著者
松添 弘樹 七星 雅一 角谷 誠 大西 祥男 清水 宏紀 畑澤 圭子 中村 浩彰 熊谷 寛之 辻 隆之 井上 通彦 則定 加津子 高見 薫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.54-60, 2014

症例1 : 30歳代, 女性. アルコール依存症, 神経性食思不振症にて精神科外来加療中であったが1 年前より通院を中断していた. 2012年5 月下旬の夕食後, 突然の痙攣様発作で救急要請. 救急隊到着時, 心室細動波形で心肺蘇生を開始, 合計3 回の電気的除細動が施行され当院搬入となった. び漫性左室壁運動低下を認め, 血清カリウム2.2mEq/L, 血清リン1.1mg/dLと電解質異常を認めていた. 入院後電解質補正を行い不整脈は消失したが, 低酸素脳症のため意識レベルの改善なく経過した. 症例2 : 40歳代, 男性. 2012年5 月下旬より下肢筋力低下, 起立困難から脳梗塞を疑われ近医で頭部精査入院となったが, 明らかな脳神経疾患は認めなかった. 前医第2 病日の朝食後, 突然心室細動が出現し心肺蘇生が施行されるも, 難治性心室頻拍となり某院救急センターへ搬送. 冠動脈造影にて有意狭窄はなかったが, 薬剤的, 電気的にもコントロール困難で経皮的心肺補助装置 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) 挿入下に当院に紹介搬送となった. 当院では多形性心室頻拍 (torsades de pointes ; TdP) を認め, び漫性に左室壁運動が低下しており, 血清カリウム : 1.6mEq/L, 血清リン : 1.6mg/dLと電解質異常を認めた. 入院後電解質補正によりTdPは消失, PCPS抜去にいたるも低酸素脳症から意識障害が遷延し第10病日に死亡退院となった. 両症例ともアルコール依存症を背景に持ち, カロリー摂取後の致死的不整脈出現からrefeeding症候群の関与が疑われた. 慢性低栄養患者に発症した若年性心肺停止患者ではrefeeding症候群の可能性を常に考慮する必要があると考えられた.
著者
川本 健治 片山 祐介 櫻木 悟 西原 大裕 辻 真弘 市川 啓之 横濱 ふみ 谷本 匡史 大塚 寛昭 山本 和彦 田中屋 真智子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.S2_152-S2_157, 2016

<p></p><p>症例は74歳,女性.前医のホルター心電図にて50%を超える心室期外収縮や非持続性心室頻拍を認めた.心室期外収縮は,下壁誘導でのpeak deflection indexが0.66と0.6を超えており,心外膜側起源が疑われた.さらに心室期外収縮は,単形性で,右脚ブロック型+下行軸,Ⅰ誘導でrS,V5-6でS波を認め,下壁誘導にてノッチは認めなかった.大心静脈(以下,GCV)遠位部にて,局所電位はQRS起始部に30ms先行し,perfect pace mapが得られた.さらに,GCV遠位部近傍の左室心内膜側にてactivation mappingを行い,QRS起始部に12ms先行し,good pace mappingが得られた.GCV遠位部での通電も考慮したが,まず左室心内膜側の最早期興奮部位からの焼灼を行うこととし,焼灼開始25秒で心室期外収縮は消失し,その周囲に追加通電を行い,その後,再発を認めない.</p>
著者
岡崎 怜子 宮内 靖史 小林 義典 丸山 光紀 岩崎 雄樹 平澤 泰宏 阿部 純子 谷口 宏史 堀江 格 舘岡 克彦 上野 亮 小鹿野 道雄 篠田 暁与 小原 俊彦 平山 悦之 加藤 貴雄 高野 照夫 新田 隆 大森 裕也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.115-122, 2005

症例は74歳,女性.70歳時に僧帽弁置換術および慢性心房細動に対しradial手術施行.手術2カ月後より周期220msの心房頻拍(AT)が持続.AT中,冠静脈洞(CS)の興奮順序は遠位から近位であり,CS内広範囲でpost-pacing interval(PPI)が頻拍周期にほぼ一致するconcealed entrainment(CE)を認めたことから僧帽弁輪を旋回するATと考えた.左房後壁切開線が接合する僧帽弁輪部直下のCS内部にて波高の高い電位が記録され,PPIが頻拍周期に一致するCEを認めた.同部位における高周波通電開始4秒後に頻拍は停止し,以後誘発不能となった.通電部位より2mm近位部でのペーシングで1cm遠位部への伝導時間が200msとなったことからこの通電で左房後壁切開のブロックが完成したと考えた.術中完全に凍結し得なかったCS筋層を介する伝導が頻拍発生の原因と考えられたradial術後ATを経験したので報告する.
著者
高 英成 中島 昌道 三隅 寛恭 早崎 和也 釘宮 博志 今井 康晴 黒沢 博身 沢渡 和男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.46-50, 1988

症例は13歳,男子.チアノーゼ,易疲労感を主訴とし,当科に入院.精査の結果,complete levotransposition,VSD,PS,1-PA atresia,PDA,PFOと診断し,左肺動脈パッチ拡大術,Rastelli手術を施行し,良好な結果を得た.心外導管には牛心膜をロール状にしたものを作成し,ブタ心膜の三弁を内蔵させ,使用した.大動脈が肺動脈の左前方に位置するcomplete levotranspositionではVSDはsubarterial VSDであることがほとんどであり,PSを合併した場合,Rastlli手術の最も良い適応になる.
著者
賀来 文治 油尾 亨 藤田 主税 吉田 太治 下島 正也 勝田 省嗣 田口 富雄 新田 裕 平岩 善雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1145-1152, 2013-09-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
18

症例は92歳の女性.86歳時に他院にて洞不全症候群および発作性心房細動の診断でAAIペースメーカーの植え込みがなされ,植え込み後も発作性心房細動に対して抗不整脈薬(ピルジカイニド75mg/日,ベラパミル120mg/日,メチルジゴキシン0.05mg/日)の投与が継続されていた.ペースメーカー植え込み後,毎年施行されていたペースメーカーチェックでは,心房のペーシング閾値は0.5V(パルス幅0.4msec)で,ペースメーカーの出力は2.5Vに設定されていた.以後,施設に入所中であったが,意識低下,低酸素血症,徐脈,ショック状態にて当院救急外来へ緊急搬送された.搬送時の心電図では心房のペーシング不全と高度の徐脈を認めた.まず,ペースメーカーの出力を10V(パルス幅1.0msec)にしたが心房は捕捉されなかった.次に体外式ペースメーカーを挿入し,右房の数か所で10V(パルス幅0.75msec)の出力でペーシングを試みたが,やはり心房は捕捉されなかった.引き続き右室でのペーシングを行ったところ,心室は容易に捕捉可能であり心室のペーシング閾値は1.0V(パルス幅0.75msec)であった.その後ピルジカイニドの血中濃度が2.3μg/mLと中毒域にあったことが判明した.抗不整脈薬の中止とともにペーシング不全は改善,全身状態も改善し救命可能となった.本例では血中ピルジカイニド濃度の上昇がペーシング不全の主因であった可能性が高いが,心房と心室のペーシング閾値に大きな差を認めた.日常臨床の場では,ペースメーカー植え込み後に抗不整脈薬を継続投与することも多く,ペースメーカー機種の選択も含めて一考を要する症例と考えられたため,ここに報告した.
著者
河野 律子 安部 治彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1349-1354, 2013 (Released:2014-11-21)
参考文献数
11
著者
淀川 顕司 森田 典成 小林 義典 小原 俊彦 村田 広茂 高山 英男 清野 精彦 加藤 貴雄 水野 杏一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.1, pp.S1_19, 2012 (Released:2013-08-23)

[背景・目的] Brugada症候群と不整脈源性右室心筋症(ARVD)はともに加算平均心電図における心室遅延電位(LP)が高率に検出されるが,そのLPの形態に着目すると,ARVDでは高周波成分で形成されるのに対し,Brugada症候群では比較的低周波成分で形成されることが多い.そこで,われわれは,QRS波の周波数解析を行うことにより両者の周波数特性を検討した.[対象と方法] 特発性右室流出路起源心室頻拍(RVOT-VT)20例,Brugada症候群10例,ARVD 10例.全例で心電図Z誘導QRS波をガボール関数を用いてウェーブレット変換し,各周波数帯でのピークのパワー値,および総パワー値を比較.[結果] Brugada症候群では80Hzを中心に,ARVDでは150Hzを中心にQRS内部に高周波成分が発達していた.高周波帯の中で最大パワーを有する周波数はBrugada症候群に比し,ARVDで有意に高かった(81.7± 19.9Hz vs 145.4± 27.9 Hz,p[結論] 心電図QRS波の周波数解析において,周波数特性は,Brugada症候群とARVDで明らかに異なる.
著者
栗山 逸子 平川 千里 八木 安生 長村 みさほ
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.1027-1036, 1986-09-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
21

坐位から仰臥位,次には受動的下肢挙上の順で体位を変える際に誘発される吸気相後半の不連続性肺ラ音(posturally induced crackles,略してPIC)テストを入院患者601例に計1,616回施行,PICの出現頻度を各疾患群にて比較検討し,以下なる事実関係を明らかにした. この際, ( a ) 呼吸困難に関するNYHA旧分類のclass III,IVの者(左心不全患者)および(b)70歳以上の症例を除外して判定した場合には,その旨を明記した.1)心筋梗塞(n=69)におけるPIC陽性率は,67.6%,本態性高血圧を伴う狭心症(n=13)は58.7%,本態性高血圧を伴わない狭心症(n=22)は60.8%という高頻度であった.また,本態性高血圧症(n=58)のそれは37.5%,拡張型心筋症(n=12)は19.1%であった.2)“その他の心疾患”(n=46)におけるPICの出現頻度は33.0%であった.3)非心疾患である肺疾患(n=24)でのPIC陽性率は57.6%,肝硬変および肝腫瘍(n=10)でのそれは68.4%,糖尿病(n=33)でも48.4%と高率であった.4)“その他の非心疾患”(n=115)におけるPICの陽性率は17.4%と低率であった.すでに学会報告しているごとく,このようなPIC発生の機序を要約するならば,下肢挙上に伴って血液の一部が心肺系内に移動,左房圧が2~3mrnHgだけ上昇し,肺微小血管からの体液漏出が生ずることにより,small airwayに機能的な狭窄が生じ,このことが,PIC発生機序の少なくとも一部である可能性が考えられる.
著者
永野 雅英 芳沢 礼佑 織笠 俊樹 西澤 健吾 八子 多賀志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.1197-1201, 2011 (Released:2013-01-19)
参考文献数
12

症例は16歳, 男性. 既往歴なし, 冠危険因子なし, 喫煙歴なし. 通学バス内で突然胸部圧迫感を自覚し続いて意識消失した. 数分で意識改善したが胸部症状が残存しており当科受診. 頭部CT, 胸部単純X線写真, 心電図, 心エコー図検査などすべて異常なかったが, 心筋逸脱酵素上昇(CK/-MB 780/55) およびトロポニンT陽性を認め, 精査加療目的に当科入院となった. 入院後は症状なく経過し心筋逸脱酵素も低下した. 冠動脈CTで有意狭窄なし. 1肋間上方で記録した心電図も正常. 冠攣縮性狭心症精査のためにアセチルコリン(acetylcholine; Ach) 負荷冠動脈造影検査を施行した. 左右冠動脈ともAch 50µg負荷で, 入院前と同じ症状を伴う亜完全閉塞を示した. カルシウム拮抗薬内服開始のうえ退院. その後は症状なく当科外来通院中である. 今回われわれは, 多枝冠攣縮から急性心筋梗塞症を発症した未成年男性の1例を経験したのでここに報告する.
著者
大野 英昭 新浪 博士
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.384-389, 2017-04-15 (Released:2018-04-17)
参考文献数
24

症例は55歳の男性で,間歇性跛行を主訴に入院.既往症に糖尿病,脳梗塞.糖尿病性腎症で透析導入となった.ヘパリンによる皮疹の既往があり,アルガトロバンによる抗凝固療法下に,下肢動脈の経皮的血管形成術および経皮的冠動脈インターべンション(PCI)を施行した.PCIの再評価でステント内再狭窄を含む冠動脈3枝病変を認め,当科に紹介された.術中の抗凝固療法は,圧モニターラインにメシル酸ナファモスタットを使用し,グラフト血栓予防目的でアルガトロバンを持続投与し,活性化凝固時間を250秒以上で管理した.心拍動下に左内胸動脈を前下行枝に,静脈グラフトを後側壁枝および鈍縁枝にバイパスした.静脈グラフトの中枢側吻合に血管縫合補助具(ハートストリング®)を用いた.静脈グラフトの中枢側吻合後,フローメーターで順行性の血流に乏しくグラフト内の血栓形成が疑われた.静脈グラフトを切開し,ひも状の赤色血栓を除去した.手術直後から抗凝固療法を行い,CTでグラフトの開存を確認した.
著者
小丸 達也 加藤 浩 高橋 務子 佐治 賢哉 三浦 元彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.665-671, 2017-07-15 (Released:2018-07-15)
参考文献数
28

冠動脈に狭窄病変を有する患者では慢性閉塞性肺疾患(COPD)の併存が古典的冠危険因子と独立して急性冠症候群の発症のリスクとなるか検討した.冠動脈造影にて有意狭窄病変を認めた連続353例(年齢:71.2±9.9歳,男性/女性:259例/94例)を研究対象とし,COPDの診断の有無,急性冠症候群の既往の有無,古典的冠危険因子(高血圧,脂質異常症,糖尿病,喫煙)を調査,検討した.全対象者のうち34名(9.6%)が臨床的にCOPDと診断されていた.単変量解析では,COPD併存の有無は,急性冠症候群発症既往の有無と有意に相関していた(13.7% vs 6.5%,p<0.05).ロジスティック回帰分析による多変量解析では,COPDの併存は,年齢,性,古典的冠危険因子を補正しても,急性冠症候群発症の既往と有意に相関していた(オッズ比:2.33,95%CI:1.07-5.08,p<0.05).COPD併存患者は男性に多く(p<0.01),より高齢で(p<0.05),喫煙者が多く(p<0.0001),BMIが小さく(p<0.01),脂質異常症が少なかった(p<0.005).また,スタチンやACE阻害薬,β遮断薬などの心保護薬の処方がより少なかった(p<0.03).以上より,冠狭窄を有する患者においては,COPD併存は年齢,性,古典的冠危険因子から独立して急性冠症候群の発症リスクを高める.冠疾患患者の診療にあたっては,COPDの合併の有無に十分に注意を払う必要がある.
著者
馬渡 耕史 大野 朗 徳田 潔 春田 弘昭 中野 治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.172-181, 2012 (Released:2013-09-30)
参考文献数
20

肺血栓塞栓症は, 診断手順の確立により日本においても広く認識されるようになり, 向精神薬服用者で静脈血栓や肺塞栓症の合併が多いことも報告されている. そのほとんどは急性肺血栓塞栓症といわれているが, 慢性の場合は長い経過と非特異的な症状のせいもあって多くは見逃されている可能性がある. 今回, われわれは, 向精神薬の長期にわたる服用歴を持ち, 肺血栓塞栓症を合併した症例5例を経験したので報告する. 男性2例, 女性3例, 年齢は39~67歳で, 向精神薬の内服期間は4~25年であった. 1例は急性発症で起立時に急にショック状態となり心肺停止にいたっている. 残り4例は数カ月から数年にわたる息切れや呼吸困難で慢性の反復性の病型であったが, 長期の臥床や悪性腫瘍などの誘因となるものはなかった. 胸部X線写真では, 全例肺動脈の拡大を認め, 心電図は4例で右室負荷所見を認めた. 心エコードプラ, または右心カテーテル検査による肺動脈圧は急性発症の1例を除いて収縮期圧が72~128mmHgで著しく高値であった. 下肢から下大静脈にかけての静脈エコーでは5例とも血栓を認めなかった. 全例下大静脈フィルターは使用せず, 抗凝固療法のみを行い, 肺動脈圧の低下をみた. 心肺停止後の蘇生例は歩いての退院となったが, 入院中の急変で1例を失った. 向精神薬内服中の患者が, 呼吸困難や息切れを訴えた場合は, 肺血栓塞栓症の鑑別が必要である.
著者
佐竹 洋之 福田 浩二 近藤 正輝 中野 誠 瀬川 将人 伊藤 健太 下川 宏明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.1, pp.S1_147-S1_152, 2015 (Released:2016-12-14)
参考文献数
5

症例は30歳代男性, 市民ハーフマラソン大会に出場し, スタートから15km付近を走行中に心肺停止状態となった. 同マラソン大会に救命救急のプロジェクトとして参加していた医師・看護師により, 速やかにCPRが施行され, AED (VFドキュメント) にて心拍再開を得た. その後, 当院へ救急搬送・低体温療法にて神経学的後遺症を残さず回復した. 心エコーおよび画像検査からは器質的心疾患の存在は否定的であり, 後日施行した冠動脈造影では器質的狭窄は認めず, 冠攣縮誘発試験でSpasm陽性, 電気生理検査ではVFは誘発されず, サンリズム負荷試験も陰性であった. VFの発生に冠攣縮の関与も疑われたが, 過去, またCPA時に胸痛がないため, 特発性心室細動と診断し, ICD植込みを施行, Ca拮抗薬の内服も開始し退院となった. 若年者のスポーツ中の突然死は, 肥大型心筋症などの器質的心疾患に多いとされているが, 今回, 器質的心疾患を認めない若年者に発生した特発性心室細動を経験したので報告する.