著者
西村 陽一
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.153-162, 2015

国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター(以下、国研)が、キャリア教育の取組の実態を浮き彫りにすることを主眼とした調査を平成24年に実施し、平成25年に「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」第一次報告書・第二次報告書を公表した。今回それぞれの報告書をもとに現在の高等学校におけるキャリア教育の現状と課題を認識するためにその概要をまとめ、今後のキャリア教育・進路指導への取組について考察してみた。キャリア教育計画の充実度が高いほど学習全般に対する生徒の意欲が向上しているという割合が小・中・高とも高かった。一方、就職後の離職や失業など将来起こりうる諸リスクへの対応についての指導を生徒だけでなく多くの保護者も望んでいることも示された。また、学科により組織体制や就業体験などの体験活動への取組状況に大きな違いがあることも分かった。とりわけ普通科における体制整備や取組の充実が課題と考えられる。キャリア教育の効果を実感している学校も多いが課題も多いことが今回の調査で明らかになった。今後、卒業後の進路だけでなく、近い将来に加えて遠い将来のことも意識しながらキャリア教育を推進することが期待されている。
著者
河口 和幸
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-22, 2017

近年、わが国では企業による粉飾決算や偽装工作等の不正が頻発するようになってきている。こうした企業倫理の低下を象徴するような事態が発生するようになった背景には、①短期利益追求主義の強まり(資本主義精神の変質)、②日本的経営手法の変質、③企業組織の中に未だに残る暗黙のムラ社会の雰囲気の存在、④メインバンクのモニタリング機能の弱体化、⑤企業が掲げる CSR の履き違え(または曲解)の5点があるものと考えられる。企業に内在する体質と風土は、問題が発生した際のマスコミ等に対する危機管理広報の際にも表れる。中には、拙い対外広報によって傷口を広げてしまい、世間からの批判が強まって信頼を失ってしまうようなケースも少なくない。企業倫理の向上のためには、これといった決め手があるわけではないが、①まずもって経営トップの高い倫理観が必要であり、それを前提に、②コーポレートガバナンスの制度化等の体制の整備・強化、③経営理念を意識した経営計画の策定と社員教育の徹底、④社内での闊達な議論風土の醸成による風通しの向上などの基本的動作が欠かせないだろう。
著者
村田 由美
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.136-125, 2015

漱石の熊本での四年三ヶ月を考えるとき、第五高等学校での英語教師としての生活を抜きにしては考えられない。漱石はここで初めて教師として教壇に立つだけではなく、学校行事に参加し、英語科主任として、また後には教頭心得として学校行政にも関わった。漱石の学校行政家としての手腕を評価する研究者もいるが、本稿では特に、その人事面に着目して考察した。詳細に見ていくと漱石が行った人事は、決して漱石一人で行ったものではないことが分かる。また、漱石が、いかに生徒を教育できる教師を招聘するかという事に心をくだいたかが見えてくる。それは学生時代に書いた「中学改良策」にもつながるものであった。
著者
齋藤 暁
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究実施計画に沿って、多倍長精度で時間依存密度行列繰込群を用いる量子回路シミュレータZKCM_QCの改良を進めた。この計算手法で計算コストを決定づける特異値分解の内部ルーチンにGPGPUを用いると高速になるが一方で計算精度が落ちる。落ちた計算精度をCPU計算でRayleigh商反復により回復させることで多倍長精度を維持するのだが、安定性向上のため繊細な技術的な改良を行った。この精度回復の詳細について、学会発表2件で述べた。また、ZKCM_QCを用いて主要な量子アルゴリズムのシミュレーションを行ってきており、2018年度前半の時点では、Deutsch-Jozsaアルゴリズムについてはある程度構造のあるオラクルの場合、回路幅218量子ビットの回路をPCワークステーションで浮動小数点精度256ビットでおおよそ27分でシミュレートできている。また、Shorのアルゴリズムについては、回路幅60量子ビット、回路深さおおよそ70万の回路を14.5時間~17時間でシミュレートできている。Shorのアルゴリズムのシミュレーションでは私はまだ所用時間が合成数のビット長に対して指数的に増大するデータを見つけていないが、競合する研究グループであるメルボルン大学のWangらの結果には所用時間が急激に増大していると思われるデータ点がある。同様の手法を使っていてかなり異なる結果になっている理由としては、(1)私は多倍長精度で計算しており計算中ゼロ特異値と微小特異値を混同することはほぼないが、Wangらは仮数部53ビット精度での計算のため混同している可能性があること、(2)私はQFTベースの算術回路を使っているのに対してWangらは巾乗剰余を通常の算術回路ベースでデータに作用させており、回路構成が異なること、が考えられる。以上の結果についても同じ学会発表で述べた。
著者
増村 雅尚
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.109-114, 2019

本研究は、正課外活動が実際に学生にどのような影響を及ぼすのか、及ぼした影響が学生生活、ひいてはその多様化した社会生活で必要とされる「生きる力」にどのように貢献するかを調査する必要があると考え、学生生活において正課外活動がどのような心理的影響を及ぼすかについて検証を行い、大学生の正課外活動における心理的効果を検証する資料を得ることを目的とした。その結果をまとめると①本学男子バレーボール部員は大会前に緊張と不安が増しつつ、活気があふれる。②敵対心や怒りなどの外向きの変化はなく、「自分自身」にポジティブな働きかけを行う傾向であった。③「疲労」項目に変化がなく、心のコンディションは良好であった。④試合前には友好関係を強固にしようとする傾向にあった、となった。本学男子バレーボール部は、試合において「緊張-不安」から敵対心を持つのではなく、互いの「友好」関係を向上し、チームとして「活気」あふれる状態を作り出していた。これはチームスポーツを行う上で、非常に良好な状態であったと考えられる。
著者
水月 晃 増村 雅尚 阪本 達也 石倉 恵介
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.19-30, 2018

本研究では、崇城大学全学年における健康度と生活習慣の診断検査結果を全学生・学年・男女で平均値化し、全学的な傾向及び年代的差異があるか実態を調査する。そして、学生生活全般における健康の維持・増進に向けた対策及び各学年における改善の指針を検討するものである。結果をまとめると以下のようになる。1.健康度・生活習慣パターン割合は、学年進行とともに「充実型」の割合は減少傾向にあり、「生活習慣要注意型」の割合は増加した。2.健康度・生活習慣パターン判定は、生活習慣平均点において学年別有意差(**p<0.01)があり、3年生の時期が最も望ましくない状況にあることが示唆された。3.健康度・生活習慣得点は、身体的健康度を除く全ての因子で有意差(*p<0.05、**p<0.01)が見られ、年代的差異があることが示唆された。以上の結果を踏まえ、入学時の早い段階から健康と生活習慣に関する「意識改革・行動実践」が必要であることが示唆された。今後は、身体活動量の向上、規則正しい生活習慣の確立、学生生活における健康の維持・増進に向けた「行動変容プログラム」の構築を検討する。
著者
長 正徳
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学研究報告 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-3, 2008-03-01

ゼラチン溶液の電気伝導率のゼラチン濃度および温度依存性をゾル-ゲル転移温度を含む温度領域で測定した。全てのゼラチン溶液において,電気伝導率の温度依存性はゾル-ゲル転移温度近傍で異常を示さなかった。溶液の電気伝導率は溶媒自身の電気伝導率とゼラチン濃度依存性を表す関数の積で表わされることを見出した。これより,溶液の電気伝導率には溶媒中の自由水の部分が寄与していること,および各ゼラチン濃度での溶媒中の自由水の割合の評価ができることを見出した。
著者
河口 和幸
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.25-47, 2016

現在、世界各国では経済成長を最優先とした経済政策を続けている。とくに、わが国を始めとした先進国では、経済成長一辺倒の経済政策を展開してきたものの、それが思うように達成できないばかりか、経済格差の拡大等多くの歪みが露呈する結果となっている。つまり、経済成長にこだわった政策は限界に達してきていることがますますはっきりしてきたのである。わが国を始め先進国の経済成長を阻むものとして、人口の減少(生産年齢人口の減少)、経済のグローバル化、財政政策と金融政策の限界、地球温暖化の進行という4つの大きな壁があり、これらによる制約がますます大きくなっているためである。このような制約下にあっては、これまでのような経済成長をひたすら追い求めていく政策ではなく、経済が成長しなくても国民が一定の豊かさや幸せ感を実感できるような社会、つまり脱成長社会へ移行することが必要となっているのではなかろうか。政策転換の方向としての脱成長社会は、成長ではなく均衡、産業・効率優先ではなく消費者・生活優先がキーワードであり、具体的には、①経済格差の縮小、②世代間不公平の是正、③本来的な意味での地方分権社会への移行、④男女共同参画社会の実現、⑤安心・安全社会の構築が目指していくべき方向として考えられる。
著者
許 蓉
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.121-127, 2012-03-01

日本の文化は「恥の文化」であろうか、「菊と刀」が定義した「恥の文化」とはどのような本質を持っているか、筆者は先行研究を踏まえ、日本・西洋以外の第三の外国人の視点から日本の文化を考えてみたい。「恥の文化」は日本独特な文化で、「集団性」と「儒教的精神性」の二つの側面を持った文化である。その文化は日本の自然条件や外来文化の影響によって形成されたもので、プラスとマイナスの両面を持っており、日本の学校と日本の社会に大きな影響を及ぼしている。昨今のグローバル化時代に求められている人材は「自主行動型」である。従って、恥の文化による協調性と集団性は素晴らしいものであるが、それだけでは今の時代に生き抜いていけない、個性と自主行動性も求められている。今後、恥の文化はどのように変遷し、日本を景気低迷の中から、そして地震、津波、原発の破壊から立ち直らせていくのか、今後の研究課題にしたい。
著者
岩本 晃代
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.47-58, 2017

村野四郎の戦前の詩業については、『体操詩集』(昭和一四年)のみが注目され、新即物主義を基調としたモダニズムの代表的詩人としての評価に留まっている。本稿では、これまで論及されることがほとんどなかった彼の第一詩集『罠』(大正一五年)の詩篇を、詩法を視座に分析し検証を行った。定型俳句から自由律俳句を経て、自由詩の方法を獲得した初期詩集は二つの対照的な世界で構築されている。それらの特質を明らかにすることによって、『罠』を新たな視点から評価した。
著者
中村 秀明
出版者
崇城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ピラルビシン(THP)は他のアントラサイクリン系薬物と比較し高い細胞内取り込み、細胞傷害性を示した。さらにHPMAポリマーを用い高分子化し、P-THPを作成し検討したところ、他の高分子化アントラサイクリンと比較し、P-THPは細胞内取り込みおよび細胞傷害性とも優れていた。P-THPは高い腫瘍集積性、抗腫瘍効果を示し、重篤な副作用を起こさず、S-180腫瘍の完全消失、ヒトすい臓がんモデルの腫瘍縮小をもたらした。これらの結果より、P-THPは腫瘍への選択的集積性、高い細胞傷害性を示すことが示され、すい臓がんなどの固形癌に有効であると考えられる。
著者
大嶋 康裕
出版者
崇城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

タッチパネル式電子黒板の機能を活かすことができる大学初年次の数学の単元について、撮影済みの400回程度の授業における板書写真から選定を行った。選定した複数のテーマで、板書と動的な数学ソフトウェアの双方を用いて学生に提示した。教員側から学生側端末への教材配信について、複数の方法を開発および構築し、授業中の実施が可能な方法について実際に授業で実践した。学生同士での成果物共有について、時系列sort表示が可能な電子掲示板への数式投稿による方法を実践した。
著者
Meilleur Rachelle
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.105-109, 2013-03-01

In this research project, several classes of sedond-year Sojo university studens were asked to complete an independent study project of their own choosing for one semester. Over the course of the semester, they were asked to track their total English usage and study habits. The study also examined students' beliefs about their own language abilities and the amount of time they acutually studied outside the lassroom, as well as whether thei used the SALC to aid them in their independent study project.
著者
Scott Crowe 宝来 華代子 木下 陽子
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.175-181, 2015

The Self-Access Learning Center (SALC) at Sojo University has been in operation for four years. During that time statistics about SALC student usage have been meticulously collected and analyzed. The following study attempted to dig deeper into what students are actually doing at the micro level. Rather than just recording the number of students using a certain area of the SALC, the current study looked at what activities students are engaged in whilst in the SALC. Also, student perceptions of SALC services such as the booking service for Learning Advising sessions and MPR’s were surveyed.

1 0 0 0 OA 未来形

著者
植木 隆俊
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学研究報告 (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.21-33, 2009-03-01

本論文ではHeinz Vater著,,Werden als Modalverb``(1975)(「話法の助動詞としてのwerden」)という論文の主張と、同じHeinz Vater氏の後年の論文の表題であり執筆意図を明確に表現している,,Hat das Deutsche Fururtempora?``(1997)(「ドイツ語に未来時制はあるのか」)という刺激的な問いかけを諸家の議論を参考に検討し、議論の標的となったwerden + Infinitivの構文について、ドイツ語の文法教育の目安として、現時点における理解の仕方をまとめてみた。
著者
皆川 晶
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.85-103, 2013-03-01

キャンパス内において、大学生が謝る場面でどのような言葉を使用しているか。また、その選択基準について調査した。大学1年生を対象に、同学年、上級生、親しい相手、教員に対して、直接謝る場合とメールで謝る場合とを調査した。対象が同学年や親しい相手では「ごめん」「ごめんね」の使用が多く、親近語として認識されている。上級生や教員に対しては、「すいません」「すみません」の使用が多く、学生にとって敬意を表すことばとして認識されている。直接に言う場合とメールの場合でも、ことばの選択に大きな違いはなかった。しかし、対象が教員の場合は、変化が見られ、より丁寧なことばが選択されていた。よって、キャンパス内において、学生が謝る場面では、年齢や親疎の関係などで、ことばを使い分けていることがわかった。
著者
磯田 桂史 伊藤 重剛
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

明治初期、洋風建築が地方へ普及していく過程において、熊本県の場合、二つの伝播ルートがあった。長崎からの伝播ルートと東京からのルートである。当初、熊本側は、能動的に長崎ルートによって洋風建築を取り込み、そのため、東京ルートに数年先んじて伝播した。熊本県内に伝播してきた建築は、両ルートとも、明治10年代までは擬洋風建築であったが、明治20年頃相次いで本格的洋風建築が東京ルートによってもたらされ、それ以降、本格的洋風建築は県内に徐々に普及していった。
著者
小田切 優樹 丸山 徹 渡邊 博志
出版者
崇城大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では標的分子をBRに絞り込み、BR捕獲型HSAドメインの設計と新規BR除去療法としての有用性を評価するため、以下の検討を行った。得られた知見を要約する。(1)進化工学的手法であるファージディスプレイ法を駆使してBRの詳細な結合部位の同定を可能にし、さらに1.6×105個の変異体の中からBR高親和性HSAドメインII変異体を拾い上げることに成功した。(2)今回作製した新規BR尿中排泄促進剤pan3_3-13は、抗体製剤よりも製造コストが低く、従来の血液浄化法の基盤を成す血液透析に替わり、侵襲性の低い新たな血液浄化法の道を拓くことが大いに期待される。