著者
柄谷 友香 ピヤタムロンチャイ チャリダー
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.9, pp.167-176, 2007-11
参考文献数
25
被引用文献数
2

This paper provides the agenda for a future action plan for tourism industry based on the recovery process in southern Thailand from the Indian Ocean Tsunami for two years. We grasp the recovery process using the time-series number of tourists from foreign countries and have interview to owners and managers of tourism-related business like hotels about their own responses. As a result, we propose the six items, for example, some loan programs for reconstruction, a compensation system to foreign laborers, baseless and harmful rumors and countermeasures to them, etc.
著者
木村 玲欧 林 春男 立木 茂雄 浦田 康幸
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.1, pp.93-102, 1999-11
被引用文献数
11

Based on a random sampling survey on the "Individual Recovery Processes from the 1995 Hanshin-Awaji earthquake disaster", people in the impacted area can be divided into 4 groups depending on the severity of housing damage and their life stages. An 80% of the severely damaged victims were forced to relocate their home. For then, the need for information regarding housing damage peaked at the first one week after the earthquake, and nearly half of the victims made up their minds with regards to where they live within one month after the earthquake.
著者
糸井川 栄一 岩田 司 寺木 彰浩
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.269-277, 1996-11
被引用文献数
3

1.研究の背景 兵庫県南部地震では、特に、被災状況の適時適切な把握が非常に困難な状況が見られ、的確な即時対応の点での難点や、広範な被災市街地を対象としているため、将来を見据えた都市の復興計画策定を立案する上で効果的に被災情報を整理することの困難性が指摘されており、今後の都市・建築防災対策の推進に際して教訓とすべきことが多く見られた。 2.研究の目的 地理情報システム(GIS)等の情報処理技術を活用して、大規模地震発生時にスムーズな被災状況把握と被災情報の的確な活用を図り、被災情報把握・提供・活用システムとして整備を行うことは、社会資本としての建築物の機能維持・強化や被災後の早期復旧を図るために早急に進めていかなければならない大きな課題である。そこで、本研究は"大規模地震発生時にスムーズな被災状況把握と被災情報の的確な活用を図るために必要なGISデータベース等の情報処理技術を活用した被災情報把握・提供・活用システム"を開発していくことにより、社会資本としての建築物の機能維持・強化や被災後の早期復旧を図るために必要なシステムの基礎的資料を得ることを目的としている。 3.研究の概要 前年度紹介した「阪神・淡路大震災復興計画策定支援システム」の構築に当たって遭遇した様々な顕著な問題点として、「建築物の被災度判定の調査は、たとえば応急危険度判定においては調査員が判定シートと住宅地図を携行し、判定シートで応急危険度判定を行い、その判定シートの番号を住宅地図に書き込むといった方法が採られ、この方法の後で地理情報システムに入力する際に、(1)判定シート番号は個人毎につけるので重複がある。(2)調査員は全国から来るので、土地勘がなく、住宅地図上での位置同定が不正確である。(3)調査現場が混乱しているので住宅地図の汚損が多い、(4)そのため、その後のディジタル化に当たって障害が多い。」等を指摘した。この問題点の多くを打開すべく、建築物の被災状況に関する情報を効率的に収集するために開発した「電子野帳」のプロタイプについて、その概念と機能について紹介する。
著者
池田 浩敬 中林 一樹
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.1, pp.125-130, 1999-11
参考文献数
6
被引用文献数
3

The purpose of this study is the production of a knowledge for preparedness of recovery and reconstruction measures. In this case study of the 1995 Great Hanshin-Awaji Earthquake, we estimated the degree of social/economic damage such as the decrease of population, amount of sales, number of shops and factories, manufacturing products and so on after the earthquake by 18 municipal regions that were damaged severely. Additionally we analysed the relationship between those damages and characteristics of local economy and society. As a result, the degree of population decrease is related closely to houses damage ratio, owner-occupied house ratio and low-income ratio. The damage of manufacturing is also related to damage ratio of buildings, but not to productivity. The damage of retail is related to the decrease of population as regional consumers.
著者
高島 正典 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.2, pp.69-78, 2000-11
参考文献数
10
被引用文献数
1

In this paper, the validity of the method,to estimate damaged area using DMSP/OLS (Defense Meteorological Satellite Program/ Optical Linescan System)night-time imagery developed by our research group(Hayashi et al, 2000). OLS mounted on the DMSP satellites captures city lights distribution reflecting extent of human activity. The area shows significant decrease of light intensity after the earthquake compared with before the event is estimated as impacted area in the DMSP method. We compared the actual damage with estimated damaged area of Marmara earthquake in Turkey (1999) and of Hanshin-Awaji earthquake (1995) based on the DMSP method. As a result, it is clarified the DMSP method can detect various kinds of damages rather than only severe housing damages.
著者
岡村 精二
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.97-104, 1995-11

【提言の背景、目的】 阪神・淡路大震災直後、体育館などの避難所で暖房はもちろん、プライバシーすらない生活を余儀なくされた被災者は約30万人もいた。しかし、緊急に必要とされた仮設住宅5万戸に対して、震災後1か月で完成した仮設住宅は、わずか1250戸だった。敷地の確保のむずかしさなどもあり、現在も当初の予定戸数を確保できていない。阪神大地震と同規模の災害が再び起こったとき、今回と同じように何十万人もの被災者が何か月も体育館での避難生活を余儀なくされるのだろうか。もっと簡単に短時間に建設できる仮設住宅を開発し、運搬、建設(設置)ができるシステムを構築する必要があるのではないだろうか。 【神戸で建設された仮設住宅の大きな問題点】 ・多くの部材と専門家しかも労力を必要とし、1棟建設するために20日間も掛かる。・1戸あたり大工手間が10人掛かっており、解体再利用は不可能に近い。(解体処分となれば、350万円×5万戸=1750億円の税金が無駄になる)・設備、内装が公団住宅と同等仕様のため、仮設住宅の撤去時期が来ても退去に応じる人が少なく、社会問題となる可能性がある。 【緊急仮設住宅(仮称:防災ハウス)の開発、設計コンセプト】 ・1戸当たりの建設(設)を素人でも30分で行うことができる構造。・災害発生から、1週間以内に5万戸の建設(設置)ができるシステムの構築。・設置場所を選ばない。(斜面や瓦礫の上にも建設でき、基礎を必要としない)・輸送、設置時の天候に左右されない。(現状の現地組み立て方式は不可)・構造が簡単で安価であり、再利用でき、保管、点検が容易である。以上を大きなコンセプトに防災ハウスの開発を行った。広さは床面積10m^2以内とした。私が単独太平洋横断に使用したヨットの構造を考慮すれば、浴室、トイレ、台所、4人掛けテーブル、独立した寝室(4ベット)を配置でき、4人家族が十分に生活できる。平均的家族が3人とすれば、十分な空間といえる。「狭い」という意見もあるだろうが「1日も早く出たい」と思わせる程度の住宅が仮設住宅である。(是非、試作品をご覧下さい。意外な広さに驚かれるはずです) 【運用面での提言】 予算的には、大量生産すれば、10m^2サイズの防災ハウスで1個当たり300万円程度で仕上がる。仮に、県ごとに約1000個、常時保管しておいたとしたらどうだろう。各県が協力して被災地に輸送すれば、1週間で4万7千戸の防災ハウスが建つことになり、体育館での避難生活を1週間で終えることができる。避難生活を短期間に抑えることにより精神的、体力的消耗による病気の発生を抑制でき、なにより被災者の精神的立ち直りを早めることができる。備蓄という思想が必要であるが、各県で30億円の予算を確保できれば、倉庫も含め十分可能な対策である。
著者
林 春男 福永 弘樹
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-10, 1992-05

平成3年9月27日夕刻広島地方を襲った台風9119号による停電を中心としたライフライン災害を事例として、ライフライン間の相互連関と、それが社会生活に及ぼす影響について、台風災害に関する新聞記事から抽出した136件の現象についてISMの手法を用いて現象間の因果関係を構造化した。その結果、今回の災害が、停電、強風、高潮、交通機関の混乱の4種類の比較的独立した現象群に分かれることが明らかになった。とくに、停電による波及効果は広い範囲に及んでおり、ハイテク社会の脆弱性をあらわにし、停電による断水の発生というライフラインシステム相互の被害の連関を生み、生鮮食料品の物流システムにおける冷蔵庫の重要性を明らかにした。強風による高潮も広範な波及効果を持っており、水産物被害や塩害だけでなく、浸水による交通機関の混乱や家屋被害を引き起こした。強風、停電、高潮のいずれの場合にもその結果として、交通機関の混乱と学校での臨時措置の必要性という2つの問題が発生していた。このため、この2つは都市域での大規模災害に共通する問題点として、十分な対応策を考慮すべきであるといえる。ライフライン間の相互連関の事例として今回の災害を見ると、ライフライン間の機能障害波及が見られ、そのなかでも電力途絶による断水がもっとも深刻な問題になっていた。とくに傾斜地の高所部や屋上揚水タンクを持つビルでは深刻な問題だった。高層化がすすむ大都市における地震防災を考える上でも貴重な事例であるといえる。
著者
福永 弘樹 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.11-20, 1992-05

1991年9月27日の午後4時過ぎ長崎県に上陸した台風9119号は強風による多大な被害を全国にもたらし、広島市内では最長5日間の停電被害を受けた。このような長期停電はわが国の政令都市においては初めての体験であり、都市型災害の特徴であるライフライン災害の典型的な事例である。本研究は広島市民を対象とした意識調査を通して、都市化社会におけるライフラインの機能障害の影響とそれに対する住民の対応の実態を明らかにすることを目的にしている。本報告では、広島市民の不安を中心に、その規定因と災害対応の特徴について速報する。今回の台風9119号災害時の住民の不安は2種類の不安に分類することができた。1つは個人的な生活に関する不安で、もう1つは社会サービスの提供に関する不安であった。どちらの不安が住民にとって高かったかといえば、個人的な生活に関する不安であった。このことは住民が社会サービスの提供に信頼を抱いているからだと考えることができる。その理由は、広島市の中心部での停電が短く「文明の島」として機能していたためではないかと推測される。この地域は電線の地中化により塩害停電の影響を受けなかったため、各種の社会サービスの提供に支障がなかった。このような地域が居住地域内に存在することで、住民は「文明の島」に行けばサービスが受けられるため、それが社会サービスの不安が低かった原因と考えられる。またこれらの不安を規定する要因には、被災体験と被害がみられたが、個人的な生活に関する不安は性別・年齢・居住形態といった他の規定要因も存在することが確かめられた。そしてこのような個人的な生活に関する不安が高い人は、災害に対する備えといった対応行動が遅く、また隣近所通しのローカルなコミュニケーションを中心に情報を伝達していることが特徴的にみられた。
著者
重川 希志依
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.285-290, 1996-11

本報告は、阪神・淡路大震災の被災地の社会福祉施設が経験した震災の被害状況、地震発生後の生活確保状況、さらに地域社会で果たした役割等に関する調査研究をとりまとめたものである。これまでの「災害弱者」の捉え方は、発災時の緊密対応期において、生命を守るというフェーズに弱い部分のある人を対象としてきた。したがって、身体的・精神的なハンディキャップを持つ人たちが生活する社会福祉施設は、緊急対応期における災害弱者が集まった、災害に対して非常に弱い施設として位置づけられてきた。しかし、阪神・淡路大震災で被災した社会福祉施設の被害並びに対応状況を調査すると、社会福祉施設=災害弱者施設と、一概に決めつけることができないことが明らかとなった。それどころか、阪神・淡路大震災の際には、社会福祉施設が地域住民の拠点として、様々な役割を果たしている。都市から社会福祉施設を隔離してしまうことのないよう、さらに、災害時のみならず日常的にも、地域社会の中で重要な社会資源として社会福祉施設が機能するよう、「弱者」と「健常者と思い込んでいる人たち」との共存できる都市を取り戻すことが大切である。
著者
朱牟田 善治 大友 敬三 山崎 文雄 石田 勝彦
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.161-170, 1994-08

1994年1月17日、ロスアンジェルス北方のサンフェルナンドバレー一帯をマグニチュード6.8のノースリッジ(Northridge)地震が襲い、一般建築物やライフライン等に大きな被害が生じた。本文では、その中でも被害の大きかった電力施設に焦点をあて、その被害と復旧について調査、考察した内容について報告する。特に、今回の電力施設の被害を1971年サンフェルナンド地震による設備被害と比較して、耐震設計基準の改訂による効果を確認するとともに、日本の耐震設計基準で設計された電力施設が、今回の地震でもっとも被害を受けたシルマー交直変換所と同程度の地震力を受けた場合、米国の基準で設計された電力施設に比べ、被害が少ないであろうことを示した。
著者
小坂 俊吉 塩野 計司 宮野 道雄 中林 一樹 高野 公男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.275-282, 1995-11

近年の地震災害の調査から、高齢者は健常者と比べて被災しやすく、今回の阪神・淡路大震災でもこの傾向が明らかとなった。一方、わが国の高齢化速度は早く、現在、高齢化社会から高齢社会へと移行しつつある状況にある。したがって高齢者の地震時安全性の確保や地震後の応急生活における良好な環境保持は、今後の防災対策のなかで早急に取り組むべき課題の一つとなってきている。本論は、二つの現地調査報告から高齢化社会における地震防災課題の抽出したものである。第一は、阪神・淡路大震災における高齢者の被災実態報告である。これは、地震によって新たに発生する要介護者の把握と収容の問題、および被災地の老人ホームにおける介護老人の生活確保の問題について検討を試みたものである。第二は、東京に隣接する人口40万都市でおこなった、独居老人と高齢者利用施設における地震防災対策についてのアンケート調査報告である。高齢社会における地震防災の課題を以下のように抽出した。 1) 高齢者が死傷しやすいのは、身体機能の低下によるものだけでなく、居住する住宅の地震に対ずる脆弱性による影響がある。したがって高齢者向け住宅の早急の耐震的改善・公的な高齢者住宅の提供が求められる。 2) 今回の地震では、避難所における生活の質の低下が問題となった。とくにその被害を大きな影響を受けたのは高齢者・障害者といった災害弱者であった。また、防災対策調査からも高齢者の孤独な姿が浮き彫りにされた。災害時の近隣住民の支援は日常生活における相互の交流が不可欠である。 3) 高齢者の救援を的確かつ迅速に行うためには、被災情報の早期収集の重要性が指摘される。さらに高齢者の受け入れを可能にする支援ネットワーク作りが重要な課題となる。
著者
村上 處直 佐土原 聡 岡西 靖
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.7, pp.390-393, 1997-11

In earthquake, we must rescue person buried alive form collapse buildings as soon as posible. Rescuing person buried alive quikly connects high suvival rate. But firemen were very short of hands in great HANSIN earthquake. It is necessary to adjust the pan between neighborhoods and firemen for rescuring person buried alive quickly. Rescue instrument must be developed to assume the environment in colapse buildings.
著者
鈴木 崇伸 藤縄 幸男 水井 良暢
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.22, pp.97-100, 2008-05
被引用文献数
1

This paper presents a study of proper notification method of the Earthquake Early Warning(EEW) which is firstly announced from Japan Meteorological Agency. The EEW is epoch-making technology in the sense of knowing a big earthquake before the ground starts shaking. It is important that most people have to know the EEW immediately in order to defend themselves before shaking. Public notification of the EEW needs quickness and simplicity. Organizing the working group, we have developed two notification articles for the EEW, one is the signal sound and the other is the pictogram. By using these articles in the trial systems of the EEW notification, it is clear that the short warning is made intelligibly. Furthermore the simple sound and the pictogram are effective in the education of earthquake disaster prevention.
著者
行田 弘一 ニューエン ナム ホアン 岡田 和則 滝澤 修
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-9, 2010-03

The wireless ad hoc network is expected to be used as an alternative of the existing mobile communication network to make users communicate securely in a so-called emergency when a large-scale disaster occurs. In this paper, we propose a Real City model which is more practical as a user terminal movement model in the emergency case. Then we analyze the performance of wireless ad hoc networks in the Real City model by using the network simulator. From the simulation results, it is clarified that changing die routing protocol attribute value and increasing the number of mobile terminals that contributes to the communication route formation are necessary to improve the ad hoc network performance.
著者
高橋 章弘 南 慎一
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.115-120, 1996-11

平成5年7月12日の夜間に発生した北海道南西沖地震は、奥尻島を中心に渡島・桧山地方に大きな被害を与えた。特に、奥尻町青苗地区では、地震直後の大津波と延焼火災により、人的被害、住宅・都市施設被害、水産漁業被害、商工観光産業被害など広範囲かつ甚大な被害がみられた。本調査研究は、種々の復興事業が進行する中、居住する住民が現在どのような実態にあるのか、住宅の再建状況や防災対策、居住地環境評価等について把握を行い、今後の震災復興の在り方を検討するための基礎的資料とすることを目的としている。本調査は地域安全学会震災調査研究会が実施した震災後第3回目のアンケート調査で、本報では被害が最も大きかった育苗地区の居住者を対象に、「地震再発への不安」「日常生活での防災対策」「居住地まわりの安全性」「防災情報の入手」等について考察を行った。調査の結果、住民の防災意識に関する実態をまとめると、以下のように整理される。(1)大地震再発に対する不安は、住民意識に依然として高く、長期化している (2)日常生活での防災対策は、十分と考えている住民は少なく、その具体的な備えについては、容易に備えられものから取り組まれている。 (3)居住地まわりの安全性は、津波に対しては概ね安心感を抱いているが、地震や火災に対して多くの住民が不安感を抱いている。 (4)冬期間の災害発生における住民避難の不安要因は、低温や降雪などの気象条件が大きな部分を占め、災害の種類によっては避難により生命の危険が増すこともあると住民は捉えている。 (5)防災情報の入手方法は、メディアを利用し短時間で入手できるものを多くの住民が望んでいるが、巡回等による直接的な伝達方法を望む住民も一方でみられる。
著者
大西 一嘉 宮野 道雄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.167-174, 1996-11

1995年兵庫県南部地震では、震災による直接的な死者数だけでも5504人にのぼり、その約9割は建物倒壊によりもたらされたものと考えられている。特に耐震性の低い木造住宅に倒壊が集中し未曾有の人的被害を生んだ。本報告では、まず、神戸市における死者(3410人)について、被災場所となった建物側の要因との関係を整理した結果の概要を示し、地震による人的被害の状況を概観した。その結果、戸建てでの死者が多い東灘区と、木賃、文化、長屋などの共同建てでの死者が多い灘区との違いが明確に示されている。また、中高層共同住宅でも283人の死者が出ている点、無被害建物での死者(95人)の多くが共同住宅で発生している点なども、今後詳細に解明していくべき課題として残されていることを指摘した。ついで、建物全壊率、死者発生率ともに高かった東灘区を対象として、建物被害と人的被害の関連性についての、典型地区アンケートを実施した結果を報告した。東灘区全体の建物被害の特徴は、既存調査(都市計画学会関西支部+建築学会近畿支部都市計画部会の合同建物被災度実態調査にもとづいて、都市住宅学会住宅復興チームが行った戸数単位集計結果)によれば戸建と高層共同住宅の全壊率が高い点にある。また東灘区の南部-帯には木賃、長屋の老朽密集地区が拡がっており、被害の激しかった深江地区ではこれら老朽低層共同住宅の全壊率は85%以上にのぼると言われている。対象とした調査地区では、震災直後に木造住宅に関する詳細な現地調査が実施されており、今後、人的被害研究会(太田裕(山口大学)氏を代表とする、学際的な研究組織)における協力体制のもとで、一連の調査資料の照合を進めることで人的被害に関する予測モデルの構築を目指している。ただ、現段階ではこれらを重ね合わせた詳細な分析にはいたっておらず、本報告ではアンケート調査による集計結果をもとにした人的被害構造の概括的分析にとどまっている。結果を要点は以下のとおりである。死者の出た世帯では、当日の在宅者の3人に1人が亡くなっている反面、同じ家にいた人で、重傷、軽傷者は少なく、負傷者発生率は、死者発生率の半分以下であった。この事は、生き残った人の3分の2は大した怪我もなく救出されている事を示している。地区全域での人的被害でも、近年のわが国における地震被害と比較しても死者発生率の高さが顕著であり、脆弱な家屋構造による人的被害の発生は、発展途上国型災害の様相をみせていると考えられる。地域全体としてみた時、死者から軽傷者にいたる人的被害総数を、地域災害医療ニーズとして考えると、今回の調査によれば住民の2割を占めることとなる。
著者
浦川 豪 吉富 望 林 春男 池見 洋明 三谷 泰浩 江崎 哲郎
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.16, pp.61-64, 2005-05
被引用文献数
1

Fukuoka west offshore earthquake occurred on March 20th, 2005. We built the GIS portal site using post-event consequence of the restoration and revival support GIS project of the Chuetsu Earthquake. This project also aims sharing information and grasping situation summary in Fukuoka city area affected by earthquake by cooperation of external resources. We could launch the GIS portal site of Fukuoka west offshore earthquake within two week after the shock. This project illustrated the way using GIS navigated by efforts of the Chuetsu Earthquake.
著者
須田 久美子 宮村 正光 田上 淳 中村 雅彦
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.89-97, 1994-08

都市における地震被害の低減に関する研究の一環として、北海道南西沖地震がその被災地に及ぼした社会経済的影響を把握するために、復旧プロセスに着目した新聞情報の整理及び地震発生3カ月後の現地調査を実施した。現地調査は、津波及び火災被害の著しかった奥尻町と、液状化被害のあった長万部町を中心に行った。調査の結果を連関図にまとめ、主として地震による間接的な影響(被害)や復旧プロセスの経時的な推移を整理した。また、地震被害の社会的要因を分析し、被害を抑制した要因と拡大した要因に分類し考察した。その結果、地震被害の間接的な影響として、「生活基盤の喪失に伴う産業の衰退及び人口の流失」「長い避難生活や被災による精神的なダメージ」「仮設住宅のスペース不足や設置場所などへの不満」「見舞金分配に絡む各住戸の被災度評価の問題」「復旧速度に与える行政手続きの影響」などが問題になっていることが明らかになった。こうした問題点を踏まえて、今回の調査から得た教訓をまとめると次のとおりである。(a)被災度診断者、特殊技能者などの養成及び派遣システムの確立 被害を受けた家屋の被災度を公平に判断するオーソライズされた被災度診断者の派遣が望まれている。特に、二次災害の防止などの観点から現在一部の自治体で実施されてはいるものの、全国的な規模での展開が早急に必要である。人材の育成については、建築学会などの機関を中心に組織的な体制を整えることも必要と考えられる。また、土砂崩れ現場などでの重機操作技術者や救援物資の仕分け作業の専門家などを被災時に速やかに派遣できるシステムの確立が望まれる。(b)精神コンサルタントの養成 災害の影響が長期化すると、物資面のみでなく、被災住民に対する精神面の援助が重要である。日本では、精神コンサルタントのシステムが確立しておらず、まずは、被災者の心の相談にのれる専門家を数多く養成することが急務である。(c)復旧作業を遅滞させないための法制度の見直し 場所によっては建物の被害申請手続きや査定が終了しないと復旧作業にとりかかれない場合があり、重要度・緊急度に応じた手続きの簡素化と査定方法の見直しが望まれる。(d)伝達する情報を一元化する管理システムの確立 被災地では、地震直後から多くのマスコミ関係者が訪れ、役場の震災担当者はその対応に追われたようである。町村レベルの役場の人数では、生存者の救出・救援に追われる一方で、死傷者の人数や被害状況などに関する正確な情報を把握するのは非常に困難である。伝達する情報を一元化する管理システムが望まれる。情報収集の専門家である報道関係者が横の連携をとりつつ、震災担当者と情報を交換・管理できるシステムができれば、救援活動もよりスムーズに実施できるものと考えられる。
著者
岩本 裕次
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.161-170, 1992-05

静岡県では、東海地震を想定した総合防災訓練を54年度から実施し、依頼様々な地震防災訓練へ展開し、実施してきている。当県の地震防災訓練の概要をお知らせするとともに、今回この中に分類される津波訓練について紹介する。平成3年度の津波避難訓練が、当県の観光地である"伊豆"-南伊豆町弓ヶ浜海岸で実施された。「8月2日(金)午後2時遠州灘沖を震源とする地震が発生し、気象庁は『津波警報』を発表した。」という想定のもと訓練は開始され、当海水場を訪れた海浜利用者約10,000人の参加のもと津波警報伝達訓練、津波監視、警戒・避難誘導等が行われた。訓練後のアンケート調査結果によれば、京浜地区方面から海水浴に来た十代から二十代の女性が回答者の多くであり、若い女性の世代に伊豆の人気が高いことが窺える。これらの人々は津波避難の指示に従い、訓練に参加してよかったと回答している。しかし、一方では、そのまま砂浜にいて様子を見る等津波の恐ろしさを知らない人がまだまだいることから、啓発活動・津波訓練の必要性を痛感した。
著者
塩野 計司 高橋 正樹
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.11, pp.39-42, 2001-11

We conducted time series analysis of household economy data covering an 11-year-period from 1989 to 1999 in Kobe severely damaged in the 1995 Hyogo-ken-nanbu, Japan, earthquake Data were collected from the annual reports of the Family Income and Expenditure Survey published by the statistics Bureau of Japan We identified four income and eight outgo items that showed statistically significant changes between pre-earthquake six years, 1989-1994, and 1995 Also, we estimated earthquake-related extra expenditure paid by households with three different levels of housing damage of demolished, repaired, and non-damaged An estimate of extra payments paid by households for purchasing or constructing new housing was obtained at 29 million Japanese yen.