著者
馬場 美智子
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.5, pp.327-334, 2003-11
参考文献数
10
被引用文献数
2

Land use planning and management is not utilized in Japan for disaster management although it is considered one of the countermeasures and under the investigation of its applicability. Also, risk management is a rising framework for disaster management in these years. In this paper, land use planning and management method is studied to extract essential factors through the case study of Wellington City of New Zealand from the risk management perspective. Then, the land use planning method incorporating management point of view and applicable for the municipal government is developed based on the foundlings from the case study.
著者
目黒,公郎
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, 1995-11

バーチャル・リアリティ(VR)を用いた避難行動シミュレータを開発し,VR技術を応用した閉空間からの避難行動解析に取り組んでいる.本報告では,同じ構造を持つ実迷路とVR迷路を用いた実験結果から,VRシミュレーションを通した体験が実際の避難行動において訓練効果として現れること,またVRを用いて避難時の経路選択特性が再現可能であることを示す。
著者
伯野 元彦
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.19, pp.55-58, 2006-11

The district court decided that Shika atomic power plant must be stopped to operate. The outline of the main reason of the decision is as follows: The simulated earthquake ground motions used in the earthquake resistant design of power plants, are based on the empirical formulas such as Kanai formula (1966) and Osaki spectrum formula (1978). A little stronger acceleration than the ground motion for the earthquake resistant design was observed at Onagawa atomic power plant of Tohoku electric power Co. Therefore, more acceleration of the earthquake than the assumed earthquake motion for the design possibly attack the Shika power plants as well as the Onagawa and the Shika would be collapsed. However, the judgment underestimates the safety margin of the power plant.
著者
井野 盛夫
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.229-234, 1995-11

静岡県の地震対策は、大規模地震対策特別措置法(以下「大震法」)に基づく東海地震対策を柱として作られ、地震予知を前提に構築している部分が多く、地震予知の確度は別にしても今回の阪神・淡路大震災により現行の対策全般について、突然発生する大地震の対応について緊急に充実することとした。阪神・淡路大震災の発生から4か月目に当たる5月17日、静岡県は「地震対策300日アクションプログラム」を策定して発表した。現行の地震対策にバリエーションを持たせ、さらに深める視点で総点検し、原則として発表の日から300日以内に具体化を図る行動計画である。この検討過程において、奥尻島の津波災害から得られた教訓をも踏まえ、本県が進めてきた神奈川県西部の地震の対策についても点検を行っている。併せて、市町村計画の見直し、あるいは県下5千余の自主防災組織の資機材の充実や活動の活性化を図るよう、市町村と自主防災組織に対しても現在の防災体制や保有資機材の点検を依頼した。アクションプログラムの作成には各部局検討委員会及びワーキンググループから広く提案を得て、ポトムアップによる集約作業を行った。一方、地震対策の基本から演鐸的にブレイクダウンして、各般に亘る対策に欠落が生じないよう留意した。その結果、約1.600の提案から307の事項に整理した。それぞれのアクションの導き方は、阪神・淡路大震災などから得られた教訓(事実・教訓)、どのように対応すべきか(基本姿勢・対策)、何を行うべきか、様々な対応方策をどのように具体化するのか(アクション)の各視点で、順次考察し、具体的方策について検討した。集約した307の事項を内容別に30の点検項目に分類した。さらに時系列に目標とすべき対応を、まず地震発生直後の防災対策として「災害発生時の初動態勢の確立」、救援支援や応急対策として「迅速な救出、救護、消火対策の確立」、生活安定と秩序の確保対策を「秩序だったきめ細かな被災者対策の確立」、応急復旧の対策及び事前対策その他を「地震災害に強い県づくり」の4体系に整理した。アクションプログラムの実施については、緊急に予算措置する必要がある89事業を6月補正で約78億円を計上した。プログラムの推進のため推進会議を定期的に開催し、進捗の状況報告をするとともに個別のアクションについても具体化の促進を図ることになっている。さらに300日を経過した後も各部局は地震対策の総点検を行い、何時大地震が発生しても迅速的確な災害業務対応ができるよう、地震防災体制を万全なものとしていくこととしている。
著者
紅谷 昇平 木本 勢也 北後 明彦 室崎 益輝
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.7, pp.411-416, 2005-11

Recovery of local economy is one of the most important issues after natural disasters in rural area. We studied two local industries suffered from flood disaster in 2004, luggage industry in Toyooka-city and lacquer craft industry in Sabae-city. First, we figure out how local industries recovered from the disaster, especially focused on the activites by local companies in both cities. Second, we present expected local government role indispenasable for recovery of local indutries after natural disasters.
著者
守 茂昭
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.26, pp.91-97, 2010-06

DCP(地区活動継続計画、District Continuity Plan)は東京駅周辺防災隣組(東京駅・有楽町駅周辺地区帰宅困難者対策地域協力会、以下「防災隣組」と略す)の評議委員である東京大学都市工学科小出治教授の提案による取り組みで、地区内の事業所同士、あるいは公共と民間との間で協調的な対策を行うことによって大丸有地区(大手町・丸の内・有楽町地区)の防災活動を担い、企業単独では行いにくい対策を地区として行うことで、地区全体の防災力、業務継続性を高める趣旨の対策である。すなわち、地域としてインフラの安定性や冗長性を高めておけば、帰宅困難者のような移動市民にも被災対応の道を開き、また、個々の企業が担うべき負担を軽減でき(例:電力が停電しないかまたはごく早期に復旧すれば非常用発電の負担は減る)、ひいては(業種・業態にもよるが)バックアップ床への避難を必要としなくなる場合も考えられ、個々の企業のBCP策定のハードルを低くすることもできるわけである。防災隣組の活動の中からDCPが生まれた原因として、このコンセプトが帰宅困難者のような移動中の市民の被災対応に道を開くものであったことがあげられる。従来の防災計画において移動中の市民は例外的な存在として位置づけられており、移動市民の視点を中心に据えた被災対応は充実していないのが実際である。しかし、時代の変化は、例外であったはずの移動市民を多数派にしつつあり、その典型例である帰宅困難者への対応努力が、他の多くの移動市民の利便にも繋がり始めてるといえる。防災隣組では、DCPの具体的指針として、「安定通信」、「安定電源」、「安定トイレ」の3点に力点を置いて日々、地区内の防災活動を進めている。かつて内閣府中央防災会議専門調査会「民間と市場の力を活かした防災力向上に関する専門調査会」において、「ビジネスの延長線上として結果的に防災につながる」防災活動が、社会の防災活動を現状以上に高めるうえで必要であることが指摘されている。今日、防災関係者の蓄積する災害対応のノウハウと、一般市民の持つそれとの間に激しい落差があるが、これは各種の被災対応の普及活動が共通して直面している壁であり、同専門調査会の指摘はこの壁をいかに克服すべきであるかについて的確にとらえたものであると言える。この指摘に合致するような実践活動については、街づくりNPOや町会等でいくつかの試みがあるが、その多くの形は防災以外の活動目的で行われる諸活動が結果的に防災に役立つ、という形態である。一方、防災隣組が取り扱うターミナル駅周辺においては、不特定多数の被災者が使う防災インフラストラクチャーに、いかにして経済合理性を見出し、その実現を諮るかが問題となる。防災隣組の扱うフィールドとしては、特定できる市民より、不特定多数市民の活動合理性が成り立つ形で防災活動を実現する必要が出てくるわけである。平成20年度、総務省「戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)地域ICT振興型研究開発」として、「Wimaxの普及を視野においた東京駅周辺業務市街地とCATV電話網の接続による帰宅困難者対応第二通信網の研究開発」が採択され、その結果、平成20年度に東京駅周辺防災隣組に「災害時第二通信網」が試験構築された。「災害時第二通信網」についてはかねてから「災害時第二通信網の構築に向けて」等の研究により、その論理的可能性が言及されていたが、被災時に一次キャリアの輻輳を迂回する通信手段で、かつ、不特定多数の市民が活用しうる非常用通信として、また、それでいて極めて安価に実現できる通信手段として期待されていた。本論文では、災害時第二通信網をはじめとする、将来DCPを実現するために期待を寄せるインフラストラクチャーが、経営上必要とする条件を考察する。その上でDCPに用いるべきインフラストラクチャーの整備の在り方について、逆説的に非防災目的の投資効用で経営を成立させることが必要になることを主張するものである。
著者
鈴木 要 和泉 潤
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.471-478, 1995-11

死者5,502名を出した阪神・淡路大震災は、先進国においても依然として大きな被害を出す自然災害が発生することを証明した。そこで、この死者について特徴的なことを幾つか分析する。 分析の内容 特に大きな被害の発生した市区について年齢階級別の死亡率を比較する。 分析 死者を年齢層別(O-4、5-19、20-39、40-59、60-74、75-)に分類して、各々について居住人口で割合を求めた場合、59歳まではほぼ一定であるが老年(60-74)、高齢者(75-)と急激に大きな割合を示した。高齢者に大きな被害が発生した理由は、・古い住宅や長屋に住んでいる人が多かった。・生活の利便上木造住宅の1階部分に住んでいる人が多く下敷きになる人が多かった。などが多くに人の分析により挙げられている。一方、死者を5歳階級別(ただし75歳以上は1分類)に分類して、各々について居住人口で割合を求めた場合、30歳代に極小を、10代後半から20代前半にかけて極小を示した。30歳代で極小を示した理由は、年齢的に新しい住宅やマンションに住んでいる割合が高かったためであろう。また、10歳代後半から20歳代前半にかけて極大を示した理由は、・まず、築後20年近くたっている古く壊れやすい親の家に同居していて被災してしまったことが考えられる。・また、一人暮らしであっても大学生や社会人となって間がない人たちは収入の問題から安価な民間木造住宅に住んでいることが多く、従って被災しやすかったということが考えられる。
著者
鎌田 智之 糸井川 栄一
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.8, pp.333-340, 2006-11
被引用文献数
1

In the hall of University of Tsukuba, it is ofter crowded of many people because of some problems, which are come from characteristic of the space. Crowded situation has various risk, some are close to us and others might lead fatal problem. The purpose of this paper is to analyze the relation between flow of crowd and characteristic of space based on a computer simulation developed. It is come out that most possibility space of crowding in the hall is just inside of the entrance.
著者
田中 重好 小倉 賢治
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.117-123, 1994-08
被引用文献数
1

本研究は、1994年7月に発生した北海道南西沖地震時の青森県日本海沿岸住民の津波への対応行動を、災害文化論の観点から取り上げ調査したものである。本調査報告は、10年前の津波災害の被災経験が、10年後に発生した北海道南西沖地震の際にはどう生かされたのかを、災害文化論の観点から検討するものである。日本海中部地震時の避難行動と情報伝達に関して、次のような問題点が指摘された。第一に地震=津波連想がなかったため、津波からの避難行動が遅れたこと、第二に津波警報の発令が沿岸への津波到着後であり、発令に時間がかかりすぎたこと、第三に公的情報伝達ルートが作動しなかったことである。津波への対応行動は、個人レベルでみると、地震=津波連想、情報獲得と判断、避難行動という三つの段階に分けられる。アンケート調査結果からは、次のような点が明らかとなった。10年前に経験した日本海中部地震により、住民の地震=津波連想が高まっており、そのために、住民は津波情報を迅速に獲得した。この点で、日本海中部地震は地域住民に津波に関する災害文化向上に役立ったといえる。また、気象台からの津波警報の発令が前回よりも早く、津波警報の第一報をマスコミを通して聞いた人も多かった。さらに、避難の決め手となった情報からみれば、公的情報も効果を発揮している。このように、10年前の日本海中部地震時の反省は生きていることが分かる。しかし、津波対応に関して問題がないわけではない。それは、北海道南西沖地震の際の北海道奥尻島の場合を想定すると、現在のレベルの対応では遅すぎる。こうした点では、発災直後に津波の避難が必要かどうかの自己判断能力をさらに向上させることが必要となる。第二の防災上の課題は、日本海沿岸の過疎町村では、高齢化が進んでおり、津波情報をいち早く獲得しても、避難行動が迅速にとれない災害弱者が多く住んでいるという点である。今後、公的情報伝達システムの整備だけではなく、こうした点への対策も必要となってくる。
著者
小川 雄二郎 永野 裕三
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.141-144, 1995-11
被引用文献数
1

本研究は1995年1月17日に発生した阪神大震災によって企業の防災意識がどのように変化したかを考察する研究である。企業の防災意識の変化を把握するために地震後7ヵ月を経過した8月末に東京証券取引所第1部上場企業に対してアンケート調査を実施した。地震被災地域である兵庫県、大阪府、京都府(近畿と呼ぶこととする)地方の企業と車京の企業のを比較するため、東京都、兵庫県、大阪府、京都府に本社をおく932社を対象にアンケート調査を実施した。アンケート有効回答数は191であり、回収率は20.5%であった。本稿は調査の概要速報として取りまとめている。 被害の有無 阪神大震災によって被害を受けたかを聞いたところ直接的な被害を受けた企業は近畿の方が東京よりおおく、間接的な被害については近畿、東京ともあまり違いはない。 防災対策の対象とする災害 地震については震度5以下と震度6以上に分けて聞いたところ、阪神大震災以前から震度6以上の地震に対して防災対策を考えていた企業は近畿では17%に過ぎなかった。また震度によらず地震を対象としていなかった企業は近畿では55%であった。この地震を契機に震度6以上の地震を対象とすることにした企業は東京では35%、近畿では79%であり、その結果現在では震度6以上を対象とする企業は、東京では86%、近畿では93%となっている。 防災対策の変化 企業が取り組んでいる肪災対策について、以前から行っていたか、阪神大震災を契機に取り組んだかを聞いた。これまではあまり取り組まれなかった対策のうち大震災を契機に多くの企業が取り組んだ対策は災害後の復旧手順の策定と災害時従業員行動マニュアルであることがわかった。災害後の復旧手順の策定は近畿では24%から72%に跳ね上がった。災害時従業員行動マニュアルは近畿では24%から79%に跳ね上がった。防災費用の予算化もこの範躊にいれることができる。近畿では29%から57%に上がった。従来からもかなり行われてきた対策で、阪神大震災でさらに進んだ対策では役員への緊急連絡網がある。役員への緊急連絡網は近畿では60%から83%に上がった。従来から低く、阪神大震災によっても進まなかった対策は地震保険への加入と自治体と災害時援助協定である。地震保険への加入は16%から21%へ、自治体と災害時援助協定は12%から14%である。ハードな対策では耐震診断・耐震補強が高い増加を示している。耐震診断・耐震補強は、近畿では19%から64%lこ跳ね上がり、全体では27%から61%となっている。38万棟に及ぶ建物被害をもたらした阪神大震災は、企業にとっても建物の耐震性という入れ物の安全性を確認する重要性を強く認識したことがわかる。しかしガラスや屋外広告等の落下肪止は、37%から46%とそれほど増加していない。通信回線等のバックアップは以前は36%からであったのが62%となっており、今回の大震災で災害後の情報の重要性が認識されたためであろう。それに対して電力・ガスのバックアップは以前は通信回線のバックアップと同程度であったが、大震災後もあまり増加していない。 まとめ 阪神大震災を契機として、企業の防災対策は大きく姿を変えつつある。それは近畿の企業の6割、東京の企業の3割が何らかの直接被害を阪神大震災によって受けたことから、すべての面での防災対策をより推進していく必要性を強く感じていることが調査から読み取れる。すなわち大規模地震を防災対策の対象とする災害に取り込んだ企業は著しく多くなったこと、及び取り組みつつある防災対策の特機は、経験に碁づいて実際に必要なことを優先的に行っていく方向が見られる。
著者
薬袋 奈美子
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.7, pp.207-212, 2005-11

Disaster victims of Fukui Downpour received better support by local government, compare to the previous other disasters. The study though reveals facts that victims suffer for wider range of damage than what the government publish. It is necessary to find demanded schemes for theses victims by evaluating their process of housing recovery. A platform for volunteers were established by a NPOs' network with cooperative effort of local government. The study also finds out that voluntary support have encouraged residents to start repairing the houses, while local government support is rather limited.
著者
小山 宏孝 中林 一樹
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.107-114, 1996-11

現在社会では、特に都市部において、活動のエネルギーを電力に依存する割合は大きく、しかも年を追うごとに高くなっている。また、電力は様々なライフラインを支える最も基礎的エネルギーでもある。そのため、都市部を中心に大規模な停電が発生した場合には、停電地域のみならず、広範囲にわたって、その影響が及ぶと予想される。そこで本研究では事業所活動を取り上げ、停電が事業所活動に及ぼす影響や停電対策の現状を、アンケート調査をもとに実態的に明らかにした。また、東京都区部を想定し、その停電の影響度合いの地域性を明らかにすることを目的とした。アンケート調査の結果によると、業種によって停電が事業所活動に与える影響度合いには差があった。建設業や運輸業では比較的影響は小さいとしているが、製造業や飲食店、大規模小売店、金融機関では非常に影響が大きいと評価している。従業員数規模別においては、業種間ほど大きな差は見られなかったものの、従業員数規模が大きくなるにつれて、停電による事業所への影響も大きくなった。個々の設備に対する支障とともに、営業・業務活動に対する総合的な支障程度として設定した総合支障度については、3種類の方法によって、その妥当性を検証した。第一に、設備別の影響度から各事業所ごとの支障値を求め、総合支障度との関係をみる方法、第二に、停電による影響が大きいとされた設備の支障度と、総合支障度との関係をみる方法、第三に、総合支障度との相関関係の高かった設備の支障度と、総合支障度との関係をみる方法の3種類により、総合支障度には、事業所活動全般に対する支障の程度を示す指標として、ある程度の客観性があることが検鉦された。地域性をみるための、東京都区部の事業所の分布実態に基づいた総合支障度を用いての今回の例示では、あまりにも集計単位が粗っぽく、不十分なものであった。地域単位の細分化や副次的影響の加味、停電の発生日時や継続時間の考慮など、不完全な部分が多々存在し、多くの問題が残されてしまった。停電対策は、停電による被害を受けた経験のある事業所も多いにもかかわらづあまり進んでいない。非常用電源を設置している事業所は全体の3割にも満たず、しかもその半分はパソコン等の電池類で占められていた。それは医療機関においても例外ではなった。また、非常用電源が設置されていても、医療機関などでは、その能力が不十分であるをいわざるをえない。その原因には、非常用電源の設置や維持に掛かる費用の問題と、他の防災対策も含めた停電や非常事態への認識の甘さが存在していた。停電によって機能が停止した設備の代替手段についても、人的な対応以外には有効な手段がほとんど存在しないことがわかった。停電にともなう事業所の営業・業務活動の支障は大きいにもかかわらず、停電によって機能を停止した設備類の多くに、代替手段の決め手はなかった。また、それを補うべく、非常用電源の設置やその能力についても、費用の面などから限界があった。便利で安全とされ、一見クリーンでもあるとされた電気に対して、必要以上に依存した社会から脱却することが、まず何よりの対策であり、そして必要なことであろう。
著者
山崎 文雄 副島 紀代 目黒 公郎 片山 恒雄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.171-179, 1994-08

都市社会の電力依存の高まりとともに,停電によって都市社会が受ける障害の形態も変化しつつある.1991年の台風19号の際には,全国で700万件もの停電が発生し,構造的被害よりも停電によるライフラインの機能損失・機能的被害波及が大きな問題となった.停電による都市生活への影響は,その地域に住む人々の生活様式や産業形態によって大きく異なり,しかも季節・天候などの自然条件と,停電の発生時刻・継続時間などの影響を強く受ける.これは地域別の電力需要特性が,上記のような様々な要因で決定されるためである.したがって本研究では,都市停電の定量的影響度評価への第1ステップとして,電力需要特性から都市部の地域特性の評価を試みた.東京23区を例としてとりあげ,電力需要と地域特性のデータベースを構築するとともに,電力需要から見た都市部の地域特性評価と分類を行った.その結果,都市の電力需要量は地域や時刻,季節などにより様々に変化するが,配電エリア別に見るとその電力消費曲線の特徴により,住宅・オフィス・工場・店舗/飲食店がそれぞれ卓越する,4通りの地域に分類できることがわかった.そしてどのエリアの電力需要も,この4つの構成要素の重ね合わせとして表現できると仮定し,各構成要素の1件当たりの電力需要曲線を回帰分析によって求めた.さらに地域特性と電力需要特性を関連づけるために,寄与率という概念を用いて,そのエリア全体の電力需要量に占める各構成要素の電力需要の割合を求めた.その結果を地図上に示すと,電力需要から求められた,住宅地・オフィス街・工場地帯・繁華街,またこれらの混合地域が,実際とよく一致し,電力の寄与率を用いて地域特性を評価できることが示された.
著者
大森 寿雅 室崎 益輝
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.67-72, 1995-11

《研究の目的》 今回の阪神・淡路大震災は、比較的地震の切迫性のないと考えられた地域において、不意をつく形で発生したもので、地震についての防備が物質的にも精神的にも不十分な状態にあり、被害を拡大する結果となった。しかし、危急時にあって市民が積極的に活動したことが、窮地を救い被災の軽減に役立っており、市民行動の果たした役割は極めて大きく、高く評価すべきものである。本研究は、地震時の市民行動の実態を分析することにより、今後の地震対策あるいは消防対策への教訓を明らかにすることを目的とする。 《調査の方法》 被災者ごとに見る市民消火については、神戸市の避難所58ヵ所を対象に避難者の世帯主又はそれに変わる方にアンケート調査(以下避難所調査と呼ぶ)を行った。また、火災現場ごとにおける市民消火については、火災を目撃した約400人にヒアリング調査(以下火災動態調査と呼ぶ)をした。 《研究の結論》 同時多発火災のような行政の防災力をこえる事態が発生した場合、市民の自発的な防災活動に依存せざるをえない。今回の地震の場合、市民には潜在的な防災能力が存在することがあきらかになったが、こうした能力がいつでも引きだせるように、あらかじめ市民組織の育成をはかり、その活動に必要な物資等を準備しておくことが必要と思われる。自主防災組織の育成強化を、今後はより積極的に心掛ける必要があろう。
著者
西川 智
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.261-268, 1996-11

阪神・淡路大震災に対しては、広く世界の71か国2国際機関から緊急援助の申出があり、国連人道問題局に通報があったものだけでも44か国政府ほか多数のNGOの緊急援助を日本は受け入れた。これらの緊急援助活動や物資の提供は、当時の日本のマスコミに大きくとりあげられ、いわゆる「美談」も数多く報じられた。しかしながら、これらの緊急援助が実際に被災者に役立ったかについては、これまでほとんど検証されていない。本稿では、筆者が国連人道問題局(DHA)災害救済調整部において、阪神・淡路大震災への国際緊急援助の担当官として地震発生直後から3週間の連絡・調整業務を行い、その後、神戸においてこれらの国際緊急援助について実地調査を行った結果に基づいて、今回の国際救援活動の問題点と教訓について報告する。この地震は、世界のマスメデイアの関心を引き付ける要素を全て有していた。有名な国日本での大都市神戸での衝撃的な地震、世界の主要なマスコミは、最も象徴的な被災現場の映像と被災者へのインタビューで拾った最も悲劇的な実話を選択し全世界に配信した。人的被害についての日本の発表方法も、その慣習を知らない海外のマスコミと視聴者に大きな誤解を与えた。神戸に入った国際NGOの多くは、この誤解を前提に現地入りを決定し、現実が余りに違うことに戸惑った。スイスとフランス政府から捜索犬が派遣されたが、その能力を発揮することはできず、遺体を発見するにとどまった。被災地・被災者にとって何が最も有効かを考えると、これらの国からの捜索救助チームの到着時期からして、別の形態の援助が有効であった。被災地の医療ニーズは、地震直後から1週間の間に劇的に変化した。海外からの医療チームが国際マスメデイアで報道された被災地のイメ一ジで救援活動に従事しようとしても、ニーズにマッチした活動は困難であった。今後、日本で大災害が発生することをも想定して、今回の経験に鑑み各国の支援の申し出に対して、それをいかに有益なものに誘導するかといった、準備が必要である。
著者
熊谷 良雄 飯塚 智幸
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.9, pp.186-189, 1999-11
被引用文献数
1

Since the Great Hanshin-Awaji Earthquake, the residents have been hoping activities that reduce the damage of an earthquake, fire fighting, rescue and first aid activities. In this paper, we analyzed the individual rescue activities. As conclusion of this paper, (1) The number of family influences most whether they carry out rescue activities or not. The more the number of family are, the more active they carry out. (2) Moreover by the degree of the damage of a district, the individual rescue activities that influence whether they carry out rescue activities is different.
著者
岩口 陽子 大町 達夫 翠川 三郎 梶 秀樹 藤岡 正樹
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.23, pp.94-97, 2008-11

As the imminence of a large-scale earthquake is said to be rising, an increasing number of organizations is starting to produce their own business continuity plans (BCPs) in both public and private sectors. This paper is to review the status quo of the measures universities generally take against earthquakes and examine how their BCPs could develop and should be.
著者
大西,一嘉
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, 1996-11

1995年兵庫県南部地震では、震災による直接的な死者数だけでも5504人にのぼり、その約9割は建物倒壊によりもたらされたものと考えられている。特に耐震性の低い木造住宅に倒壊が集中し未曾有の人的被害を生んだ。本報告では、まず、神戸市における死者(3410人)について、被災場所となった建物側の要因との関係を整理した結果の概要を示し、地震による人的被害の状況を概観した。その結果、戸建てでの死者が多い東灘区と、木賃、文化、長屋などの共同建てでの死者が多い灘区との違いが明確に示されている。また、中高層共同住宅でも283人の死者が出ている点、無被害建物での死者(95人)の多くが共同住宅で発生している点なども、今後詳細に解明していくべき課題として残されていることを指摘した。ついで、建物全壊率、死者発生率ともに高かった東灘区を対象として、建物被害と人的被害の関連性についての、典型地区アンケートを実施した結果を報告した。東灘区全体の建物被害の特徴は、既存調査(都市計画学会関西支部+建築学会近畿支部都市計画部会の合同建物被災度実態調査にもとづいて、都市住宅学会住宅復興チームが行った戸数単位集計結果)によれば戸建と高層共同住宅の全壊率が高い点にある。また東灘区の南部-帯には木賃、長屋の老朽密集地区が拡がっており、被害の激しかった深江地区ではこれら老朽低層共同住宅の全壊率は85%以上にのぼると言われている。対象とした調査地区では、震災直後に木造住宅に関する詳細な現地調査が実施されており、今後、人的被害研究会(太田裕(山口大学)氏を代表とする、学際的な研究組織)における協力体制のもとで、一連の調査資料の照合を進めることで人的被害に関する予測モデルの構築を目指している。ただ、現段階ではこれらを重ね合わせた詳細な分析にはいたっておらず、本報告ではアンケート調査による集計結果をもとにした人的被害構造の概括的分析にとどまっている。結果を要点は以下のとおりである。死者の出た世帯では、当日の在宅者の3人に1人が亡くなっている反面、同じ家にいた人で、重傷、軽傷者は少なく、負傷者発生率は、死者発生率の半分以下であった。この事は、生き残った人の3分の2は大した怪我もなく救出されている事を示している。地区全域での人的被害でも、近年のわが国における地震被害と比較しても死者発生率の高さが顕著であり、脆弱な家屋構造による人的被害の発生は、発展途上国型災害の様相をみせていると考えられる。地域全体としてみた時、死者から軽傷者にいたる人的被害総数を、地域災害医療ニーズとして考えると、今回の調査によれば住民の2割を占めることとなる。
著者
渡辺 実
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.107-116, 1992-05

1992年2月2日午前4時4分、東京は6年ぶりに震度5(強震)の地震に見舞われた。この明け方の地震で、マスコミは何を伝えたのか、在京のテレビ・ラジオ局の災害放送の手腕を問われた地震であったが、果たして実態はどうであったのか。本論分は、地震発生直後、テレビ・ラジオの各媒体で数時間にわたって特番体制をとったNHKとニッポン放送の災害放送の実態を検証し、その問題点を検証した。地震直後の各局がとった対応は、NHKテレビが火起こしのあと4時6分には放送を開始、7分にはスタジオからテレビ・ラジオ5波同時放送で午前6時まで災害放送を行った。他のテレビ各局は、スーパーのみの対応がほとんどであった。民法ラジオ局の中でニッポン放送は、生放送中である「オールナイトニッポン」の番組を組み替え、午前7時まで3時間にまたって災害放送を行った。地震直後、火起こしから素早い対応を見せたNHKは、地震発生から6分後の4時10分まで「東京の震度は3」と報じた。この震度報道を見た人は「たいした地震ではない」と思い、再び布団に入った人も多く、問題なのは震度5以上で非常収集がかかる防災要因の参集が遅れた現象が見られたことである。また、幸いにも今回の地震では津波が発生していないが、もし津波が発生していたらと思うと、ぞっとする出来事である。地震発生から1時間の放送内容を分析すると、第1報で伝えなければならない「火の元注意、津波注意に関する事項」が忘れられており、NHKにおいては各地の震度のくり返しと、断面的な情報の羅列が目立ち、多くの課題を残した災害放送の内容であった。ニッポン放送の放送内容もNHKと同様な問題を持っているが、入試に係わる交通情報を伝える等、地震情報をリスナーの生活感覚とつながりを持った内容で伝えている点は、評価に値する。さらに、午前5時からのニッポン放送は、緊急出社している社員に途中の駅から状況をリポートさせる等、「面」の災害放送の試みがなされた。これは、今から3年前のロマプリエタ地震時の教訓から我々が学んだ、「面の安心情報」への第一歩を踏み出したものと言えよう。
著者
高橋,堅二
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.1, 1991-05

昭和51年8月「東海地震説」が発表されて以後、静岡県では県民と一体となった東海地震対策が推進されてきた。その一環として、県では東海地震に対する県民意識を隔年毎に、又県政世論調査においても一部地震関係の調査を実施している。これにより、県民の意識や実態、経年的な変化を把握し、地震防災に係る施策を検討する基礎資料としている。以下は、この調査資料をもとに分析した「県民の防災意識変化」の要旨である。1 県民意識の変化分析(1)東海地震に対する関心度58年度から6年間の経過で関心層が約7%減少しており、ゆるやかな意識低下を続けている。男女別、年代別においては大差ないが、地区別では東部における関心層の減少率が低い。これは、これまで年中行事のごとく発生していた伊豆半島東方沖の群発地震や平成元年7月の海底噴火のためと思われる。県政世論調査による「地震発生後の行動についての話し合いの有無」においても、同様な傾向が見られる。しかし、「東海地震説」発表以前の昭和46年度における調査では61.1%と高い結果を見るが、これは、44年11月「駿河湾から遠州灘沖での地震発生の可能性大」との発表が、県民にかなりの動揺を与えていた結果と思われる。(2)家庭内対策の実施状況(1)家族の話し合いが必要と思われる対策項目について、わずかづつ低下しているが、これは(1)の関心度と相関があり、地震に関する話題が家庭内で減少していることを表している。(2)「出火防止対策」の項目では他より実施率が高いものの、やや低下を示すのは、種々の安全装置の普及によるものと思われる。(3)「家具の固定」「食料・飲料水の備蓄」等では、販売商品の多様化によるためか、実施率の上昇を示す。2 イベントと意識変化元年度の県民意識調査によれば、伊東、熱海両市を中心とした東部地区の「関心度」「家具の固定」が他地区に比較し高い結果を示している。この結果が平成元年発生した群発地震から海底噴火にいたる一連の現象によることは明らかであり、イベントとの遭遇が意識変化と大きくかかわっていることが分かる。中西部においては、51年度目立ったイベントがなく静穏であることが、家庭内対策必要性の認識を弱めている。3 意識低下の要因と今後の対策防災意識を低下させている要因は種々考えられるが、中でも、「日本(特に東海地震予想震源域)において、近年、大きな地震がない」ことが最大であろう。今後、適度な揺れを待つことができない以上、県民が東海地震に対する正しい認識を身につけると共に、地震に備えた日頃の家庭内対策の重要性を認識するよう、県・市町村一体となった啓蒙、啓発活動を繰り返し展開していく必要がある。