- 著者
-
仲山 慶
- 出版者
- 愛媛大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
本研究は,魚類を対象として感染症の発症を主要なエンドポイントとした免疫毒性評価手法を確立し,下水処理水中に含まれる医薬品等の感染症の発症リスクへの寄与を明らかにすることを目的としている。平成29年度は,免疫毒性の評価対象物質をスクリーニングするために,愛媛県内の下水処理場の処理水を隔週で採取し,81種類の医薬品および生活関連化学物質(PPCPs)を通年モニタリングした。その結果,解熱鎮痛消炎剤や高脂血症治療剤,潰瘍治療剤,抗ヒスタミン剤,一部の抗菌剤が高頻度かつ比較的高濃度で検出された。また,先の若手研究(B)(26740030)で構築した感染・暴露試験法のスループットを向上させるため,先の試験では魚体重10g程度のコイを用いていたところを,1 g程度のコイを使用し,試験のスモールスケール化を図った。1 mg/Lのデキサメタゾンの存在下で,コイに3.8 × 10の2乗~4乗CFU/mLのAeromonas salmonicidaを浸漬感染させたところ,感染後17日目に30~40%の個体が死亡した。一方,感染のみの非暴露区では0~10%のへい死率となり,本試験で使用したサイズのコイであっても,デキサメタゾンの免疫抑制作用が検出可能であった。試験法の改良により,試験水量が従来法の40%程度で試験の実施が可能となった。以上の結果から,スモールスケール化した試験系で,比較的検出濃度の高かった非ステロイド系抗炎症薬の免疫毒性評価を実施することとした。