著者
梅本 通孝 熊谷 良雄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.441-447, 1996-11

原子力事故により環境への大量の放射性物質の放出という万が一の事態が発生した場合、地域住民への被害を軽減させるためには迅速かつ効率的な避難が重要となる。現行の地域防災計画等に示された避難計画では、原子力災害時には地域住民は指定された一時集合場所に徒歩で集合し、そこから輸送車両により避難先へ避難するという計画的避難が考えられている。しかし、それらの計画中ではどこの車両を、どこに配車し、どの避難先へ、どのルートで避難させるのかといった具体的な内容、あるいはそれらの事項を判断決定する際の指針などについては必ずしも明らかではない。そこで本研究では、住民の被曝線〓最小化を達成するために、輸送車両の配車、避難先および避難経路を具体的に導出・提示できる避難計画策定支援システムを開発することを目的とし、また、このシステムを試行することによって避難計画策定に関する考察を得ることとした。本研究では、原子力災害時における地域住民の緊急避難の手段について『バスのみによる避難』,『乗用車のみによる避難』,『バスと乗用車による避難』の3ケースを設定し、各ケースに対応して避難方策に関する諸情報を具体的に導出・提示できる「避難計画策定支援システム」を開発し、同システムを用いて計算実験を行ったものである。開発されたシステムは、人口分布、道路ネットワーク、放射性物質の分布予測等の条件を所与として、被曝危険性のある分析対象地域内の道路ネットワーク上における「バス」と「避難対象乗用車」、さらに「通過交通」と避難対象乗用車のうちで避難指示に従わない車両(以下、「不従車両」と略記)の交通挙動と被曝状況についてシミュレーションを行い、その結果から避難所要時間、予測被曝線量あるいは具体的なバス配車や避難先、避難経路などの避難方策に関する結果情報を提示するという機能を備えている。開発されたシステムにより仮想地域を分析対象として計算実験を行った。まず「不従車両の挙動要因」、「不従車両の発生率」、「通過交通の有無」、「避難者を輸送するパスの台数の多少」の各事項が避難所要時間や予測被曝線量などの結果に及ぼす影響についての感度分析を計34ケース、さらにこの感度分析を踏まえた上で避難住民の被曝線量最小化のために最適なバスの配車や避難先、避難経路を判断決定するための指針・基準に関して36ケースの計算実験を行い、政策的分析検討を行った。この結果から、『被曝線量を小さくする避難方策か、他の避難方策に比較して、必ずしも避難所要時間を短くするものではない』など、基準の設け方によって評価に相違が生じることが明らかとなり、原子力災害時の避難方策に関しては予めから極めて明確な政策方針が決められていることが必要であると指摘された。なお、本論は筑波大学修士課程環境科学研究科修士論文として作成されたものである。また、研究を行うにあたっては日本原子力研究所原子炉安全工学部緊急時システム研究室の指導・協力を受けた。
著者
村上 處直 佐土原 聡 田中 希代 浦川 豪
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.147-154, 1995-11

【1. はじめに】 1990年11月17日にはじまった198年ぶりの雲仙普賢岳の噴火は1991年6月3日の大火砕流で多数の死傷者を出すなどの災害へと拡大した。その後も土石流が発生し、民家が倒壊、流失するなどの被害が続き、大勢が避難し、災害は長期に及んでいる。現在、砂防事業、河川の改修事業などが進められているが、完成には時間がかかり、住民は雨が降るたびに土石流に対する避難を余儀なくされている。幸い、1994、1995年現在まで土石流による被害はないが、住民の防災意識の低下が心配される。 【2、研究の目的、方法】 普賢岳災害時は、これまでの災害では余り見受けられなかった「長期化」という問題を抱えている。この長期化する災害の中、本研究では戸別訪問によるアンケート調査をおこない、住民側から見た避難計画への意見を求め、土石流に対する避難を円滑にするために、避難に関する住民の意識、行政の現状を把握し、今後の避難計画に役立てソフト面の充実をはかる。また、島原市の災害情報収集のメディアとして利用されている防災行政無線(戸別受信機)、及びCATVを分析、評価し、今後の災害情報収集におけるCATVの有効的な活用の可能性について方向性を示しハード面の充実もはかるものである。 【3. 分析・評価】 アンケート調査によって、既成の避難計画に対する問題点が数多く上がるとともに、住民への浸透もかなり低いことが明らかになった。行政側は、情報公開や公聴会などを開くことによって、住民と共に防災計画を作り上げるという姿勢を示すことが大切であると思われる。また、CATVは有効的に活用できるメディアであることも明らかになった.今後は、行政が介入し、CATVの持つ特徴を生かし災害時だけでなく、災害前期、後期において積極的に利用することが望まれる。
著者
宮村 正光 諸井 孝文
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.115-122, 1995-11
被引用文献数
1

1995年1月17日の早朝に発生した阪神大震災では、大量の家屋の倒壊とともに、重要な防災拠点のひとつである病院や診療所の多くが、施設、設備、機器の何らかに被害を受けた。被害が比較的軽微であった病院においても、救急医療活動に相当の混乱が生じ、今後の地域防災を考える上での重要な教訓を残したと言える。医療機関自体が被災しながら災害医療にどう対応したか、多数の負傷者が殺到した治療現場の具体的状況を明らかにするため聞き取り調査を実施した、調査の主な内容は次のとおり、ハード面の被害ばかりでなくソフト面での問題まで、できるだけ幅広い項目とした。(1)建物・施設の構造的被害、二次部材・設備機器の被害 (2)ライフラインの停止と復旧、停止時の対策 (3)医療原器・医薬品の損傷状況 (4)救急治療現場の実状と医療スタッフの対応、入院患者の被災状況 (5)他病院・他機関との連係、患者の搬送、情報通信 調査を対象とした病院・診療所には、全半壊につながる大被害を受けたところはない。しかし、医療機器や医薬品の破損、医療スタッフの被災、ライフラインの停止が救急医療に重大な影響を与えた。また交通渋滞や情報の途絶が、救急救命活動の深刻な障害となった。一方で、病院間の相互支援が機能維持に大きな役割を果たしたこともわかった。本報告は、これらの調査結果をまとめるとともに、医療機関が災害時の防災拠点施設として十分な機能を発揮するための今後の課題や考慮すべき対策について示したものである。
著者
大平 久司 飯村 龍 森 俊洋 辻本 誠
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.19-26, 1996-11

地震被害への対策は,時系列でみると,事前の予防的対策,発生直後の緊急対応,復旧,の3段階に分けられる。本研究では,地震被害に対する目標としてあげられる,人命安全,財産保護,機能維持,の3段階のうち,人命は経済換算できないことから,地震直後の対応により人命損失をできるだけ少なくすることを目標とする。救命率の高い地震発生後48時間は人命救助活動を最優先として,人命救助活動の妨げとなる恐れのある他の活動を制限することが考えられる。本研究では,阪神・淡路大震災における被害データを用いて,地震発生直後の緊急対応による人的被害減少の可能性について,消火,救助,医療の側面から検討を行うとともに,これらの対応と関連する道路交通についての分析を行った。阪神・淡路大震災における延焼地区での死亡率の分析では,地震発生直後に延焼した地区の死亡率が高いことがわかった。一方,地震発生直後の同時多発火災に対応できるだけの消防力はなかったことから,消防の消火活動によってこれらの死亡者を救助することは困難だと判断される。緊急車両,一般車両を含めた地震発生後2日間の道路交通量の推定を行った結果,通勤,買い物といった目的の車両が走行していなければ,渋滞によって緊急車両の走行が妨げられることはないとの結論を得た。一方,渋滞によって,どの程度死亡リスクに影響があったかについては現時点では明らかにできていない。
著者
翠川 三郎 藤本 一雄 村松 郁栄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.1, pp.51-56, 1999-11
被引用文献数
34

The correlation of the new J.M.A. instrumental seismic intensity with the former J.M.A. Seismic intensity and ground motion parameters is examined. The 215 strong-motion records with the intensity of 0 to 7 are used for the analysis. The instrumental seismic intensity computed from the records agrees well with the former seismic intensity determined from human response or observation of damage. The instrumental intensity shows slightly higher correlation with peak ground velocity than peak ground acceleration, and shows highest correlation with the parameters such as the product of the peak velocity and the peak acceleration.
著者
植田 達郎 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.8, pp.242-247, 1998-10
被引用文献数
1

As a lessons learned from Hanshin-Awaji Earthquake Disaster., many organizations revised their emergency response plans intensively. Since emergency responders tends to have limited time availability at the time of disaster, the response mannuals should allow them to access the information they need as soon and easily as possible. In this paper, we propose a hyper-text system using HTML which allow us to make use of dynamic change of contents as well as various colors, and which also overcome the problems due to the lack of random accessibility document. In addition, a text filter has been developed to automatically handle a large quantity of text document into HTML files.
著者
平野 昌 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.35-42, 1996-11

三重県は、幸いにして阪神・淡路大震災の直撃は免れたものの、被災地域近隣の自治体として、決して他人事ではない大きな課題を提起されたと受けとめている。そのため、本県では地域防災計画の抜本的見直しをはじめとして、直下型地震を対象とした被害想定調査の実施、防災情報システムの開発や再整備、また、これまでとは趣向を変えた様ざまな防災訓練の実施や阪神・淡路大震災の揺れを再現できる地震シミュレータカーの新規導入等、「防災」をキーワードに多様な行政施策を実施あるいは着手し、三重県における新たな防災体制を構築しようとしている。本稿では、これまで三重県が実施してきた防災行政施策のうち、1996年1月に県内の全世帯(約62万世帯)に配布した地震防災に関する啓発冊子「三重県地震防災読本」の制作について、内容の紹介を中心に、その後の展開も含めて論じてみたい。地震防災に関する啓発冊子といっても、これまでも沢山の種類の冊子が自治体や関係機関から発行されてきたが、本県の制作した「三重県地震防災読本」(以下「読本」と略す。)は、地震災害が起こってからの住民の行動パターンや行動指針について重点的に取り扱っているという点で、他にはない独自性のあるものだと考える。この読本の制作にあたっては、京都大学防災研究所の林春男教授に全面的な指導をいただいた。林教授の熱心な指導がなければ、約2か月という短期間での完成はなかった。また、印刷された62万冊の読本を迅速に県内全域の各家庭に配布するという膨大な作業の労を執っていただいた69市町村の関係者の存在なくしては、この事業の成果は得られなかった。合わせてここに感謝の意を表したい。三重県地震防災読本はA5版42ページの「オリジナル版」を制作した後、「点字版」をはじめ、「ビデオ版」、「インターネット版」、「FAX情報版」と、この1年間に意外なスピードで自己増殖を始めている。また、他の自治体や危機管理に熱心な企業からの問い合わせが今でも続いており、既にこの読本の基本コンセプトを採用して、独自の地震防災啓発冊子を制作された自治体もある。今後も、住民プリペアドネス(事前準備)の向上という新しい視座に立った「三重県地震防災読本」の新たな展開を考えていくとともに、これをきっかけとして、「防災」という最も基礎的な社会機能に、住民本位で親しみやすいという意味で「ポップ」な要素を導入して、マンネリズムや形骸化に対抗していくという様ざまな試みを企てたいと目論んでいる。
著者
此松 昌彦 中村 太和 北村 元成 今西 武 篠崎 正博
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.23, pp.39-40, 2008-11

In this study, It proposed four kinds as a rescue signature for the helicopter. In the disaster in the future, a lot of isolation villages in the ravine region and the coast region are assumed. The helicopter is used there for the information gathering. Then, it proposed the medical treatment necessary signature, the dead signature, the needed rescue signature, and the needed eating and drinking signature as a rescue signature. The needed medical treatment signature made it correspond to the color of the triage tag.
著者
宇田川 真之 斎藤 健一 藤田 恭久 福島 博文
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.23, pp.73-74, 2008-11
被引用文献数
2

The purpose of this study is to investigate the uses of the space satellite data for disaster management. The prototype of the volcanic disaster information system was constructed by using a Google Earth^<TM> Mapping Service, which has excellent performance of processing the image and altitude data.