- 著者
-
大倉 元宏
- 出版者
- 成蹊大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
平成16年から2カ年にわたって視覚障害者用道路横断帯の最適幅と横断帯を構成する新しい突起体形状,およびその配置について検討した.さらに,視覚情報の得られない歩行における基本特性を調べ,横断帯の必要性を裏付けた.横断帯の幅に関しては大学構内の道路に幅30,40,50,60cm横断帯を各20m敷設し,目隠しを施した21〜23歳の晴眼大学生17名(男14,女3)を被験者として,歩行実験を行った.踏み外し歩数と歩きやすさ等の主観的応答から,30cm幅では狭すぎ,40cmより広い幅が一つの目安となると考えられた.横断帯を構成する突起体に関して,車輪を有する乗り物や歩行者に対してストレスが少ない突起(高さ5mm,底面と上面の直径それぞれ23.5,6mm;以下トライアングル型)を開発した.そして,それに連携して,点状横線部の両側に点状縦線を配するパターンを提案した.点状縦線の存在で,白杖による横断帯と足裏による道路面との境界部の検知性が高まることが予測される.このことを確かめるフィールド実験を実施したところ,点状縦線の効果を示唆する結果が得られた.さらに,道路横断帯の必要性の裏づけをとるために,視覚遮断直進歩行における周囲音の影響を調べた.周囲音条件として進路左右のスピーカから音圧の異なるホワイトノイズ(70,50dB,なし)を設定した.被験者には指定された手がかりを使って出発方向を決めた後,設定された周囲音条件下で直進歩行を求めた.被験者は13名の目隠しをした晴眼者であった.周囲音は直進時の歩行軌跡に有意な影響をもち,軌跡を音源とは反対側に偏軌させる.さらに音圧が高いと偏軌程度が強まることがわかった.道路横断は一般に直進歩行を求められるが,例えば視覚障害者が横断歩道を渡ろうとして,すぐ脇にエンジンのアイドリング音の高いトラックなどが止まっていれば,それとは逆の側に偏軌し,走行車両との干渉が危惧される.横断帯は直進歩行を維持するための有効な方法と考えられよう.