著者
小丸 奏 森部 絢嗣 伊藤 健吾 乃田 啓吾
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.I_129-I_135, 2023 (Released:2023-09-05)
参考文献数
17

ケリは水田地帯で営巣し,農業と密接な関わりを持つ野鳥であるが,耕起などの営農活動が繁殖失敗の主な原因と報告されている.用排水路などの整備が進み,早生化が進む現在,ケリと農業の共生を図るためには,農事暦の違いが繁殖に与える影響を解明することが重要である.本研究では岐阜県で栽培される晩生品種ハツシモに注目し,岐阜県内の農事暦の違う調査地間でケリの繁殖状況を調査し,農事暦の違いがケリの繁殖に与える影響を調査した.結果,晩生品種の栽培地域では,他地域と比較し,ケリの繁殖に好適な環境が約1か月長く続き,営農活動などの人為攪乱の影響が小さいことが明らかになった.また,農事暦とそこで繁殖する生物の関係を明らかにすることで,水田生物の生活史を考慮した地域別農事暦を提案し,水田生物と農業の共生を図ることができると考えられる.
著者
多田 正和 伊藤 邦夫 齋藤 稔 森 也寸志 福桝 純平 中田 和義
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.I_179-I_187, 2019 (Released:2019-07-19)
参考文献数
16

ナゴヤダルマガエルの越冬場所に影響を及ぼす環境要因の解明を目的として, 岡山県倉敷市内で本種が高密度に生息する地区の慣行水田と休耕田の各1筆で野外調査を実施した.その結果, 越冬個体の大半(35個体中34個体)が休耕田で確認された.越冬個体の在/不在(1/0)を目的変数, 各コドラートのカバー率・草高・土壌pH・体積含水率・間隙率・土壌硬度を説明変数として一般化線形モデル(GLM)により解析した結果, 土壌硬度・カバー率・草高の二乗項が最良モデルで選択され, 土壌硬度には有意な負の効果が認められた.水田で本種の越冬場所を創出する上では, 土壌硬度と田面の植物の存在が重要になると考えられた.
著者
小渕 敦子 西村 拓 溝口 勝 井本 博美 宮崎 毅
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.137-143, 2009-04-25 (Released:2010-11-01)
参考文献数
15

黒ボク土を用いて地表面燃焼下における土壌中の温度,体積含水率,炭素・窒素含有率の変化を測定した.土壌試料を内径15cmの素焼土管に充填し,地表面で炭を6時間燃焼した.燃焼中の地表面温度は600~700℃になった.湿った土では土壌温度は95~100℃まで上昇し,しばらく停滞し,その後再度上昇した.乾燥した豊浦砂では土壌温度の停滞はなく,連続的に,より急激に上昇した.このことから,温度の停滞は土壌水分蒸発に伴う潜熱消費によるものと考えられる.土壌温度が100℃を超える深さは燃焼時間の平方根に比例して深くなった.これは,燃焼開始時の初期体積含水率が大きいほど,地表面における燃焼の影響が及ぶ土層が浅くなることを示唆している. 電気炉を用いた燃焼試験では,500℃以上で土壌の炭素・窒素含有率はそれぞれ0.4, 0.1 g kg-1より小さくなった.一方,地表面を燃焼した土壌カラムにおいては,土壌温度上昇に伴って炭素・窒素含有率は低下したものの,土壌温度700℃においてもそれぞれ20, 1.0 g kg-1を超える,炭素,窒素含有率を示した.
著者
花山 奨 金谷 祐里 安中 武幸
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.I_209-I_214, 2017 (Released:2017-10-14)
参考文献数
15

土壌から田面水へのリン溶出など,田面水と土壌との間の物質移動に影響をおよぼす田面水のpH上昇は,土壌表面上の付着藻類の増殖にともなう光合成活動に依存する.本研究は,土壌中の窒素形態が土壌表面に発生する付着藻類の光合成による田面水のpH変化におよぼす影響を検討した.その結果,15℃において化学肥料を連用した水田の風乾表土に,硝酸カリウムを5gN/m2および10gN/m2添加して作成した疑似水田の田面水のpHは,それぞれ8.1および9.7にまで上昇した.一方,同風乾表土に尿素を5gN/m2および10gN/m2添加した場合,疑似水田の田面水のpHは,それぞれ7.3および7.5にまで上昇した.これらの結果から,アンモニア態窒素より硝酸態窒素が付着藻類の増殖を促し,光合成によるpH上昇に影響をおよぼす可能性が示された.
著者
谷口 真理 佐藤 由佳 角道 弘文
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.I_19-I_27, 2021 (Released:2021-01-12)
参考文献数
38

日本固有種ニホンイシガメの生息に影響を及ぼす環境要因を明らかにするために,兵庫県宍粟市のため池10箇所で2015年5月から11月に現地調査を行い,本種の個体数(/m2)を目的変数に,環境17項目を説明変数に,重回帰分析を行った.甲羅干し場(箇所/m2),ため池周囲の林地以外の接地割合が影響のある項目として抽出され,日当たりが良く,体温維持等に必要な甲羅干し場が複数存在する環境が必要であると推測された.また,雌の産卵期6月の移動範囲を明らかにするために,データロガー付GPS機器を用いて追跡したところ,移動範囲は最大12,640m2で,放流地点からの最大移動距離は210mであった.本種は様々な環境で出現し,特にため池周縁部と一部の水田で出現地点が集中した.本種の生息地の保全には,ため池だけでなく,その周辺の陸地も含めた対策が必要であることが確認された.
著者
庄嶋 芳卓 秋葉 正一 加納 陽輔
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.553-563, 2013-12-25 (Released:2014-12-25)
参考文献数
14

非鉄金属スラグは,非鉄金属精錬によって副生する循環資材であり,その代表的なスラグである銅スラグやフェロニッケルスラグ(以下,FNS)はコンクリート用骨材として既にJIS規格化され,利用されている.しかしながら,これらの生成過程や粒径,形状によっては利活用が困難なものもあり,特にFNS微粉末の多くは有効利用されないままとなっている.一方,集塵ダストとして発生する微粉酸化鉄は,消石灰と配合した安定処理材(以下,Fe石灰)として九州地方を中心に利用されているが,強度発現性に関しては経験的な要素が強く,究明すべき点が多い.本研究では,FNS微粉末の安定処理材としての利活用を提案し,九州地方の特殊土に対する改良効果について,Fe石灰による強度発現性および環境安全性,経済性と比較検証した.この結果,FNS微粉末の土質安定処理材としての有用性が認められた.
著者
山本 康仁 濱 裕人
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.II_77-II_83, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
29

国営環境保全型かんがい排水事業にて整備された北海道東部の根釧地域における排水路及び排水路附帯施設である遊水池を対象に,2005年から2019年にかけて,地元小学校との協働で水生生物の生息状況調査を行った.調査の結果,環境省あるいは北海道レッドリスト掲載種を複数含む,魚類7科14種類,甲殻類3科3種類,両生類1科1種の合計11科18種類の水生生物が確認された.湿地環境の開発に伴い生息地が減少し,個体群の分断化や局所絶滅が進んでいるとされるエゾトミヨ,ヤチウグイ,エゾホトケドジョウといった希少種が高い頻度で確認された.このことから,地域に生息している希少生物の生息地の一つとして,当該施設が機能していると推察された.
著者
竹下 伸一 北村 優衣
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.207-210,a2, 2019 (Released:2022-06-20)
参考文献数
16

宮崎県北西部の5町村は高千穂郷・椎葉山地域としてその地域に根付く山間地農林業複合システムが評価され,2015年に世界農業遺産に認定された。本報ではそれら農業用水路の受益水田の標高分布,および敷設地周辺の傾斜角を解析して,地形的特徴を検討した。加えて文献調査により他地域の水路と比較しながら本地域の農業用水路の存在意義を考察した。その上で本地域の農業用水路を「水田灌漑水の供給を主目的とした農業用水路で,地形上の制約により区間の多くが山の斜面上に敷設された多面的機能を有す開水路」とし,その呼称を新たに山腹用水路と呼ぶことを提案した。
著者
工藤 祐亮 登尾 浩助 加藤 孝 下大園 直人
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.507-514, 2012-12-25 (Released:2013-12-25)
参考文献数
52

水田での間断灌漑における間断日数の違いが温室効果ガス放出量と水稲収量に及ぼす影響を調査した.水管理は中干し期間を除いて常時湛水(湛水区),落水日数を2日とした間断灌漑(2日落水区),落水日数を4日とした間断灌漑(4日落水区)の3条件とした.調査の結果,間断灌漑における落水日数の延長がCH4放出量の削減に対して効果的である一方,N2Oの放出に対しては促進効果があることを明らかにした.また,地球温暖化係数(GWP)を用いたCO2換算量では,CH4とN2Oの積算フラックスの総和は2日落水区が最も小さく,間断サイクルの短縮が温室効果ガス放出量の削減に対して有効であることが示された.玄米収量は湛水区が最も高く,湛水区に対する2日落水区と4日落水区の減収量率は,それぞれ13%と18%であった.2日落水区は,単位玄米収量当たりの温室効果ガス放出量(CO2換算)が最小となり,大幅な収量低下をもたらさずにCH4とN2Oの放出を抑制することが可能な水管理であった.
著者
神宮字 寛 上田 哲行 角田 真奈美 相原 祥子 齋藤 満保
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.219-226, 2010-06-25 (Released:2011-06-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では,フィプロニル系殺虫剤を播種時と移植時に施用した水田において,育苗箱施用殺虫剤がトンボ科アカネ属におよぼす影響を調査した.さらに薬剤の散布時期の違いが害虫防除効果におよぼす影響について検証した.圃場実験では,移植時処理区,播種時処理区および無処理区をそれぞれ3区画ずつ,合計9区画の実験区を用意した.水田のフィプロニル最高濃度値は,播種時処理区で1.20ppb,移植時処理区で1.45ppbを示した.フィプロニルを散布した区では,無処理区に比べてアキアカネの羽化個体数が大きく減少することが明らかとなった.また,その影響はアキアカネ以外のトンボ類にも及び,移植時処理区では無処理区に比べ,アカネ属とアオイトトンボ科のトンボ成虫が減少した.アキアカネの羽化個体数,アカネ属幼虫および他のトンボ類成虫の出現個体数から,移植時処理に比べると播種時処理では,殺虫剤によるトンボ類の減少がわずかに抑えられた.
著者
JIRIGALA 大西 健夫 千家 正照 SAMDAN Shiirev-Adiya
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.33-40, 2013-02-25 (Released:2014-02-25)
参考文献数
27

モンゴル国では,ゾドと呼ばれる家畜の大量死につながる寒候季の寒雪害が頻繁に発生し,遊牧に甚大な影響を与えている.ゾド発生の有無は,気象要因と人的要因とが複合して決まるため,両要因を峻別することはゾド被害軽減策のために極めて重要である.本研究では,モンゴル国東部のドルノド県を対象にして気象条件とゾド被害発生との関係を分析した.その結果,冬季多雪条件下で降雪量と斃死率との相関が明瞭になり,夏季少雨および冬季低温の条件が重なると,さらに傾向が顕著となることが明らかになった.他方,夏季少雨,冬季低温,冬季少雪の単独条件下では,気象条件と斃死率との間には明瞭な相関関係が見られなかった.以上より,冬季多雪が要因と言われるツァガン・ゾド(寒雪被害)は気象条件を規定要因とみなすことができ,その他のガン・ゾド(干ばつ被害),ハラ・ゾド(無降雪被害),フィテン・ゾド(寒冷被害)は気象要因のみが決定要因ではないことが示唆された.
著者
福本 昌人
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.II_21-II_28, 2020 (Released:2020-05-27)
参考文献数
12

営農形態の変化に対応して試験的に水利権上の代かき期の前倒しが行われることがある.本研究では, その前倒しに伴う代かきの早期化状況の調査においてSentinel-1衛星の合成開口レーダ(SAR)データが有効利用できるか否かを明らかにするため, 同データと圃場区画データを用いて水田の湛水有無を圃場毎に判別(後方散乱係数の圃場平均値がある閾値以下の圃場を「湛水あり」と判定)した場合の判別精度を検証した.その検証は, 同じ快晴日にSentinel-1衛星とSentinel-2衛星の両方で観測が行われていた調査エリアにおいて行い, Sentinel-2衛星のマルチスペクトルデータによる湛水有無の判別結果を検証用データとして用いた.判別精度は, VV偏波が79.1%, VH偏波が75.8%で, VV偏波のSAR画像の方が判別に適していた.上記のような調査においてSentinel-1衛星データは十分に有効利用できると判断された.
著者
中屋 俊満
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.571-574,a2, 2015 (Released:2021-01-14)
参考文献数
7

愛知県濃尾平野北部に位置する木津用水は今から約370年前,尾張藩の直轄事業として開削された。木津用水の開削は尾張藩の財政を支え,その後何回かの災害を受けながらも復旧を行ってきた。明治時代には木曽川から名古屋を結ぶ舟運にも利用されながら現在まで用水路として水を配り続けてきた。しかしながら,都市化の進行により背後地などからの排水量の増大により機能に支障が出始めたことから,国営総合農地防災事業として改修を行うことになった。同用水の地下水涵養機能などに着目し,今後の用水供給の継続と土地改良区の役割などについて筆者の考えをまとめた。
著者
宮津 進 吉川 夏樹 阿部 聡 三沢 眞一 安田 浩保
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.479-488, 2012-12-25 (Released:2013-12-25)
参考文献数
12
被引用文献数
7 1

本研究では,田んぼダムの効果算定を目的に,農業主体の低平地における内水氾濫現象を適切に評価する新たなモデルを構築した.本モデルは,1)各土地利用からの流出量を計算する地目別流出モデル,2)排水路網の流れを計算する河川・排水路網モデル,3)氾濫水の伝播を計算する氾濫流モデルの3サブモデルで構成される.これらは相互に連動しており,それぞれのサブモデルの計算結果である水位が,互いの境界条件もしくは計算条件となる.本モデルは,浸水規模および浸水継続時間が計算できるうえ,「地形適合セル」の導入によって,低平地の地形的特徴を効果的かつ効率的に表現できる点に基本的特徴がある.構築したモデルを異なる地形的特徴をもつ田んぼダム取組実施2流域に適用し,モデルの妥当性を検証するとともに,田んぼダムの効果を検証した.
著者
成岡 道男 奥田 幸夫 大矢 徹治 大西 純也
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.187-192,a2, 2009 (Released:2019-01-08)
参考文献数
11

本報では,アラル海流域にあるウズベキスタン内のカラカルパクスタン自治共和国に焦点を当て,塩害の現状を報告し,地球温暖化による農牧漁業への影響について考察した。そして,現在実施されている塩害やアラル海の縮小に端を発した環境破壊への対策事業等を事例に,地球温暖化への備えについて検討した。その結果,地球温暖化に伴って,水不足の深刻化や塩害進行の加速化,アラル海の干上がった湖底からの飛塩の増加等が生じることを予測した。これらの影響に対して,水不足への備え,塩害防止対策の推進,湖沼の縮小への適応,セーフティネットとしての地域資源の活用等の重要性を示した。
著者
長谷川 雄基 佐藤 周之 上野 和広 長束 勇
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.II_29-II_34, 2020 (Released:2020-06-25)
参考文献数
7

本研究では,水砂噴流摩耗試験に対するサンドブラスト法の代替性の検討および材料の耐摩耗性の評価試験として実務上多用されるテーバー式摩耗試験とサンドブラスト法の比較検討を目的とし,細骨材粒径を変化させたモルタル供試体を対象とした比較検証実験を行った.結果として,サンドブラスト法では,試験時間の差異により試験後の供試体表面の状態は変化し,試験時間が短いと水砂噴流摩耗試験に近い選択的な摩耗現象を再現し,試験時間が長くなるとテーバー式摩耗試験に近い面的に進む摩耗現象を再現できる可能性が考えられた.加えて,粒径0.6mm以上の割合が大きい細骨材を使用した無機系補修材については,サンドブラスト法の試験時間を10秒とすることで,水砂噴流摩耗試験による現行の無機系補修材の品質評価と同等の評価ができる可能性が示された.
著者
中島 直久 野田 康太朗 守山 拓弥 森 晃 渡部 恵司 田村 孝浩
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.I_225-I_234, 2018 (Released:2018-11-01)
参考文献数
35

春季におけるトウキョウダルマガエルの生息場保全策の検討に向けて, 本種が冬眠から目覚めて地上へ這い出す際に残す這い出し穴の形状を特定し, ニラ畑と裸地の2圃場において這い出しの時期と, その時の地温および降水量との関連を調べた.対象地の這い出しは4月中旬~5月下旬に行われ, 2山のピークが確認された.調査日間の日平均這い出し穴数, 日最高・最低地温, 期間最大連続雨量を指標とすると, 這い出しは日最高地温が12~15℃の範囲で開始した.両圃場において日平均這い出し穴数と期間最大連続雨量との間に正の相関関係が認められた.これらの結果から, 本種は日最低地温が特定の温度以上において降雨がある場合に, 越冬を終了して地上へ這い出すと推測された.
著者
岡島 賢治 鏑木 諒 飯田 俊彰 安瀬地 一作
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.215-221, 2012-04-25 (Released:2013-04-25)
参考文献数
21

農地石垣の実態と特徴を把握するため,まず,これまで曖昧なまま用いられていた農地石垣に関する用語を整理して明確化し,次に,西日本を中心に農地石垣地域を12地域選定して,現地調査とヒアリング調査を行った.調査対象地域では,農地石垣は急傾斜地の農地の開墾の際により広い農地を確保するために,地山から産出する石材を用いて築造されていた.農地石垣の構造に関しては,野石,雑割石を用いた野面積みによる空石積み工が主体であった.また,石組には対象地域間の傾向の違いは認められるものの,ひとつの対象地域内で築造時期や修復時期などによる多様性が顕著であった.さらに,断面構造を道路石積み擁壁のものと比較した場合,勾配,裏込材の質,量や基礎部に大きな違いがあることが把握された.