著者
栗栖 忠
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.326-340, 1980-12

次のような射撃コンテストの問題を考える。m人のプレイヤー1、2、…、mがいて、各プレイヤーは一発づつ弾丸の入った銃を持っており、時刻0から1までの間に各自の標的をめがけて弾丸を発砲するものとする。プレイヤーiが時刻xで発砲した時、弾丸が標的に当たる確率はA_i(x)である。A_i(x)はプレイヤーiの精度関数と呼ばれ微分可能な増加関数でA_i(0)=0、A_i(1)=1を満たすものとする。各プレイヤーは全てのプレイヤーの精度関数を予め知っており、m人のプレイヤーのうちで最初に標的に当てたプレイヤーの利得を+1とし、他のプレイヤーの利得は0とする。このゲームでは各プレイヤーは精度がよくなるように発砲時刻をできるだけ遅らせようとするが、同時に他のプレイヤーが標的に当てるよりも先に発砲した方が有利であり、両者のバランスをとることが重要である。この問題は、連続型ゲームとして代表的な決闘ゲームの非零和m人ゲームヘの拡張になっており。行動を起すタイミングをどのようにとればよいかという現実に多く存在する状況をモデル化したものである。決闘ゲームと同様にこのゲームでも1人のプレイヤーが発砲したことが他のプレイヤーにわかるかわからないかが重要である。あるプレイヤーが発砲すれば直ちにこれが他のプレイヤーにわかる時、コンテストはnoisyであるといい、プレイヤーが発砲しても、他のどのプレイヤーもこれがわからない時、コンテストはsilentであるという。決闘ゲームについては既に種々の研究がある。又、射撃コンテストについてもm…2の場合およびmは一般でA_i(x)=xのsilentについては研究されている。本論文ではm=3のsilentコンテストについて考察する。一般の精度関数に対して各プレイヤーの均衡戦略と、均衡戦略による各プレイヤーの期待利得を求めた。均衡戦略の形はA_1(x)/A_2(x)A_3(x)、A_2(x)/A_1(x)、A_3(x)、A_3(x)/A_1(x)A_2(x)が単調減少であるか。あるいはこのうちの1つが単調増加であるかによって変化することがわかる。最後に、種々の精度関数に対して各プレイヤーの均衡戦略と期待利得を求め結果を例示した。
著者
山田 善靖 末吉 俊幸 杉山 学 貫名 忠好 牧野 智謙
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.381-397, 1995-12
被引用文献数
5

本論文は、日本的経営の為のDEA(Data Envelopment Analysis)法を提案する。提案の理由は、従来のDEAがアメリカ型の経営評価を基礎にしたものであり、その応用だけでは日本的経営評価の本質的特徴を表現しきれない点にある。より詳しく述べると、日本的経営評価の本質的特徴は、評価される事業体全体の相対的バランスを常に考慮に入れた評価を行うところにあると言われている。しかし、従来のDEAでは事業体の効率性評価をする場合、事業体全体との相対比較を効率性の高い事業体に対してのみ行っており、上記の様な日本的経営評価の特徴を含む評価を行うことはできない。そこで本論文は、この様な特徴を含む日本的経営にDEAをどの様にうまく組み入れて行くかを論じる。まずはじめに、日本とアメリカの経営体質の違いがDEA情報の使い方にどの様な影響を与えているかを考察する。その上で、日本的経営により合致したDEAの使い方を提案する。最後に、新しく提示されたDEA法を用いて政府の公共事業投資に関する効率性分析を行い、その実用性と有効性を示す。
著者
馬場 裕
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.12-32, 1983-03

集団到着や集団サービスの待ち行列は、今までに数多く研究されているが、そのほとんどは到着間隔分布があるいはサービス分布を指数分布としたものである。本論文では集団到着待ち行列PH^<〔x〕>/PH/1(ただし、到着集団のサイズは共通の確率分布{g_i}^<K>_<i=1>に従う)と集団サービス待ち行列モデルPH/PH^<〔Y〕>/1(ただしサーバーはK人一緒にサービスできるが、サービス終了後の待ち人数がK人未満ならば全員一緒にサービスする)について定常ベクトルや種々の特性量を得るアルゴリズムを提案する。記号PHはNeutsによって考えられた相型分布を表わす。相型分布は(O、∞)における確率分布のクラスの中で楯密であり、待ち行列理論でよく現われる重要な分布、例えば、指数分布、一般アーラン分布、超指数分布等を含んでいる。また相型分布は数値計算を行ううえでも扱いやすい。Neutsは無限次元確率行列のある重要なクラスが行列幾何的な定常ベクトルをもつことを示した。本論文で扱うモデルは待ち行列の状態遷移が連続時間マルコフ連鎖に従い、その無限小作用素の形は状態の組みかえによって行列幾何的な定常ベクトルをもつことが示される。この性質を用いて定常分布やそれから得られる種々の特性量、例えば、待ち行列長の平均、分散、平均待ち時間、待ち率等が得られる。これらの特性量は簡単な計算式で求められることが示される。またいくつかの数値例を示した。これらより集団待ち行列の種々の興味深い特性が得られた。
著者
石川 明彦
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.130-150, 1984-06

待ち時間に関するこれまでの研究は、平均待ち時間EWの近似式に関する研究が多いが、この論文では、待ち行列系GI/Ek/mについて、先着順サービス規律の下で、行列内待ち時間分布Fq(x)および系内待ち時間分布F(x)の具体的な式を導いた。複数窓口系における待ち時問分布に関する解析は、サービス時間分布が一定分布Dまたは指数分布M以外の場合、大変厄介である。この原因の一つは、客の系への到着時点と、サービス終了時点の両方に注目する必要があるからである。この研究では、到着時の平衡確率と推移確率行列とを用いることにより、この難点を克服している。さらに、代表的な系El/Ek/m、Ul/Ek/m、D/Ek/m等に対し、Fq(x)およびF(x)を、具体的に数値計算し、表やグラフに示した。その際、到着分布の影響を調べるため、その変動係数の値も同一にしF(x)のパーセント点を比較した。そして、F(x)の性質について考察した。
著者
中桐 裕子 栗田 治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, 2002-03-01

本研究は,従来のモデルでは追従しきれない成長現象を記述するモデルとして,階層構造を有する成長現象の微分方程式モデルを取り上げ,考察を加えるものである.ある種の成長現象は,n種の性質を順番に取得するといった「階層的な」構造を持っている.そこで本研究では,ある段階の性質を身に付ける個体数の成長速度が,その段階及び直前の段階の性質を入手している個体数に依存するという仮定を設けて,『段階的成長微分方程式モデル』を作成した.同様の仮定から,宅地化を経て市街化面積が広がる様子を上手く記述するモデル等が提案されているが,本研究では,従来の研究にはなかった多段階成長の連立微分方程式に着目して,これに一般解を与える.モデルの適用例としては,特にゲーム機の売上データを取り上げた.ハード購入希望者→ハード購入者→ソフト購入者といった階層的な構造を定式化したモデルを実データに当てはめた結果,発売直後のハード売上を再現するには,段階的成長モデルが有効であることが確認できた.更にこのモデルを応用して,値下げキャンペーンによる売上増を記述できる簡便なモデルを作成することに成功した.過去の分析例や今回の研究結果より,ゲーム機売上の記述に留まらず,他の社会現象の中にも,このモデルによる記述が有効な局面も存在するのではないかと考えられる.
著者
柳井 浩
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.249-281, 1982-09

我国の医療保険制度に於ける薬価基準の改訂法は、今期の実勢取引価格分布の90%点を以って、次期の薬価基準とする、いわゆる90%バルク・ライン法を中心としている。筆者らはすでに、薬価基準の推移を記述する数学モデルーうまみ巾ーモデルーを提起したが、本研究はこれを基礎として、さらに、2薬業者間の入札競争によって、納入価格が定まるモデルを構成し、一連のシミュレーションを行なって、その結果を検討したものである。すなわち、2薬業者は各々自社内で、はり値の下限ー限度価ーを設定し、薬価基準を上限として、この区間である分布にしたがってはり値を定め、これを医家に提示する。これに対し医家は、薬価基準とはり値の差額ーつまり医家の利益ーを2薬業者について比較し、その大なる方を購入するというモデルである。このモデルによって、180通りの条件の組合わせの各々について、5期間にわたって、薬価基準、市場占有率、粗利益等々を追跡した。特に、薬業者にとって、最も関心があるものと思われる、粗利益の累計に対して、各々の初期のうまみ巾(=初期薬価基準-(原価+流通経費))や限度価が、どのような影響を与えるかを、シミュレーションの結果から調べ、これを中心に薬業者が、営利企業として、どのような行動をとるのかについて推論を展開した。また、初期うまみ巾で不利な立場に立ったものが、値下げによって利益をふやそうとする行動の効果についても検討した。
著者
田口 東
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.398-408, 1995-12
被引用文献数
9

都市の交通渋滞の問題を考える指針を得るために次のような問題を考える。すなわち、渋滞のない理想的な条件の下で発生する可能性のある交通需要を円滑に通過させるためには、都市の面積のどの位の割合を交通に配分すればよいのであろうか。そのために、前提とする現実をできるだけ単純化してモデルを導く。対象は都市内の人が互いに行き来するという交通である。任意の対が行き来する確率は都市全体で一定であり、ひとりあたりの交通量は都市の人口に依存して増加すると仮定する。このモデルから、都市が大きくなるにつれて道路の割合が大きくなり、とくに中心部では居住に使える面積が著しく少なくなることが導かれる。実際には大量輸送機関が発達しており、また、交通需要の発生のしかたは本モデルの上限よりも緩やかであると考えられる。しかし、交通機関の発達が移動距離の抵抗を小さくし、それが都市の拡大と人の集中をうながし、その結果、便利なはずの交通機関の渋滞を招いているという連鎖のひとつの側面を、本モデルは的確にとらえており、パラメータの同定を行って、実際の問題への適用を試みることは十分価値があるものと考えている。
著者
木治 潤一
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
シンポジウム
巻号頁・発行日
no.42, pp.36-43, 1999-09-19

サービスシステムのスケジューリングとして,エレベーター群管理を紹介する.エレベーターサービスの特徴を説明し,運行スケジューリングにおける基本的な考え方を述べる.さらに,実際に導入されている工夫についても解説し,今後の展望を述べる.
著者
今井 浩
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-83, 1983-03

枝に容量制約が与えられたネットワーク上で相異る2点間の最大流量の流れを求める最大流問題は、最短路問題と並んでネットワーク・フロー理論の基礎を成している。そして、実際に最大流を求めるための算法は、交通流。通信網解析等に直裁的に応用されるばかりでなく、他のネットワーク問題の部分問題として頻繁に現われるという意味で重要である。最大流算法としてはFordとFulkersonがラベリング法を与えて以来、理論的に計算の手間を改良した様々な算法が発表されてきた。特にここ数年の進展には驚くべきものがあり、現在では、最悪の場合でもO(|A| |V| log |V|)の手間で最大流を求める算法がSleatorとTarjanにより与えられている(|A|:枝数、|V|:点数)。しかし、実用に際してどの最大流算法が最も役に立つかという問題に関しては、あまり研究が成されていなかった(理論的に最悪の場合力)かる手間のオーダが低い算法が、実用に際して最も役に立つというわけではない)。最近、この問題に対してCheung、またGlover et al。が計算機実験による興味深い結果を得ているが、Cheungの計算機実験にはデータ構造。試験ネットワークの点で問題があり、Glover et a1。は全体として優れているもののKarzanovの算法を試していない点など不十分なところもある。本論文では組織的かつ大規模な計算機実験に基づいて、各種最大流算法の実用に際しての有用性を評価する。そのためにまず、各種算法をプログラム化する段階でそれらの効率化を図る。一般に論文での算法と現実のプログラム上の算法との問にはかなりの隔りがあるが、この"効率化"はそれを埋めるものであり、具体的には如何に最適のデータ構造を選び、用いるかという議論が中心になる。そして実際の計算機実験における試験ネットワークとしては、単にランダム・ネットワーク、格子状ネットワークといった人為的なものだけでなく、他に現実の道路網を用意し、それを"加工"したネットワークも用いる。この方法は、ネットワーク算法の有用性を計算機実験により評価する際には非常に有効である。他にも試験ネットワークとして特殊構造を持つものを考え、各算法の特徴をより明らかにすることも行う。上記のような綿密な計算機実験の結果から、本論文では次のような結論を得ている。(結論)実用上、最も役に立つのはDinicの算法とKarzanovの算法である。Dinicの算法は簡単(プログラムのし易さはラベリング法と変らぬ程)であり、通常の場合ではこれで十分である。Karzanovの算法は最悪の場合の保証という点でDinicの算法より優れているが、記憶領域をより多く必要とする。
著者
工藤 拓
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 = [O]perations research as a management science [r]esearch (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.719-724, 2007-11-01
参考文献数
6

単語や文節,係り受け関係といった特定の言語パターンの頻度を数え個々の表現の分布を調査することは,自然言語処理でもっとも基本的な処理であることは疑いの余地はなく,その応用範囲は多岐にわたる.処理の内容はいたって単純であるが,大規模データを扱えるようアルゴリズムのスケーラビリティーを確保することは容易ではない.本稿では,頻出言語パターンマイニングアルゴリズムを概観するとともに,マイニングアルゴリズムを応用した機械学習手法について紹介する.
著者
大西 真人
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.141-146, 2005-03-01

本稿では, OR技術を活用したコンサルティングを, 実例を通してご紹介する.取り上げる事例は, 3社の企業統合に伴いロジスティクス・ネットワークの最適化を試みたものである.3社の統合を機に, 工場と顧客の割当を再構築(最適化)しようという取り組みからスタートし, 生産工程まで考慮したロジスティクス・ネットワーク最適化に至るまでの過程を記す.最後に, OR技術を活用したコンサルティングを実践するにあたっての筆者の所感を記す.
著者
石井 博昭 塩出 省吾 西田 俊夫 井口 克郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.233-256, 1979-09

この論文では、ランダムな線型不等式制約と通常の線型不等式制約をもつあるE一モデルについて考察し、その解法を与える。この様な、確率的制約条件をもつ問題はこれまであまり考えられていない様であり、解法に関してはさらに少ない様に思われる。最初に、元の確率計画問題Pは対応する決定的等価問題P'に変換される。次に、P'を解く為に、パラメータμをもつ補助問題P(μ)が定義され、P'とP(μ)の双対的関係が明きらかにされる。この関係及びP(μ)に対して示すパラメトリック二次計画手法に基づくアルゴリズムを十分利用して、主アルゴリズムを構成する。最後に、この双対的関係の他の非線型計画問題への適用可能性を議論する。