著者
福島 恵
出版者
学習院大学
雑誌
学習院史学 (ISSN:02861658)
巻号頁・発行日
no.43, pp.135-162, 2005-03
著者
千葉 功 山口 輝臣 長佐古 美奈子 季武 嘉也 熊本 史雄
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

「寺内正毅関係文書」については、作業の前提として必要な史料の撮影ないし画像ファイル化を平成28年度中に完了した。これら画像化ファイルした史料は、共同研究者に配布した。本研究課題の最終目標は、山口県立大学や学習院大学史料館所蔵の新出史料はもとより、従来から公開されていた国立国会図書館憲政資料室所蔵分においても、目録において通数しか記載されなかったために従来ほとんど利用されてこなかったB群の書簡群も含めて、寺内あての書簡群(通数にして約2770通)を悉皆翻刻して刊行するとともに、それをふまえて共同研究することである。ただし、書簡群の点数が膨大なため一度に全書簡を翻刻・刊行することも困難であるため、5巻本を想定して、平成29年度は第1巻として、発信者(五十音順)が青木周蔵~大久保春野の575通の翻刻を行うことにした。研究分担者にわりふりをした結果、8月には翻刻文をそろえることができた。さらに、巻末に、「寺内正毅関係文書」の伝来(寺内正毅・寿一が設立した桜圃寺内文庫から始めて)や概要、ならびに本刊行物出版の経緯を述べた解題を付したうえで、10月に科学研究費補助金の「研究成果公開促進費(学術図書)」に応募した。さらに、「寺内正毅関係文書」の翻刻作業をふまえて、6月に学習院大学で研究会を行った。寺内正毅ないし寿一の史料群に関する研究報告が4本行われ、翻刻作業を進めるうえで大きな刺激となった。「井上馨関係文書」については、井上馨宛ての書翰すべての電子式複写を完了した。また、翻刻も継続して進めているところである。
著者
水野 雅司
出版者
学習院大学
雑誌
言語 文化 社会 (ISSN:13479105)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.47-60, 2005-03

11人の登場人物による35の独白からなる『物乞いたち』は、文学作品の形式的側面に対するデ・フォレの強い関心をその出発点において証言するものであり、後のデ・フォレの探究において重要な位置を占めることになる言語と語る主体との両立不可能性という問題をすでに明確なかたちで主題化している。 小論では、作品を以下の三っの語りの形式的特徴を通して分析することによって、伝統的な心理小説とは一線を画すこの小説の現代性を明らかにする。(1)複数の主観による語り。作品は、その主要な主題の一・っである登場人物の「孤独」を、語りの直接的な内容としてではなく、作品の構造によって規定される複数の視点問の不協和を通して表現している。(2)独白の非時系列な配置。時系列に沿った構成を放棄することによってこの作品は、出来事を時間的な発展のなかで描くのではなく、同一・の構造の異なった水準での反復として、宿命的な力の回帰という相の下に提示する。(3)複数の〈語りの現在〉の共存。それぞれの独白は、異なった時点から過去を回顧しており、固有の時間的厚みを持っている。出来事はさまざまな時間的「遠近法」のアマルガムとして提示される。 こうした形式的特徴は、語りの直接的な意味内容を宙吊りにし、語り手の主観的意図を超えた意味作用を生み出す。また言葉は自己を表現するための手段ではなく、しばしばそれを阻む障害物としてたち現れる。この点において、この小説の語り手たちは、もはや心理的存在ではなく、言語とそれを語る存在との相互排他的関係のなかで規定される主体、フーコー的意味における「モダンな」主体であると言える。
著者
佐藤 学
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度においては、4月から10月にかけて、中国、香港、台湾、韓国の研究者の訪問交流、および、中国、韓国、台湾への訪問調査と研究交流を行い、10月20日と21日に韓国慶尚南道教育研修院において第5回学びの共同体国際会議を開催した。この国際会議には、英、中、台湾、香港、韓国、日本、ベトナム、インドネシア、シンガポールなど計10か国350名の教区研究者と教育行政関係者と教師が集まり、本プロジェクトを主題とする「学びの共同体の授業改革と学校改革」について研究と実践の交流を行った。この第5回国際会議の中心主題は「民主主義」であり、教室において生徒を「学びの主人公」にする教育関係のあり方、民主主義社会を準備する学校改革のあり方、教師の専門家共同体における民主主義の重要性、教師政策と学校行政における民主主義的な統治のあり方、学校と地域社会における民主主義的な連帯のあり方が、上記10か国における「学びの共同体」の改革の実践に即して検討された。さらにこの第5回国際会議にひきついで、名古屋大学で11月24日から26日に開催された世界授業研究学会の大会においては、「アジアの学びの共同体」をテーマとする特別シンポジウムが開催され、アジア諸国から350名が参加して、このプロジェクトの主題にもとづく研究交流が行われた。そのほか、11月にはインドネシア、12月には中国と台湾において本プロジェクトに関するシンポジウムとワークショップ、11月にはJICAのプログラムによるインドネシアの研究者による「学びの共同体」の訪問調査と研修も行われた。若手研究者の育成においても、10月の国際会議、3月の訪中調査などを実施し、アジア諸国の「学びの共同体」を推進する若手研究者の研究交流を実現した。
著者
村田 弘美
出版者
学習院大学
雑誌
学習院大学経済論集 (ISSN:00163953)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.33-44, 2004-04

キャリアの語源は,フランス語で「carriere」。競馬場や競技場のトラックや車輪などを表したといわれている(他にラテン語説などもある)。以前はキャリアというと高級官僚を指す用語として使われていたが,近年では,「経歴」,「経験」,また「職業」という意で一般的に使用されるようになった。曖昧な用語ではあるが,キャリアサービスの先進国ともいえるアメリカの取組みを紹介するとともに,日本において個々のキャリアを育て生かすためにはどのような支援が有効か考察する。
著者
山本 芳明
出版者
学習院大学
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.358-336, 2007

葛西善蔵は、平野謙以来、破滅型の私小説作家の代表的存在として位置づけられてきた。しかし、これは晩年の作品を中心に考察されてきた研究の偏向によるものである。「子をつれて」で文壇的地位を確立して以降の葛西の作品世界を詳細に検討していけば、自らの破滅的な人生を忠実に描くタイプの私小説に分類できない多様な世界が浮かびあがってくる。葛西を連想させる人物の登場しない作品あり、代作あり、社会主義への関心を示すものあり、女性嫌悪が描かれたものや心境小説風のものもある。何より注目されるのは、自虐的に自己を語るように見せて他者をデフォルメして描くことによって、自己を正当化し卓越化しようとする作品だろう。また、葛西は不能や肺結核などの決定的ともいえる自己表象をその場しのぎで運用する傾向もあった。こうした一貫性のない混乱した作品世界を同時代の評者は厳しく批判していた。つまり、平野らが作り出した〈私小説作家〉としての葛西善蔵は、一貫性の欠如した作品世界と同時代の厳しい評価を不可視の領域に封じ込めることによって成立したのである。そのことは〈私小説〉言説の虚構性とその基盤の不安定さを物語っている。
著者
マクレガー ローラ
出版者
学習院大学
雑誌
言語 文化 社会 (ISSN:13479105)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.139-160, 2004-03

本研究の目的は、平成11-15年(1999-2003)の5年間にわたる学習院大学入学試験(英語)の内容読解問題の問題文のレベルを検討することであり、その際に比較される対象は、マークシート問題と英文和訳問題の難易度である。 本学では、英文読解が高校教育課程の根幹であるとの前提のもと、他の出題形式は年度により変更があるのに対し、2題の内容読解問題は毎年必ず出題されている。このことは、内容読解問題の得点が総得点の半分以上を占めるという事実と合わせて見た場合、本学の入学試験において、英文の「読解」がいかに重視されているかを裏付けるものである。故に、内容読解問題の作成において、受験者の水準に適切な英文を用意することには、細心の注意を払う必要がある。 本研究における調査項目は以下の通りである。 (i)平成11-15年の内容読解問題の問題文の難易度レベルはどうであるか。 (li)その難易度レベルは、マークシート項目の難易度レベルと比較してどうで あるか。 (血)その難易度レベルは、英文和訳問題の難易度レベルと比較してどうである か。 さらに、論文の末尾に、今後の内容読解問題用英文の難易度レベルと設問項目についての私見を付す。
著者
阿久津 美紀
出版者
学習院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

本研究は、保護者のいない児童、被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童を公的な責任で養育する、「社会的養護」(以下、社会的養護)に関する記録や記録管理システムを日本においていかに成り立たせ、社会的養護で養育された経験をもつケアリーヴァー(care leaver)の記録へのアクセスをいかに促進するかという課題について研究を行うものである。前年度から引き続き、日本国内の社会的養護の施設に保存される資料を整理・分析し、入所児童の傾向を把握すると同時に、国外の社会的養護に関する記録管理の動向についても調査した。特に、海外ではオーストラリアで実施された性的虐待に関する調査から、社会的養護の記録とレコードキーピングの役割について検証するために、オーストラリアアーキビスト協会を中心とした専門職団体の提言について分析を行った。また、メルボルンで開催された、社会的養護で生活する子どもの権利と記録管理についての会議、「Setting the Record Straight: For the Rights of the Child」に参加し、当事者からヒアリングを行った。さらに、社会的養護の選択肢の一つとして近年、日本で関心が高まっている特別養子縁組に関する記録管理についても、民間の養子縁組あっせん機関を訪問し、アンケート調査を実施した。アンケート分析結果やその成果については、今年度刊行された報告書にまとめている。