著者
山内 啓正 原田 雅己 但馬 良一
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.265-268, 2018-12-25 (Released:2019-01-09)
参考文献数
7

ミトコンドリア遺伝子ND5の多型を利用して,昆虫をその主要な5つの分類学上の目(双翅目,膜翅目,半翅目,鞘翅目,鱗翅目)のレベルで識別する方法を開発した.すなわち,複数の種のDNA塩基配列を決定し,それぞれの目に特徴的な塩基を19塩基以上見いだした結果,従来技術より正確にまた簡易に,目のレベルでの識別を行えることが分かった.
著者
井部 明広 西島 基弘 斉藤 和夫 安田 和男 上村 尚 永山 敏廣 牛山 博文 直井 家壽太 二島 太一郎
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.334-341_1, 1984
被引用文献数
6

食品中のオクラトキシン (OCT) A及びBの分析法を検討した. 試料からメタノール-1%炭酸水素ナトリウム溶液 (1:1) で抽出後, エーテルに転溶した. 抽出物は15%含水シリカゲルカラムでクリーンアップ後, カラムに Finepak SILC<sub>18</sub>, 移動相にアセトニトリル-0.1%リン酸 (50:50), 検出器に蛍光を用いた高速液体クロマトクフフィー (HPLC) で測定した. 添加回収率は20,100ppb添加で87-101%であり, 定量限界は試料あたり約2.5ppbであつた. また, 確認法としてメタノール-硫酸によりOCTのメチルエステル誘導体を作製し, HPLCにより確認を行った. 本法を用い市販品171検体に適用したところ, らい麦粉15検体からOCTAをTrace-20ppbの範囲で検出した.
著者
奥富 幸 林 洋 松島 陽子 大場 由実 中川 由紀子 小池 裕 永野 智恵子 関村 光太郎 神田 真軌 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.206-212, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
9
被引用文献数
1

畜産食品中シロマジンの高精度な分析法を開発した.本法には3つの特徴があり,1つめは2種類の溶液(メタノールとマキルベン緩衝液(pH 3.0))を試料種によって用法を変えて抽出すること,2つめは逆相–強陽イオン交換ミックスモードカラム精製の際0.14%アンモニア水で洗浄すること,3つめは両イオン交換マルチモードODSカラムでLC分離を行いMS/MSで測定することである.これらにより,5種類の畜産食品由来の成分の影響が小さく,絶対検量線での定量が可能となった.添加回収実験の結果,真度77.2~92.1%,併行精度2.2%以下,室内精度6.1%以下となり,妥当性ガイドラインの基準に適合した.実態調査の結果,生乳および鶏卵からシロマジンの残留が認められた.
著者
古川 祐輔 藤本 絢女 上野 あかね 小木曽 基樹 藤田 和弘
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.223-227, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
8
被引用文献数
1

フェオホルバイド等クロロフィル分解物の通知試験法の検証と改良を行った.フェオホルバイド等クロロフィル分解物は,環食第九九号(昭和56年5月8日)「フェオホルバイド等クロロフィル分解物を含有するクロレラによる衛生上の危害防止について」において通知試験法が示されているが,複数の問題点が見受けられた.まず,乳鉢を用いた抽出は,長時間均一な力を加え続けることが必要であり,操作性の向上が課題であった.次に,飽和硫酸ナトリウム溶液の調製に用いる試薬により,吸収極大波長が測定波長である667 nmより高波長側にシフトして吸光度が減少し,729 nm付近に新たな吸収を生じることが確認された.この現象により,フェオホルバイド等クロロフィル分解物を過小評価することが確認された.最後に,吸光度測定前の含水ジエチルエーテルを20 mLに定容することが困難であった.上記3点を改良した試験法を検討し,妥当性確認を実施した結果,平均添加回収率82.7%,室内精度5.8%,と良好な結果が得られた.
著者
近宗 雅人 猪之鼻 修一 横関 俊昭 土屋 仁 藤田 和弘
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.248-256, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
18
被引用文献数
2

LC-MSおよびLC-MS/MSによるアクリルアミドの前駆体である遊離アスパラギン(Asn)の穀類中の分析法を開発した.試料中から5%(w/v)トリクロロ酢酸溶液でAsnを抽出し,0.1%(v/v)ギ酸溶液で適宜希釈した後,LC-MSまたはLC-MS/MSで測定した.分析カラムはPenta Fluoro Phenyl(PFP)カラムを用い,0.1%(v/v)ギ酸溶液とアセトニトリルのアイソクラティック溶出により行った.検量線は,0.005~0.1 μg/mLの範囲で良好な直線性を示した.片栗粉,うるち米粉,小麦全粒粉の3試料を用いて添加回収実験を行った結果,平均回収率は95.4~100.9%,併行精度(RSDr)は0.9~6.0%,室内精度(RSDwr)は2.8~7.1%の良好な結果が得られた.本法による定量限界は,片栗粉で7 mg/kg,うるち米粉で5 mg/kgであった.また,遊離アスパラギンを含有しているうるち玄米粉,コーンフラワー,小麦強力粉,小麦全粒粉,ライ麦粉の5種類を用いて10試験室による試験室間共同試験を実施したところ,HORRATr値は0.4~1.0とCodex委員会が定める性能基準の2以下であったことから,本法の有効性が示唆された.
著者
今村 正隆 鍋師 裕美 堤 智昭 植草 義徳 松田 りえ子 前田 朋美 曽我 慶介 手島 玲子 蜂須 賀暁子 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.239-247, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
4
被引用文献数
1

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故により,放射性物質による食品汚染が発生した.地方自治体による出荷前放射性物質検査の有効性を検証するため,放射性セシウムが検出される蓋然性が高い食品・地域を重点的調査対象とした買い上げ調査を行った.2014年度は1,516試料,2015年度は900試料,2016年度は654試料を調査した結果,一般食品における放射性セシウムの基準値を超過した試料数は2014年度では9試料(0.6%),2015年度は12試料(1.3%),2016年度は10試料(1.5%)であった.放射性セシウムが検出される蓋然性が高い食品・地域を重点的に選択したが,基準値超過率は1%程度であったことから,各地方自治体における出荷前の検査体制は適切に整備され,かつ有効に機能していることが確認された.原木栽培や天然のきのこ,天然の山菜,野生獣肉などは放射性セシウム濃度が高い試料が存在したことから,継続的な監視が必要であると考えられた.
著者
渡邊 美咲 野口 実華子 橋本 多美子 吉田 精作
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.228-233, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
5
被引用文献数
5

2008年から2016年に購入した小麦製品中残留有機リン系農薬濃度を調査した.国産の小麦粉34検体中,クロルピリホスメチルは検出数16,最高値0.016 ppm,ピリミホスメチルは不検出,フェニトロチオン(MEP)は検出数14,最高値0.004 ppmであった.国産のクッキー38検体中,クロルピリホスメチルは検出数22,最高値0.054 ppm,ピリミホスメチルは検出数1, MEPは検出数16,最高値0.007 ppmであった.ふすまを含む国産クッキー中のクロルピリホスメチル濃度は高かった.外国産クッキー68検体ではクロルピリホスメチルは検出数25,最高値0.025 ppm,ピリミホスメチルは検出数32,最高値0.11 ppm, MEPは検出数4,最高値0.004 ppmであった.ヨーロッパ地域の製品からピリミホスメチルが高頻度に検出された.全調査検体において検出値は基準値未満であった.
著者
中西 徹 河村 葉子 城市 香 渡邊 雄一 杉本 敏明 阿部 裕 六鹿 元雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.193-199, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
3
被引用文献数
2

食品衛生法では,器具・容器包装からの総溶出物試験として蒸発残留物試験が規定されている.油脂および脂肪性食品の最適な食品擬似溶媒は植物油であるが,蒸発乾固が困難であることから,合成樹脂ではヘプタン,ゴムでは20%エタノールが浸出用液として用いられている.一方,欧州連合では,油脂および脂肪性食品に使用される合成樹脂に対してオリブ油への総溶出物試験が規定されており,その試験法は欧州標準規格EN1186-2に収載されている.しかし,試験操作上の問題が多いことから,試料の恒量化を43%硫酸デシケーターで行い,溶出後試料に残存する植物油を内標準浸漬抽出法で抽出し,植物油のメチルエステル化にナトリウムメトキシドを用い,GC測定条件を変更するなどの改良を行った.その結果,操作が簡便で試験時間が大幅に短縮され,試薬の有害性が低減され,合成樹脂だけでなくゴムにも適用可能な試験法を確立することができた.さらに,本法とEN1186-2に示された試験法を6種類の試料を用いて比較したところ,同等の試験性能をもつ優れた試験法であることが確認された.
著者
宮川 弘之 杉木 幹雄 田原 正一 山本 純代 山嶋 裕季子 植松 洋子 門間 公夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.213-219, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
11

LC-MS/MSを用いた加工食品中のステビア甘味料のスクリーニング分析法について検討した.試料中のステビア甘味料を透析抽出後,抽出液を水で希釈してLC-MS/MSにより測定した.本法を用い,5種類の加工食品にステビオシド,レバウジオシドAを各10 mg/kg,また,酵素処理ステビアを100 mg/kgになるように添加し回収試験を行った.その結果,いずれの食品においても添加量に相当する濃度の各ステビア甘味料溶液と同等のピーク高さのクロマトグラムが得られ,妨害ピークは観察されなかった.本法を用いてステビア表示がある市販加工食品36製品を分析したところ,すべての製品からステビオシド,レバウジオシドA,酵素処理ステビアのうち1種類以上が検出され,33製品からステビオシドを,33製品からレバウジオシドAを,11製品から酵素処理ステビアを確認することができた.また,ステビア抽出物と酵素処理ステビアを併用したと思われるものが5製品確認された.
著者
畑野 和広 中尾 朱美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.267-272, 2002-10-25 (Released:2009-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
7 8

LC/MS/MSによる食品中のスクラロースの分析法について検討した.ODSカラムを用い,移動相は2 mmol/L酢酸アンモニウム-アセトニトリルを用いてグラジエント分析を行った.イオン化はエレクトロスプレーイオン化法を用い,ネガティブモードで行った.試料を水又はメタノールで抽出し,C18カートリッジによりクリーンアップを行った後,水で希釈し試験溶液とした.試料にスクラロースを100 μg/g添加したときの回収率は 88.1~96.7% で,5 μg/g添加したときの回収率は 92.7~98.5% であった.定量下限値は清涼飲料水,発泡酒,ヨーグルトが0.5 μg/gで,その他の食品が2.5 μg/gであった.本法を用いてスクラロースの使用表示がある43の市販食品について分析した結果,いずれの検体からも検出範囲3.8~481 μg/gで検出された.
著者
畑野 和広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.239-244, 2004-10-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
18
被引用文献数
11 13

LC/MS/MSによる食品中のキノロン剤(エノキサシン,オフロキサシン,シプロフロキサシン,ダノフロキサシン,ロメフロキサシン,エンロフロキサシンおよびサラフロキサシン)の同時定量法について検討した.LC条件はODSカラムを用いて移動相にIPCC-MS3を添加しアセトニトリル-水系でグラジエント分析した.イオン化はエレクトロスプレーイオン化法によりポジティブモードで行った.試料の前処理は 0.2% ギ酸アセトニトリルで抽出しC18カートリッジを用いて精製した.各薬剤を10 ng/g添加した場合の回収率はおおむね 60% 以上で,検出限界はエノキサシンおよびシプロフロキサシンが2 ng/g,その他の薬剤が1 ng/gであった.本法を用いて牛筋肉20検体,豚筋肉7検体,鶏筋肉9検体,牛乳16検体,エビ19検体およびウナギ蒲焼き20検体について分析した結果,ウナギ蒲焼き9検体からエンロフロキサシンおよびその代謝物であるシプロフロキサシンがともにそれぞれ痕跡量~34 ng/g,痕跡量~10 ng/g検出された.
著者
小西 友彦 赤木 浩一 畑野 和広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.266-271, 2008-08-30 (Released:2008-09-11)
参考文献数
13
被引用文献数
3 5

LC/MS/MSによるヒト血清・尿中のヒヨスチアミンおよびスコポラミンの分析法について検討した.LC条件はODSカラムを用いて移動相に陽イオン分析用イオンペア試薬であるIPCC-MS3を添加し水-メタノール系でグラジエント分析した.イオン化はエレクトロスプレーイオン化ポジティブモードで行った.試料の前処理にはOasis HLBカートリッジおよびPSAカートリッジを用いた.血清・尿にヒヨスチアミンおよびスコポラミンを試料中濃度として0.2および10 ng/mLとなるように添加した場合の回収率は86.0~105%で,検出限界はいずれも0.02 ng/mLであった.本法を用いてチョウセンアサガオの喫食による中毒患者の血清4検体および尿3検体について分析した結果,血清からヒヨスチアミンおよびスコポラミンが0.45~3.5 ng/mL, 尿から170~670 ng/mLの範囲ですべての検体から検出された.
著者
畑野 和広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-6, 2003-02-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
20
被引用文献数
17 15

LC/MS/MSによる食肉中のペニシリン系抗生物質(アンピシリン,ペニシリンG, ペニシリンV, オキサシリンおよびクロキサシリン)の迅速同時定量法について検討した.イオン化はエレクトロスプレーイオン化法を用いネガティブモードで行った.試料を蒸留水で抽出しC18カートリッジによるクリーンアップ後フェネチシリンを内部標準として添加した.牛,豚および鶏の筋肉,肝臓および腎臓に各薬剤を 10~250 ng/g 添加した場合の回収率は 77.3~99.8% であった.各薬剤の検出限界は筋肉および腎臓でアンピシリンが 6 ng/g, ペニシリンGおよびペニシリンVが 2 ng/g, オキサシリンおよびクロキサシリンが 4 ng/g, 肝臓でそれぞれ 15, 5 および 10 ng/g であった.本法を用いて筋肉23検体,肝臓14検体および腎臓22検体について分析したが,いずれの薬剤も検出されなかった.
著者
鈴木 敏之
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.117-131, 2016-10-25 (Released:2016-10-26)
参考文献数
84
被引用文献数
2 4
著者
赤木 浩一 畑野 和広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.46-50, 2006-04-25 (Released:2008-08-04)
参考文献数
5
被引用文献数
20 23

LC/MS/MSを用いて,フグ組織およびヒト血清・尿中のテトロドトキシン(TTX)の迅速分析法を開発した.試料を2%酢酸で抽出し,フグ組織については水で希釈し,ヒト血清および尿については分子量分画5,000の遠心フィルターでろ過後,メタクリレート-スチレンジビニルベンゼンカートリッジを用いて精製した.フグ組織にTTXを0.1 mg/gと1 mg/g添加した場合の回収率は79∼90%,ヒト血清および尿に0.5 ng/mLと5 ng/mL添加した場合の回収率は93∼101%であった.検出限界は,フグ組織では0.01 mg/g,ヒト血清および尿では0.1 ng/mLであった.本法を用いて市販のフグの筋肉・皮・肝臓計30検体,フグ中毒による患者の血清7検体,尿5検体について分析した結果,すべての検体からそれぞれ0.04∼140 g/g,0.9∼1.8 ng/mLおよび15∼150 ng/mLの範囲でテトロドトキシンが検出された.
著者
吹譯 友秀 長谷川 貴志 高橋 和長 西條 雅明 浜名 正徳
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.94-102, 2014-04-25 (Released:2014-07-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)による健康食品中のスタチン12成分の一斉分析法を構築した.抽出は抽出溶媒として50%(v/v)メタノールを用い,超音波抽出法で行った.精製はOasis MAXミニカラムを使用し,溶出溶媒としてメタノールおよび0.2%(v/v)リン酸含有メタノールを用いた.UPLC分析のカラムはACQUITY UPLC BEH C18 を用い,0.2%(v/v)リン酸水溶液 – アセトニトリルのグラジエントで分析を行った.添加回収試験の結果,回収率は89.2~100.9%,併行精度と室内再現性は7%以下であり良好な結果を示した.本法を市販の健康食品24製品に適用した結果,ロバスタチンが最大4.85 mg/ 包,ロバスタチン酸が最大1.28 mg/ カプセル検出された.他の成分は検出されなかった.1製品について,製品表示どおりに摂取するとロバスタチンの1日摂取量が6.74 mgとなった.当該製品はロバスタチンの1日最小薬用量10 mgの1/2を超えて摂取することになることから,当該製品を摂取することによる健康への影響が懸念される.
著者
渡邊 裕子 赤星 千絵 関戸 晴子 田中 幸生 田中 和子 下条 直樹
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.98-104, 2012-04-25 (Released:2012-05-19)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

全卵・卵白・卵黄を用いた菓子・肉団子・パスタ・プリンモデル食品を作製し,調理による卵タンパク質の検出値の変化を,抽出液にトリス塩酸緩衝液を用いたELISAキットにより測定した.菓子,肉団子では揚調理が最も低下し,肉団子はレトルト処理によりオボアルブミン(OVA)は検出限界以下(<1 μg/g)となり,オボムコイド(OVM)も最も低下した.ゆえに,調理温度とともに均一な加熱処理が加わる調理方法が卵タンパク質の検出に影響した.また,卵黄使用の肉団子レトルト処理とパスタでは,いずれの卵タンパク質も6 μg/g以下となり,さらに患者血清中のIgE抗体によるウエスタンブロット法では,OVA,OVMは検出されなかった.一方,抽出液に可溶化剤を用いたELISAキットでは,前述のキットに比べ定量値が上がり,加熱処理したタンパク質が検出された.
著者
高橋 紀代子 稲垣 洋子 戸田 和子 藤原 邦達
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.33-37, 1965

O社製ガス熱蔵庫53-010型につき, 格納試料中の細菌の消長を試料の容量, およびその他各種の要因について検討し, つぎの結論を得た.<BR>1. 格納する試料の容量によって菌の死滅時期は異なる.<BR>2. 大容量の場合, 最初まず菌は増殖を示し (格納後点火された場合1時間に約5倍), 以後次第に死滅の経過をとる.<BR>3. 牛乳中の生菌数についても同様である.<BR>4. ガス供給停止の時期によっては熱蔵庫はむしろフ卵器ようの作用を示す.<BR>したがってなお食品衛生学的に問題が残されており, 今後の改良が望まれる. 現在の型式による場合一般に食品格納と点火の時期, 食品の取りだし時期ならびに熱供給の停止時期について十分注意する必要がある.
著者
小西 典子 尾畑 浩魅 甲斐 明美 大塚 佳代子 西川 禎一 寺嶋 淳 工藤 由起子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.161-166, 2018-08-25 (Released:2018-08-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

腸管毒素原性大腸菌(ETEC)は,発展途上国において一般的な病原体として知られており,汚染した野菜や水を介して食中毒を引き起こす.また,ETECは,先進国でも食中毒を引き起こすが,その原因食品はしばしば不明である.そこで,食中毒統計を基に日本で発生したETEC食中毒事例を分析した.その結果,野菜および井戸水が原因食品の50%および22.2%を占めた.これら主な原因食品は発展途上国の場合と同様であった.また,ETECの血清群も分析され,血清群O6,O25,O27,O148,O153,O159およびO169が主要7血清群であった.ETECの代表的な血清群O148による食中毒発生事例について,その食品での検査法を中心に詳細に検討した結果,二段階増菌法および耐熱性エンテロトキシン遺伝子を対象としたリアルタイムPCR法によって本菌が効率的にカットネギから検出された.本研究では,日本でのETEC食中毒の原因食品および主要O血清群が明らかになり,ETECの国内環境での生存が示唆された.また,食中毒事例での原因食品究明において効果的な検出法が示された.
著者
久保田 晶子 岡部 亮 柿本 洋一郎 根本 了 青栁 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.167-173, 2018-08-25 (Released:2018-08-30)
参考文献数
8

畜産物中のヘキサジノン分析法として,試料からヘキサジノン,代謝物B,代謝物Cおよび代謝物Fをn-ヘキサン存在下アセトニトリルで抽出し,トリメチルアミノプロピルシリル化シリカゲル/エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラムで精製した後,LC-MS/MSで定量および確認する方法を開発した.開発した分析法を用いて,牛の筋肉,脂肪,肝臓および牛乳の4畜産物に対し,各化合物を残留基準値濃度および定量下限値濃度(0.0025 mg/kg)で添加し,回収試験を行った結果,真度85.6~96.0%,併行精度0.8~4.9%の良好な結果が得られた.これらの結果から,本法は畜産物中のヘキサジノン分析法として有用と考えられた.