著者
小林 範之 西山 竜朗
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,ため池堤体の劣化度と動特性関係の明確化と性能劣化予測モデルの構築を目的とした.愛媛県の3つのため池で比抵抗電気探査,表面波探査および常時微動計測を実施した.また,地下水位-固有振動数関係の明確化のために,実験土槽内で模擬地盤を作成し,常時微動計測を実施した.固有振動数と地下水位の上昇による地盤の強度や有効応力の低下には相関があり,当初からの強度低下や有効応力の減少を劣化度とすれば,劣化度-動特性関係が求められ,常時微動計測によりため池堤体の劣化を推定できる可能性を示唆した.また,モンテカルロフィルタを用いてため池堤体の減衰定数と剛性を推定し,堤体の性能劣化の予測を試みた.
著者
谷口 義明
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

UltraVISTAプロジェクトはVISTA望遠鏡(VISTA=Visible and Infrared Survey Telescope for Astronomy)はチリ共和国にあるVery Large Telescopeのサイトに設置された口径4mのサーベイ専用の望遠鏡である。我々はハッブル宇宙望遠鏡のトレジャリー・プログラムで観測された宇宙進化サーベイの天域の近赤外線撮像探査を行い、赤方偏移 z=7 の銀河を多数発見した。広視野サーベイのおかげで、従来想定されていなかった明るい光度の銀河が発見され、銀河の初期進化及び宇宙再電離源の研究に大きな貢献をした。
著者
宇高 順子 阿萬 裕久
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小・中・高等学校家庭科では、「何をどれだけ食べたらよいか」の量の把握が困難とされてきた。そこで、調理後の食品容積から調理前の食品重量を把握できる「料理容積法」を開発した。この方法を応用して、小学校で、量を扱わないでバランスの良い1食分の献立作成学習方法として、野菜の量で主菜と副菜を2グループ化して、少ないものと多いものを組み合わせることによりバランスがとれる、料理の実物大写真教材を開発した。また、中学校の1日分のバランス献立作成web教材を開発した。
著者
森 万純
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

術後4日以内の急性期患者に対する身体抑制の実施に至る看護師の判断要因を明らかにした。その結果、チューブ類に触れるあるいは触れないに関わらず、ベッド上でそわそわと寝たり起きたりを繰り返すなどの動作がみられる場合や、過去に術後せん妄を発症したり、何らかのルート類を自己抜去したことがあることや転倒・転落の既往が身体抑制の実施の判断の鍵となっていた。また、いつもより多重業務を行わなければいけないという医療者側の人的環境も抑制実施の判断要因の一つであることが明らかとなった。看護師が少しでもジレンマを感じることなくケアできるように、身体抑制実施の判断基準の構築および環境面の整備の必要性が示唆された。
著者
中村 則弘 陳 捷 首藤 明和 石井 健一 南 誠 池本 淳一 中村 圭 穐山 新
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

現代における「中国的なるもの」がいかに構成され、その特性はいかなるものかを明らかにした。中国の少数民族、中国企業、中国武術団体、中国残留孤児、台湾・中国・日本の交流関係担当者への聞き取り調査、および中国国内でのアンケート調査から、両義性と流動性、曖昧さがチャイニーズネスの構成を考える上で重要な意味をもつことが解明された。またそれは、領域とネットワークの振幅というべき動態メカニズムに結びついていることが指摘された。
著者
光延 聖 白石 史人
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

海底下微生物は活性が著しく低いことなどから、その解析が地球上で最も困難な生態系と言われており、基礎的な代謝反応ですら未解明である。この現状を打開するために、本研究では、2つの最先端分析法(走査型透過X線顕微鏡と蛍光in situハイブリダイゼーション法)を組み合わせることで、海底下微生物の分析に特化したシングルセル(1細胞)レベルでの金属化学種分析法を確立した。
著者
中道 仁美
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

過疎地の地域再生については、活動を起こす・継続する基盤として、住民の意思疎通を図る集会が重視されねばならない。高齢化が進行した限界集落では、集会も開催できず、活性化への取り組みも頓挫する。高齢化した農業の補助労働としての外国人研修生は、今や欠かせないものとなりつつある。外国人研修生の母国での農業教育も重要であり、特に帰国後の研修生支援とともに、彼の地の農業者支援体制の構築が求められる。過疎地では女性起業に期待されているが、女性の起業への住民の理解は十分ではなく、それゆえ、女性起業が十分育成されないなどの課題が残る。
著者
松尾 秀邦 高橋 治郎 鹿島 愛彦
出版者
愛媛大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究によって新知見とすべき事項は下記の五項目である.1.岩湧寺植物群(Iwakiji Flora):伊藤大一(1986)により発見された. この化石植物群は白亜紀後期の植物群としては珍しい落葉樹林相を示す.2.Archaeojostera属について:郡場・三木(1931, 1958)によって新属とされた被子植物化石である. 一部の人々によって生痕化石説が唱えられているが, この化石の大半は植物化石である. しかし, 一部には生痕化石の疑いの残る部分もあって今後の研究が望まれる化石の一つである.3.鮮新世火成活動による変質:この現象は和泉砂岩層群の分布域の西端部で観察される. 鮮新世火成活動(主に含黒雲母安土岩, 石英安山岩など)によって, この地層の基部に近かい礫岩及び砂岩層が侵され, その硬度を増し, 割栗石その他の石材として採石されている.4.和泉砂岩層群の西端域について:この層群の地層の分布の西端部は愛媛県長浜町青島とされているが, その分布は対岸の大分県臼杵市近効大野川流域まで拡がる可能性がある. 化石こそ少ないが, 岩相の酷似が極め手となる. 今後の研究が望まれる.5.和泉砂岩層群の堆積構造について:これらの地層が堆積した後, 中央構造線を形成した地殻運動によって, 東西の曳きずりが働き, 南北性断層が発達している. これらの断層に区切られた6区の地域では, それぞれ東に落ちる向斜構造が認められる. この構造については, 和泉山脈西端部において松尾(1949)が始めて提唱し, それ以来幾多の研究者によって解明が試みられているが, 未だに説明できない構造の一つである.
著者
濱田 雄行
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

オンコリティックウイルスAdE3-midkineは陰性荷電であるため(1元)、これに対し陽性荷電のポリエチレンイミン(PEI)(2元)さらには腫瘍特異的なCD44を受容体とする陰性荷電のコンドロイチン硫酸を加工(3元)し、これらをさらに多重加工することにより抗体存在下においてその抗腫瘍効果を検討した。9元目以降で抗腫瘍効果は増大し、13元目で最大となった。B6C3F1マウスと同種由来の卵巣癌細胞株OVHMを用いたsyngeneic mouse modelにおける抗腫瘍効果を検討したところ、腹腔内腫瘍モデルにおいて60%、皮下腫瘍モデルにおいて90%の完全腫瘍退縮が得られた。
著者
柏谷 増男 二神 透 朝倉 康夫
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では大都市通勤鉄道の混雑緩和に着目して都心居住の実態分析及び都心居住推進のためのモデル開発を行った。まず,我が国大都市圏の通勤鉄道混雑は著しく劣悪であるが,輸送力の増強では対応し得なく,業務核都市等への分散策はかえって混雑を激化させる可能性があり,むしろ都心居住の推進をめざすべきことを指摘している.次に,大阪府を対象として,従業地分布や住宅立地等に見られる地域構造の変化と通勤交通の実態について1970年から1990年または1995年までの国勢調査(5年ごとに実施)データを用いて分析した.その結果,1970年代の大阪市製造業の衰退による工場跡地に高層共同住宅が立地する形で,1980年以降都心住居が顕著になったこと,1980年から1985年の都心3区通勤通学発生交通量は15%増加し,この値は府下市町村の値をも上回っていること,都心3区発生交通量の約60%は都心3区に到着しておりその場合の鉄道利用率は約25%であることが分かった.このことから都心3区居住の通勤通学者の増加は通勤鉄道需要の抑制に大きく寄与したと言える.また,通勤鉄道混雑の評価を利用者の行動にもとづいて分析することが困難なことを指摘し,むしろ通勤交通混雑を社会的制約として取り入れ,それにより低下した土地利用効率をつけ値総額の低下量で測定し,この値を通勤交通混雑の社会的価値とすることを提案している.研究に用いた基本モデルは交通混雑制約を持つ最適土地利用配分モデルであるが,このモデルのラグランジェ関数を分析し立地誘導指標を見いだしたうえで,この方法を大阪府北東部地域へ適用した
著者
金子 啓祐
出版者
愛媛大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

Ca^<2+>/calmodulin依存性プロテインキナーゼ(CaMK)はすべての真核生物に存在し、動物では神経機能の調節、植物においては微生物との共生の制御にかかる。一方で、真菌類におけるCaMKの機能はほとんどわかっていない。これまで我々は担子菌Coprinopsis cinereaの新規CaMK遺伝子CoPK12を同定した^<(1)>。CoPK12は担子菌キノコ特有の活性化機構を有しており、その活性がC. cinereaの菌糸成長と関わることが示唆された。当該年度では、CoPK12が担子菌キノコ特有の細胞内局在を示すCaMKであることを明らかにした。菌糸細胞を細胞分画したところ、CoPK12は菌糸細胞の細胞膜に局在していた。一方で、内在性プロテアーゼによって生じる46kDaの分解断片は細胞質に局在していた。in silico解析によりCoPK12はN-ミリストイル化を介した脂質修飾を受けることが推測された。そこで、放射性同位体を用いたin vitroN-ミリストイル化アッセイによりCoPK12のN-ミリストイル化の可能性を調べたところ、CoPK12は有意にN-ミリストイル化を受けることが明らかになった。酵母細胞に発現させたCoPK12は細胞膜に局在したが、N-ミリストイル化部位を変異させたところ、細胞内局在が細胞質に変化した。このことから、CoPK12はN-ミリストイル化を介して細胞膜に局在するCaMKであることが示唆された。CaMKの多くは細胞質に局在することが知られており、N-ミリストイル化を受けるCaMKは前例がない。さまざまな生物種のCaMKのアミノ酸配列を用いてアライメント解析を行ったところ、担子菌キノコのCaMKが特異的にN-ミリストイル化を受けることが示唆された。一方で、担子菌キノコのCaMK間でN-ミリストイル化周辺のアミノ酸配列がほとんど相同ではなかった。このことから、担子菌キノコのCaMKの膜局在は、それぞれの遺伝子が独自に進化したことによるものだと考えられた。これらのことから、CoPK12の膜局在化は担子菌キノコ特有の現象であることが強く示唆された。(1)Kaneko K. et al. Siochim. Biophys. Acta 1790 (2009) 71-79.
著者
中西 淳
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

作文教育を改善していくためには、文章生成過程の心的様相を発達的に捉える基礎研究が必要である。本研究は、この問題意識に基づき、題のつけ方に関する心的様相を発達的に捉え、そこから作文指導のあり方を探っていくことを目的としている。そのために、愛媛大学教育学部附属小学校、3年、4年、5年、6年、同学部附属中学校1年、2年の各1クラスを対象に、ある作文(小学校5年生の生活文=題「小さな私見つけた」、調査対象者には学年・氏名・題名を伏せて提示)を読みそれに題をつけるという活動を行わせる教授調査を実施した。資料を分析した結果、1.題名は、話題に関するもの(例:小さなくつ下など)から、主題に関するもの(例:小さな私、私の成長など)に変わっていく傾向があること、2.題をつけるときには、文章を統一するものを探ろうとする心的作用が働くこと(ただし小学校3年生はそれが十分でないこと)、それを探る観点は、学年があがるにしたがって豊かになっていくこと、3.小学校の高学年になると、題名の読み手に与える効果も考えるようになること、また個性的な題をつけようとする意識が働くようになること、3.題のつけ方に関与する主題把握の有り様は、小学校の高学年に変換点が見られることが確認された。さらに、4.題名に関する作文指導は、何が文章を統一しているのかを考えることになるため、明確な文章を産出する力の育成に重要な役割を果たすことが確認された。
著者
保田 和則
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

カーボンナノチューブや天然のナノファイバーを分散させた流体や,高分子を溶解した流体は流動によってさまざまな特異な流れ現象を生じさせる。本研究では,そのようなファイバーがごくわずかであっても,特にマイクロスケールではマクロスケールとは流れが大きく異なることや,マイクロ流れでは流路の壁面の材質によって流れが大きく異なることを実験で明らかにした。さらには,流れによって誘起される複屈折の変化をとらえることで,高分子の配向状態を明らかにした。
著者
尾上 清利
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

松山市西部の掘江海水浴場に流入している明神川は上流にある缶詰工場などの汚水で、河川は汚濁し、地域住民は悪臭に悩まされている。昨年愛媛県ではその苦情により「木炭による水質浄化」を行い、河川下流に木炭7.5トンの埋設を行った。しかし、木炭にヘドロが付着し匂いが増している。筆者は竹炭粉と有用微生物を混ぜ合わせた「微生物竹炭粉」を大量に作り、河川へ放流し「微生物竹炭粉」を用いた河川浄化を行う。地域ボランティアの「明神川を美しくする会」で有用微生物を、河川上流の護岸に愛媛県より了承を得た仮設建物の建築を行い、タンクを設置し米のとぎ汁と糖蜜で有用微生物の培養を行った。河川の水をポンプでくみ上げ微生物と混合し大量に培養した。このとき、秋から春にかけた低温時に微生物の繁殖が悪いので、太陽電池を用いて、培養液に適切な温度で保温し有用微生物を培養した。有用微生物の培養液500リットルを別のタンクに分け、それぞれのタンクの中に竹炭粉50kgを入れ、この竹炭粉が培養液タンク底に沈下するまで数週間放置した。この微生物竹炭粉の培養液を河川の上流より放流した。放流は月に2回程度雨上がりに実施した。この作業を繰り返すことで河川に溜まったヘドロは竹炭粉の多孔質を住処にした有用微生物により除去する。河川上流から中流にかけて河川に付着していたヘドロがはがれ、河川の透明度は良くなり悪臭も減ってきた。しかし、下流においては防潮堤があることで改善されなかった。「微生物竹炭粉」は河川の活性化には定期的に長期間投入することで有効であるがわっかった。なお、この実験の報告は「第3回みんなで地球・愛ワッショイ」豊田スタジアムのフォラムで発表を行った。
著者
秋谷 裕幸
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

四年間の研究期間中、中国福建省浦城県南部のびん語びん北区方言群に属する、山下方言、臨江方言、観前方言、水北街方言、楓溪方言、および浦城県北部の呉語仙陽方言の調査を行った。調査項目は私がこれまでに公刊してきた『びん北区三県市方言研究』等と同一である。当初調査を予定していた小溪方言に代えて楓溪方言を調査するなどの変更はあったが、現地調査はほぼ当初の計画通りに進行した。調査データの入力作業も進めたが、平成二十六年六月一日現在、楓溪方言のデータ入力は未完成である。本研究課題の最終目標であった調査報告書『浦城県境内びん北区方言研究』(中国語)の初稿完成が研究期間内に達成できなかったことを遺憾とする。
著者
魁生 由美子
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

まず、高齢化に関する日韓のデータを比較し、高齢者福祉の法と制度に関する要点を整理した。超高齢社会日本と今後高齢社会に突入する韓国においては、草の根的な市民的協同によって、施設運営やケア実践に関する知見の交流が続いている。この交流について明らかにすべく、在日外国人を含む高齢者支援の活動を展開している日本の組織・団体および、韓国において日本と連携し、独自の福祉サービスを提供する組織・団体に対して現地調査を行い、超高齢社会を支える福祉ネットワークの先進事例を収集した。
著者
〓 東風
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、中国四川省の安岳地方・湖北省の荊楚地方・江西省の宜春と〓州などの地域を中心として、各地の仏教遺跡の現地調査を行い、これに文献史料の考察も加えることによって、それぞれの仏教遺跡の確認や新しい史料の発見、また、明代前期四川仏教の代表的人物の思想や経歴、天台智者の出身地の所在、当陽玉泉寺関羽信仰の発生・変化の経過、江西地方の禅宗発達の原因等の解明、という成果を挙げた.
著者
城賀本 晶子
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

更年期女性の不定愁訴として、疲労とむくみに焦点をあてて、これらを改善する方策に手掛かりを得ようと本研究を実施した。新たに多次元疲労測定尺度(4要因40項目)を開発し、統計学的な検証の後、既存の自己効力感尺度との関連を正準相関分析にて解析したところ、失敗に対する不安が強い人は、精神面、認知面、対人面の疲労を強く表出することが判明した。疲労の程度は、性格特性とくに対処行動様式と密接な関係をもち、更年期女性の疲労感を予防・改善するには、個々人の自己効力感を高めるような対処行動に沿った方策が必要と考えられる。一方、むくみを測定する方法論を開発し、とくに長時間同じ姿勢を取り続けると脚のふくらはぎ部分にむくみが生じ、伝承的なヒハツの摂取により、下腿のむくみが抑制されることを明らかにした。