著者
猶原 隆 渡部 祐司 前原 常弘
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、新しい舌癌の焼灼治療システムを開発するため、全長26.5mmのチタン被覆磁性体針を試作した。そして、交流磁場中での発熱実験により、穿刺角度に関わらず同一の発熱特性を示すことを明らかにした。これにより、焼灼治療における正確な温度制御が可能となった。さらに、発熱機構を調べるための磁界解析を行って、電流密度やジュール損失密度などのシミュレーション画像を得た。生体等価ファントム(模擬生体)への熱伝達挙動を視覚的に捉えるため、熱解析シミュレーションも合わせて実施した。
著者
安川 正貴 薬師神 芳洋 酒井 郁也
出版者
愛媛大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

白血病の新たな免疫遺伝子治療の開発を目的に研究を行い、下記の研究成果を得た。1)急性白血病ならびに慢性骨髄性白血病急性転化で高率に発現されるWT1のアミノ酸配列から、日本人の約60%が陽性であるHLA-A^*2402結合モチーフを同定した。2)このモチーフを有する9merペプチドを作製し、健常者末梢血単核球から誘導した樹状細胞(DC)にパルスし、自己CD8陽性T細胞をくり返し刺激した。この方法によって、WT1ペプチド特異的HLA-A24拘束性細胞傷害性T細胞クローンTAK-1を樹立した。3)TAK-1は、WT1を発現したHLA-A24陽性白血病細胞に対して特異的に細胞傷害性を示し、正常細胞には全く傷害性を示さなかった。4)健常者骨髄細胞の増殖にも全く影響は認められなかった。5)TAK-1を新世界猿のウイルスであるHerpesvirus saimiri(HVS)により不死化させた。HVS不死化TAK-1は、抗原刺激なくして長期間培養でき、本来のTAK-1同様の抗原特異性を示した。5)この不死化TAK-1に自殺遺伝子を導入する目的で、Herpes simplex virus-1由来thymidine kinase(tk)遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを作製した。現在、このベクターを用いて不死化TAK-1にtk遺伝子を導入している。以上の結果から、新たなヒト白血病特異的標的抗原が明らかとなり、自殺遺伝子を導入したHVS不死化細胞傷害性T細胞は、白血病に対する免疫遺伝子治療に有用であると考えられる。
著者
三浦 猛 三浦 智恵美 太田 史
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-07-18

(1)前年度行ったメダカDNAマイクロアレイ解析の結果、昆虫由来免疫賦活化物質のメダカへの経口投与により腸管で発現が上昇する遺伝子群のうち、獲得免疫に関係するMHCクラスI関連因子のorla-UBA、免疫グロブリン重鎖IgVH、自然免疫に関係する補体Ca8、および細胞間結合に関係するClaudin 28bのエドワジェラ菌感染後の腸での発現をリアルタイムPCRにより調べた。その結果、いずれの免疫関連遺伝子も感染前および感染直後は、シルクロース投与群では発現量が多いものの、感染後12あるいは72時間では、シルクロースを給餌しない対照群ではこれらの遺伝子が著しく増加したのに対し、シルクロース投与群では、感染開始前の発現レベルにまで低下していた。これらの結果は、シルクロースの給餌により、これらの免疫関連因子の遺伝子発現の反応性が向上し、病原体感染後直ちにこれらの因子の遺伝子発現が誘導され、その結果として、感染を防御できたものと考えられた。(2)昨年度開発した、成長抑制および免疫活性抑制に作用すると考えられるカテコールをはじめとする炭化水素類を除去する方法により最適化したイエバエミールを魚粉に置き換えて作製した飼料により、マダイの飼育試験を行ったところ、全ての魚粉をイエバエミールに置き換えても、魚粉のみの飼料と同様の成長を再現することに成功した。(3)実際の養殖ブリおよびマダイに昆虫由来免疫賦活化物質を添加した飼料を1ヶ月間給餌して、養殖魚の状態を観察したところ、昨年示した飼育試験による結果と同様、昆虫由来免疫賦活化物質には飼育魚のストレスを低減する効果があるとともに、肉質および味にも付加価値を高める効果があることが明らかとなった。
著者
仲山 慶
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,魚類を対象として感染症の発症を主要なエンドポイントとした免疫毒性評価手法を確立し,下水処理水中に含まれる医薬品等の感染症の発症リスクへの寄与を明らかにすることを目的としている。平成29年度は,免疫毒性の評価対象物質をスクリーニングするために,愛媛県内の下水処理場の処理水を隔週で採取し,81種類の医薬品および生活関連化学物質(PPCPs)を通年モニタリングした。その結果,解熱鎮痛消炎剤や高脂血症治療剤,潰瘍治療剤,抗ヒスタミン剤,一部の抗菌剤が高頻度かつ比較的高濃度で検出された。また,先の若手研究(B)(26740030)で構築した感染・暴露試験法のスループットを向上させるため,先の試験では魚体重10g程度のコイを用いていたところを,1 g程度のコイを使用し,試験のスモールスケール化を図った。1 mg/Lのデキサメタゾンの存在下で,コイに3.8 × 10の2乗~4乗CFU/mLのAeromonas salmonicidaを浸漬感染させたところ,感染後17日目に30~40%の個体が死亡した。一方,感染のみの非暴露区では0~10%のへい死率となり,本試験で使用したサイズのコイであっても,デキサメタゾンの免疫抑制作用が検出可能であった。試験法の改良により,試験水量が従来法の40%程度で試験の実施が可能となった。以上の結果から,スモールスケール化した試験系で,比較的検出濃度の高かった非ステロイド系抗炎症薬の免疫毒性評価を実施することとした。
著者
内藤 俊雄 眞山 博幸
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は通常のバルク(D=3)の試料とフラクタル次元(D)を落した試料(2<D<3)とを対比し、磁気転移や超伝導転移といった協同現象における秩序化が次元Dと共にどう変わっていくかを実験データとして提示することであった。与えられた試料のDの制御を実現し、その電子物性を明らかにした点が新しい。3年間でほぼ予定通り研究が進み、酸化コバルトの反強磁性転移温度(T_N)とDの関係、および銅酸化物高温超伝導体の臨界電流密度(J_C)とDの関係が、それぞれ当該の物理量を種々のDを持った試料で測定することで得られた。この成果は論文として受理され、特許も申請した。
著者
北原 鉄也
出版者
愛媛大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

本研究は、政治経済的な視角から戦後日本の分析を試みた。まず、愛媛県における経済は戦後しばらくは繊維工業など中心に発展したが、高度経済成長が始まる時点から相対的な停滞に陥った。そこで政治・行政による経済開発が推進されたが、ある程度の成果は見られたものの、キャッチアップには成功しなかった。1970年代には格差は拡大しなかったものの、1980年代には再び経済的な停滞に陥り、テクノポリスなど政治・行政主導の地域開発が試みられたが、それも大きな成果を生んではいない。大分県は愛媛県以上に新産都、テクノポリスなど政治・行政主導の地域開発が成功した地域である。両県を比較して、経済との関係で政治の展開を見ると、愛媛県の場合には、政治が一貫して経済に優位して、経済の合理的な発展が抑制される傾向があり、政治の支配のために経済開発などが使われたと言えた。それに対して、大分県の場合には、経済開発や地域活性化の正否が優越して、それを達成する装置として政治・行政があったと考えられる。どちらも政治・行政の優位の体制と言えるが、政治権力志向型と経済成果志向型という違いがあった。本研究のキ-概念である経済の「自由化」の契機は十分に活かせなかったが、後進地域では政治の「民主化」を契機にして一貫して「政治の優位」という枠組みが存在するという仮説は、ケーススタディを行った愛媛県や大分県では妥当した。課題として残された問題は、ばらまき的な中小企業対策の政治とその効果、農協などを中心にした産地やネ-ットワークづくりの成果などの分析である。後進地域の政治経済の研究にとって、今後の課題である。
著者
北原 鉄也
出版者
愛媛大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、後進地域を対象にして戦後日本形成の分析を行うことである。その焦点は地方政治と経済との相互関係にあり,手法はケーススタディ(愛媛県と大分県)である。なお,本年度の研究は予算等の関係から愛媛県を中心に行った。成果は以下の通り。(1)愛媛県では昭和20年代には地方政治と経済との関係はあまりなかった。例外として,戦後改革による「民主化」と経済の「自由化」との矛盾から労使紛争の多発等が見られた。また,ダム建設は国策としての電源開発に留まらず、水不足の四国地域では決定的な課題である利水の手段(生活用水,工業用水等)であった。各県、各地域間の調整,国家事業の導入等には多大の政治的エネルギーが注がれた。その点では政治は経済にとって必要であり,この必要は40年代後半まで続いた。(2)30年代は重化学工業化が全国的に展開されていたが,愛媛県での取り組みは30年代後半に始まる。その遅れの原因としては、保守内対立の激化による県政の混乱があげられるが、繊維などの地場産業、新居浜における住友系企業群等の存在が積極策を取る意欲を弱めたことも重要である。40年代に入っての本格的な経済開発(大規模埋め立て等)は,低成長期にも強力な政治的リーダーシップによって強行された。(3)50年代にはそうした外来型工業化の行き詰まりを補うために地場産業等中小企業の育成への取り組みを始めたものの、他方では先端産業、リゾート等の開発など国策に従った開発も進めていた。試験所設立等地場産業対策に先進性があるが、一般的には行政は地方経済に大きな貢献をしているとは評価できない。ただし,この時期を境に,これまでの経済界の優位ないし独立性が失われ,政治の優位が始まった。住友の新居浜離れ、地場産業の衰退などを条件として政治への依存を強めたことが基本的条件であるが、保守による強力な政治的統一が確立したことが重要であると考えられる。
著者
竹川 郁雄
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

大人のいじめに対する意識がどのようなものか、地方都市の一般市民に郵送調査を実施した。有効な回答者は741人で回収率は35.3パーセントであった。また、養護教諭に自由回答形式の調査を実施した。その結果は次の通り。 1.いじめ被害者に対する責任意識を10年ごとの年代別に見た時、世代が若くなるにつれて、責任意識が強いという傾向が出ている。2.居住地密集している市街地に住んでいる人は、いじめの傍観者意識を強く持つ傾向がある。3.中学生に喫煙を注意できるかどうかの質問で、大洲市民の方が松山市民より注意できると回答している人が多かった。これは大洲市民の方が地域で子どもを見守る意識が強いためだと考察した。
著者
三木 哲郎 上島 弘嗣 梅村 敏 小原 克彦 田原 康玄
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

多因子疾患の感受性遺伝子に関する長期縦断疫学研究を行った。これまでの断面的解析から同定された肥満、2型糖尿病、高尿酸血症の感受性遺伝子が、これら疾患の新規発症とも関連することを明示した。断面解析からは、ATP2B1が高血圧感受性遺伝子であることを突き止めた。ノックアウトマウスを用いた検討から、ATP2B1は細胞内カルシウム濃度および血管収縮性の亢進を介して血圧上昇を来していることが明らかとなった。
著者
都築 伸二 山田 芳郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

漏電ブレーカの誤動作問題と従来のN-L (コンセントのN (Neutral)とL (Live)端子を用いる) 伝送時の信号減衰問題の両方を回避できる方式として、PE端子(Protective Earth, コンセントの3番目のアース端子)とN端子間に信号を注入するN-PE伝送方式をまず提案した。しかしこのN-PE方式でも、ビルのフロア間通信は困難であった。そこで、フロア間を縦断するケーブル(1線のみでよく、信号の帰路は大地を用いる)をインダクティブカプラでクランプして、PLC信号をシングルエンド型で伝送する一線式PLC伝送方式も開発した。
著者
大木元 明義
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

遺伝性循環器疾患ではサルコア蛋白などの原因遺伝子変異だけでなく,病態修飾遺伝子多型がその病態に大きく影響していることを報告してきた.既存の原因遺伝子解析では遺伝子変異同定率は約60%であり,病因と予後を解析するうえで限界があった.本研究では,遺伝性循環器疾患に対して網羅的にターゲット・リシーケンスを行い,遺伝性循環器疾患をより正確な診断群として分類することを目的とした.対象は60例(96例を予定)の遺伝性循環器疾患を対象にした.イルミナ社製の次世代シーケンサーMiSeqとTruSight Cardioキットを用いて,17の遺伝性循環器疾患における174遺伝子に対してターゲット・リシーケンス(0.57 Mb)を行った.平均リード深度は230,カバレッジ(20x)が97%であった. 平均297個/症例の遺伝子多型・変異(96%が既報)が確認できた.VariantStudioを使用して,アジア人1%未満のrare variantsを解析すると原因遺伝子候補が平均6個抽出できた.特に,心臓再同期療法や心臓移植登録を行った重症肥大型心筋症の4例では,MYBPC3遺伝子変異(各々Arg820Gln,Glu386Ter,Glu258Lys)だけでなく,まれなTTN遺伝子等の変異も重積していた(平均8個).拡張型心筋症と刺激伝導系障害を合併する家系で,新規のLMNA遺伝子変異(Gln258HisfsTer222)を確認した.この変異は1塩基欠失によりフレームシフトがおこり,本来のLMNA蛋白よりも短い蛋白が翻訳されることが推察された. RBM20遺伝子(Ser75Leu)の重積変異の影響や,男性では女性に比較して若年で発症し重症化する可能性が推察され,早期の心臓再同期療法等による治療介入で病状の進展を抑制できる可能性が示された.今後も,先制医療に向けた新たな治療標的を探求する予定である.