著者
古屋 貴司 佐土原 聡
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.4, pp.255-260, 2002-11
被引用文献数
1

The mitigation of casualties from the earthquakes are one of the most important topics in the prevention countermeasure. The casualty relate to building damages. However, not only that but also other many factors such as time, human characteristics, regional characteristics and rescue influences. It is necessary to clarify the effect of each of them. In this research, the regional characteristics about the rescue activities from a wooden collapsed house was clarified. And the estimated intensity map shows that the most dangerous zone is located in east. The final subject of this study is to clarify relation between "the time" and "the probability of survival", and arrange the rescue tools effectively as the prevention countermeasure.
著者
天国 邦博 呂 恒倹 望月 利男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.29-41, 1995

人口密集地域の直下で発生したM7.2の1995年兵庫県南部地震は、神戸市を中心として、阪神・淡路地域において極めて大規模な人的、物的被害を与えた。災害に備え、同じ被害を二度と発生させないために、多くの研究者は、今回の地震災害、震災対応などに対して、様々な角度から調査、研究を行っており、震災に関する情報が多く報告されている。しかし一方では、今までの震災や、調査報告は、その内容がほとんど被害の大きい地域に関するものであり、被害規模が相対的に小さい地域に関する報告が比較的少ない。例えば大阪府のような被災周辺地域の被害については、せいぜいトータル的な人的被害と物的被害の集計値を報じ、被害内訳に関する比較的詳細な報告が少ないと思われる。このことは、大阪府などのような被災周辺地域における被害の報告は、神戸市、西宮市、芦屋市などの大規模被災に比べて、その規模が小さいために生じた調査、報告の偏りであると考えられる。しかしながら、災害の全体像を把握するためには、被害の波及範囲の究明が重要であり、震災周辺地域における被災様態に対する調査は不可欠と考える。また、被害規模が比較的小さい地域に対する調査、分析は、重大な被害を受けた地域に対する相対的・副次的現象、また、見落としやすい現象や、被災者及び避難者の実状などの掌握の補充に寄与するものと考えられる。本論文では、大阪府内の主な被災地である豊中市において発生した家屋被害、ライフライン・道路の被害をまとめ、これらの物的被害と地盤・地形および市街地形成時期との関係について考察を加えた。また人的被害に対して、被害原因の内訳、被災者の個人属性などについて検討を行った。さらに、避難者の健康状況、住宅所有などに対して考察した。
著者
谷口 仁士 小川 雄二郎
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.391-398, 1994-08

地震と震度 1994年6月6日、15時47分(現地時間)ごろ、コロンビア南部のカウカ県パエス村近くを震源とするマグニチュード6.4(Richter Scale)の地震が発生した。コロンビア国立観測所(Colombia National Seismological Network)によって求められた震源位置は、北緯2.9度、西経76.08度、震源深さ10kmの比較的浅い地震であった。この地震によってコロンビアのほぼ中央域が有感地域となった。各地の震度(MM震度階)は震央から40km以内で6〜7、震央距離100km付近のカリ、ポパヤン、ネイバ市で5〜6である。また、震央から約300kmに位置するボゴタ市域でも地震を感じた。著者らは6月18日より現地に入り被害調査を行ったので、ここにその被害概況を速報として報告する。被害の概要 地震当時、コロンビアは雨期で降り続く降雨によって地盤は完全に飽和状態となっていたため、被害のほとんどは斜面崩壊とその土石流による災害であった。被害が発生した地域はネバド・デル・ヴィラ火山(標高:5,750m)の南から南下するパエス川に沿った地域である。斜面崩壊と土石流による物的被害 ネバド・デル・ヴィラ火山山頂付近の万年氷が地震動で崩壊しパエス川に流下するとともに震源地域のいたるところで斜面崩壊が発生した。これらの土砂は土石流となってパエス川を流下し、この流域に点在する村々を襲い多くの家屋と人命を奪い、マグダレナ川のベタニア(Betania)にあるダムサイト付近まで達した。特に甚大は被害を被った震央付近の卜エス村ではこの土石流によって村全体が消滅した。地震動および土石流による家屋被害は、倒壊・流失家屋:620戸、被災家屋:2,400戸となっている。また、パエス川流域の道路や橋梁は斜面崩壊や土石流によっていたるところが被災し、特に、土石流によって流出した橋梁は10ヶ所にもおよんでいる。震央から約140kmに水力発電ダムがあるが、このダムに直接被害は発生していない。しかし、土石流による流木や土砂がダムサイトまで到達しているため、ダムの貯水機能障害など間接被害が発生している。今後も土砂の流下・堆積によってこの機能障害はますます増大する危険性がある。人的被害 当初の新聞報道による1,200人の死者・行方不明者の多くは高台に逃げ、最終的には死者200人、行方不明100人となっている。また、ホームレスなどの被災者は14,000人にのぼっている。
著者
佐野 清二 井野 盛夫
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.137-144, 1992-05

[調査の目的]大規模地震対策特別措置法第7条により強化地域内の百貨店・病院・学校・福祉施設等不特定多数の者が出入りする施設、毒・劇物・火薬・高圧ガス・石油等の製造、ガス・水道・電気事業、大工場等、その他防災上重要な施設又は事業を管理し、運営する者が警戒宣言が出された場合に施設等で実施する防災措置等について具体的に地震防災応急計画を作成し、所管する官庁に届出等を行わなければならないことになっている。静岡県において平成3年4月1日現在、作成義務者数24,946件に対し19,612件の届出があり、毎年僅かずつ届出率が低下している。提出状況の定価理由と企業の地震防災対策の実施状況を把握するため、今回のアンケート調査を実施した。[調査結果]防災に対する県民意識が徐々に低下しつつある中で、事業所についても過去3回の結果と比較してみると全体の傾向として横ばいないし下降の傾向にある。特に防災計画の作成に関して従業員に対する判定会招集時、警戒宣言発令時の業務の継続、避難、帰宅方法等に東海地震に対する認識の低下が見られた。
著者
久保 昇三 守分 巧
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.345-351, 1994-08

日本における災害被害は年々減少してきているが、全国的規模で見れば、未だに毎年のように、何件かの中規模災害に見舞われている。また、関東大震災で代表される大規模災害も10年に一度程度の頻度で発生するものとしなければならない。大・中規模災害では、罹災者の救援が重要である。現状では、罹災者に3日間程度の自助能力を想定しているが、ガス、電気、水道等の普及、食生活の変化、スーパーマーケット等の流通機構の変化等々によって食料や飲料水の定常的備蓄の減少、核家族化、都会化による住民意識の変化、特に、地域連帯感の希薄化等によって、より早期の救難が必要となってきている。救援において重要な問題の一つが緊急輸送である。一般に道路、鉄道、港湾等に相当の被害を受けた状況における緊急輸送は極めて困難である。特に、都市近郊を水田が取り囲む我が国の状況では、通常の交通手段による輸送は難しい。そこで、伊勢湾台風の被害および救難の経験に基づき、ヘリコプターによる緊急輸送能力の飛躍的向上が計られ、一定の成果を上げてきている。しかし、同時にこのシステムの限界もほぼ明らかになってきており、例えば、北海道南西沖地震の場合には目覚ましい活躍をすることはできなかった。水陸両用性の不整地走行に適する輸送機関としてホバークラフトが注目される。ホバークラフトの特徴を列記すれば、1)時速100km程度の高速走行が可能、2)高低差1m未満の不整地走行が可能、3)水陸両用性、4)積載貨物量0.1-200t程度の範囲内で各種のサイズのものが使用できる、5)乗員養成が簡単、6)初期価格、維持管理価格、運行費共に極めて安価等が上げられる。欠点としては、1)騒音が基準内ながら相対的に大きい、2)振動が相対的に大きく旅客の快適性に欠ける、3)旅客船として使用した場合に収益率が他形式高速船より数%程度低い、とされている。このホバークラフトを大・中規模災害の救難輸送に利用する可能性を調べた。全国規模でホバークラフトによる災害救難システムを計画すれば、災害日翌朝から防災・救難活動を開始でき、その効果は極めて大きい。世界各国における救助用ホバークラフトの実態についても報告する。また、近年需要が増大しつつある大規模災害時の国際救援についても考える。
著者
杉浦 正美 山崎 文雄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.147-154, 1996-11

兵庫県宝塚市は、1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震の被災中心地の中では最も西方に位置しているが、犠牲者106名を出し、全壊3,800棟,半壊8,881棟(いずれも被災証明発行に基づく数字)の大きな被害を受けた。筆者らは、震災直後より宝塚市が実施した被害建物の全数調査の結果を用いて、被害データベースを構築した。本報告では、建物被害の概要を建物構造や建築年などの観点から整理するとともに、建物被害の地理的分布の特徴を考察した。上記の検討結果より、本震災における宝塚市の建物被害について、以下のことが明らかとなった。[建物構造](1)木質系プレハプ構造の被害は木造建物に比べ、明らかに少ない。 (2)非木造系ではRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造を含む),S-P(鉄骨造プレハプ),軽量S-P(軽量鉄骨造プレハプ)の全半壊率が20%前後なのに比べ、S造(鉄骨造),軽量S造全半壊率はその約倍の40%程度である。[建築年代](1)いずれの構造でも、建築年代が古いほど被害率が高くなる傾向を示す。 (2)木造系の建物は、建築年代による無被害率に大きな変化はないが、非木造系では、建築年代が新しいほど無被害率が増加する傾向がある。[被害分布]建物の建築年代による被害率の地域分布は、建築年が古い建物ほど、被害率が高い傾向が出ている。特に、阪急宝塚線とJR福知山線に沿って東西方向の連続した被害地域は、建築年や構造に関わらず周辺に比べ、被害が集中する傾向が認められる。また、建物被害と地形条件及び活断層位置の関係を見たところ、被害率の高い地域は、一部地域を除き、山麓の中小規模の扇状地面に分布する傾向にある。さらに、活断層との関係では、本地域を東西に横断する有馬-高槻構造線と被害率の商い地域が、一定距離を置きながらも平行して分布している特徴を示している。
著者
吉村 晶子 田所 諭
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.26, pp.103-106, 2010-06

Establishing a national response system for Urban Search and Rescue (US&R) is now on the way in Japan. This paper reports a survey on Disaster City^<[○!R]>, which is a world-famous comprehensive US&R training facility constructed and build and operated by TEEX (Texas Engineering Extention Service) in Texas, U.S.A. As the result, the key points of facility components, arrangements, layouts are shown with the system to run the facility, and the unique characteristic of US&R training facilities are specified. Discussions are made on the constraints and advantages of introducing such kind of training facility in Japan, and the necessity to consider training resources in a system together with the actual response resources is shown.
著者
林 春男 重川 希志依
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.7, pp.376-379, 1997-11
被引用文献数
11

In this paper, the necessity and importance to have a series of scientific descriptions of the experiences by those who went through disasters as victims and/or disaster workers to find out the basic facts for the future disaster management. We names such scientific descriptions as "Disaster Ethnography" which has been one of the basic research methods used in the filed of cultural anthropology for the study of various subculture. We briefly described disaster ethnography in terms of the goals to be achieved, the method used for the understanding of different cultures, the evaluation as a scientific method, and the audience who may use this information. The idea of disaster ethnography was expanded for the multi-disciplinary collaboration for the development of an integrated disaster science.
著者
山下 未知子 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.3, pp.189-198, 2001-11
参考文献数
8
被引用文献数
2

In order to make disaster preparedness education effective, it is first required that the contents to be educated should be identified and then systematically represented. In this paper, we tried to develop a way to systematize the knowledge on earthquake disaster mitigation. First, we run an experiment in which undergraduate students were asked to identify the elements of the knowledge on earthquake disaster mitigation from the 22 existing video teaching materials. Next, we experts in earthquake disasters systematized these extracted elements to construct a system of knowledge on earthquake disaster mitigation by applying the method of Semantic Network, which has been studied as a way of Representing Knowledge in the fields of Artificial Intelligence and Cognitive Science.
著者
井出 明
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.28, pp.63-64, 2011-05

It is well known that disaster areas have special social contracture after the disaster occurs. However, the existing literature has dealt with changes in the local community after a disaster. In other words, few researchers have studied tourists who happen to experience disasters. This study discusses from various standpoints, condolence for tourists who have experienced disasters, through interviews of the impacted people, bereaved, and members of the Phuket Japanese Association.
著者
多名部 重則 東田 光裕 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.10, pp.565-572, 2008-11
参考文献数
7

City formed a warning cordon with the radius of 300 meters from the bomb and ordered to evacuate from the restricted area. It considered what was important was to let vulnerable people to disasters evacuate smoothly. In order to find out vulnerable people who were not reported, Government of Kobe City ordered the staffs to visit all the houses in the restricted area in advance. On the day of disabling of unexploded bomb, the support plan for vulnerable people was carried out. To complete to evacuate, the staffs visited all the houses again and checked whether no one left. The aim of this thesis is to examine the lessons learnt from the emergency procedures on the evacuation support for vulnerable people to disasters.
著者
東田 光裕 多名部 重則 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.22, pp.57-60, 2008-05

The on-site processing of the unexploded bomb discovered in Higashinada, Kobe, which had been done on March 4, 2007 consisted of various measures. Most of them are similar countermeasures for crisis or disaster management. Government of Kobe City regarded a study of the process as a telling blow to work out their disaster response manuals. It made problems clear through the on-site staffs' opinions and analyses of document materials and completed the systematic after-action report "A Report of the On-site Processing of the Unexploded Bomb Discovered in Higashinada, Kobe". The aim of this thesis is to pigeonhole the on-site process and countermeasures.
著者
中野 孝雄 熊谷 良雄 三輪 彰
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.13, pp.159-162, 2003-11

The earthquake (M7.0) occurred in the Miyagi Pref. offing on May 26, 2003. No serious damage to the people, and Tsunami was not observed. However, damages to buildings and structures were reported as follows; 4 fires, destruction of houses (2 complete, 21 half, and 2,342 partial), electric power disruption in approximately 36,000 households, and liquefaction of soil. Based on our investigation and interviewing, this paper reports the outline of fires occurred in Miyagi pref. due to this earthquake, and, focuses in detail on the fire of a transformer substation.
著者
大野 茂樹 亀田 弘行 角本 繁 岩井 哲 谷口 時寛
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.279-284, 1996-11

研究の目的 阪神・淡路大震災直後に、神戸市長田区役所で行った倒壊家屋解体撤去申請の受付業務のパソコンによる支援活動の内容を説明し、その受付から解体発注・完了までのデータ分析にもとづいて、防災GIS(地理情報システム)利用による行政活動への効果・問題点を示す。 研究の方法 震災直後の平成7年1月29日に区役所の窓口で受付開始した倒壊家屋解体撤去の申請に関する翌平成8年4月までのデータをもとに、申請の受付件数、パソコンに入力した件数、倒壊家屋の解体撤去を発注した件数、倒壊家屋の解体撤去が完了した件数を月ごとの推移で示し、防災GISの利用による効果を示す。データ分析に加え、実際の長田区役所での活動からわかった行政データの管理・情報処理のあり方に関する知見も示す。 結論 申請の受付、倒壊家屋の解体撤去の発注のそれぞれの段階において、パソコン・GISを用いた効果が示された。(1)パソコンでデータ管理を行ったため、書類のファイルを1冊ずつ調べるよりデータ検索が速くなった。(2)地区ごとにまとめた倒壊家屋撤去の発注が、住所表記だけでは実質的に不可能だったが、GISによる倒壊家屋の建物位置での管理によりできるようになった。(3)パソコンでデータ管理を行ったため、申請関係のデータが全体的に把握しやすくなった。
著者
山崎 栄一 立木 茂雄 林 春男 田村 圭子 原田 賢治
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.9, pp.157-166, 2007-11
被引用文献数
1

To establish the evacuation support system for vulnerable people to disasters, some efforts about collecting and sharing personal information are attempted. However, these efforts don't always produce good results. By the analysis of collection and sharing personal information process on vulnerable people to disasters, people in communities feel the necessities of collection and sharing. At the some time, they have serious concerns about protection of personal information. In this paper, the discussion on the evacuation support for vulnerable people to disasters is reconstructed from the point of local community. And this paper proposes the practical ways about collecting and sharing personal information of vulnerable people to disasters.
著者
矢部 五郎
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.355-360, 1994-08

地震危険度は各種の要因について分析され既にゾーニング(zonation)が行われている。津波の危険度についても研究が行われている。しかし、問題がない訳ではない。すなわち、昔の津波対策は次のようであった。我が国の津波対策は明治29年(1896)6月15日の明治三陸地震津波と昭和8年(1933)3月3日の三陸地震津波を教訓としている。したがって、次のことが常識となっていた。(1)津波被害は三陸海岸で発生する(2)津波はいわゆるリアス式海岸すなわち河口や狭い湾で増幅される(3)津波対策は津波堤防や防波堤を建設して浸水を防ぐ(4)津波警報を聞いてから水門を閉めるしかし、昭和58年(1983)5月26日の日本海中部地震と平成5年7月12日の北海道南西沖地震による津波はこの常識とは違う被害を発生した。(1)日本海海岸でも津波被害が発生する(2)遠浅の海岸でも津波被害が発生する(3)津波堤防が流された(4)津波警報を聞いてから津波が来襲するまでの時間が短いこれらの事実に基づいて、津波対策を再検討する必要が生じた。著者は津波対策を再検討して津波危険度を評価する新しいコンセプトを提案し、危険度によるマイクロゾーニング(ゾーネーション)を試みた。この試案は津波危険度を再検討する研究を刺激するためのもので、多くの研究者が関心を持つことを期待している。
著者
中谷 典正 村尾 修
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.5, pp.285-292, 2003-11
被引用文献数
3

Since the revision of Basic Plan for Disaster Prevention of 1995, local governments have changed their municipal plan for disaster prevention and made their own disaster management manuals. However those manuals are not easy to use in the case of disasters because there is no unified definition among them and no useful methodology for making manuals. This paper shows problems of them and proposed a methodology of making the Disaster Management Manuals using Technical Writing Method. Also an actual Disaster Management Manual for Shinji Town, Shimane Pref. based on the methodology is introduced.
著者
一ノ瀬 友美 松元 奈保 金 泰煥 佐土原 聡 村上 處直
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.403-410, 1995-11

【はじめに】 大地震などの災害時、都市において、特に木造住宅の密集地や商・住・工の混在地域では、市街地大火の危険性が非常に高い。市街地大火のために避難を強いられた人々に、防災拠点がどのような役割を果たせるかは、大きな課題であるというのは、今回の兵庫県南部地震でも浮き彫りとされた。そこで、本報では、防災拠点が、どれだけ災害時に対応できるかを事例として白鬚鬚東防災拠点のハードの面およびソフトの面から評価し考察した。 【研究目的と方法】 墨田区の白鬚東地区は、隅田川と荒川放水路に囲まれて、地盤が軟弱なうえ、商・住\・工の混在地域の木造密集地である。白鬚東防災拠点は大地震発生時に予想される市街地火災に対する防火壁として機能させるため、高さ40m連続住棟(18棟)を約1.2kmにわたって配置させ、その内側に約10万人の区民を収容する避難広場を設けている。また、防火壁となっている防災団地の防災設備(放水銃、防災シャッターなど)は24時間体制で管理されている。白鬚東防災拠点は建設されてから20年。機材は老朽化が進むばかり、一度として使用されていない。現場からは防災設備のあり方を問い直す声が上がった。そこでもう一度、防災拠点の有用性を確認する。本報では、拠点内の各施設を詳しく調べ、避難生活場所としての機能を評価すると同時に、防災拠点となっている団地の住民を中心にソフトの面で拠点がどれだけ対応できるかを住民の防災意識・防災対策を踏まえ、平常時・災害時における拠点の位置付け、および避難生活時に被災者への対応を防災拠点団地住民のボランティア意識を基に、今後の防災拠点の指標とする。 【結論と考察】 阪神大震災で家を失った市民は公共施設へ逃げ込んだ。この事実を見ても、広域避難場所である白鬚東防災拠点に公共施設を置いたことは理にかなっている。また、防災壁として設けた防災団地の存在が被災者の絶対数を減らし、避難生活者に十分な面積を用意している。このように広域避難場所に普段から利用できる施設を置いたことが、災害発生後に思わぬ利を生みそうである。一方、防災拠点内に住む団地住民は防災意識が高められる環境にあるという結果が明かとなり、防災訓練の参加にも積極的であった。災害時における団地住民の協力意識もかなり高い結果であり、防災拠点は即対応が可能でソフトの面で協力体制が組めそうである。
著者
柴田 碧 神保 努 水谷 淳
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.3-11, 1994-08

本論文は昨1993年11月のSTECH'93において,その手法の概要を,そして本年1994年7月に日本機械学会D&D Conferenceにおいて,その中核をなす脱線車両の動力学についての発表予定の2論文をまとめたものである。最近,新幹線の速度向上は目ざましいものがある。また在来線についても160Km/h程度までの高速化が考えられている。しかし,東海道新幹線をはじめ,在来線では築堤上をはじめ,支持基盤の弱い線路区間が多くある。これらが強震程度以上の地震時にどのような状態になるかは,過去の多くの地震の事例で明きらかである。これについては,京大亀田のリポートもあり,高い密度で運転されている列車がこのような区間に突入する可能性は高い。一方,整備されたが高架区間でも,地震動はかなり激しくなると考えられ。たとえ線路支持構造物は健全であっても,高速の列車が脱線する可能性は大きい。本論文,前半では上述のような事象の多様性に対し,確率論的立場からどのような解析を行ったらよいかを,地震発生から,死傷発生の全過程について述べ,後半では脱線後の列車(車両列)の挙動に関する実験的研究について述べる。結果の一つの特徴としては,同一条件で脱線しても,車体の挙動はある単一の統計的分布をなすのではなく,複数の正規分布などで表わされる状況になり,理想化した条件下でも,その結果は非常にばらつき,いわゆるカオス的状況になる。このことはさらに,線路周辺の状況が千差万別の実路線における,事故の確率論的予測にはかなり特別の手法の導入を必要とするということを意味している。
著者
鈴木 有 青野 文江 後藤 正美
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.185-192, 1995-11

本論では、1994年12月28日に発生した三陸はるか沖地震地震で主要な被災地となった青森県八戸市を対象に、市の健康福祉部と八戸市域消防本部がまとめた負傷者の資料に基づいて、若干の統計分析を行い、1993年釧路沖地震の場合と比較しながら、人身被害の発生状況と発生原因、建物被害の地域分布との関連等を、特に高齢者の被害に注目しながら考察した。本論での検討結果をまとめると、次のようになる。(1) 本地震は、2年前に発生した釧路沖地震と発震の季節や日時、主要被災地の環境条件が似通っており、人身被害の発生にも共通する傾向が認められた。(2) 女性の被災率が男性を上回ること、災害弱者となる高齢者(特に女性)に負傷の発生率が高いこと、がまず指摘できる。(3) 最近の地震による人身被害の発生過程と同様に、重量のある家具や設備機器の転倒や落下で身体の各部位に挫傷・打撲・捻挫等が、散乱した落下物の割れ物で下肢や手部に切傷が、被震中や直後の対処行動時の転倒・転落・衝突で各部位に打撲・捻挫・骨折等が、そして石油ストーブ上の熱湯による下肢の熱傷が著しかった。釧路沖地震の場合と比べると、熱傷の発生比率が半減し、挫傷系列の占める割合が多いこと、ガス中毒の発生が少なかったことが今回の特徴である。(4) 今回の地震は本震の10日後に強い余震を伴った。両者の震源が異なるため、地動分布に差を生じ、負傷者発生の地域分布も相当に変わったが、余震時の人身被害の発生は本震の体験を経て抑制されたと評価できよう。(5) 高齢者は心因性による内科性や神経性の発症割合が他の年代よりも多く、非常時の精神的ダメージの影響が大きいことが現れている。また外傷性では、骨折・捻挫が多くを占め、特に女性に目立っている。これは高齢に伴う身体全体の老化に加えて、骨粗鬆症など骨の老化が起こりやすい女性の特性を反映していると考えられる。(6) 釧路沖地震の場合も含めて、重傷は骨折・捻挫と熱傷から多く発症している。また年代別では、高齢者に重傷の発生割合が高く、身体機能の低下により、軽傷で防ぎ切れない場合が多いことをうかがわせる。(7) 震度6程度の揺れでは、建物の大きな被害が起こる以前に、生活空間中の多様な存在物が危険物と化し、在室者の対処行動の混乱も加わって、負傷発生の原因となる。寒冷地における熱傷防止には、暖房用火器への作用度の高い対震自動消火装置の装備普及に加えて、湯沸かしや加湿のための容器を直上に置かないこと、本体の転倒抑制を工夫することが必要となる。打撲や挫傷の防止には重い家具の転倒・落下対策が、切傷の防止には割れ物の破損対策が基本で、安全空間の事前確保が肝要である,特に高齢者を含めて弱者への配慮を心がけたい。こうした一連の備えが重度の被害防止に役立つはずである。