著者
武村 雪絵
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.446, 2018-05-10

まるで講義を受けているような奥深さ 統計解析の解説本・指南本はこれまでにたくさん購入してきました。自分が研究をする際に,理解不足のまま多変量解析をして見当はずれな結論を導くのは怖いと思っていましたし,論文を読む際も,図表を読み取れず書かれていることを鵜呑みにするのは避けたいと思っていたからです。 多くの書籍を購入してきましたが,書店で本書を見つけてパラパラとページをめくった瞬間に購入を決意しました。感想を一言で言えば,「買ってよかった!」「読んでよかった!」。本書は,変数の種類と組み合わせで機械的に正しい解析方法を選ぶといった,従来の入門書とは全く違います。著者の講義を受けるかのように,丁寧により深く,しかも面白く多変量解析を学ぶことができます。
著者
太刀川 弘和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1025-1032, 2021-07-15

抄録 本稿では,コロナ禍前(プレコロナ),コロナ禍中(ウィズコロナ)にわけて日本と世界の自殺者数の推移や現況を各種統計から概観した。プレコロナでは,1998年以後14年にわたり年間自殺者数3万人以上の状態が続いていたが,2009年より減少傾向となった。それでも世界と比較すれば,日本はOECD加盟国では6位,G7では1位の自殺率であり,年次推移も世界の自殺率減少のトレンドに及ばなかった。ウィズコロナの2020年,日本の自殺率は11年ぶりに増加し,特に女性,若年層,医療従事者,飲食店関係者など,コロナ禍に関連して社会経済生活にストレスが生じた層の自殺者数が増加した。現在までにコロナ禍と直接関係づけられる自殺者数増加が報告されているのは,日本の他世界的に少ない。ポストコロナにおいて自殺者数増加を抑止するためには,精神保健福祉システムの強化やレジリエンスを高める教育システムの強化が喫緊の課題と思われる。
著者
風野 春樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.588-589, 2003-06-01

伝染する精神病,というものがあることを知っていますか? 妄想を持った人物Aと,親密な結びつきのある健常者Bが,あまり外界から影響を受けずにいっしょに暮らしている場合,AからBへと妄想が感染し,妄想を共有することがあるのです.これを感応精神病,またはフォリアドゥ(folie à deux)といいます.フォリアドゥとは,フランス語で「2人の精神病」という意味です. たとえば,堀端廣直らによる「Folie à deuxを呈し“宇宙語”で交話する一夫婦例」という文献の例をみてみましょう.
著者
井上 義郷
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.22, no.12, pp.667-672, 1958-12-15

I.ゴキブリの害虫化について ゴキブリは俗にアブラムシとも呼ばれ,直翅目,ゴキブリ亜目に属し,わが国に分布を記録されているその種類は,琉球,小笠原諸島のものまで含めますと5科22種となります。そのうちの大部分の種類は野外に棲息しているもので,われわれの生活と直接的な関係をもちません。事実上衛生害虫として問題となる種類は,ビルの事務室や飲食店などで広く見かけられる黄褐色で小型のチヤバネゴキブリと一般家庭の台所に多い黒褐色の大型の種類です。これには2種類あつて関東以南に主な分布を示すクロゴキブリと,関西から北で秋田県附近まで知られているヤマトゴキブリです。なお,地域によつてはワモンゴキブリも注意さるべき種類となります。 これらのゴキブリは,いままで,衛生害虫として一般にはあまり問題とされていなかつたものですが,最近,非常に注目されるようになつてきました。特に,近代的な設備を具えた都市のビルや鉄筋アパートでは,ハエや蚊よりも,むしろ,このゴキブリが重要な害虫として登場してきております。その問題点を,まずはじめに,考察することが駆除対策を立てる上に重要だと考えられます。

8 0 0 0 ジンクス

著者
松村 正巳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.236, 2003-11-30

私が研修医の頃,当直するたびに重症の患者さんが搬送され,上級医から「おまえは,よくつく奴だ」と,言われた覚えがあります.看護師さんからは,「お祓いでも受けたらいいんじゃないの」と言われる始末でした.このコラムをお読みの方のなかにも,同じような経験のある方はいらっしゃいませんか? どの病院にも,患者さんを呼び込む医療スタッフがいるものです.当直中に,重症の患者さんが来院されなければ,ホッとする反面,研修にならず難しいところです. さて,このような,“つく”,“つかない”といった科学的な根拠がないと思われることについても,研究が行われることがあります.例えば,満月と救急患者の数などです.洋の東西を問わず,米国の医師たちも,いわゆるジンクスを気にするようです.Ahn A, et al:“We're jinxed”―Are residents' fears of being jinxed during an on-call day founded? Am J Med112:504,2002は,ちょっとおもしろい論文です.Dr. Ahnは,マサチューセッツ総合病院の医師です.これはシニアレジデントを対象に行われたrandomized controlled trialで,シニアレジデントをジンクス群 (n=33)と,非ジンクス群 (n=36)に分け,on-call dayの入院患者数,睡眠時間,主観的な仕事の困難度(1~5までのスケール)をon-call dayの終わりに報告させて,比較,検討しています.群分けはon-call dayの朝,“You will have a great call day”と書かれた紙が入っている封筒か,何も書いてない紙の入った封筒を選ばせています.もちろん,“You will have a great call day”と書かれた紙が入っている封筒を選んだレジデントは,ジンクス群です.そしてレジデントに対して“You will have a great call day”と,声に出して読み聞かせました.さて,結果や,いかに?
著者
上野 征夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.162-163, 2003-01-10

「寒冷あるいはストレス暴露で,指先が白くなる.これをレイノー現象(Raynaud's phenomenon)という(図1).正式には,白,青(紫),赤の3色の変化をいう.色調の変化はこの順で起こる.白は血管の攣縮,青(紫)は血液の毛細血管,小静脈へのうっ滞,赤は反応性の血管拡張をそれぞれ意味する. 3色変化のうち,2色以上みられることがレイノー現象の定義である.しかし白の1色変化でも,それが著明であればレイノーと呼んで構わない. レイノー現象は,何らかの基礎疾患に伴って起こってくることが少なくない(表1).20歳代の女性では全身性エリテマトーデス,40歳以上では,強皮症,Sjogren症候群,関節リウマチが多い疾患である.レイノー現象が一側性の場合,高安病などの血管炎,頚椎の疾患,肩・手症候群(shoulder-hand syndrome)なども考慮されねばならない.職業病として以前,電動チェーンソーを使って伐採に従事する人に起こり問題となった.薬剤ではβブロッカー,あるいは片頭痛治療薬のエルゴタミン服用者などにみられることがある.
著者
中張 隆司 大黒 恵理子 島本 史夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.57-65, 2011-01-15

はじめに 気道上皮の管腔側膜には多数の線毛が存在し,線毛層の上は気道表面粘液層で覆われている.吸入された異物や微小粒子(細胞破砕物,細菌など)は,気道表面粘液層に捉えられ末梢気道から中枢気道へ輸送され,体外へ排泄される.この気道における異物,微小粒子の排泄機構は粘液線毛クリアランスと呼ばれ,肺の宿主防御機構の一つである1~5).粘液線毛クリアランスは,いわば気道における異物運搬のベルトコンベアーシステムであり,気道表面粘液層はコンベアーベルト,線毛運動はモーターに相当する1~6).気道線毛細胞の機能不全(線毛細胞の消失,線毛運動の低下)は粘液線毛クリアランスの低下を引き起こす1~5).特定の遺伝子の障害により全身の線毛運動(脳室,気道,卵管,輸出精細管,精子)が低下あるいは消失している線毛運動無動症,いわゆるKartagener症候群(内臓逆転症,副鼻腔炎,気管支拡張症)では重篤な呼吸器疾患を合併してくる1,4,5). これまでの研究で,気道線毛運動は様々な物質(アセチルコリン,ホルモン,ATP,Ca2+,cAMP,cGMP)により活性化され2,4,6~10),また様々な因子(細胞容積,浸透圧,細胞内Cl-濃度など)により修飾を受けることが明らかにされている9,10).日常診療に広く用いられているβ2刺激薬も気道線毛運動を活性化する薬剤の一つである7,10). 一方で,気道線毛運動周波数(ciliary beat frequency;CBF)は8~25Hzと非常に早く,これまで光散乱など,CBFを測定するいくつかの方法が用いられてきたが,様々な制限があり測定そのものが難しかった2,4).近年,ビデオ光学機器(光学顕微鏡を含む)と高速度カメラの発展により,高時間分解能(1/500~1/1,000秒)で線毛運動の観察記録が可能になった6,8,11).本稿では,われわれが数年前から行ってきた高速度カメラを用いた気道線毛運動の解析結果を紹介する.
著者
立木 孝
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.570-572, 2005-07-20

ベートーベン(Ludwig van Beethoven)は若くして難聴になり,その難聴はあらゆる治療に逆らって進行を続け,50歳を超える頃にはほとんど聾になっていたという。1824年5月7日,ウイーンで行われた「第九交響曲」初演の際,指揮者の1人として聴衆に背を向けていたベートーベンは,演奏が終わったときの熱狂的な拍手に気がつかず,歌手の一人に促されて振り返り,初めてその成功を知ったといわれている。このベートーベンの難聴の原因が何であったかについては,少なからざる論文や記述があるが,定説は得られていないようである。 1964年,ドイツ留学中であった私は,1日,ボンのベートーベン・ハウスを訪れた。ベートーベンの生まれた家が記念館となって,デスマスクやピアノ,そのほか数々の遺品や記念品を展示していたのである(図1,2)。ベートーベンが生まれたのは,3階屋根裏の小さな部屋で,そこにはベートーベンの胸像が1つ,ポツンと置かれていた(図3)。数々の展示物のなかには,メトロノームの発明者Mälzelがベートーベンのためにつくったといわれる4個の補聴器もあった(図2,4)。若い女性のガイドがいて,いろいろと説明してくれていたが,補聴器については,難聴が進行するにしたがって大きなものに変えなければならなかったと説明した。私はそのガイドに,ベートーベンの難聴の原因は何だったのかと訊ねてみた。若い女性のガイドは,一言,“Otosklerose”と答えた。

8 0 0 0 あとがき

著者
高倉 公朋
出版者
医学書院
雑誌
Brain and Nerve 脳と神経 (ISSN:00068969)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.419, 1982-04-01

最近悲しい計報が続いている。脳神経外科学会長を勤められた,札幌医科大学の橋場輝芳前教授と群馬大学川淵純一教授が相次いで亡くなった。御二人とも,我が国の脳紳経外科学発展のために,その生涯を捧げられたにとであった。 何よりも,私共にとって残念であったのは,川淵教授をはじめ,脳神経外科学会の若く前途ある医師が,昭和57年2月8日早朝のあの忌わしいホテルニュージャパンの火災によって不帰の旅路へと立たれたことであった。川淵教授は、すべての医療は患者のためにあり,患者の幸せだけを基本に考えて,診断も治療も,また研究も出発すべきことを常に説かれ,私共後輩にも教えられてきたのであった。その先生の理念が,我が国の脳神経外科学の進歩を正しい方向に向けてきた一つの原動力であったことは間達いない。
著者
上田 香織 中村 誠
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.1666-1670, 2017-11-15

はじめに レーベル遺伝性視神経症(Leber hereditary optic neuropathy:LHON/OMIM#535000)はミトコンドリアの点変異による急性ないし亜急性の視神経症である。典型的には片眼の急激な視力低下と中心視野欠損で発症し,数週から数か月の間隔をおいて対側眼に同様の症状をきたす。光覚を失うことは稀で,多くは手動弁から(0.01)程度の視力で経過するが,ごく少数の症例で自然回復がみられる1)。 LHONはミトコンドリア疾患のため母系遺伝し,これまで10〜20歳代の若年男性に好発するとされてきたが,近年は高齢者での発症報告例が増加してきている。本邦でのこれまでの疫学調査では,1995年にHottaら2)が11778変異の患者の発症年齢の平均値を23.4歳と報告していたが,2014年の新規発症患者を調査したところ,発症時の平均年齢は33.5歳とこの20年で10歳上がっており,40歳代以上の中高年の患者は全体の40%以上を占めていた(図1)3)。本邦ではこれまで正確な患者数も把握されておらず,統計的に予測値を算出するにとどまっていたが,2016年に指定難病となり,今後は疫学調査も進むことが期待される。 LHONでは95%以上の症例でmtG3460A,mtG11778A,mtT14484Cのいずれかの一塩基置換が検出される。これらはprimary mutationと呼ばれるが,すべて呼吸鎖複合体Ⅰを構成する蛋白をコードしている。遺伝子変異によって複合体Ⅰの機能不全をきたし,網膜神経節細胞のアポトーシスに至ると考えられているが,なぜ網膜神経節細胞のみにこのような変化が起きるのかはわかっていない。また,発症には何らかの環境因子が酸化ストレスとして関与していると予想されており,疫学調査では喫煙や大量のアルコールの摂取がリスクファクターであることが示唆されている4)。 現在有効な治療法は確立されていないが,眼血流を改善する目的で点眼薬やビタミンBなどのサプリメントが用いられることがある。また近年,LHONをはじめとするミトコンドリア病に対しコエンザイムQ10誘導体である,イデベノンの内服が有効であるというデータが蓄積されつつある。変異遺伝子を正常のものと置き換える,または正常遺伝子を導入して呼吸鎖の機能を回復あるいは補塡する,といった遺伝子治療も試みられている。 本稿では,主にイデベノンと遺伝子治療に関する最近の臨床試験の成績について述べる。
著者
宮内 倫也
出版者
医学書院
雑誌
総合診療 (ISSN:21888051)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.1182-1187, 2017-09-15

Case日常型の心的外傷を有する一例患者:23歳、女性。発達に特記事項なし。小学校から大学まで、交友関係は平穏であった。現病歴:大学卒業後に、就職し働いていた。仕事中に泣いていることがあり、同僚が心配して受診を勧めた。診察中に本人から自発的には語られなかったが、医師から「昔あった嫌な記憶がフッと湧き出して、つらくなることはないか」と問うたところ、「入社当時に部長から大声で怒られたことを、突然思い出しちゃう。忘れようとしてもできなくてつらくて、夢にも出てきてうなされる」と話した。「そのようなつらいことがあれば、苦しくなるのも無理はないだろう。そのなかで頑張っているし、よく話してくれた」とねぎらい、四物湯と桂枝加竜骨牡蛎湯を2包/日ずつ処方した。4週間後には改善しており、表情にも優雅さが戻ってきた。
著者
堀端 廣直 郭 哲次 坂口 守男 小野 善郎 百渓 陽三 吉益 文夫 東 雄司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.297-302, 1995-03-15

【抄録】夫婦の間で約5年間持続した二人組精神病について報告した。二人で鍼灸治療所を開いていたが,妻が宇宙からの通信を受け始め,被害妄想も生じた。1か月後には,夫も宇宙からの通信を受け始め同様の妄想を持った。 夫婦は,鍼灸業は停止し,近隣から孤立していった。約2年後に夫は“宇宙語”と称する言葉をしゃべり始め,その半年後には妻も同調し,“宇宙語”による夫婦間の交話が約2年間続いた。二人は不穏行為などで,トラブルを頻繁に起こしていたが,夫の父親が近所の人々からの苦情などに対応し,当人たちに経済的援助もしていた。夫婦の精神科治療への導入は困難であったが,通行人への暴力行為を契機として,妻が措置入院となり約4か月後,軽快退院した。夫は妻との分離後,約3週間目には妄想をなくしていた。感応の成立過程とその方向,“宇宙語”での交話によって夫婦の共生的関係が強くなり,父の庇護により二人の感応精神病が持続したことについて考察した。
著者
松浦 一貴 寺坂 祐樹 今岡 慎弥
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.491-495, 2019-04-15

要約 目的:雪視症(visual snow)では,視野全体に雪が降っているような感覚が視野全体に持続する。片頭痛や耳鳴に加え,不安やうつ状態も本症に併発する。Visual snowの診断には,内視現象の強化,反復視,羞明,夜間視の障害が3か月以上持続する必要がある。心因性ストレスが先行するvisual snowの1例を報告する。 症例:25歳男性が受診した。大学卒業後2年間就職が決まらず,3か月前から視界に砂嵐が見え,眼内に残像が出る感覚と羞明が持続している。耳鳴が最近強くなった。片頭痛はない。 症状と経過:眼科と神経学的に異常はない。Wide-range assessment of vision-related essential skillsでは,視覚情報が手を介して出力される目と手の協力は正常であり,図形を認知する視知覚に著しい低下があった。羞明と夜間視の障害の併発があった。無治療で12か月経過を観察し,症状は残っているが,生活には支障がない。 結論:本症例では,ストレスに伴う視覚的認知障害が生じ,その結果としてvisual snowが発症したと考えられる。
著者
佐藤 達夫
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.837-846, 1991-10-20

睾丸(精巣)のラテン語名testisの第1語義は「証人」witnessであり,「睾丸」は男性を証明するものという意味で派生した第2語義と想像される.使用頻度の高いtestify,testament,testという英単語もtestisと用じ語源をもつものらしい.睾丸のもつ重要性は"testis"に表わされていると見ていいだろうし,英語testisやフランス語tes-ticule,イタリア語testicolo,スペイン語testeに継承されているのも理解できるところである.それにくらべると,睾丸炎orchitisなどに使われるギリシャ語のorchisは蘭(一般にオーキッドorchidと呼ばれている)のことで,その球根の形に似ていることに由来し,またドイツ語のHoden(単数はHode,ふつう複数で用いられる)は古高地ドイツ語の包むumhüllenから由来したとされ(いわば「おくるみ」),testisよりインパクトがかなり弱い. ついでながら副睾丸(精巣上体)のepididymisのepi—はもちろん「の上に」であるが,didymisはギリシャ語で「対をなした」に由来する.つまり有対の睾丸の上にのっかったものという程の意味で,ギリシャ出身の大医学者Galenus(129〜199)が使っているという1).
著者
康 純
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.755-761, 2011-08
著者
安井 昌之 吉田 宗人 玉置 哲也 谷口 泰徳 大田 喜一郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.745-751, 1997-08-01

カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)は中枢神経組織(CNS)や骨で重要な役割をもつ。ミネラルが関与すると推定されているCNSの変性疾患として筋萎縮性側索硬化症(ALS)やparkinsonism-dementia(PD)が挙げられ,多発地のグアムや紀伊半島南部の環境分析で,河川,土壌中の低Ca・Mg,高アルミニウム(Al)が指摘されている。今回,低Ca・Mg,高Al食負荷によるラット大腿皮質骨,腰椎骨梁骨やCNSをはじめとする軟部組織と,ALS紀伊症例のCNSと,紀伊半島南部の脊椎靱帯石灰化症の脊椎骨と脊椎靱帯のMg,Ca量を分析し,それらの類似性について検討した。ALSと偏食ラットのCNSを含む軟部組織はCa含有量は増加,Mg量は低下した。また同様に,脊椎靱帯石灰化症の脊椎靱帯はCaは蓄積,Mgは低値であった。一方,偏食ラットの大腿骨,腰椎骨のCa,Mg含有量は対照群に比し有意に低下したが,脊椎靱帯石灰化症の脊椎骨でも対照群に比較し有意にCa,Mg含有量は低値を示した。以上のことから,紀伊半島南部の河川のCa,Mg量が低値であり,ALS同様,多発する脊椎靱帯石灰化症が,環境要因の影響を受けており,さらにミネラル関連疾患が存在する可能性が示唆された。
著者
吉田 啓志 増田 裕里 近藤 駿 井戸田 弦 永井 宏達
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1275-1279, 2021-11-15

要旨 【目的】自立歩行が可能な脳卒中患者における日本語版Physical Activity Scale for the Elderly(PASE)を使用した身体活動量評価の妥当性および信頼性を検証することである.【方法】妥当性は,対象者27名に対し,入院環境と生活環境においてPASEと3軸加速度計にて評価した身体活動量の相関係数にて基準関連妥当性を評価した.信頼性は,対象者19名に対し,級内相関係数(intraclass correlation coefficients:ICC)にて検者内信頼性を評価した.【結果】妥当性は,生活環境において高い妥当性を認めた(ρ=−0.40〜−0.67).信頼性においても,高い信頼性を認めた(ICC=0.98).【結論】自立歩行が可能な脳卒中患者におけるPASEを使用した身体活動量評価は,妥当性および信頼性とも良好であり,生活環境での応用が今後期待される.
著者
出口 克巳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.744-746, 1992-08-01

■血夜凝固過程におけるフラグメント 血液凝固過程の最終段階では,プロトロンビンが活性化されてトロンビンとなり,このトロンビンの作用により,フィブリノゲンからフィブリンが生成され血液凝固を完了する. プロトロンビンの活性は活性化された第X因子・第V因子,カルシウムイオン,リン脂質(血小板膜表面)の存在下において惹起される.この過程において,プロトロンビンは,そのアミノ末端基からフラグメント(F1,F2,F1+2)を放出し,トロンビンに変換する.生成されたトロンビンは,血小板,内皮細胞,フィブリノゲン,凝固第V・VIII・XIII因子などに作用する.さらに,トロンビンは生理的阻止因子アンチトロンビンIII(AT III)によって阻害され,安定で不活性なトロンビン/AT III複合体(TAT)が形成される.病的状態において,凝固系が活性化されても,循環血中のプロトロンビンのごく少量(1%以下)のみがトロンビンに変換されるだけである.それゆえ,プロトロンビンあるいはAT IIIの量を測定しても,血液内でのトロンビンの生成を評価することは不可能である.また,不安定なトロンビンを直接的に測定することも極めて困難である.一方,F2/F1+2あるいはTATはトロンビンに比べて安定であり,血中寿命も長いことから,これらを測定しうるならば,その血中の量的変化から,少量のトロンビン生成をモニターすることが可能となると想定しうる.