著者
渡邉 敬逸
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

国会図書館に所蔵される電信電話総合地図は他の地図と比較して細密な地名(居住地名=集落名)が収録されているにもかかわらず、これまで十分に活用されてこなかったマイクロジオデータである。本研究では、集落を対象とする各種調査においてマクロスケールの分析に耐えうる均一かつ細密なスケールの集落データの不在であったことを踏まえて、電話総合地図を元データとする細密集落データの作成とその応用を通じて、集落を対象とする地理学的研究の研究基盤を確立することを目的とする。
著者
井上 幹生 末國 仙理 藤田 知功 福家 柔 奥谷 孝弘 後藤 将太 阿部 博文 市守 大介 篠原 拓馬
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、天然林と人工林から成るパッチモザイク構造とサケ科渓流魚個体群の時空間的動態との関係を水系スケールで検討した。サケ科魚類の産卵場所は水系内で極めて不均一に分布するが、孵化した当歳魚の移動分散によって均一化がおこり、そのことが水系全体の効率的利用に帰結することが示された。その過程において、天然林パッチは当歳魚の初期成長を高める場として機能することが示唆された。
著者
村上 恭通 佐々木 正治 笹田 朋孝
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

古くは蜀と呼ばれた四川省成都平原において、製鉄遺跡の発掘調査を実施した。成都市蒲江県鉄牛村遺跡では前漢代・後漢代、そして古石山遺跡では後漢代の製鉄関連施設を検出した。これらの発掘調査により、成都平原における漢代製鉄炉の特徴と生産物を明らかにした。
著者
村上 恭通 鈴木 康之 槙林 啓介
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2018年度は東寺領新見荘がおかれた岡山県新見市、弓削嶋荘がおかれた愛媛県上島町で次のような調査を実施し、研究成果を得た。新見市においては前年度、神郷高瀬地区で実施した踏査成果を前提に、5月に貫神ソウリ遺跡、鍛冶屋床遺跡において地中レーダー探査を実施した。その結果ではいずれの遺跡においても明確な構造物の輪郭が捉えられないため、10月、11月に試掘調査を実施し、貫神ソウリ遺跡では後世の土地削平、製鉄関連施設が根こそぎ滅失し、縁辺部にスラグ原のみを遺していることが判明した。これに対し、鍛冶屋床遺跡は石組の構造物を遺し、小舟状遺構の一部を確認し、地下構造が残存していることを明らかにした。放射性炭素年代測定により、前者が13世紀後葉、後者が15世紀後葉~16世紀前葉であることもわかった。これらの遺跡以外にも踏査により新畑南遺跡、永久山一ノ谷遺跡でスラグ原を確認し、スラグ噛み込み木炭を測定した結果、いずれも16世紀を中心とする遺跡であることが判明した。愛媛県上島町では8月に佐島・宮ノ浦遺跡(Ⅱ区)を発掘調査し、併行して上弓削・高濱八幡神社の調査も行った。宮ノ浦遺跡では10~11世紀の遺物をともなう灰白色粘土層と厚い焼土層を検出した。これらは粘土を用いた構造物で、なおかつ焼土を生成するような施設の残骸であり、生産活動に関連する可能性が考えられる。高濱八幡神社は2013年に小規模な試掘を行い、揚浜式塩田の浜床の可能性の高い硬化面を確認していたが、この発掘調査により、一定の面積を有し、砂堆上を整地して粘土を貼り付けた塩田浜床であることを実証した。浜床層に含まれる木炭を資料とした年代測定の結果、下層は9世紀、上層は12世紀を中心とする年代を示し、古代に造成された塩田が中世前期まで使用されていたと考えられるようになった。
著者
内田 九州男 松原 弘宣 寺内 浩 山川 廣司 藤田 勝久 加藤 國安
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

[資料収集と現状把握](1)日本国内。2700件余の四国遍路関係資料・文献のデータを収集し、原資料では、納経帳等愛媛県歴史文化博物館蔵の資料、また接待資料や『四国霊験奇応記』、伊予小松藩会所日記等の写真を収集した。(2)海外。中国、チベット、スペイン、イギリスへ出張し、巡礼の現状、旅行・宗教のルート等の調査を実施した。[口頭発表](1)愛媛大学公開講座または愛媛大学法文学部開放講座を3年間で3回(年に1回)実施し、合計22本の講演を行った。(2)平成15年度に「四国遍路と世界の巡礼-その歴史的諸相の解明と東西比較-」(国内シンポジウム)を開き、12本の報告を行った。16年度はフランスから巡礼研究者2名を招き「四国遍路と世界の巡礼-歴史的諸相の解明と東西比較-」(国際シンポジウム)を開いた。このシンポジウムに国内からは11本の報告を用意した。また個人による個別の口頭発表を約20本おこなった。[学会誌その他の発表]遍路・巡礼・旅・いやし等多方面からの研究成果を50編余の論文・小論等にまとめ発表した。[印刷物]研究成果を以下のように刊行した。『四国遍路と世界の巡礼 平成15年度愛媛大学国内シンポジウムプロシーディングズ』(平成16年2月)、『愛媛大学「四国遍路と世界の巡礼」国際シンポジウム』(平成16年10月)、『愛媛大学「四国遍路と世界の巡礼」国際シンポジウムプロシーディングズ』(平成17年3月)。また個人の関係著書は9冊に及んだ。3ヶ年の研究活動を通して、国内の四国遍路や六部研究を初め古代ギリシャや近世イギリスの巡礼等、諸巡礼とその時代環境の解明等の個別研究を大きく前進させたと同時に、その国際比較の基礎を築いたと評価できる。
著者
近藤 静香
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究目的】発達障害児および定型発達児における, 新版K式発達検査2001(新K式)の発達指数(DQ)とWISC-Ⅳの知能指数(IQ)の関連を明らかにすることを目的とした。【研究方法】愛媛大学医学部附属病院子どものこころセンターおよび小児科, 精神科を受診した5~10歳の患者のうち, DSM-5の診断基準を用いて自閉スペクトラム症(ASD)と診断され, 本研究への参加同意が得られた9名(男児:女児=8:1, 平均月齢99.7±21.3ヶ月)をASD群とした。うち5名は注意欠如・多動症の併存があった。定型発達群は通常学級に通う児童6名(男児:女児=3:3, 平均月齢86.2±16.7ヶ月)とした。両群に新K式とWISC-Ⅳを1ヶ月以内に実施し, 各指数の比較検討を行った。比較には, 全検査領域(全領域DQと全検査FSIQ), 言語性領域(言語・社会DQと言語理解, ワーキングメモリー), 非言語性領域(認知・適応DQと知覚推理, 処理速度)の3領域を用いた。統計にはSpearmanの順位相関係数を用い, 有意水準はBonferroniの補正を行った上でp<.002とした。【研究結果】① ASD群内の新K式とWISC-Ⅳの比較ASD群内の比較では, 言語・社会DQと言語理解に強い相関を認めた。ASD群9名のうち7名が言語・社会DQ>言語理解であった。他の指標においては相関を認めなかった。② 定型発達群内の新K式とWISC-Ⅳの比較定型発達群内の比較では, いずれの指標においても相関を認めなかった。【考察】ASD児においては, 言語発達面においてのみ新K式とWISC-Ⅳに相関が認められたが, 新K式DQがWISC-ⅣIQよりも高く算出されやすいことが推測された。新K式とWISC-Ⅳは異なる背景を持つ検査であり, 縦断的な評価には慎重を期す必要があることが示唆された。今後も症例数を増やし, 更に検討する予定である。
著者
中川 未来
出版者
愛媛大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

アジア主義と呼ばれた地域秩序構想はいかに形成されたのか。1880-1890年代を対象とする本研究は、実業を通じてアジアと関わり、またはメディアを通じてアジア情報を発信した人びと(高須謙三・中川虎之助・青山好恵)のアジア経験に注目した。結果、朝鮮貿易に携わった高須の事業は興亜論に基づいていたこと、日本のアジア進出に伴い中国貿易や石垣島・台湾での製糖業を展開した中川は保護主義を唱えていたこと、青山が朝鮮仁川で発行した日本語紙『朝鮮新報』は日本国内でも流通し朝鮮観形成に強く影響していたことが明らかとなった。このようなアジア経験が、アジアを想像し地域主義を構想する際の基礎となったのである。
著者
小助川 元太
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の主たる目的は、中世後期における政治や文化を支えた知の問題を、百科全書的なテキスト群の生成と享受という視点から解明することである。『アイ嚢鈔』『後素集』『源平盛衰記』を中心に、『塵荊鈔』『筆結物語』『帝鑑図説』『八幡愚童訓』なども研究対象に加え研究を進めた。その結果、多くが持つ問答形式は、応仁の乱前後から安土桃山時代にかけての学問のスタイルを反映したものである可能性が高いこと、禅林での最先端の学問が、それらに平易な形で入り込んでくる傾向にあること、そして、百科事典的傾向を持つ作品の多くが、武家の子弟を対象として書かれた可能性があることなどがわかってきた。
著者
海老原 清 岸田 太郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

レジスタントスターチ・タイプ4(RS4)とは加工デンプンのことであり、各種の加工食品に利用されている。本研究では、RS4の消化性、発酵性、血糖およびインスリン応答、糖尿病発症抑制効果、消化管免疫に対する影響ついて検討した。その結果、置換基の付加により、1) RS4の消化性は低下し、発酵性血糖値およびインスリン分泌応答は改善され、その効果は置換基の種類および置換度によって影響された、2) RS4は2型糖尿病モデルマウスにおいて発症を抑制した、3) RS4はIgAの分泌を促進したことなどを明らかになった。本研究からRS4は糖代謝、消化管免疫機能に影響を与えるとともに、低エネルギー食品の開発に有用な素材であることも明確になった。
著者
安川 正貴
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

がんに対する抗体療法の抗腫瘍効果は抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性に依存している。ADCCは細胞表面に発現しているCD16を介してNK細胞が担っており、T細胞にはCD16発現が陰性であるのでADCC活性がない。本研究では、CD16-CD3zキメラ遺伝子を作製し、活性化CD8陽性T細胞に導入した。このCD16-CD3z-T細胞は抗体存在下で高いADCC活性を示すことがin vitroで明らかとなった。さらに、CD16-CD3z-T細胞と抗体併用療法は、ヒト腫瘍を移植した免疫不全マウスを用いたin vivo実験系でも高い抗腫瘍効果が示された。
著者
青木 亮人
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

アメリカ日系移民一世が詠んだ俳句・短歌を包括的に研究する。アメリカに渡り、ほぼ日本語しか出来なかった一世移民が母国語で伝統韻文を詠んだ際、彼らの言語表象からうかがえる「日本」とはいかなるものだったのか、また当時のアメリカにおける日系移民を取り巻く生活状況等がいかに表現され、何が表現されなかったかを研究する。特に太平洋戦争勃発後、強制収容所に隔離された日系移民一世に注目して研究する。
著者
一ノ瀬 篤
出版者
愛媛大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

1987年度(継続研究第二年目)研究計画に従って, 1932年から1945年に至るイギリスの貨幣・金融史年表を, 次のような手順で作成した.(1)主要な出来事について, その生起年月日と内容を複数文献について確認する.(2)これに基いて年表を作成し, かなり詳細な解説を付ける.(3)冒頭に概観のための小論文を付ける.今回取り上げた主要内容は下記の通り.5%戦争公債借換え発表(1932年6月), 為替平衡勘定設置(1932年7月), 英米戦債最終支払い(1933年12月), アメリカ金本位制法成立(1934年1月), 米英仏三国通貨協定宣言(1936年9月), 1939年「通貨及び銀行券法」(1939年2月), 外国為替管理令制定(1939年9月), 大蔵省預金受取証書導入(1940年7月), 公債利率の最高限度引下げ(1941年7月), ケインズ案公表(1943年7月), 大蔵省による証券上場規制(1944年6月), 工業金融会社, 商工金融会社の設立発表(1945年1月), 金買上げ価格引上げ(1945年6月), 米英金融協定成立(1945年12月), ブレトン・ウッズ協定(1945年12月)
著者
吉田 正広
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、ロンドンにおける第一次大戦の戦死者追悼記念碑や式典のあり方を、企業、地域社会、国民国家さらに帝国に至る重層的なアイデンティティ形成の問題として考察する。その際、記念碑の様式や式典のあり方にコミュニティ毎の違いがあることに着目し、地域社会の特質や政治との関連で記念碑や式典を考察する。ロンドン・シティの狭い区域内に数多くの記念碑が点在する。それは決して偶然ではなく、シティの金融機関に勤める従業員の多くが志願して戦死したことと関係する。初年度は、ロンドン・シティの調査と分析を実施した。2017年11月12日(日)リメンバランスサンデーの正午ごろに、王立取引所前のロンドン部隊記念碑前で始まった追悼式典を実際に観察し、その様子を動画および画像に収めた。これはコミュニティの追悼のあり方を知る上で重要な機会となった。また、金融機関や教会、鉄道の駅の記念碑など、11月12日の追悼式典後の記念碑の様子、とくに奉納されたポピーの花輪の文面を画像に収め、式典参加者やそのメッセージを資料として入手した。現地調査後半では、かつてのロンドンの波止場地区であるポプラー周辺や、さらにロンドン東部のイーストハム、ウェストハムに残る企業の記念碑を調査した。研究成果としては、イングランド銀行記念碑の設立に関する一次資料を分析し、職員たちによる記念碑設立活動の詳細を明らかにした。それはイングランド銀行の職員たちの自発的な活動として追悼委員会を通じて行われた。同委員会は、職員の階層や所属する部門の特質を反映した。また、職員総会での委員長ブライアントの演説を分析すると、世界の金融センターとしての自負心やその中枢としての自行への誇りが、強い愛国心を表明させたこと、また、自行の敷地拡大時における教会の解体や物質文明を担うことへの罪意識が、記念碑としての十字架建立の提案に至ったことを確認した。
著者
村上 恭通
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

当該研究の最終年度に当たり、これまでの復元実験の成果を検討し、木原明(国選定保存技術保持者<玉鋼製造>)との意見交換を実施した。その検討成果を受け、2014年10月、岡山県新見市備中国たたら伝承会実験場において製鉄炉(愛媛大学20号炉)を復元し、銑鉄生産を目的とした操業実験を行った。製鉄生産炉の要が、送風孔の角度・高さ、炉床の堅さであることを反映した最終の実験では、当初の目的である銑鉄を炉外に連続して生産することができた。送風孔の高さをさらに調節すればさらに生産効率があることが判明した。しかし製鉄遺跡の情報から復元した炉で銑押し技術を復元するという当初の目的は達成できた。
著者
山下 政克 桑原 誠 鈴木 淳平
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

CD4 T細胞は抗原を認識して活性化すると、細胞内のエネルギー代謝系路を変化させ増殖することが知られている。しかし、CD4 T細胞の機能分化におけるエネルギー代謝経路変化の役割は不明であった。今回、私たちはグルタミン代謝のヘルパーT細胞(Th)サブセット分化における役割を解析し、グルタミン代謝によって作り出されるα-ケトグルタル酸が、サイトカイン遺伝子座のエピゲノム状態を制御することでTh分化を調節していることを見いだした。
著者
皆川 鉄雄 西尾 大輔
出版者
愛媛大学
雑誌
愛媛大学理学部紀要 (ISSN:09195203)
巻号頁・発行日
no.9, pp.17-68, 2004-03-22

Mineral species discovered from Shikoku as of December 2003, amount to 437, are listed in this paper together with ideal chemical composition, crystal system and mode of occurrence of these minerals, and photographs of 48 mineral species. They are consisted of 10 Native elements, 45 Sulfides, 5 Halides, 60 Oxides, 29 Carbonates, 3 Borates, 30 Sulphates, 5 Molybdates and Tangstates, 26 Phosphates and Arsenates, 225 Silicates and 5 organic matter. In Shikoku, 7 new minerals as follows: Takanelite, Sugilite, Tobelite, Katayamalite, Stronalsite, Potassic-sadanagaite and Potassic magnesiosadanagaite have been discovered, and Oyamalite, Hagatalite, Tosalite and Dosulite have been reported as varieties before now. This mineral list is a one of geological data collection which indicates the features of rocks in the area of Shikoku.