著者
清水 陽香 中島 健一郎 森永 康子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.202-214, 2016-03-10 (Released:2016-03-21)
参考文献数
28
被引用文献数
3

先行研究では防衛的悲観主義(Defensive Pessimism: 以下DP)が,課題関連場面で高いパフォーマンスを示すために有効な認知的方略であることが示されている。しかし,DPが同様に対人関連場面において有効な方略となるかどうかは定かではない。そこで本研究では,DPが初対面の他者との相互作用場面における行動意図をどのように規定するか明らかにすることを目的に,女子短期大学生(N=202)を対象とする場面想定法を用いた質問紙実験を実施した。DP傾向が複数の他者との会話場面における状態不安や行動意図に及ぼす影響について検討した結果,DP傾向は状態不安と正の関連を持つと同時に,相手の反応に合わせるような行動意図や相手の意見を尊重するような行動意図と正の関連を持つことが示された。
著者
胡(増井) 綾及 岩永 誠
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.190-201, 2016-03-10 (Released:2016-03-21)
参考文献数
22
被引用文献数
2

不健全完全主義者は目標を達成できないにもかかわらず,学業課題へ高い目標を掲げる傾向がある。彼らの学業への動機づけはなぜ高く維持されるのか。本研究は不健全完全主義者の示す学業への高い動機づけの媒介要因を検討することを目的とした。大学生185名を対象に完全主義,随伴性自己価値,失敗の反すう,日常の学業課題への動機づけとの関連を検討した。その結果,完全主義的努力は達成動機に正の直接効果を示した。活動基盤自己価値は,完全主義的努力と競争的達成動機の間を媒介している傾向が示された。一方完全主義的懸念は,自己充実的達成動機には負の直接効果を,失敗回避動機には正の直接効果を示した。また失敗の反すうは,完全主義的懸念と失敗回避動機の間を媒介していた。以上のことから,不健全完全主義者の学業への高い動機づけは,活動基盤自己価値や失敗の反すうに媒介されて生起していると考えられる。
著者
及川 恵 菊池 由華 田渕 梨絵
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.222-224, 2016
被引用文献数
4

This study investigated the relationships between approach-avoidance tendencies and depression involving two self-focus processes of reflection and rumination. The results of a path analysis suggest that an approach tendency was negatively related to depression and an avoidance tendency was positively related to depression. An approach tendency was positively related to reflection, and reflection had indirectly a positive relationship with depression through rumination. An avoidance tendency had indirectly a positive relationship with depression through rumination. The relationship between reflection and depression was not significant. These results suggest that an approach tendency might have an important role in enhancing reflection as an adaptive self-focus.
著者
高野 慶輔 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.259-261, 2008-01-31
被引用文献数
24

The purpose of the present study was to develop a Japanese version of Rumination-Reflection Questionnaire (RRQ) and examine its reliability and validity. Previous studies suggested that RRQ had two subscales: rumination and reflection. Rumination was dispositional self-attentiveness evoked by negative events, and reflection was dispositional self-attentiveness motivated by intellectual interests. Data from 241 undergraduates were analyzed, and factor analysis showed two factors, corresponding to the previous findings. Both subscales showed sufficient internal consistency and concurrent validity with clinical and personality scales. These findings provided support for reliability and validity of Japanese-version RRQ.
著者
金政 祐司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.168-181, 2013-11-30 (Released:2013-12-04)
参考文献数
45
被引用文献数
2

本研究は,先行研究の3つの青年・成人期の愛着関係で示された共通項が青年期の同性の友人関係においても認められるのかについて,成人の愛着スタイル,関係内の感情経験,関係への評価の観点から検討を行った。分析対象者は,106組の青年期の友人ペアであった。その結果,愛着次元の関係不安は,回答者本人のネガティブ感情ならびにポジティブ感情と有意な正の相関関係を示していた。親密性回避は,回答者本人のネガティブ感情と有意な正の相関を,関係への評価とは有意な負の相関を,加えて,ポジティブ感情とは有意傾向の負の関連を示していた。また,上記の親密性回避と本人の関係への評価との関連は,本人のポジティブ感情によって媒介されており,これは先行研究の3つの青年・成人期の愛着関係では見られなかった傾向であった。これらの結果について,愛着システムと親和システムの観点から議論を行った。
著者
服部 陽介 川口 潤
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.277-280, 2014

The present study examined whether the frequency of intrusive thoughts mediates the relationship between depression and meta-cognitive beliefs about focused distraction. Participants were required to suppress their thoughts in a condition where they were able to use focused distraction. An analysis of mediation indicated that the subjective frequency of intrusive thoughts completely mediated the relation between depression and the meta-cognitive belief about the ironic effect of mental control. This result suggests that the degree of confidence in the belief about the ironic effect of mental control is influenced by the degree to which the frequency of intrusive thoughts has been affected by depression.
著者
村井 潤一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.56-57, 2000-09-30
著者
新井 博達 弘中 由麻 近藤 清美
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-14, 2015-07-31 (Released:2015-08-07)
参考文献数
40
被引用文献数
1 3

本研究では,社交不安の認知モデル(Clark & Wells, 1995)に基づき,ひきこもり親和性と社交不安症状と対人的自己効力感の関連について検討を行った。大学生246名(男性101名,女性145名)を対象として,ひきこもり親和性を測定する尺度,Liebowitz Social Anxiety Scaleの日本語版,対人的自己効力感尺度を用いた質問紙調査を実施した。共分散構造分析の結果から,社会場面における恐怖感/不安感が,ひきこもり親和性に対して直接的な正の影響を与えていることが示された。その一方で,社会場面における回避が,ひきこもり親和性に対して直接的な影響を与えていることは示されなかった。また,対人的自己効力感は,社会場面における恐怖感/不安感を介して,ひきこもり親和性に対して間接的な負の影響を与えていることが示された。以上の結果から,ひきこもり親和性の高い人々に対する予防的な介入として,対人的自己効力感を高めるような働きかけが有効である可能性が示唆された。
著者
小塩 真司 阿部 晋吾 カトローニ ピノ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.40-52, 2012-07

本研究の目的は日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)を作成し,信頼性と妥当性を検討することであった。TIPI-J は10 項目で構成され,Big Five の5 つの因子を各2 項目で測定する尺度である。TIPI-J の信頼性と妥当性を検討するために,計902名(男性376名,女性526名)を対象とした複数の調査が行われた。各下位尺度を構成する2項目間には有意な相関が見られ,再検査信頼性も十分な値を示した。併存的妥当性と弁別的妥当性の検討のために,FFPQ-50(藤島他,2005),BFS(和田,1996),BFS-S(内田,2002),主要5 因子性格検査(村上・村上,1999),NEO-FFI日本語版(下仲他,1999)との関連が検討された。自己評定と友人評定との関連を検討したところ,外向性と勤勉性については中程度の相関がみられた。これらの結果から,TIPI-Jの可能性が論じられた。This study developed a Japanese version of the Ten-Item Personality Inventory (TIPI-J) and examined its reliability and validity. Th e participants were 902 Japanese undergraduates (376 males, 526 females). They completed the TIPI-J and one of the other Big-Five scales: Big Five Scale (BFS; Wada, 1996); Five Factor Personality Questionnaire (FFPQ-50; Fujishima et al., 2005); BFS short version (Uchida, 2002); Big Five (Murakami & Murakami, 1999); or the NEO-FFI (Shimonaka et al., 1999). e TIPI-J was administered again two weeks later to 149 participants to determine test-retest reliability. Also, 31 pairs of participants rated their self-image and the other-image using the TIPI-J to explore the relationship between self-rated and friend-rated TIPI-J scores. Th e results generally supported the reliability and validity of the TIPI-J.
著者
酒井 久実代
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.80-83, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
15

This study investigates whether awareness of the feeling process (AFP), which is an emotional regulation strategy based on focusing process, is adaptive and predicts life satisfaction. University students (N=332) completed questionnaires of AFP, reappraisal, suppression, emotional regulation as measured on the Intercultural Adjustment Potential Scale (ICAPS), and life satisfaction. A hierarchical regression analysis indicated that AFP predicts life satisfaction above and beyond what is accounted for by other adaptive emotional regulation measures.
著者
藤田 知也
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.281-284, 2014-03-25 (Released:2014-04-08)
参考文献数
12

This study investigated the changes of mood (assessed five times) across a catastrophizing task. The results showed that anxious mood at Time 1 was significantly different from at Time 4 and Time 5. Also sad mood did not show a significant difference across the catastrophizing task. It was suggested that an anxious mood tends to increase across a catastrophizing task.
著者
藤本 学 大坊 郁夫
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13496174)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.347-361, 2007-03-31
被引用文献数
2 23

コミュニケーション・スキルに関する諸因子を階層構造に統合することを試みた。既存の尺度を構成する因子を分類することで,自己統制・表現力・解読力・自己主張・他者受容・関係調整の6カテゴリーが得られた。これらの6因子は理論的に基本スキルと対人スキル,また,表出系,反応系,管理系に分類された。こうしてコミュニケーション・スキルの諸因子を階層構造に統合したものがENDCOREモデルであり,各スキルに4種類の下位概念を仮定した24項目の尺度が,ENDCOREsである。
著者
藤島 寛 山田 尚子 辻 平治郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.231-241, 2005-03-31
被引用文献数
3 11

本研究では5因子性格検査(FFPQ; FFPQ研究会, 2002)の短縮版を構成し, その信頼性と妥当性の検討を行った.FFPQは外向性, 愛着性, 統制性, 情動性, 遊戯性という5つの超特性, その各超特性の下位因子として5つの要素特性という階層構造を持ち, 包括的に性格を記述することができる.しかし, 項目数が150項目と多いため, 回答者の負担が少ない短縮版の作成が待たれていた.FFPQから, 階層構造を維持するような50項目を選んでFFPQ短縮版(FFPQ-50)とし, 900名の大学生に実施して因子分析を行った.その結果, 項目レベルでも要素特性レベルでも単純な5因子構造が示された.またエゴグラム(TEG)との関係から併存的妥当性が確認され, 芸術大学の音楽専攻大学生の性格特徴をFFPQと同様に記述できることが示された.これらの結果から, FFPQ-50は階層構造を維持し, 記述の多様性をもった性格テストであると考えられる.
著者
久保 沙織 豊田 秀樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.93-107, 2013-11-30 (Released:2013-12-04)
参考文献数
23

多特性多方法行列を扱う確認的因子分析モデルにおいて,CT-CMモデルは信頼性と収束的・弁別的妥当性の解釈が一通りに定まるというメリットがあるが,識別されない場合が多い。一方で,CT-C (M-1)モデル(Eid, 2000)は,識別は保証されるものの,基準となる方法の選択に依存して,同一データに対して信頼性と妥当性の解釈が変わってしまうという欠点がある。そこで本論文では,CT-CMモデルを基に,方法因子の因子得点の和が0という制約(Kenny & Kashy, 1992)を導入することで,基準となる方法を決める必要がなく,信頼性や妥当性の解釈が一通りに定まるモデルを提案する。主要文献より引用した12の相関行列に3種類のモデルを適用した結果と,シミュレーション研究の結果から,提案モデルは信頼性と妥当性に関する解釈が一通りに定まり,識別の可能性も高く,有望なモデルであることが示唆された。
著者
中尾 達馬 加藤 和生
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.281-292, 2006 (Released:2006-08-30)
参考文献数
23
被引用文献数
4 2

本研究では,従来の成人愛着研究が暗々裏に仮定してきた「成人愛着スタイルは成人の愛着行動パターンの違いを反映する」という理論的前提の妥当性を実証的に検討した.大学生378名に対して,成人愛着スタイル尺度と本研究で作成した成人愛着行動尺度を実施した結果,以下の2点が示された.すなわち,成人愛着行動を直接的愛着行動(安全欲求を直接的に表現する愛着行動)と間接的愛着行動(自他の適切な心理的距離の調整にとらわれるため,安全欲求を間接的に表現する愛着行動)の2種類に分類した場合に,成人は,(1)「親密性の回避」が低いほど直接的愛着行動をより行い,(2)「見捨てられ不安」が高いほど間接的愛着行動をより行う.また,これらの結果は,愛着スタイルの4分類を用いた分析においても確認できた.以上の結果から,本研究により,上記の理論的前提が妥当であることが実証された.