン2例,クラリスロマイシン1例)でDLST陽性,1例(アモキシシリン)でパッチテスト陽性を示した.もう1例はいずれの検査にても陰性であり原因確定は出来なかったが臨床経過よりHP除菌療法による薬疹と診断した.
著者
岩澤 真理 寄藤 和彦 戸井田 敏彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.11, pp.2165-2171, 2009

コンドロイチン硫酸・鉄コロイド注射液(以下ブルタール<sup>®</sup>)は鉄欠乏性貧血の治療に使用される鉄コロイド製剤である.我々は成田赤十字病院皮膚科外来にて,平成18年3月から5月にかけて,ブルタール<sup>®</sup>による薬疹4例を経験した.従来原料として使用していたウシ由来のコンドロイチン硫酸ナトリウムを,平成17年11月サメ由来品に変更後より副作用報告が急増した.平成18年7月よりブルタール<sup>®</sup>の自主回収が実施され,被害の増加は防がれたが,原因は解明されていない.今回我々は,ブルタール<sup>®</sup>の材料に使われたコンドロイチン硫酸を分析し,その結果,ウシ由来のコンドロイチン硫酸は4位に硫酸基が結合したN-アセチルガラクトサミン(CSA)が主たる成分であり,サメ由来のコンドロイチン硫酸は6位の硫酸基が結合したN-アセチルガラクトサミン(CSC)が主たる成分であった.ヒトのコンドロイチン硫酸はCSAが主成分であることが知られており,硫酸化度,分子量などの構造の変化により薬疹を生じた可能性を推測した.
著者
北村 浩之 井関 宏美 三家 薫 堀尾 武
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.1465, 1998 (Released:2014-08-19)
被引用文献数
1

分娩に際してゴム手袋を使用した医師の内診を受け,アナフィラキシーショックをおこした29歳女性の症例を報告する.内診直後より,全身に痒み,紅斑,膨疹を生じ,悪心,嘔吐,血圧低下,胎児徐脈を認め緊急帝王切開にて出産した.精査の結果,腟粘膜より吸収されたラテックスによるアナフィラキシーショックと判明した.ラテックスの水溶性蛋白によるIgE-mediated allergyにより引き起こされる即時型アレルギーは多彩な症状を示し,なかでもアナフィラキシーショックのような重篤な症例も多数報告されている.本症が分娩中に起こることは,母体のみならず胎児にも大きな影響を及ぼすためその予防は重要な課題である.分娩中の発症は,海外では数例の報告をみるが本邦ではわれわれが調べ得る限り第1例であったので報告する.
著者
多田 讓治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.7, pp.977-984, 2005-06-20 (Released:2014-12-10)
被引用文献数
1

皮膚感染防御の観点から,常在菌叢はその最前線のバリアを担っており,皮脂膜という限られた環境の中で生存しつつ,病原菌からの防御壁として選ばれた細菌群と言える.一方では,免疫不全状態の患者が増加している今日,常在菌による日和見感染症も重要な問題となっている.常在菌叢の感染防御機序とともに皮膚細菌感染症の起炎菌として最も多い黄色ブドウ球菌に関する感染機序についてもさらなる検討が必要である.
著者
古木 春美 水足 久美子 前川 嘉洋 野上 玲子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.847, 1992 (Released:2014-08-12)

既往歴として肝硬変,糖尿病,及びアルコール依存症を有する,55歳男子の両下腿に生じた,Aeromonas sobriaによる壊死性筋膜炎の1例を経験した.発症前に生食した魚介類からの経口感染の可能性が考えられた.
著者
戸倉 新樹
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.116, no.6, pp.909-915, 2006-05-20 (Released:2014-12-10)

皮膚科領域におけるEpstein-Barr(EB)ウイルス感染によるリンパ増殖症には,ナチュラルキラー(NK)細胞性のものとT細胞性のものとがある.EBウイルスの感染は典型的には慢性活動性EBウイルス感染症という状態をとり,それを背景としてNK細胞やT細胞の増殖性疾患が生起する.この過程において,蚊刺過敏症(蚊アレルギー)や種痘様水疱症(あるいはその重症型)が皮膚症状としてみられ,危険性のあるEBウイルス感染の重要な臨床的サインとなる.最終的には16歳前後で血球貪食症候群やリンパ腫を併発し,それが終末像となる.年齢分布において,EBウイルス関連NK/T細胞リンパ増殖症は2つのピークをもつ.第一相目はこの慢性活動性EBウイルス感染症を背景とする疾患群が形成する.一方,EBウイルスは中高年の鼻性(nasal)および鼻型(nasal type)の節外性NK/T細胞リンパ腫の原因ともなり,これが二相目をつくる.鼻型の好発部位は皮膚であり皮膚科医もときに遭遇する.
著者
金子 健彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.7, pp.1465-1471, 2010-06-20 (Released:2014-11-28)

消化器疾患ないし肝機能異常に伴う皮膚病変を概説した.炎症性腸疾患のクローン病や潰瘍性大腸炎では,結節性紅斑,壊疽性膿皮症等の合併が知られる.遺伝性ポリポーシスであるPeutz-Jeghers症候群では色素斑を生じ,またGardner症候群では多発する表皮様嚢腫や,骨腫が早期診断上重要である.肝機能異常に伴う皮膚病変としては,黄疸,紙幣状皮膚,クモ状血管腫,手掌紅斑が認められる.その他,ウイルス性肝炎に伴う皮膚症状を挙げた.
著者
石橋 正史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.8, pp.1465-1468, 2016-07-20 (Released:2016-07-20)
参考文献数
11

ブラジルに渡航した後,ジカウイルス感染症と診断された症例を報告する.今回の輸入症例は,中南米におけるジカウイルス感染症の流行後としては初めてとなる,国内でジカウイルス感染症患者の輸入症例である.受診時,発熱は見られなかったが,略全身性に淡紅色紅斑,丘疹が認められた.尿からジカウイルスRNAが検出された.皮疹は速やかに消退し,後遺症なく治癒した.
著者
渡部 裕子 難波 千佳 藤山 幹子 町野 博 橋本 公二
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.863-867, 2011-05-20 (Released:2014-11-13)

2009年8月から12月にかけて,愛媛県松山市周辺の皮膚科で,小児32名,成人7名の患者で爪変形,爪甲脱落の発生が確認され,そのうち4名を除く35名で発症の1~2カ月前に手足口病の既往があった.そのうち10名の患者で中和抗体価を測定したところ,全例でコクサッキーウイルスA6が8~128 倍の陽性所見を示した.これは爪変形,爪甲脱落を来す手足口病の本邦における最初の報告である.
著者
今門 純久
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.173-176, 2006-02-20 (Released:2014-12-10)

毛孔性紅色粃糠疹は,毛孔一致性の角化性丘疹,手掌・足底のびまん性紅斑と過角化などを特徴とする.Classical adult,atypical adult, classical juvenile,circumscribed juvenileなどの5つの病型に分ける考え方が主流であるが,疾患の本態は未解明である.尋常性乾癬との鑑別が最も重要である.ジベルばら色粃糠疹は,herald patch と呼ばれる初発疹と,初発疹に遅れて多発する続発疹を特徴とする.通常,1~2 カ月の経過で自然に治癒する.血清抗体価の推移や,皮疹部からの mRNA の検出により,ジベルばら色粃糠疹の多くは,HHV-6 やHHV-7 が病因として関与していることが判明した.
著者
濱田 利久
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.23-26, 2014-01-20 (Released:2014-03-18)
参考文献数
10

ブルーリ潰瘍はMycobacterium ulceransやその亜種(本邦ではM. ulcerans subsp. shinshuenseが同定されている)の非結核性抗酸菌による亜急性または慢性の皮膚感染症で,アフリカ・オーストラリアに加えて中南米や,頻度は低いが中国・日本からも発症例が報告されている.菌の産生する脂質毒素(マイコラクトン)によって,深い皮膚潰瘍を形成しうる.ごくまれな皮膚感染症だが本邦でも本州の広い範囲および九州からも報告例がみられる.
著者
長谷川 稔 佐藤 伸一 古瀬 忍 長谷川 洋一 森 俊典 八田 尚人 竹原 和彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.1275, 1998 (Released:2014-08-19)

症例1は69歳,男性.1年半前より手指のこわばり,四肢の関節痛があった.また,両手掌に多発性の皮下結節と手指の拘縮が出現してきたため,近医にて全身性強皮症(SSc)と診断されていた.当科での精査では皮膚硬化は認められず,リウマトイド因子(RF)が陽性であった.両手のX線像で近位指節間(PIP)関節に多発性のびらんを認めた.Palmar fibromatosisを合併したRAと診断した.Palmar fibromatosisによる手指の拘縮により慢性関節リウマチ(RA)がSScと誤診されたものと考えられた.症例2は63歳,女性.半年前より朝のこわばりと多発性の関節炎が出現し,近医にて抗トポイソメラーゼⅠ抗体が陽性とされ,SScと誤診されていた.皮膚硬化はみられず、当科での再検では抗トポソイメラーゼⅠ抗体やRFを含む自己抗体はすべて陰性であった.両手のX線像でPIP関節の腫脹を認め,sero-negative RAと診断した.ELISAによる抗トポイソメラーゼⅠ抗体の疑陽性によりSScと誤診されたものと考えられた.症例3は47歳,女性.2ヶ月前からの朝のこわばりと多発の関節炎が出現してきたものの,X線上異常が検出されなかったためRAが否定され,近医にてSScと診断されていた.当科での精査では皮膚硬化は認められず,RFが陽性であった.両足のX線像で足趾に嚢胞形成を認めた.X線での骨変化が軽いためにRAが否定され,SScと誤診されていたと考えられた.今後はこのような誤診例が増加する可能性があり,注意が必要と考えられた.
著者
加畑 大輔 谷崎 英昭 荒川 明子 谷岡 未樹 高倉 俊二 大楠 清文 宮地 良樹 松村 由美
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.14, pp.3337-3342, 2011-12-20 (Released:2014-11-13)

11歳,男児.初診の3カ月前に右上腕に無症候性の皮膚結節が出現し,次第に潰瘍化し軽度疼痛を伴うようになった.他院にて切除術施行されたが再度潰瘍を呈したため2010年4月当科を受診した.潰瘍部の病理組織中に多数の抗酸菌を認め,病変部組織の遺伝子解析にて,Mycobacterium ulcerans subsp. shinshuenseに特異的な遺伝子配列を検出したため,Mycobacterium ulcerans subsp. shinshuense によるBuruli潰瘍と診断した.2%小川培地およびMGIT液体培地にて30°Cで培養したところ,6週間後に黄色コロニーの発育を認めた.リファンピシンとクラリスロマイシン投与開始にて潰瘍の増大は止まったものの,縮小傾向に乏しかったため,抗菌薬を継続したまま,投与2カ月後病変部を切除し分層植皮術を施行した.抗菌薬は計6カ月間で終了し,投与終了後1カ月経過した時点で再発を認めない.Buruli潰瘍は,本来熱帯地方に分布するM. ulceransという非結核性抗酸菌感染症である.しかし,近年その亜種であるM. shinshuenseによる皮膚潰瘍の報告が本邦で増加しており,皮膚潰瘍の鑑別診断のひとつとして念頭におく必要がある.
著者
久米井 綾 吉田 康彦 今西 久幹 中川 浩一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.9, pp.1881-1884, 2011-08-20
参考文献数
7

28歳女性.自宅で就寝中,突然の激痛で目が覚めた.翌朝の初診時,右前腕と左下肢の激痛・発汗過多が見られ,右前腕の疼痛部の紅斑も観察された.臨床所見からは診断できなかったが,帰宅後,ベッドの上でセアカゴケグモの死骸を発見し診断がついた.文献的考察を加え,刺咬部位以外の症状が診断上重要であることを強調した.