著者
大久保 正 阿部 忠昭 栗林 良正 佐藤 護 贄田 茂雄 高橋 昌規 金沢 知博 田沢 勝雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.73-78, 1976-01-31 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

肺動脈狭窄症状を示した29歳男子の右心室粘液腫の一治験例を報告するとともに文献的考察を加えた.患者は運動時呼吸困難を主訴とし,第2肋間胸骨左縁に3/6度程度の収縮期駆出性雑音を聴取したが,体位により変動するのが特徴的であった。心カテーテル検査では肺動脈一右室聞に85m磁H墓の収縮期圧較差を認め,右室造影で右室流出路から肺動脈主幹部にかけての陰影欠損を認めたため右心室内腫瘍と診断し,腫瘍摘出術を施行した.右心室内粘液腫は現在まで本症例を含めて15例の報告がみられる。腫瘍摘出術を受けた11例中9例は術後全く良好だった一方,肺動脈閉塞による突然死も報告されており早期手術が望ましい.
著者
土田 哲人
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.1176-1182, 2011 (Released:2013-01-19)
参考文献数
22
被引用文献数
1
著者
野並 有紗 斧田 尚樹 近藤 史明 土居 義典
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1201-1206, 2010 (Released:2012-04-21)
参考文献数
12

症例は80歳, 男性. 約15年前に交通事故にて左下肢を骨折し, 以後グリップタイプの杖(右手用) を歩行時に使用している. 今回, 不安定狭心症疑いにて冠動脈造影を施行した. 右橈骨動脈を穿刺したが, カテーテルが上腕動脈内で捻転し, カテーテルのみを抜去することが不可能となりシースごと抜去した. 引き続き右大腿動脈を穿刺し, 左前下行枝#7の高度狭窄病変に薬剤溶出性ステントを留置した. 20日後に外来受診した際, 右橈骨動脈に約30mm大の拍動性の腫瘤を認め, 血管超音波検査にて右橈骨仮性動脈瘤と診断した. 瘤径が大きいことから超音波プローベによる圧迫では不十分であるうえに, 手技自体による破裂の危険が危惧され手術治療を選択した. 仮性動脈瘤の原因として, カテーテル変形箇所での穿刺孔拡大, 止血不十分および杖歩行による穿刺部の荷重が推察された.
著者
榊原 俊介 寺師 浩人
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.6-10, 2013-01-15 (Released:2014-09-12)
参考文献数
17
著者
佐藤 寿俊 神田 順二 小寺 聡 櫛田 俊一 橋本 亨 鈴木 勝 樋口 和彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.124-128, 2007

症例は27歳,男性.17歳で心肥大を指摘,心エコーで大動脈弁閉鎖不全を伴うバルサルバ洞瘤を指摘されたため2000年3月大動脈弁置換術およびバルサルバ洞パッチ閉鎖術が行われた.しかし2001年8月無冠洞瘤部が破裂し,破裂部直接縫合閉鎖を行っている.2004年12月眩暈と動悸を伴う240/分の心房頻拍で入院.緊急カルディオバージョンで退院したがハイリスクなため2005年1月入院,心臓電気生理検査(EPS)を施行した.誘発された心房細動を経て三尖弁-下大静脈峡部を回路とするマクロリエントリー性心房頻拍(AT)が誘発されたため,ここに線状焼灼を行いブロックラインを作成した.再度EPSを行うと,今度は臨床的に確認されていたATが誘発され,起源は手術痕とは関連のない分界稜下縁であった.Fractionated potentialがAT中に先行する最早期A波の記録される部位で焼灼を行ったところATは速やかに停止,以後ATは誘発不能になった.退院後再発なく経過している.
著者
太田 里美 菅野 紀明 青木 秀俊 二瓶 和喜 前田 喜晴 田辺 達三 杉江 三郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.280-287, 1980

左心および右心の弁の物性的要求条件,また生体弁,心血管補填graftとしての物性を検索するため,豚の大動脈弁,肺動脈弁,心膜,イヌの硬脳膜の新鮮組織およびBioprosthesis処理組織(0.2%GA,0.65%GA,1.3%DAS,98%Ethanol+DAS処理)の引張り強度,伸び率を測定した,また従来の生体弁処理法(4% Formalin,1%Betapropiolaction,70% Ethanol)の物性との比較も行つたその結果,新鮮大動脈弁に対する強度は肺動脈弁67%,心膜84%,硬脳膜52-72%,伸び率はおのおの134%,110~103%,114~86%であった.またBioprosthesis大動脈弁は強度は増すが,伸び率が低下してpliabilityに難のあること,Bioprosthesis肺動脈弁は左心弁への応用には疑問のあること,心膜では新鮮組織の右心の弁または補填材料としての利用は物性的に肯じられるが,Bioprothesisでは瘤形成の危険も考えられること,また従来の処理大動脈弁は物性的に弁破綻の可能性が大であり,Bioprosthesisとは物性的に有意の差のあることなどの知見をえた.
著者
船田 桂子 永井 利幸 吉原 良浩 岸野 喜一 片山 隆晴 松村 圭祐 宮川 貴史 穂坂 春彦 鈴木 雅裕
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1413-1419, 2013 (Released:2014-11-21)
参考文献数
13

症例は手術歴や外傷歴のない49歳, 男性. 以前から時折下腿浮腫を自覚していたが, 自然軽快していたため放置していた. 2011年 7月に右下腿浮腫, 歩行時痛で受診. 右下腿深部静脈の拡張と血栓像を認め, 深部静脈血栓症と診断. 臨床症状, 心電図および経胸壁心臓超音波検査断層法からは肺塞栓症を疑わせなかったが, スクリーニングで施行した胸部造影CTで両肺動脈に血栓像を認めた. 抗核抗体, 凝固因子, プロテインS, プロテインCなどの血栓素因は正常範囲内であったが, 血中ホモシステイン値が67.7μmol/Lと著増しており高ホモシステイン血症を伴った深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症と診断した. 抗凝固療法およびビタミン補充療法を開始し, 自覚症状と画像所見の改善を認め, 血中ホモシステイン値は 1カ月後には正常化し, 現在静脈血栓症の再発を認めていない. 高ホモシステイン血症を伴った静脈血栓塞栓症の報告は比較的稀であり, 文献的考察を含め報告する.
著者
折目 由紀彦 塩野 元美 瀬在 明 瀬在 幸安
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.64-67, 2001-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
5

待機的冠動脈バイパス術の施行症例に対しhANPを体外循環開始時から低用量投与し,術中・術後の循環動態,体液代謝に及ぼす影響について検討した.hANP投与群は0.03-0.05μg/kg/時を20時間投与し,その後0.02μg/kg/時に減量して24時間で中止した.循環動態については,hANP群はnonhANP群(hANP無投与)と比較して収縮期大動脈圧,平均大動脈圧,収縮期肺動脈圧,肺動脈楔入圧,全身血管抵抗,肺血管抵抗などの低下,心係数の上昇など血行動態の改善が認められた.体液代謝については,hANP群は血中ANP,サイクリックGMPの上昇,血漿レニン活性,血漿アンジオテンシン-IIおよびアルドステロン濃度の抑制などの効果が得られ,腎機能の低下も認めなかった.
著者
仲田 かおり 清水 雅俊 島 尚司 田中 将貴 堀 啓一郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.1110-1114, 2006
被引用文献数
5

症例は73歳,男性.急性舌腫脹による咽頭腔の閉塞で呼吸困難をきたし救急搬送された.ただちに経鼻エアウェイ挿入で気道確保のうえ,同チューブから酸素投与がなされた.内視鏡検査では鼻咽腔および喉頭には浮腫がおよんでいないことが確認された.舌腫脹は強力ネオミノファーゲンCとマレイン酸クロルフェニラミンの投与により,しだいに軽快して約5時間後には会話可能となった.発症10時間後に施行されたMRI検査では,咽頭腔を塞ぐように舌が腫脹していたが舌内に膿瘍や出血は認められなかった.上記の投薬を続けることにより舌腫脹は4日後には完全消失した.急性舌腫脹の原因は,66歳時から80カ月間投与されていたアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬リシノプリルによる血管浮腫と考えられた.また,発症時の検査で腎機能障害が増悪しており,感冒に対して前日まで内服していた消炎鎮痛剤が原因と考えられ,さらに,リシノプリルの尿中排泄低下により血中濃度上昇を助長したものと考えられた.わが国におけるACE阻害薬が原因の血管浮腫は比較的稀であり,とくに舌腫脹の報告は本例を含めて計11例に過ぎない.しかしながら,死亡例も報告されており,気道確保を含めた適切な対応が重要である.また,ACE阻害薬内服者に顔面や口唇の浮腫や舌の違和感などの訴えがあれば,ただちに投与は中止されるべきである.
著者
中山 尚貴 尾崎 弘幸 海老名 俊明 小菅 雅美 日比 潔 塚原 健吾 奥田 純 岩橋 徳明 矢野 英人 仲地 達哉 遠藤 光明 三橋 孝之 大塚 文之 草間 郁好 小村 直弘 木村 一雄 羽柴 克孝 田原 良雄 小菅 宇之 杉山 貢
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.54-57, 2007

症例は30歳,男性.2006年6月,スポーツジムのランニングマシンで運動中に突然,心窩部不快感が出現し,運動を中止したが痙攣を伴う意識消失をきたし倒れた.スポーツジムのトレーナーがただちに心肺停止を確認し,施設内の自動体外式除細動器(AED)を装着した.AEDの音声に従い除細動ボタンを1回押し,すみやかに自己心拍が再開したが,AED使用後にリセットボタンを押したため,メモリーが消去され,心肺停止の原因として致死性不整脈の関与は確認できなかった.<BR>入院後,トレッドミル運動負荷心電図検査で広範囲の誘導でST低下を認め,冠動脈造影検査を施行し冠動脈瘤を伴う重症多枝病変を認めた.心肺停止の原因は心筋虚血による心室細動もしくは無脈性心室頻拍と推定し,冠動脈バイパス術を施行した.<BR>AEDの普及に伴い非医療従事者によるAEDを使用した救命例が本邦でも徐々に報告されており,本症例は現場にあったAEDをただちに使用したことが社会復帰に大きく貢献したと考えられる.ただし,本症例で使用したAEDのように,一部機種ではリセットボタンを押すことによりメモリーが消去され,事後検証が困難になることは注意すべき点であり改善を要する.
著者
富田 斉 今野 武津子 石川 信義
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.19, no.12, pp.1391-1391, 1987-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
27

先天性左心室憩室は極めてまれな心奇形であり,しばしば正中線上の異常を合併する.症例は,18歳男児で心不全から肺炎を併発し死亡した.剖検にて心房中隔欠損,両大血管右室起始,左心室憩室,dextroversionの心内奇形と胸骨下1/3の欠損,心膜・横隔膜の部分欠損,腹直筋離開の正中線上の異常を伴い,Cantrell症候群と診断した.本邦における先天性左心室憩室の13例を集計し,文献的考察を加えて報告した.
著者
中村 隆 香取 瞭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.1, no.6, pp.575-580, 1969-06-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
18
著者
狩野 実希 浅野 充寿 松村 穣 村松 賢一 佐藤 明 大和 恒博 武居 一康 新田 順一 淺川 喜裕 牛木 真理子 高橋 雅弥 木村 知恵里
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.329-335, 2013 (Released:2014-09-13)
参考文献数
18

症例は, 67歳, 男性. 数カ月前より繰り返す失神発作を認めていた. 2010年9月, 意識消失を主訴に救急要請し, ショック状態で当院に搬送された. 心臓超音波検査で全周性の心嚢液貯留と右心系の虚脱所見を認めたため, 心タンポナーデと診断し入院した. 数日後には自然吸収されたが, その後も心嚢液の再貯留と消失を繰り返した. 心嚢穿刺により心嚢液の性状は血性であったが, 出血源の同定は困難であった. 出血源同定ならびに心タンポナーデ解除目的に試験開胸を行った. 右室前面の心筋表面より断続的に静脈性の出血がみられ, 縫合止血した. 術後, 心嚢液の再貯留なく経過した. 急激な心嚢内出血により心タンポナーデを呈することは決して稀ではないが, 本症例のように心嚢への出血と吸収が数日単位で起こり, 繰り返し心タンポナーデを引き起こす病態は今まで報告がなく, 病態機序がはっきりしなかった. 非常に稀な経過をたどった特発性心嚢内出血の症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
著者
山辺 高司 永田 正毅 石蔵 文信 安田 聡 木村 晃二 宮武 邦夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.12-17, 1991-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
12

経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC)を施行するにあたりバルーン径設定が開大弁口面積,僧帽弁逆流に及ぼす影響について検討した.対象は僧帽弁狭窄症患者46例.旧型28mm仕様の井上バルーンカテーテルを用いてPTMCを施行した.設定バルーン径を<26mm,26mm,26mm<の3群に分けて開大弁口面積,僧帽弁逆流を比較した.設定バルーン径26mmの14例,26mm末満の5例について最大開大時の中央径をシネフィルム上で計測,検討した.また,バルーンの特性を知るため狭窄弁ロモデルとして設定径よりも小さな穴の中で開大し,内圧を測定した.開大弁口面積は,設定バルーン径が小さい場合に小さい傾向にあった.僧帽弁逆流は設定26mm未満の場合は認められなかった.設定バルーン径と実測バルーン径の比をとると,設定26mmでは平均0.94,設定26mm未満では平均O.83と有意な差を認めた.バルーン内圧は中央径の増大に伴い上昇した.バルーン中央部に抵抗がかからない状態では26mm設定と24mm設定の間の内圧の差は0.3kg/cm2程度であったが,抵抗が加わった場合その差は0.9~1.Okg/cm2になった.以上より,バルーン内圧の高い26mm設定の場合,より設定径に近く開大することが判明した.バルーン径を大きくすると僧帽弁逆流の増悪の頻度が増し,小さくすると内圧が下がり十分な開大の効果が得られなかった.目標とするバルーン径で十分な圧が得られるバルーンの開発が望まれる.
著者
山口 朋禎 雪吹 周生 原 文男 櫛方 美文 上田 征夫 川並 汪一 黒木 伸一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement4, pp.69-73, 1998-12-05 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

肥大型心筋症の臨床像の増悪に心筋梗塞発症が関与することが指摘されている.今回我々は急性心筋梗塞様心電図を呈し,剖検により病理学的検討を行いえた肥大型心筋症を経験したので,文献的考察を加えて報告する.【症例】41歳男性.以前より高血圧,心肥大を指摘されるも放置.歩行中失神発作をきたし近医へ搬送さる.心電図肢誘導およびV5~6に異常Q波ないしST上昇あり,急性心筋梗塞と診断され経静脈的血栓溶解療法施行さる.しかしその後心電図変化なく心筋逸脱酵素上昇せず,心室性不整脈出現のため当院CCUへ転送.入室後,持続性心室頻拍が頻発し,直流通電による停止を必要とした.心室頻拍の予防にはIb群,IV群抗不整脈薬は無効で,β-遮断薬静注のみ著効を示した.心エコーでは著明な左室肥大およびび漫性の左室低収縮が見られた.冠動脈造影は正常,左室腔内に圧較差なく,心筋生検で肥大型心筋症が疑われた.メトプロロールの内服を開始.ホルター心電図,運動負荷試験にて心室頻拍認めないため一旦退院.7日後に歩行中突然意識消失し当院に搬送さる.到着時心電図は心室細動を示し,電気的除細動無効で死亡.剖検にて著明な心肥大(880g),び漫性の線維化を認めた.組織学的には心筋の錯綜配列,高度の細胞間線維化,リンパ球浸潤の散在あり.心外膜側,筋層内冠動脈に有意狭窄なし.過去の健診時心電図は,4年前より今回と同様の所見を呈していた.
著者
笠原 秀範 田中 康史 柴田 敦 久松 恵理子 山中 あすか 冨澤 宗樹 米田 直人 北川 泰生 栗本 泰行 高橋 英樹 莇 隆
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.694-699, 2011 (Released:2012-11-07)
参考文献数
8

症例は36歳, 男性. 2008年11月ごろより, 両膝関節, 右環指関節痛が出現した. 2009年2月に起床後の右足底部痛および左上肢挙上時の疼痛があり, 当院救急外来を受診したが症状の改善はなく, 後日, 近医を受診し痛風の疑いがあると指摘され当院整形外科を受診したが, 37.5ºCの発熱, 胸痛, 左肩部痛もあり, また, 心雑音を聴取するため循環器内科を受診した. 経胸壁心エコー図検査上, 僧帽弁に疣腫を認めるため, 感染性心内膜炎の診断で入院となった. 2005年ごろから覚醒剤を使用していたが2008年10月からは使用していない. まわし打ちや, 再使用針での静注歴もある. 入院日より, セフトリアキソン(Ceftriaxone; CTRX) 2g×1回/日とゲンタマイシン(Gentamicin; GM) 60mg×3回/日の点滴投与を開始した. 入院日に施行した頭部MRIで塞栓像を認めたため, 翌日に準緊急手術を施行した. 前尖切除, 後尖温存による置換術を施行した. 術後, 僧帽弁逆流はなく, 感染は治癒した. 現在は症状の再現はなく, 覚醒剤中毒からも脱し, 社会復帰している. 近年, 覚醒剤使用がわが国でも社会的問題となっており, 覚醒剤常用者の感染症の鑑別診断として重要と考え, 症例報告をする.