著者
堀内 史枝
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

定型発達児および発達障害児の不眠症の有病率に大きさ差はなかったが,発達障害児の方が,睡眠についての不安が強い可能性が示唆された.入眠までの環境調整を確実にすることが重要であり,その上で認知行動療法的アプローチを加えることが有用であると考えられた.行動療法的アプローチとしては,消去法,入眠儀式,時間制限法などがあり,これらを組み合わせて行うことが有用であるが,症例毎にその特性が異なることから画一的な治療では十分な効果を得ることは困難であり,個々の症例にあわせた治療をの選択が必要である.今後は,大規模調査により本人・家族から得た情報より判定したタイプ別類型と,それに基づく治療法を確立していく必要がある.
著者
西本 壮吾
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、諸外国で使用されている農薬であるEndosulfan について、免疫系、特にアレルギー反応に関する影響評価を行った。Endosulfanはアレルギー誘発マウスにおいて、血清中の抗原特異的IgE量を増加させ、アレルギー反応を惹起させる可能性を示した。また、IL-4産生量においても増加させた。Endosulfanは、アレルギー反応を誘発するだけでなく、炎症物質の放出を促進したことから、アレルギー反応に影響を及ぼすことが明らかとなった。
著者
飛鷹 範明
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

【目的】近年、大腸がん化学療法においてカペシタビン(ゼローダ[○!R])を含むXELOX療法が汎用されている。一方、副作用として手足症候群(以下、HFS)を誘発し、患者のQOLを低下させる。さらに、HFSが認められた場合は減量・休薬される場合があり、HFSをコントロールしてQOLを維持しながら治療を継続していく上でHFSの治療は極めて重要である。しかし、カペシタビンによるHFS発症機序は不明であり、病態解明や治療薬探索・開発を行う上で重要なモデル動物に関する報告もない。そこで、カペシタビンによるHFS発現状況やHFSに対する対症療法の現状を明らかにし(臨床薬学的研究)、さらに、カペシタビン誘発HFSの実験モデル動物の作成を試みた(薬理学的研究)。【臨床薬学的研究】2012年4月~2013年3月末までに愛媛大学医学部附属病院においてゼローダ[○!R]錠が新規処方された患者を対象に処方調査を行った。【薬理学的研究】実験にはWistar系雄性ラット(6-8週齢)を用い、ゼローダ[○!R]錠(300, 500, 1000mg/kg)を1日1回28日間経口投与した。その後、一般行動(足を振り回す行動、舐める行動、自発運動量計測)と症状(紅斑、発赤、腫脹等)の観察を行った。【結果】処方調査より、調査期間中にゼローダ[○!R]錠は30名に新規で処方されていた。そして、30名中20名に何らかの皮膚障害の発現がみられた。薬剤として、血行促進・皮膚保湿剤、NSAIDs内服、ビタミン剤内服等が処方されていた。薬理学的検討より、ゼローダ[○!R]錠を1日1回28日間反復経口投与したが、各投与量において一般行動および症状の変化は認められなかった。【考察】ラットに1日1回28日間ゼローダ[○!R]錠を反復経口投与したが、HFSの実験モデル動物は作成できなかった。この要因として、ヒトおよびラットにおける各臓器の酵素活性の分布等が異なるためと考えられた。
著者
坂上 倫久
出版者
愛媛大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

最近我々は、E3ユビキチンリガーゼの一つであるCUL3が血管新生に極めて重要であることを発見した。その中でCUL3は、VEGFR2 mRNAの安定制御を通じて血管内皮細胞機能に関与することを新たに見出した。本研究は、CUL3によるVEGFR2 mRNA制御機構に焦点を当て、血管内皮細胞においてCUL3が標的とする基質およびそのアダプタータンパク質を同定し、血管新生におけるCUL3複合体の果たす生理的役割を明らかにすることを目指すものである。はじめに、VEGFR2-3' untranslated region(UTR)をベイトとしたプルダウン法によって、VEGFR2 mRNA安定性を制御する因子の同定を行う計画を進めたが、ベイト調整が非常に困難で時間を要したため、アダプタータンパク質を同定する実験を優先的に進めるここととした。CUL3のアダプタータンパク質はBTBドメイン(BTBD)を持つことが知られ、ヒトでは180種程度存在することが知られている。この中で血管内皮細胞特異的に高発現するいくつかのBTBDタンパク質に対するsiRNAを合成し、VEGFR2 mRNAを制御するBTBDタンパク質のスクリーニングを行った。その結果、二つの因子(VEGFR2 regulating protein1 and 2)を同定することに成功した。これらのタンパク質を血管内皮細胞においてノックダウンすると、VEGFR2の発現が著しく低下することが分かった。これはCUL3ノックダウン時と同程度であった。一方で、本タンパク質を血管内皮細胞に過剰発現させると、VEGFR2の発現量が大幅に増強されることも分かった。また、293T細胞を用いたプルダウン実験より、同定した二つのBTBDタンパク質はCUL3と結合することを確認した。
著者
秋谷 裕幸
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

"門+虫"が明朝体で入力できないので"びん"と平仮名で入力する。自らが調査した寧徳方言(周寧咸村、寧徳九都、寧徳虎貝)および福安、霞浦、柘栄、福鼎、寿寧、蒼南、泰順方言のデータに基づき、びん語びん東方言の下位分類を再検討した。その結果、びん東語は南部方言群と北部方言群に二分され、それぞれがさらに福州グループと福清グループ、福寧グループと浙江グループに下位分類されることが明らかとなった。帰属が問題となっていた蛮話は、北部グループとして扱うのが妥当であることも明らかとなった。
著者
岡本 威明 菅原 卓也 山内 明 加藤 匡宏
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

トリプトファンサプリメント事故品中に含まれる不純物3-phenylamino-L-alanine(PAA)を用いて、EoL-3細胞株およびヒト末梢血由来好酸球における各種ケモカインレセプター発現レベルの検討を行ったところ、PAA濃度依存的にヒト末梢血由来好酸球におけるCXCR2発現は増大し、CCR3発現は抑制された。EoL-3細胞株においても同様の傾向が確認された。これらの結果から、PAA曝露により好酸球に好中球の性質が一部付与され、インターロイキン(IL)-8への走化性を強めたことにより、更なる炎症が惹起され好酸球増多筋痛症(EMS)発症に至ったのではないかと推察された。
著者
三吉 秀充
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では古墳時代中期の初期須恵器を対象として、松山平野に所在する地方窯である市場南組窯跡の発掘調査や初期須恵器出土遺跡・遺構の分析を通じて、生産と流通について研究を行った。その結果、市場南組窯跡は小規模ながらも比較的長期間操業する窯跡であることを明らかにした。また松山平野や岡山平野・総社平野では、陶邑とも異なる須恵器生産と流通が行われていたことを明らかにすることができた。
著者
権 奇法
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究においては、公共施設の設置及び管理に関する法制度を、PFI制度(韓国では、民間投資制度)を中心とて比較研究を行った。日本に比べ、韓国では、民間投資事業が活発に行われており、一定程度の成果を上げていると評価されていると同時に、多くの問題点が指摘されている。本研究では、まず、両国のPFI制度を比較検討した後、韓国の民間投資制度における問題点や課題を抽出することによって、日本のPFI事業の実施に当たっての示唆を得ることができたと思われる。
著者
山本 久雄
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

プロイセンでは,1850年憲法で公的国民学校の授業料徴収の廃止が明確に定められたが,その実施までにおよそ40年を要した。これには,その代替財源の確保の困難という事情もあったが,実はこの授業料の存廃問題が大きな問題を内包していたからでもあった。本研究では,授業料廃止を定めた法律の審議過程をたどることにより,その問題の広がりを究明し,教育史上のその意義についてまとめた。
著者
加 三千宣 山本 正伸 中村 有吾 竹村 恵二 守屋 和佳 谷 幸則
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

地球温暖化に伴って、数十年スケールで大変動する太平洋のイワシ資源は、今後どのような変動を示すのか。中世温暖期におけるイワシ存在量の数十年スケール変動の振幅変化とそのメカニズムの解明を試みた。マイワシには過去1000年間において300年スケールの変動が見つかり、中世温暖期とそれにつづく小氷期という汎地球規模の気候変動に対して応答しないことがわかった。一方で、マイワシ存在量の300年スケール変動の背後には太平洋とその東西陸域を含む空間規模を持つ気候変動と関連している可能性が示唆された。日本マイワシ資源変動の環境要因として、北西太平洋の餌環境が重要である可能性が示唆された。
著者
野本 ひさ 河野 保子 永松 有紀 平澤 明子 吉村 裕之 中島 紀子
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

男性で在宅介護を行っている人の実態を調査した。男性介護者は女性に比べて強い意志決定の元に介護を担っていることが判明した。介護を経験する前の夫婦を対象にした夫婦間介護意識調査を実施した。配偶者の介護をしようと考える気持ちは夫婦の関係性、夫の家事参加、夫婦間トラブルの頻度に依拠していることが判明した。夫婦間介護意識は、実際に介護を行っている者も介護を行う以前も夫と妻で違いがあり、特に夫の介護意志決定には男性特有の意地・遠慮やそれまでの夫婦の関係を償おうという思いが反映していた。
著者
菅谷 成子
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、スペイン支配の中枢がおかれたマニラを外世界(文明)、と内世界が出会う場所として設定し、そこに生きた人々と植民地都市マニラの発展との関わりを解明することであった。具体的には、中国人移民およびその社会が、(1)故郷福建といかなる関係を構築していたのか。(2)マニラの都市的発展に具体的にどのように関わったのか。(3)都市住民として、スペイン人あるいは原住民を中心とする植民地社会といかなる社会・経済関係を構築していたのかという観点から、スペイン植民地都市マニラの歴史を解明することを主な課題とした。まず、先行研究の蓄積を批判的に継承しつつ、スペイン語手稿文書による新知見をもとに、スペイン植民地都市マニラの発展過程をイントラムーロスとアラバーレスとの関係を軸に跡づけた。その過程で、マニラの発展を特徴づけるキーワードは、マニラ・ガレオン貿易、中国人の流入、地震、および周辺海上勢力の動向であるとの認識をえた。次に、マニラの都市住民としての中国人の生活実態を、カトリシズムを基底にすえた植民地社会の文脈に位置づけ明らかにするために、「結婚調査文書」「マニラ司教区裁判所文書」「マニラ公正証書原簿」「マニラ税関文書」等の分析を行った。その結果、植民地社会の人間関係をめぐる個々の具体的な諸相の抽出をえて、その成果の一部を公刊した。さらに18世紀は東南アジア史において「華僑・華人の世紀」と言われるが、マニラの中国人移民社会を、同時代の東南アジア島嶼部各地における中国人移民社会成立の文脈に位置づけ、その特徴を明らかにした。また、過去3年間の研究成果の一部を2001年9月に中国厦門大学で開催された「21世紀初的東南亜経済与政治」国際学術研討会において報告する機会をえた。しかし残された課題も多い。とくに、量的分析によるデータの蓄積や中国人を受入れた現地の人々の視点からの分析はこれからの課題である。
著者
二宮 崇
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

自然言語処理における識別モデルの素性関数は人手による試行錯誤で設計されているが、数十万から数百万に及ぶ素性関数を人手で発見・制御することは非常に困難な作業となっている。本研究は、素性関数を自動的に選択・構築しつつ目的関数を最適化するオンライン・ グラフティングの効率化およびアンサンブル学習による高精度化の研究を行う。本研究の提案手法はL1正則化ロジスティック回帰の近似手法となっているが、実験により、従来法の精度を低下させることなく、学習の高速化を実現することを経験的に示した。また、確率的アルゴリズムを用いたアンサンブル学習によりオンライン・グラフティングの精度が向上することも確認した。
著者
小川 敦司
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

真核生物の細胞抽出液中における未成熟tRNAの末端プロセシングおよび分解速度を調査した後、その結果に基づいて、標的分子に応答して成熟化する未成熟tRNAプローブを設計し、新規分子応答性遺伝子発現システム『シュードリボスイッチ』の開発につなげた。本システムは、任意分子に対して合理的に構築可能であるだけでなく、その機構上の利点から、既存の人工システムよりも高いスイッチング効率を発揮できる。また、分子応答性を核酸に拡張し、高感度・高選択性の核酸検出バイオセンサーを開発した。さらに、非天然アミノ酸導入用tRNAプローブ骨格の合理的最適化や、発現ON時の翻訳を促進させるmRNA非翻訳領域の同定を行った。
著者
長岡 伸一 長嶋 雲兵 向井 和男
出版者
愛媛大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

分子の光化学反応は,その分子の励起状態の性格に大きく依存する。励起状態の波動関数の性質とその状態で起こる光化学反にはどのような関連があるのかを研究することは,微視的な電子の動きが結果として現われる反応にどのように影響するかを理解する上で興味深い。そこで本研究では,特定の電子状態に選択的に励起するとどのような光化学反応が起こるかを主に発光分光法を用いて研究することを目的とする。本研究を遂行するために,定常光照射の発光分光測光システム及び時間分解発光分光測定システムを製作した。そのための発光側分光器,光検出器及び制御装置を購入した。励起光源と励起側分光器は,既存のものを用いた。新たに製作した定常 光照射の発光分光測光システムは,従来のものに比べて飛躍的に感度が高く,研究能率が著しく向上した。サリチルアルデヒド関連分子の第一第二励起一重項状態からの発光を観測し,プロトン移動反応の励起状態依存性について議論することができた。また,理論的研究の結果,有機分子の光化学反応への波動関数の節の効果を見い出した。さらに,サリチルアルデヒド関連分子の低位三重項状態とイオン状態のプロトン移動,2-(2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールと2-(2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾキサゾールと2,2'-ビピリジル-3,3'-ジオールの最低励起三重項状態のプロトン移動,カロテノイドの第一第二励起一重項状態からの緩和機構への溶媒効果,ピリジン類のりん光が極めて弱い理由の解明などに関する研究成果を得た。本研究に関して,日本化学会より「化学のフロンティアVII」に選出され,また「若い世代の特別講演者(第6回)」に選ばれた。さらに,アメリカ化学会発行の「The Journal of Physical Chemistry」の特集号に招待論文を執筆した。(95巻10229〜10235頁、1991年)。
著者
長岡 伸一 長嶋 雲兵 今村 隆史 小谷野 猪之助
出版者
愛媛大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

真空紫外光を用いて有機金属化合物の金属の内穀電子を励起すると,金属イオンが選択的に極めて効率よく生成する。本研究では,このような選択的かつ高効率な金属イオン生成の最適条件を求め,真空紫外光を用いた半導体製造プロセスにおける効率の高い化学気相蒸着(CVD)の方法を開発することを目的とする。2年間の期間で次のような研究を行なった。1。本研究を行なうためには,高強度高収束性の単色真空紫外光源が必要であり,それには分光器に光を導く前置光学系が重要である。そのために新たに非ガウス光学に基づく収差補正型の高反射ミラ-システムを設計製作し,分子科学研究所極端紫外光実験施設のBL3Bビ-ムラインのTEPSICOーII装置に装着した。新たに製作した高反射ミラ-システムは従来のものに比べて飛躍的に光強度が増大し,研究効率が著しく向上した。2,種々の有機金属化合物において,最も外のd内殻イオン化後には金属イオンとモノメチル金属イオンが生成し,解離パタ-ンは混成軌道を用いて説明できることが示された。3,中心金属の深い内殻を励起するとカスケ-ドオ-ジェが起こり多価イオンが生成し,リガンドの内殻を励起するとKVレオ-ジェが起こり2価イオンが生成するというような励起サイトに依在した解離過程が観測された。4,三メチルアルミニウムのAl:2P内殻付近においてアルミニウムイオンを含むイオン対の生成が増大することが見いだされた。
著者
田辺 信介 脇本 忠明
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

駿河湾・土佐湾および北太平洋東北沖から採取した深海生物を供試して人為起源物質の化学分析を実施し、以下のような研究成果を得た。1)供試した全ての深海生物から有機塩素化合物と有機スズ化合物が検出され、この種の人為起源物質による汚染が、外洋の深海生態系にまで拡がっていることが明らかとなった。また、日本近海産の深海生物にはPCBsが最も高い濃度で残留しており、次いでDDTs>CHLs>HCHs>HCB>PCDFs>PCDDsの順であった。2)沿岸と外洋の深海生物の間で人為起源物質の残留濃度を比較したところ、DDTsやヘキサクロロシクロヘキサン(HCHs)、ヘキサクロロベンゼン(HCB)に関しては、顕著な濃度差は認められず、これら物質が日本沿岸から外洋まで均質に分布していることがわかった。一方、PCBsやクロルダン化合物(CHLs)、ブチルスズ化合物(BTs)の残留濃度は、駿河湾の深海生物で最も高く、外洋性ハダカイワシでは相対的に低値であった。3)外洋のハダカイワシを対象とした調査から、有機塩素化合物の中でも分子量が大きく粒子吸着性の高いPCBsやDDTs、CHLsは深層に、揮発性が高く粒子吸着性の低いHCHsやHCBは表層付近に偏って分布することが示された。また、沿岸および外洋の深海生物から検出されたBTsはいずれも表層に偏った濃度分布を示し、表層への流入が続いていることがその要因と考えられた。よって今後も、BTsによる深海汚染は進行することが示唆された。4)駿河湾における調査から、PCDDsやPCDFsは表層性の魚類よりも、深海に生息する堆積物食性の甲殻類に高蓄積していることが明らかとなった。また、日本近海の深海底は、ダイオキシン類など移動拡散性に乏しく粒子吸着性の高い物質の'たまり場'となることが推察された。5)沿岸性の一部深海生物に蓄積するBTsやPCBs,PCDDs,PCDFsの濃度は、魚介類の薬物代謝酵系や内分泌系をかく乱する惇性毒性の閾値に近いものであった。よって、深海生物の内分泌系に及ぼす毒性影響の解明が今後の課題となった。
著者
福山 隆雄
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本申請課題である"生活を支えるプラズマ技術の中等高等教育における教材化と授業実践"において,プラズマの中等,高等教育における教材化,そして,それを授業実践において活用したときの教育的効果について研究した.その結果として,(1)プラズマを中等,高等教育で活用するための教材の開発を終了し,(2)完成した教育用プラズマ発生装置を,大学における授業,公開講座,高大連携事業,科学の祭典,そして,現職教員研修において実際に活用し,アンケート調査などにより科学技術に対する興味・関心を高め,先端科学技術をより身近に感じさせる効果があることを明らかとした.
著者
田辺 信介 岩田 久人 高菅 卓三 高橋 真 仲山 慶 滝上 英孝 磯部 友彦 鈴木 剛
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

POPs候補物質(有機臭素系難燃剤など)に注目し、途上地域を中心にその分析法の開発、広域汚染の実態解明、廃棄物投棄場等汚染源の解析、生物蓄積の特徴、バイオアッセイ等による影響評価、過去の汚染の復元と将来予測のサブテーマに取り組み、環境改善やリスク軽減のための科学的根拠を国際社会に提示するとともに、当該研究分野においてアジアの広域にまたがる包括的な情報を蓄積することに成功した。