著者
捶井 達也 石川 紀彦 堀川 貴史 瀬口 龍太 木内 竜太 富田 重之 大竹 裕志 河内 賢二 渡邊 剛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1056-1061, 2017-10-15 (Released:2018-10-23)
参考文献数
13

Barlow症候群は両弁尖に高度な粘液腫様変性による肥厚を特徴とする僧帽弁閉鎖不全症であり,僧帽弁形成術は困難である場合が多い.しかし弁尖の形態を正確に評価し弁形成を行うことで,Barlow症候群に対しても弁形成術は可能である.また我々はda Vinci Surgical System(da Vinci)を用いた完全内視鏡下の僧帽弁形成を行っており,Barlow症候群に対しても積極的に行っている. 方法:今回当院で経験したBarlow症候群に対するda Vinciを用いた僧帽弁形成術9例(男/女;6/3例,平均52.6歳,について検討した.手術は完全体外循環のもと,右胸壁の4つのポートからda Vinciを用いて僧帽弁形成術を行った. 結果:平均手術,人工心肺,大動脈遮断時間は223分,138分,76分であった.形成方法はArtificial neochordae 7例,Resection and Suture 3例,Folding plasty 3例,edge-to-edge 1例であった.使用した人工弁輪のサイズは34 mmが5例,32 mmが4例であった.全例人工心肺からの離脱に問題はなく,術当日に抜管し,翌日からリハビリテーションを開始した.全例で術後当日に抜管し,術後10.7日目に退院した.術後の心臓超音波検査では全例逆流に消失を確認した. 結語:da Vinciを用いた僧帽弁形成術は正中切開を回避できるため低侵襲であり,3次元画像と自由度の高い鉗子により術者の意図した形成術を行うことができる.そのため今回da Vinciを用いた完全内視鏡下でBarlow症候群に対する僧帽弁形成術は,良好な結果が得られたと考える.
著者
竜 美幸 飯塚 卓夫 中神 隆弘 杉山 祐公 片柳 智之 藤井 毅郎 徳弘 圭一 野池 博文
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.81-86, 2011 (Released:2012-09-20)
参考文献数
14

症例は, 生来健康な30歳, 女性. 背部痛, 呼吸困難, 発熱を主訴に来院. 血圧83/53mmHg, 脈拍115/分, 体温37.7°C. 採血では白血球25,530/µL, CRP 33.0mg/dLと著明な炎症反応の上昇を認めた. 心電図上, I, II, III, aVF, V2~6誘導での広範なST上昇, 胸部X線では心胸郭比は62%, 胸部CTで多量の心液の貯留を認めた. 心臓超音波検査では全周性に, やや輝度の高い心液の貯留がみられ, 細菌性心膜炎による心タンポナーデと判断し, 心膜開窓術を施行した. 白黄色膿状の心液を約1,000mL吸引し, 心タンポナーデは解除され血圧の上昇を認めた. 血液培養および心液培養からは, インフルエンザ桿菌が検出された. 術後, 心ドレナージおよび抗生物質の使用により軽快. 第25病日, 退院となった. 今回, 若年女性に発症し, 早期の外科的処置により良好な経過をたどった急性細菌性心膜炎の1例を経験したので報告する.
著者
木下 弘喜 土肥 由裕 佐田 良治 木阪 智彦 北川 知郎 日高 貴之 栗栖 智 山本 秀也 木原 康樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1532-1537, 2014 (Released:2015-11-15)
参考文献数
17

【背景】心肺運動負荷試験 (cardiopulmonary exercise testing ; CPET) 中に観察される, 運動時周期性呼吸変動 (Exercise Oscillatory Ventilation ; EOV) は, 収縮障害を有する心不全にみられる運動耐容能低下や突然死と関連する現象として知られる. 近年, 拡張不全の予測因子としての有用性も報告された. 非虚血性心不全に関して, NYHAⅡ以下の比較的軽症例を中心とした報告で臨床的意義が相次いで明らかにされたが, NYHAⅢ以上の重症例を対象とした検討は稀である.  【目的】非虚血性心不全重症例における, EOV出現と心事故発症との相関を明らかにすること.  【方法】2009年4月から2011年12月の間にCPETを施行した非虚血性重症心不全患者 (NYHA分類class Ⅲ/Ⅳ) 76症例を, 主要エンドポイントを心血管イベントとして後ろ向きに検討した. 観察期間内に複数回CPETを施行した患者について, 換気パターンの変化を比較するサブ解析を行った.  【結果】EOVを認めた25症例 (EOV群) と, 認めなかった51症例 (非EOV群) の2群間で比較したところ, 死亡率はEOV群で20%と, 非EOV群9.8%と比較して有意に高く (p<0.05), 心不全入院を含む有害事象もEOV群32%, 非EOV群25%と, EOV群で高頻度であった (p<0.05). EOVが観察期間内に消失した3人のうち2人は死亡していた.  【結論】EOVは非虚血性心不全患者において, 生命予後・心血管イベントの予測因子となりうる可能性があることが示唆された.
著者
上塚 芳郎 三浦 芳則 栗山 正子 伊藤 直人 田中 直秀 木全 心一 広沢 弘七郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.1450-1455, 1988-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
5

41歳の女性で,子宮筋腫からの不整性器出血のため,Hb1.4g/dlと高度の貧血を生じ,心不全,心停止をきたし,心肺蘇生術により蘇生し得た1例を経験した.本症例は,心エコーの記録から,発症急性期には拡張型心筋症のごとく,左室の心筋収縮が全体的に低下しており,また左室腔の拡大も著明であったが,3カ月後には貧血の改善とともに左室壁運動の改善が認められた.また,回復期に右室心内膜心筋生検を施行したが,心筋細胞の大きさのばらつき,配列の乱れや核の変形が認められた.これらの変化は,慢性貧血による心筋障害または心停止→蘇生の際の心筋障害による変化と考えられた.

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著者
木庭 新治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.444-451, 2011 (Released:2012-10-03)
参考文献数
31
著者
本田 早潔子 川崎 達也 山野 倫代 佐藤 良美 張本 邦泰 三木 茂行 神谷 匡昭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.966-971, 2015 (Released:2016-08-15)
参考文献数
14

人工心臓弁を有する症例の心エコ−図検査で左室内を移動する高輝度の点状エコーを検出することがある. これは血液中に出現した一過性の微小気泡と考えられ, キャビテーション気泡と呼ばれている. 本研究の目的は人工心臓弁に関連したキャビテーション気泡の臨床的特徴を検討することである. 当院で経胸壁心エコー図検査を施行した人工心臓弁を有する連続50例中11例 (22%) にキャビテーション気泡を認めた. 年齢と性別で補正したロジスティック回帰分析では, 低肥満指数 (カイ2乗=0.65, 95%信頼区間=0.43-0.98, p=0.038) と低年齢 (カイ2乗=0.90, 95%信頼区間=0.81-1.00, p=0.049) がキャビテーション気泡の独立規定因子であった. 心エコー図検査で評価した左室形態や各種ドプラ波形とキャビテーション気泡の有無は関連しなかった. キャビテーション気泡を呈した症例はすべて機械弁を有し, 大動脈弁位 (13%) より僧帽弁位 (67%) で高頻度であった (p<0.01). 平均16カ月の観察期間中14例に有害イベントが生じたが, キャビテーション気泡の有無とは関連しなかった. 本研究では, 人工心臓弁に関連したキャビテーション気泡は機械弁に限定され僧帽弁位に高頻度であった. キャビテーション気泡は低肥満指数と低年齢に関連したが有害イベントとは関連しなかった.
著者
足達 寿
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.784-787, 2012 (Released:2013-12-26)
参考文献数
6
著者
塩野 淳子 石川 伸行 村上 卓 河野 達夫 堀米 仁志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1423-1424, 2016-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
宮田 敬士 尾池 雄一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.610-614, 2011 (Released:2012-11-07)
参考文献数
19
著者
三好 徹 岡山 英樹 川田 好高 高橋 龍徳 重松 達哉 木下 将城 原 佳世 泉 直樹 日浅 豪 山田 忠克 風谷 幸男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.172-178, 2015 (Released:2016-02-15)
参考文献数
15

症例は40代男性. 2月某日40°C台の発熱があり, その5日後に間欠性の痙攣を伴う意識消失発作を繰り返すため, 脳炎を疑われ当院救命救急センターに搬送された. モニター心電図上, 完全房室ブロックに伴う意識消失と痙攣発作が出現するため救急外来で経皮的ペーシングを開始し, その後経静脈的一時的ペーシングを施行した. 来院時, インフルエンザA抗原が陽性, 経胸壁心エコー図上, EFは40%でびまん性の壁運動低下を認めていた. 後日, 冠動脈造影を施行したが有意狭窄は認めなかった. 同時に心筋生検を行い, リンパ球を主体とした炎症細胞浸潤, 心筋細胞の断裂, 萎縮, 消失を認めており心筋炎に矛盾しない所見であった. 好酸球や巨細胞は認めなかった. インフルエンザA抗原 (H3N2) のペア血清が有意に上昇しており, A香港型インフルエンザ心筋炎に伴う完全房室ブロックと診断した. 完全房室ブロックは改善せず, 入院7日目に左胸部にMRI対応型恒久的ペースメーカー植込み術を行った. 完全房室ブロック原因精査目的にペースメーカー植込み3カ月後に心臓MRIを撮像したが, 良好な画像が得られ明らかな遅延造影所見は認めなかった.
著者
増田 卓 佐藤 清貴 和泉 徹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.21-34, 1998-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
45

破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血では,急死例を含むさまざまな心肺合併症が出現する.我々は,くも膜下出血の715例を対象に,その臨床像から心肺合併症の成因について検討した.くも膜下出血急性期の9.4%(67例/715例)に一過性の左室壁運動異常が出現し,同時に機械的心筋不全と心筋壊死を認めた.このような症例では,左室壁運動異常のない症例と比較して血漿カテコールアミン濃度が高値であることから,この一過性の心筋収縮異常,カテコールアミンのバースト状過剰放出によってパニックに陥った心筋の状態と考え,"驚愕心筋(panicmyocardium)"と名づけて理解しようと試みた.次に,くも膜下出血の不整脈を,心室性不整脈とその他の不整脈に分けて比較すると,心室頻拍や心室細動などの重症不整脈を有する症例では,血漿カテコールアミン濃度が高値を示し,血清CK-MB,ミオシン軽鎖,トロポニンT濃度も上昇していた.これは,くも膜下出血に合併する致死的不整脈がカテコールアミンの心筋障害によって生じることを示している.さらに,くも膜下出血発症直後の交感神経系活動と心筋障害との関係を明確にするため,新しいくも膜下出血の実験動物モデルを考案した.この実験モデルでは,くも膜下出血発症直後に交感神経系活動と心機能は一時的に亢進した後,心機能低下が出現した.また,血清CK-MBは,くも膜下出血発症後から上昇を続け,実験期間を通じて高値であった.以上から,くも膜下出血急性期には,交感神経系活動の一過性過剰亢進から心筋障害が出現し,心筋がパニックに陥った状態と思われる.
著者
水澤 有香 辰本 明子 伊藤 晋平 小宮山 浩大 小泉 章子 永島 正明 谷井 博亘 南雲 美也子 酒井 毅 山口 博明 呉 正次 岡崎 英隆 手島 保 櫻田 春水 日吉 康長 西崎 光弘 平岡 昌和
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement4, pp.11-17, 2005-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
3

症例は66歳,男性.1987年西アフリカのシエラレオネから帰国後ラッサ熱を発症し,収縮性心膜炎を合併したため心膜剥離術を施行した.2003年8月より心房細動あり,他院にてIc群抗不整脈薬を投与された.その後持続する心房粗動を認めたため,2004年5月カテーテルアブレーション目的にて入院した.電気生理学的検査を行ったところ,三尖弁輪を反時計方向に旋回する通常型心房粗動であった.三尖弁一下大静脈間峡部への高周波通電中に頻拍周期が延長し,心房興奮順序の異なる心房頻拍へと移行した.頻拍中に右房内をマッピングしたところ,右房後側壁にP波より60ms先行する最早期興奮部位を認めた.同部位への通電により頻拍は停止し,以後心房頻拍,心房粗動ともに誘発されなくなった.きわめてまれなラッサ熱による心膜炎術後例に多彩な心房性不整脈を合併した症例を経験した.