著者
大石 晃史 永富 康司 鈴木 康司
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.108-112, 2019
被引用文献数
6

<p>飲料中への意図的な植物毒の混入を想定し,LC-MS/MSを用いた植物毒一斉分析法を開発した.分析対象には日本で中毒事例の多い,もしくは過去に事件に用いられた植物毒18成分を,分析試料にはビール,焼酎,ブレンド茶,缶コーヒー,乳性飲料を選択した.分析成分の抽出および精製にはQuEChERS法を用いた.バリデーション試験の結果,日内精度,真度,回収率について良好な結果が得られた.いずれの成分も5~200 ng/mLの範囲で良好な直線性を示し(<i>r</i>>0.990),低濃度での検出が可能となった.</p>
著者
成田 弘子 奈良 正人 馬場 啓輔 大上 皓久 阿井 敬雄 野口 玉雄 橋本 周久
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.251-255_1, 1984
被引用文献数
10

巻貝ボウシュウボラ <i>Charonia sauliae</i> のテトロドトキシン (TTX) 毒化機構を解明する目的で同じくTTXをもつトゲモミジガイ <i>Astropecten polyacanthus</i> によるその飼育試験を行った. 1~4週間後には, 供試した全ボウシュウボラ個体の中腸腺に毒性が認められ, TTXの蓄積率は平均33%であった. ボウシュウボラ中腸腺の総毒量は, ある水準までは投与したトゲモミジガイの毒量に応じて増加した. また, いったん毒化したボウシュウボラは, さらに40日間無毒の餌で飼育しても特に毒力は低下しなかった.
著者
中村 優美子 外海 泰秀 辻 澄子 伊藤 誉志男
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.251-260_1, 1987

ラットを用いて, クエン酸及びそのナトリウム塩, カルシウム塩, カリウム塩の代謝を調べた. 伊藤らによって算出されたクエン酸の日本人の一日摂取量37.78mg/kgを基準として投与量を設定した. クエン酸及びその塩類の<sup>14</sup>Cでラベルされたものあるいはされていないものをラットに経口投与して, 尿中へのクエン酸排泄量, 呼気中の<sup>14</sup>C放射活性及び血中の<sup>14</sup>C放射活性の経時変化を調べた. その結果, 投与されたクエン酸及びその塩類は, いずれも体内へ吸収された後ほとんどが代謝されて体内へは蓄積せずに, 主として呼気中にCO<sub>2</sub>として排泄されることがわかった. また, 塩の違いによる差は顕著ではなかった.
著者
田中 智哉 木村 圭介 觀 公子 新藤 哲也 笹本 剛生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.119-124, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

チョコレート中のカフェイン,テオブロミンおよびテオフィリンの同時分析法を検討した.試料にアセトニトリル–水(1 : 1)を加え,超音波抽出(15分間,50℃)を2回行い,得られた抽出液をOasis HLB SPEカートリッジで精製し,LC-MSで測定することによりこれらの同時分析が可能であった.検討した分析法は真度97.4%~100.2%,併行精度1.0%~2.8%,室内精度2.0%~7.9%であり,定量性は良好であった.既存の分析法に比べ,本法は簡便かつ選択性の高い分析法であり,チョコレート中のカフェイン,テオブロミンおよびテオフィリンの分析に有用である.
著者
森 哲也 岸野 かなえ 田原 麻衣子 守山 隆敏 和田 真太郎 伊藤 武
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.129-132, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
13

3MTM病原菌検出アッセイ2 STEC遺伝子スクリーニン-stx用キットを,食品からの腸管出血性大腸菌検査におけるVT遺伝子スクリーニングに使用することを目的に,検出感度を調べた.純培養菌での検出感度,食品として牛スライス肉やタンドリーペースト,きゅうりなどを供試して食品培養液を調製し検出感度を調べた.食品培養液中の検出感度は,BPW,mEC培地ともに3から4 Log CFU/mLレベルであった.3MTM病原菌自動検出システムを用いたVT遺伝子検出は,通知法が要求する検出下限値(4 Log CFU/mL)を満たしていた.本手法は食品からの迅速簡便なVT遺伝子スクリーニング法として有用であった.
著者
大門 拓実 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.133-137, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2

筆者らは迅速性,選択性,汎用性を勘案し,QuEChERS (EN 15662:2008)の原理で抽出を行い,抽出液を固相カラムで精製せず,希釈のみでLC-MS/MSを用いて測定する枝豆中の残留農薬一斉分析法について妥当性確認を実施した.その結果,202成分の農薬について,妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,本法は迅速的かつ効果的な分析法として適用可能であることが考えられる.
著者
岡部 亮 久保田 晶子 根本 了 青栁 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.113-118, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
8

畜産物中のアルベンダゾール代謝物(代謝物I)の分析法として,試料を塩酸酸性条件下で加熱した後,酢酸エチル–n-ヘキサン(1 : 1)混液で脱脂し,代謝物Iをアセトニトリルで抽出後,塩基性条件下で塩析し,スルホン酸塩修飾ジビニルベンゼン-N-ビニルピロリドン共重合体カートリッジカラムで精製する方法を開発した.測定はLC-MS/MSを用い,イオン化はESI法(ポジティブモード)により行った.また,分析カラムはODSカラム(Inertsil ODS-4),移動相は0.05%(v/v)ギ酸および0.05%(v/v)ギ酸含有アセトニトリルを用いた.4種類の畜産物(牛の筋肉,牛の脂肪,牛の肝臓および牛乳)に対して代謝物Iを残留基準値濃度および定量下限値濃度(0.01 mg/kg)で添加し,開発した分析法により回収試験を行った結果,真度83.6~97.9%,併行精度1.6~6.1%の良好な結果が得られた.
著者
大門 拓実 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.125-128, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
4
被引用文献数
2

筆者らは迅速性,簡便性,汎用性を勘案し,アセトンを用いて抽出後,n-ヘキサンによる脱脂精製,分析種のアセトニトリルへの分配,塩析効果による精製を同時に行うことが可能となる三層分離抽出の原理を応用し,TBHQ迅速分析法の検討を行った.本法は,固相抽出カラムを用いた精製や溶媒の濃縮,転溶操作をせずに試験溶液を調製可能であった.妥当性確認の結果,多種多様な11種の試料において妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,迅速的かつ効果的なTBHQ分析法として適用可能であることが考えられる.
著者
菅野 陽平 坂田 こずえ 中村 公亮 野口 秋雄 福田 のぞみ 鈴木 智宏 近藤 一成
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.113-123, 2017
被引用文献数
7

<p>ツキヨタケは,シイタケやヒラタケ,ムキタケと誤認されやすい毒キノコの一種で,日本でのキノコによる食中毒の主要な原因キノコである.本研究では,ツキヨタケを迅速に判別する分子生物学的手法としてPCR-RFLPを用いた判別法を構築した.Sau96I, Bpu10I, SfcI, DrdI/HincIIの4組の制限酵素を用いたPCR-RFLPにより,有毒のツキヨタケと食用キノコのシイタケ,ムキタケ,ヒラタケを明確に判別することに成功した.また,加熱調理や消化によりDNAの一部が断片化した試料でも判別可能な200 bp程度の領域を対象としたShort PCR-RFLPも構築し,リアルタイムPCRによる確認試験法についても検討した.これらは,ツキヨタケが疑われる食中毒事例の原因究明に有効な検査法として有用と考えられた.</p>
著者
新藤 辰二 佐々木 義幸 三木 啓道 江口 通 萩原 清和 市川 富夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.419-422_1, 1988
被引用文献数
34

新しい天然甘味料として期待されるエリスリトールのイオン交換樹脂カラム CK 08SHを使用した, 示差屈折計付き高速液体クロマトグラフィーによる迅速, 簡便な定量法を検討し, 良好な結果を得た. この方法により, 清酒, ワイン, しょう油, みそそしてビール中の含量を測定した. この結果エリスリトールは清酒, ワイン及びしょう油0.015~0.09w/v%, みそ0.13%, ビールには微量含まれていることが分かった.
著者
岡村 保 松久 次雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.382-385, 1965-08-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2 6

筆者らは紙巻タバコのフッ素量を測定した結果, 意外に多量のフッ素がタバコ中にあることを知った. しかもそれが, 煙となって大半が吸煙されると考えられるのでかくれた煙害として再検討されるべきではないかと思われる.
著者
池内 隼佑 Bui Thi Hien Nguyen Khanh Thuan Ly Thi 工藤 由起子 谷口 隆秀 林谷 秀樹
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.94-99, 2021-06-25 (Released:2021-07-02)
参考文献数
37
被引用文献数
1

2017年7月から2019年1月に,ベトナム・メコンデルタの市場やスーパーマーケット19か所から購入した計645検体の市販新鮮野菜における腸管出血性大腸菌 (EHEC) ならびに毒素原性大腸菌 (ETEC) の汚染状況を調べた.供試検体645検体中,EHECおよびETECがそれぞれ1検体の計2検体 (0.3%) から分離された.病原性大腸菌が分離された野菜はいずれもヘッドレタスであった.分離されたEHECの血清型は市販抗血清では型別されなかったが,ETECはO20であった.EHECとETECの2菌株は,用いた9種の抗生物質に対し,いずれも4と7薬剤に耐性を示す多剤耐性株であった.これらの結果から,ベトナム・メコンデルタにおいては,市販生鮮野菜はEHECとETECの感染源としては重要でない可能性が示された.
著者
古賀 敬興 平川 周作 石橋 融子 堀 就英
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.100-104, 2021-06-25 (Released:2021-07-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

マイクロ波分解装置を用いたミネラルウォーター類以外の清涼飲料水のスズ,ヒ素,鉛分析法の検討と性能評価を実施した.3元素を通して,真度93~100%,併行精度0.7~6.1 RSD%,室内精度0.9~8.6 RSD%であった.スズの試料調製においては,マイクロ波分解処理後に硫酸を添加する操作を追加することによって添加回収率および再現性の向上が確認された.また,本手法の適用性を検証するため,性状の異なる5種類の清涼飲料水について添加回収試験を実施した結果,回収率は92~102%であった.本手法によって幅広いミネラルウォーター類以外の清涼飲料水の分解処理およびスズ,ヒ素,鉛の定量分析への適用が期待でき,さらに既開発法と比較して作業時間の短縮および作業の簡便化が実現できた.
著者
松阪 綾子 伊藤 暁生 粟野 由梨佳 殿原 真生子 横溝 香
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.105-111, 2021-06-25 (Released:2021-07-02)
参考文献数
23

食肉製品中の亜硝酸根含量は,ジアゾ化法による定量法が用いられる.この測定法は,試料中にアスコルビン酸,システインなどの還元物質が存在すると,それらが定量妨害となり亜硝酸根の測定値が低くなることが知られている.一方,食肉製品に原材料として使用される,醤油,魚醤やみりんが有している抗酸化作用が,この還元物質に該当するのではないかと推測し,これらを使用している食肉製品について検討を実施した.検討の結果,原材料として醤油や魚醤が使用されている食肉製品中における亜硝酸根分析において,定量妨害が認められる場合があった.ただし,醤油や魚醤はその製法により抗酸化力に差があることから,これらを含んだ食肉製品において,亜硝酸根の定量妨害が一律に生じるとは言及できない.しかしながら,醤油や魚醤を含んだ食肉製品中の亜硝酸根含量を測定する場合は,亜硝酸根の定量妨害が生じることを考慮し,異なる試料量を用いて同時に定量を実施し,定量値に差が生じていないかを確認する必要があると考えられる.
著者
大八木 伸 盛田 隆行 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.79-84, 2021-06-25 (Released:2021-07-02)
参考文献数
21

ゆでめん類は水分含量が多く,水分活性が高いために腐敗しやすい食品の1つとなっている.そのため製めん業ではHACCPマニュアルを参考とした衛生管理を行うことが推奨されている.しかし,中小企業のゆでめん工場で包装後の製品から一般生菌数が自主基準より高く出る事例が数例あった.その微生物汚染源を特定するために, PDCAサイクルを基本として検討を行った.その結果,汚染原因は環境由来菌であり,殺菌後の冷却工程で二次汚染されたこと,水洗冷却工程の強い水流により環境浮遊菌および酸素が水洗冷却槽に取り込まれ冷却水中の微生物の増殖を招き,最終製品を汚染することが示唆された.このような現象が起こることは,HACCPマニュアルでは提示されておらず新しい知見であり,本知見が今後のHACCPプラン構築に貢献することが期待できる.
著者
上野 健一 細川 葵 橋本 諭 及川 寛 柴原 裕亮 松嶋 良次 渡邊 龍一 内田 肇 鈴木敏 之
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.85-93, 2021-06-25 (Released:2021-07-02)
参考文献数
32
被引用文献数
1

二枚貝の麻痺性貝毒(PSTs)はマウス毒性試験(MBA)で検査されているが,動物愛護に対する社会的関心の高まりとともに高感度・高精度なPSTs分析法も開発され,動物実験代替法の利用が可能となった.本研究では,PSTsのモノクローナル抗体を利用したイムノクロマトキットによるスクリーニング法の開発を試みた.食品衛生法規制値(4 MU/g)を下回る2 MU/gをスクリーニング基準として試験液の希釈倍率を80倍とした条件で試験した.目視に加え,画像解析判定も併せて検証した.MBA 2 MU/g以上の20試験品はすべて本キットで陽性を示し,偽陰性はなかった.また,2 MU/g未満の327試験品のうち偽陽性は3%であった.以上のように,本法は高い正確度を示し,迅速・簡便なPSTsスクリーニング法として有用であることが示された.