著者
中西 淳
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、感性の涵養とコミュニケーション能力育成のための、国際交流による俳句指導法を探るところにある。まず、北米における俳句教育に関する情報を収集した。その結果、シラブル数にこだわる形式重視の授業が多いこと、我が国の句会のようなコミュニケーション重視の授業はあまり行われていないことが明らかになった。そこで、カナダの教師を対象として、コミュニケーション重視の俳句ワークショップを行った。その結果、その俳句ワークショップの有用性が検証された。さらに、国際交流を展開するための俳句指導のあり方に関する示唆も得ることができた。
著者
長尾 秀夫
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

この研究では、1991年からの学習困難児に対する教育支援の研究を発展させて、極低出生体重児の学習困難、特に(1)不器用、(2)算数の学習困難、(3)集団参加の困難に対する超早期教育支援を行い、子どもがもつ課題の発見法と支援モデルの雛形を作りました。また、遠隔地の教育支援のために遠隔双方向ビデオ会議システムを定期的に使用し、その効果的な活用法を明らかにしました。
著者
村上 和弘
出版者
愛媛大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

2006年8月、10月、そして2007年3月の3回にわたり、対馬市にて現地調査および資料収集にあたった。8月の調査は「対馬アリラン祭」を中心に参与観察および関係者への聞き取り調査を行なった。この「対馬アリラン祭」は対馬における日韓交流行事の象徴的存在であるが、それだけに日韓関係の影響を受けやすい。この年は春先にかけて来島韓国人観光客の行動が全国ネットのTVニュースや新聞で取りあげられたこともあり、特に、これら全国規模で流通するマスメディア言説への反応に注目しつつ調査を行った。10月は「対馬アリラン祭」との関係を念頭に、厳原八幡宮例大祭の参与観察を行なった。この両者は同じ地区で開催されており、地区住民にとってはともに屋台や出し物が出る「ハレの日」であることには変わりない。しかし、前者が「日韓友好」のイベントであるのに対し、後者は神社の祭礼であり、その性格付けはかなり異なる。そこで、特に対韓感情および郷土意識に注目しつつ、調査を行った。2007年3月は、昭和20年代を中心に資料収集を行なったほか、当時の貿易に関わる様相について関係者にインタビューを行なった。このほか、昨年度に引き続き、対馬に関連する学術論文・調査報告書の調査収集を行なった。また各種基礎資料、特に交通手段・ルートの変遷に関する資料の調査収集に努めた。この過程で対馬における観光開発関連も収集を行った。これらの文献資料と聞き取りデータとを照合しつつ、地域の全体像を明らかにするための作業を進めた。なお、今年度までの成果の一部は論文として『国際交流センター報』に発表したほか、2本を投稿中である。
著者
土屋 卓也 鈴木 貴 大塚 寛
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

この研究では、領域の変動が、その領域上で定義されている楕円型微分方程式の境界値問題の解に、どのような影響を及ぼすかについて調べた。特に、境界値問題の解を用いて定義される汎関数について、領域の摂動に関する第一変分、第二変分を計算する方法を確立した。その結果を用いて、有界領域上のGreen関数の領域の摂動に関する古典的なHadamardの変分公式を、簡便に計算する方法を発見した。また、「ダム問題」と呼ばれる自由境界問題について、解を制御する変分原理の領域の変動に関する第一変分、第二変分を計算し、さらに第一変分を用いた反復解法を新たに提案した。
著者
天野 要 岡野 大 土屋 卓也 緒方 秀教 杉原 正顕 遠藤 慶一
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

代用電荷法を適用し,非有界な多重連結領域から,(a)平行/共線スリット領域,(b)直線スリット領域,(c)円弧放射スリット領域,という正準スリット領域への数値等角写像の方法を提案し,その有効性を数値実験的に検証した.また,代用電荷法の性質を調べ,周期Stokes方程式に対する基本解法を提案した.これらの研究は理工学への応用上も重要である.本研究の主題に関連の深い特異積分方程式,悪条件連立1次方程式の数値解法についての基礎的研究も進められた.
著者
橋本 巌 澤田 忠幸 松尾 浩一郎
出版者
愛媛大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究では、成人期および成人になろうとする青年期における感情経験(つらさや感動)によって「泣くこと」が、自己の内面や他者との関係を揺り動かし内省する機会となり、自他認識の変容をもたらすという可能性を検討した。19年度は、中年期(看護師、およびボランティア)を対象として、成人版の泣き経験状況と泣きによる心理的変化を調査・分析した。また青年対象では、つらさによる泣き(17、18年度)に加えて感動による泣きを検討した。本年度までの主要な成果を報告する:1.泣きを経験する状況本研究では、結果的な泣きの頻度ではなく、泣きそうになって自己抑制する喚起過程を考慮した新たな泣き経験尺度を開発した。自分の直接的つらさによる泣き状況には、青年・成人共通に、A愛着危機、B自己確信のなさ、があり、成人ではC対人的葛藤(対人的業務にかかわる)が見出された。一方、代理的(共感的)な泣き状況因子は、青年・成人ともにD身近な他者の肯定的(またはE否定的)感情、Fメディア・物語の他者の感情、の3因子が抽出された。代理的泣きの傾向は、過去の感動経験の影響を受ける。また代理泣き傾向は、感動時の実際の落涙を促すと実験的に実証された。直接・代理の泣き状況因子には年齢差を示すものがあった。2.つらい状況での泣きによる心理的変化は、(1)自己意識の変化(共通に、(1)解放・安堵、(2)自己の直視・意欲(3)否定的現実の実感、成人では他に(4)消極的態度、(5)絆の実感)と(2)他者への影響(6)泣きへの否定的評価、(7)被援助・慰め、成人では他に(8)他者の巻き込み)とから捉えられた。泣きによる他者への影響は自己意識の変化と相関した。心理的変化は気分変動だけでなく持続的な人格面も含み、肯定・否定両面がある。また上記の(1)、(2)、(5)は感動による心理的変化とも共通する。3.泣きによる心理的変化に影響する要因として、泣きエピソードにおける感情、出来事の種類や、泣く際の対人表出選択(ひとりで泣くか、他者の前で泣くか)、性別、パーソナリティ要因(多元的共感性、ストレス対処)の関与が示された。上記諸要因間の関係の考察・モデル化が課題である。
著者
徳澤 佳美
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、我々が樹立したヒトiPS細胞でFATP3ノックアウト細胞を作成し、解析することを計画した。ゲノム編集によるFATP3遺伝子ターゲッティングを行うために、CRISPR/Cas9発現ベクターとFATP3ターゲッティングベクターの構築を行なった。FATP3にはisoformが3つ存在するため、実際にFATP3ターゲッティングに使用するヒトiPS細胞において、これらのisoformの発現量をqRT-PCRで測定した。その結果、FATP3の全てのisoformが発現していたことから、ヒトiPS細胞でFATP3の機能抑制の影響が表現型として出る可能性が示唆された。しかし、ヒトiPS細胞は通常、ミトコンドリア活性が抑制されており、分化誘導に伴い代謝が電子伝達系-酸化的リン酸化にスイッチすることが知られている。FATP3はミトコンドリアの呼吸鎖活性に関わっていると予想されるため、FATP3の発現抑制によるヒトiPS細胞への影響は、抑えることができると考えた。ターゲッティングのための予備実験として、使用予定のヒトiPS細胞への遺伝子導入条件と薬剤選択濃度の検討を行い、条件を決定した。FATP3に遺伝子変異が同定された患者は、胎内発育不全を呈したことから、FATP3ノックアウトiPS細胞は分化誘導した時に増殖能の低下が予測される。そのためFATP3ノックアウトiPS細胞の解析には、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の形成だけでなく、分化誘導効率の評価を行うことも重要と考えた。神経外胚葉への分化誘導方法は所属研究室において既に確立されているが、中内胚葉系への分化誘導方法は着手していなかったため、誘導条件の検討を行なった。
著者
徳永 彩未
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

自己免疫疾患は近年増加傾向にあり、環境化学物質への曝露の素因がある先進工業国で自己免疫疾患の有病率が高いことから、環境化学物質がその原因の一つとして指摘されている。自己免疫疾患には、Treg(自己免疫を抑制)やTh17(自己免疫を誘導)が中心的な役割を果たしており、各T細胞間の恒常性の破綻が自己免疫疾患の原因であると考えられている。最近、ダイオキシン受容体(AhR)がTregとTh17の分化のレギュレーターであることが示されたが、未だ自己免疫疾患発症の個人差を説明する因子の特定には至っておらず、疾患発症機構についてはほとんど分かっていない。そこで本研究では、ダイオキシン類による免疫系への機構的関与及び自己免疫疾患の感受性規定因子の解明を目的とし、世界で唯一の、多様な自己免疫疾患を発症し、環境化学物質に対する多様な感受性差が認められるモデルマウス(MRL/1pr・C3H/1pr・MXH/1pr系統)を対象に、TCDD曝露に対するTh17/Treg分化能の系統差を比較検証した。実験系の確立後、まずTCDD曝露後のTh17/Treg分化バランスを検証した所、TCDDの推定される現実的な曝露濃度範囲において、自己免疫現象-特に血管炎を発症するMRL/1pr,MXH6/1prおよびMXH53/1prマウスでは、Th17/Treg分化バランスが崩れ上昇傾向を示すのに対し、発症しないC3H/1prおよびMXH54/1prマウスでは分化バランスが保持されることが初めて判明した。このことは、自己免疫疾患を発症し易い遺伝的背景をもつ個体では、環境因子によりさらにその発症度や重症度が悪化することを示唆している。さらに、自己免疫疾患の感受性規定因子の解明を最終目標に、近交系マウスの系統数を増やし、ダイオキシン暴露後のTregの誘導が、自己免疫現象の発現もしくはダイオキシンに対する感受性のいずれに依存しているのかを追求した所、必ずしも前者に依存するのではなく、後者に依存することが初めて明らかとなった。
著者
中道 仁美 大友 由紀子 柏尾 珠紀
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

林業女性の研究は日本と欧州の代表的林業国(オーストリア、スウェーデン、ドイツ)の調査から、まだほとんど進んでおらず、林業女性の活動も緒に就いたばかりである。日本は他国に比べて林業女性支援が公的に行われ、林業女子会の活動のように、異業種との交流や若い女性の活動などの見られるのが特徴的である。女性の自立的活動では、欧州では女性の林業経営者が見られ、ドイツやオーストリアでは、相続により林業経営をしているものが多かったのに対し、スウェーデンでは、狩猟を目的とした林業経営、林地の購入などが特徴的であった。女性の林業労働者は内外ともに非常に少なく、機械化が進んでも、重労働であることが一因である。
著者
中村 五月
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高齢者の尿意の訴え方と援助方法の実態,尿意の訴えの有無に関連する要因を明らかにし,尿意を訴える能力に応じた援助方法を検討した.対象者は介護施設に入所する17名で,排尿援助場面での尿意の訴え方で「自発的に訴える」3名,「援助者が確認すると訴える」7名,「援助者が確認しても訴えない」7名に分類された.援助者の確認に対して尿意の訴えの有無に関連する要因を分析した結果,言語障害の有無,認知機能,ADL,援助方法には関連がなく,意欲に有意差が認められた.また,尿意の訴えの有無には「トイレの認知」が影響していた.尿意の訴えを促すためには排尿援助のみならず生活意欲を高める援助が必要であることが示唆された.
著者
小助川 元太
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、室町時代後期から安土桃山時代にかけての、いわゆる乱世における政治や文化を支えた知の問題を、その時代に制作された百科全書的テキスト群の生成と享受という視点から解明するべく、いくつかの作品を取り上げて、基礎的調査を行った。具体的な成果としては、以下の4点が挙げられる。(1)江戸初期成立の、狩野一渓編の画学全書『後素集』が、中国の百科全書『事文類聚』を和訳した、伝一条兼良編の漢故事説話集『語園』を利用している可能性が高いことを明らかにした。(2)戦国期成立の百科全書的編纂物『月庵酔醒記』が、政道に必要な教訓や知識と諸芸に関する雑学的な知識とを同一の地平線上にあるものと捉え、戦国武将に必要な知識の集積として編まれた可能性が高いことを明らかにした。(3)『〓嚢鈔』の編者行誉の著述活動(自伝・『八幡愚童訓』の書写)に注目し、中世を代表する百科事典が生まれた背景を明らかにすべく調査を進めた。(4)同時代に成立したと思われる、百科全書的特徴を持つ『源平盛衰記』が、いかなる論理のもとに、既成の平家物語を再編していったのかという問題を、いくつかの場面を分析しながら明らかにしてきた。
著者
谷口 義明 唐牛 宏 有本 信雄 岡村 定矩 太田 耕司 土居 守 海部 宣男 唐牛 宏 有本 信雄 岡村 定矩 太田 耕司 土居 守 宮崎 聡 小宮山 裕 村山 卓
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ハッブル宇宙望遠鏡の基幹プログラムである「宇宙進化サーベイ(COSMOSプロジェクト)」を遂行した。国立天文台ハワイ観測所のすばる望遠鏡のデータとあわせて、宇宙の暗黒物質の空間分布を世界で初めて明らかにした。これにより、暗黒物質に導かれた銀河形成論のパラダイムが正しいことを立証した。また、COSMOS天域で検出された約100万個の銀河の測光データに基づき、銀河、巨大ブラックホール、及び宇宙大規模構造の進化の研究に大きな貢献を果たした。
著者
田辺 信介 國頭 恭 岩田 久人 本田 克久 中田 晴彦
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、野生の高等動物に蓄積している内分泌かく乱物質の汚染と影響を地球的視点で解明し、化学物質の安全な利用と生態系保全のための指針を提示することを目的とした。まず、アジアの先進国および途上国で捕獲した野生の留鳥について有機塩素化合物および有機スズ化合物の汚染実態を調べたところ、PCB等の工業用材料として利用された化学物質は先進国および旧社会主義国で汚染が顕在化しているのに対し、DDTやHCH(ヘキサクロロシクロヘキサン)などの有機塩素系農薬は途上国で著しい汚染が確認された。また、アジア地域を飛翔する渡り鳥は、越冬地や繁殖地で地域固有の汚染暴露を受けることが判明し、南方地域で汚染を受け体内に蓄積した有害物質の影響が、北方地域で営まれる繁殖活動時に現れること、すなわち内分泌かく乱物質の影響は汚染の発生源のみならず遠隔地つまり汚染とは無縁な場所でも発現することが示唆された。さらに、アザラシやカワウを対象に、ダイオキシン類の汚染と影響を検証したところ、毒性の閾値を越えるきわめて高濃度の蓄積がみられ、そのリスクは高いと推察された。CdやHgなどの毒性元素は、陸域に比べ海洋の高等動物で高濃度蓄積がみられ、その細胞内分布や解毒機能の種特異性が示唆された。ところで、鰭脚類や鯨類ではCYP酵素の活性や血中性ホルモン濃度と有機塩素化合物濃度との間に相関関係がみられた。アザラシやカワウの場合、毒性の強いダイオキシン類異性体ほど肝臓に集積しやすい傾向がみられ、AhR関与の毒性に対し本種は敏感であることが示唆された。さらにリンパ球の生育阻害は30-40ng/gの血中ブチルスズ化合物濃度で起こることが明らかとなり、一部の沿岸性鯨類ではこの閾値を超える汚染が認められた。以上の結果を総合すると、生物蓄積性内分泌かく乱物質による野生生物のリスクは水棲哺乳類および魚食性鳥類で高いと推察された。
著者
永井 信二
出版者
愛媛大学
雑誌
愛媛大学農学部演習林報告 (ISSN:04246845)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-8, 2004-03-26

2003年の8月から10月にかけて,四国におけるオオセンチコガネの分布調査を行った。調査地63か所のうち,24か所で本種の生息を確認し,合計1,185頭の個体を採集した。このうち,今回新たに生息を確認した場所は,愛媛大学農学部附属演習林,楢原山,音無山および笹山(以上すべて愛媛県)である。結果として,四国内に主要な3つの分布域があることが確認された。それらは相互に地理的に隔離された四国北西部,南西部および東部であった。各地域個体群の分布域は,その糞が主要な餌となる野生の鹿の分布と深く関連しているようであった。ついで,四国各地の個体群の体色の特徴を,新たに考察した紫がかった青色(A)から緑色(F)を経て瑠璃色がかった赤色(Q)までの17色に区別した円形色彩モデルを用いて解析した。その結果,四国全体では,色彩IからPの範疇に含まれ,四国北西部はK(濃い赤銅色を帯びた明るい緑色),L(濃い金緑色光沢を伴う紫を帯びた赤色),M(弱い金緑色の光沢を伴った紫色を帯びた赤色),南西部はL,M,N(弱い金緑色の光沢を伴った濃い紫色を帯びた赤色),東部はJ(赤銅色を帯びた明るい緑色),K,Lを中心とした色彩分布を示した。