著者
田村 太志 三国谷 淳 三上 雅人 佐々木 直裕 佐々木 正則 小野寺 庚午 渡辺 和重 沢井 通彦 及川 光雄 大池 弥三郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.23, no.10, pp.1165-1170, 1991

患者は55歳,男性.長期にわたり過量のアルコールを連日のように摂取していた.昭和63年11月中旬,前胸部圧迫感あり.胸部X線写真で心拡大,心電図上で心房粗動がみられ,拡張型心筋症として近医院で治療を受けていた.平成元年1月4日,雪かき中に動悸出現.心拍数210/分の心室性頻拍がみられ,嘔吐後,心室細動となった.電気的除細動後,心拍数50/分の接合部調律に回復したが,精査のため,当科に転入院となった.当科入院時,血液ならびに生化学的検査に明らかな異常所見はみられなかったが,左心室の拡大ならびに低収縮性が著明であった.心臓電気生理学的検査,右心室心内膜生検所見からは刺激伝導障害を伴う拡張型心筋症の病態が考えられた.しかし,長期にわたる大量のアルコール摂取歴があることからアルコールによる心筋障害を疑い,断酒させた上で利尿剤や強心剤を中止して経過を観察したところ,臨床症状,臨床所見のみならず心筋組織にも明らかな改善が認められた.以上から,拡張型心筋症に近似する疾患の診断においては,アルコール性心筋症をも考慮し,アルコール摂取の有無を注意深く聴取することが必要と思われた.
著者
臼田 和生 小林 大祐 竹森 一司 石川 忠夫 星野 修一 斉藤 典彦 津久井 宏行 西谷 泰 久保 実
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.58-63, 2000

症例は12歳,男児.学校心臓検診では異常なし.1999年2月15日小学校の昼休み中に突然意識消失し,4分後救急隊到着時には心肺停止状態で心電図モニターは心室細動であった.近医に搬送され心肺蘇生と軽度低体温療法を施行し第8病日に開眼,その後,徐々に意識回復した.非持続性心室頻拍が多発し心停止の原因と考えられたため,精査加療目的に当科入院.心エコー・左室造影で僧帽弁後尖下部左室後壁にφ3cmの先天性左心室瘤を認めた.心室頻拍波形は右脚ブロック+上方軸で心室瘤付近が起源と考えられた.心室瘤に対し外科的治療を施行.高密度マット電極で術中マッピングを行い,心室瘤辺縁にVT最早期興奮および心室瘤状部分に伝導遅延を認めたため,心室瘤周囲にcryoablationを行い,心室瘤に対し心膜パッチ縫着を行った.術後,心室性不整脈は消失した.以上,先天性左心室瘤に致死的心室性不整脈を合併した稀な1例を経験し,蘇生・根治に成功した.学校心臓検診での本病態の検出は極めて困難と思われた.
著者
齊藤 涼子 池田 尚平 田丸 貴規 尾上 紀子 田中 光昭 石塚 豪 馬場 恵夫 篠崎 毅
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.1466-1473, 2010 (Released:2012-04-24)
参考文献数
17

症例は33歳, 男性. 体重増加(160kg)と著明な労作時息切れを主訴に来院し, 精査加療目的に入院となった. 全身浮腫, 低酸素血症, 高二酸化炭素血症, 総ビリルビン値上昇を認め, 左室拡張機能および収縮機能は低下していたが, 肺水腫や肺うっ血は認めなかったことから, 右心不全優位の肥満低換気症候群(obesity hypoventilation syndrome; OHS)と考えられた. 簡易型終夜ポリグラフ検査にて重症の閉塞型睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea; OSA)を認めたが, 患者は持続陽圧呼吸療法を受け入れることができなかった. 心不全に対して通常の内科治療のみを開始したところ, 心不全は徐々に増悪し, 入院第13病日に多臓器不全を呈した. 心係数低下, 肺動脈楔入圧上昇を認めたため, 両心不全の増悪と判断し, 人工呼吸器管理を行った. 経過中にTorsade de Pointes(TdP)とそれに引き続く心不全の再増悪を認め, 持続緩徐式血液濾過が必要となった. その後, 心不全は徐々に改善し, 体重は77.5kgまで減少し, カルベジロールを開始した. 第211病日にはOSAと心機能は著明に改善した. 現在カルベジロール少量投与にて経過観察中である. 重症心機能障害を合併するOHSでは, 早期より気管切開による陽圧呼吸療法も含めた積極的な加療を考慮すべきである.
著者
棚橋 紀夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.239-244, 2009 (Released:2013-05-09)
参考文献数
13
著者
中島 豊
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.492-495, 2009 (Released:2013-05-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
堀込実岐 堀込実岐 山崎 恭平 若林 靖史
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1081-1086, 2010 (Released:2012-03-23)
参考文献数
11

拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy; DCM)で加療中の42歳, 男性. 38歳時に持続性心室頻拍を指摘され, 植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)を挿入後, 同時期より塩酸アミオダロンの投与が開始された. その後, 定期的な内分泌学的検査にて, 甲状腺機能異常は認めていなかった. 2007年(42歳)7月より頸部圧迫感あり, 当院外来を受診. 甲状腺のび漫性腫大を認め, エコーでは内部不均一な甲状腺両葉の腫大を認めた. 血液検査ではTSH 5.5µIU/mL, fT3 3.7pg/mL, fT4 1.0ng/dLと正常で抗TSH受容体抗体(TRAb)や抗サイログロブリン抗体(TgAb), 抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)は正常範囲内であり巨大な単純性のび漫性甲状腺腫と診断した. アミオダロンによるものと考え, アミオダロンを中止したところ甲状腺腫は徐々に縮小傾向を認めた. しかし, その後アミオダロンを中止した約10カ月後より8kg/月程度の著明な体重減少を認めたため, 甲状腺機能を測定したところfT3 17.2pg/mL, TSH 0.003µIU/mLと著しい甲状腺中毒症を認めた. 破壊性甲状腺炎の診断でプレドニゾロンとチアマゾールを投与し約半年で甲状腺機能の改善を認めた. アミオダロンにより甲状腺中毒症や機能低下症を発症することは知られているが, 今回の症例では, アミオダロンによると思われる単純性甲状腺腫を認め, アミオダロン投与中止の10カ月後に甲状腺中毒症を呈した, 非常に稀な症例と考えられた.
著者
米田 浩平 日浅 芳一 當別當 洋平 馬原 啓太郎 細川 忍 原 朋子 石橋 直子 尾崎 敬治 後藤 哲也 藤井 義幸 山下 理子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.681-686, 2011 (Released:2012-11-07)
参考文献数
11

症例は16歳, 男性. 発熱, 倦怠感と労作時呼吸困難を訴え近医を受診し, 白血球減少を指摘され, 当院血液科へ紹介された. 精査目的に入院したが, 呼吸困難の増悪を認めたため, 循環器科へ紹介された. 心エコーでは右心系の拡大と中等度の肺高血圧を認め, 造影CTを施行したところ両側肺動脈を中心に広範囲に血栓を認め, 肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism; PTE)と診断した. 血小板数が54.5万と増加しており,(腫瘍性の)血小板増加もPTEの原因の1つである可能性が考えられた. ウロキナーゼ, ヘパリンを投与し治療を行ったが, 治療開始後にも呼吸困難は継続していた. 白血球減少については骨髄検査を行い, 20%以上の芽球を認めたため, 急性骨髄性白血病(AML with multilineage dysplasia)と診断した. 入院7日目よりIDA+Ara-Cによる寛解導入療法を開始したところ, 症状は軽快し, 心エコー上も右心負荷の改善を認めた. その後, 同種骨髄移植を行い当院血液科外来にてPTEの再発なく経過観察中であったが, 移植後の再発のため2010年3月死亡. 今回, PTEが初発症状の1つとして発症し, その治療として化学療法が奏功した若年者のAMLの1例を経験したので報告する.
著者
山岸 昌一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.702-705, 2010 (Released:2012-02-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
内川 友起子 中村 千種 宮井 信行 伊藤 克之 石井 敦子 内海 みよ子 有田 幹雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.799-804, 2012 (Released:2013-12-26)
参考文献数
17

メタボリックシンドローム(metabolic syndrome; MetS) によって引き起こされる動脈硬化のリスクを軽減するには,身体活動を含めた生活習慣を是正することが基本となる. MetSにおける砂浜でのウォーキングがMetSの危険因子に及ぼす影響については十分な検討はなされていない. 本研究では砂浜でのウォーキングがMetSの心血管危険因子に及ぼす影響を検討した. 重篤な心血管病のない44名の住民を対象とした. 無作為クロスオーバー法を用い,A群: 運動介入—観察期間—非運動介入(n=22) とB群: 非運動介入—観察期間—運動介入(n=22) に分類した. 運動介入時は,1日1万歩の砂浜での歩行運動を行い,非運動介入時は,積極的な運動を行わないようにした. 介入·観察期間はそれぞれ8週間とし,介入前後に,身体計測,血圧,augmentation index(AI) ,血液検査などを計4回実施した. 運動介入時(n=44) の平均歩行数は9,692±1,592歩で,非運動介入時(n=41) の平均歩行数は6,386±1,633歩であった. 運動介入時群に,体重,腹囲,BMIが有意に改善した. 血圧は有意でないものの改善傾向であり,radial(r) AIは有意に減少した. 中性脂肪は有意に低下,インスリン,空腹時血糖は低下傾向であり,特にHbA1cで有意に低下した. 一方,非運動介入時は,いずれも有意差を認めなかった. 以上より,身体活動は内臓脂肪の減少とインスリン抵抗性を改善させるとともに動脈スティフネスの改善を示したことより,1日1万歩程度の砂浜での歩行は,MetS改善に寄与する有効な手段であることが示唆された.
著者
有田 武史
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.748-752, 2013-07-15 (Released:2014-09-16)
参考文献数
10
著者
友田 春夫 滝川 修 森本 浩司 藤田 有希美 岩本 智超 多田 博己 小熊 俊明 臼井 和胤 椎名 豊 吉岡 公一郎 布施川 雄一 田川 隆介 井出 満 鈴木 豊
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.26, no.Supplement1, pp.139-145, 1994-01-31 (Released:2013-05-24)
参考文献数
20

不安定狭心症,非貫壁性心筋梗塞を主とする,acute coronary syndromes例における虚血心筋の評価を,123I-MIBG,201TlClSPECT法にて試みた.123I-MIBG 111 MBq(3mCi)静脈内投与90分後より心筋SPECT像を撮像後,引き続き201TICIを投与15分後より心筋灌流SPECT像を撮像した.冠動脈造影は1週間内に施行した.非貫壁性心筋梗塞症例7例の内,201TlClによる心筋灌流低下一欠損部位を特定できない3症例においても,123I-MIBG心筋像では全例責任冠動脈領域の欠損像を描出し得た.不安定狭心症例にて,6例中3例においては,血清酵素の逸脱所見を認めず,かつ201TlClによる心筋灌流正常所見であっても,123I-MIBG心筋像では,責任冠動脈領域の明確な欠損像を描出し得た.以上のように,123I-MIBG心筋像により,他の方法で捉えられない,過去数週以上の虚血発症部位が描出されることが示された.
著者
奥村 謙 山部 浩茂
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.572-584, 1993-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

反復性持続性心室性頻拍症(VT)の発症機序をentrainment現象により検討した.陳旧性心筋梗塞例(OMI)のVT,特発性VT,右室異形成症例(ARVD)のVT中に,VTレートより5~10拍/分速いレートで数秒間心室ペーシングを行った.VTが停止しない場合にはレートを5~10拍/分増加し繰り返した.ペーシング部位は右脚ブロック型VTでは右室心尖部または流出路,左脚ブロック型VTでは原則として左室自由壁とした.OMI例のVTでは,14/15例(93%)でconstant fusionが認められ(entrainment診断基準1),ペーシング停止後VTが再開した.10例ではペーシングレートの増加によりfusionの程度が変化した(progressive fusion)(診断基準2).特発性VTでは,右脚ブロック左軸偏位型でベラパミル感受性のVTにおいて診断基準1と2を7例全例で認めたが,右脚ブロック右軸偏位型と左脚ブロック型の特発性VT例では複数箇所でペーシングを行っても診断基準は認められなかった.ARVDの2例では診断基準1,2を認めた.entrainment現象が観察されたVTでは全例で,刺激部位よりVT中の最早期興奮部位へ至る長い伝導時間すなわち緩徐伝導が認められた.またVTがペーシングにより停止する場合,緩徐伝導部での局所性ブロックによることが示された(診断基準3).VTの機序として,回路内に緩徐伝導部を有するリエントリーが考えられたが,一部の特発性VTの機序は不明であった.
著者
千代 満 紺谷 真 池田 孝之
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.12-17, 2004

症例は50歳,男性.生来健康で失神の既往歴および突然死の家族歴はない.平成15年5月17日地域の祭りがあり,昼より飲酒.同日夜,祭り会場で花火遊びをしていた中学生数人に注意をした際に中学生1人に顔面を殴打された.30メートル程歩いたあと意識消失を認めた.心室細動による心肺停止にてby stander による心肺蘇生術を行いつつ当院救急外来に救急搬送された.<BR>心肺蘇生術と200Jおよび300Jの直流除細動にて自己心拍に復帰.頭部CTは正常.アルコール血中濃度は138mg/dl.急性期の体表面12誘導心電図から急性冠症候群が疑われ,緊急冠動脈造影を行ったが,右冠動脈,左前下行枝の近位部に25%の狭窄を認めるのみで,左室造影も正常であった.無酸素脳症を合併し,現在人工呼吸器および経管栄養中.<BR>入院後は心室細動,心室頻拍の再出現なく,経過の中でBrugada型様の波形も認められたが,QT延長の所見は見られなかった.<BR>心停止の原因およびアルコールと顔面殴打の因果関係は不明であり,アルコールと情動ストレスを背景とした冠動脈スパスムが原因として疑われたが確定診断は困難で,また器質的心疾患のない特発性心室細動との鑑別も困難であった.
著者
手島 保 水澤 有香 田辺 康宏 深水 誠二 辰本 明子 弓場 隆生 小宮山 浩大 仲井 盛 小田切 史徳 北條 林太郎 高野 誠 櫻田 春水 平岡 昌和
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.SUPPL.1, pp.S1_30-S1_33, 2010 (Released:2012-08-21)
参考文献数
4

Brugada症候群の症例の心事故発生のリスクを層別化するために, 当科でcoved型ST上昇が確認された115例を検討した. 対象は男性108例, 女性7例で有症候性例は20例であった. 全例で加算平均心電図, 73例でpilsicainide負荷テスト, 87例に電気生理学的検査を施行した. 加算平均心電図のRMS40値は有症候性例で有意に低値(7.11, p < 0.01)でRMS40値が5µV未満の症例には有症候性例が有意に多かった(p < 0.01). RMS40値が10µV未満をLP強陽性とすると, 有症候性例には自然経過のcoved型ST上昇の出現(p=0.0013), LP強陽性例が有意に多く(p < 0.0001), 突然死の家族歴を有する傾向(p=0.065)が見られた. しかし電気生理学的検査におけるVFの誘発性には症候性例と無症候性との間に有意差は認められなかった. Pilsicainideを負荷するとRMS40の値は有意に低下したが, 症候性例と無症候性例を判別するには有用ではなかった. Brugada症候群のリスクの層別化には加算平均心電図は有用であり, LP強陽性例で特にRMS40値が5µV未満の症例はhigh riskである.
著者
河合 秀樹 大野 淳 岩下 由佳 横井 朋子 中尾 彰宏 山本 順一郎 前田 伸治 坂野 章吾 尾崎 行男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1212-1218, 2010 (Released:2012-04-21)
参考文献数
19

症例は68歳, 男性. 2008年8月ころより下腿浮腫, 2009年4月に入り浮腫増強, 発熱, 労作時息切れを認め, 同月下旬, 当院内科初診. 著明な心嚢水および両側胸水を認め, 同日精査加療目的で入院. 入院後, 胸腔・心嚢穿刺そのほか, 各種精査行うも原因不明. 採血にて抗核抗体1,280倍, 抗DNA抗体300倍など, 膠原病を示唆する所見を認めたが, 臨床的には非典型的であった. 診断的治療目的で抗生物質, 次いで, 抗結核薬を投与するも奏効せず, 感染性漿膜炎は否定的と考えた. 各種検査結果と臨床経過より, 稀な疾患ではあるが高齢発症ループスの可能性が高いと考え, ステロイド投与を開始したところ, 徐々に症状改善し, 心嚢水, 胸水とも減少を認めた. 各種精査を行っても原因のはっきりしない漿膜炎にたびたび遭遇するが, その中に本疾患が潜在している可能性があると考えられる.