著者
服部 陽介 池田 賢司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.62-73, 2016-07-01 (Released:2016-06-04)
参考文献数
37
被引用文献数
3

本研究では,意図的な抑制努力の個人差とネガティブな気分が講義中に生じるマインドワンダリングに関連する可能性について検討した。参加者は,講義を受けている際に合図を受け,その際の思考内容を記録するとともに,その思考と講義との関連度を評価した。思考内容と講義との関連度に基づき,マインドワンダリングの程度を算出した結果,講義に無関連な思考を意図的に抑制しようとすることで,マインドワンダリングが生じにくくなることが示された。ただし,ネガティブな気分が強い場合には,意図的な抑制努力に伴うマインドワンダリングの減少が生じないことが明らかになった。思考の意図的抑制という観点を取り入れながら,マインドワンダリングの発生に関与する要因を整理することの重要性が議論された。
著者
小平 英志 小塩 真司 速水 敏彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.217-227, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
22
被引用文献数
11 7

本研究の目的は,対人関係で経験される抑鬱感情と敵意感情に焦点を当て,仮想的有能感と日常の感情経験との関連を検討することであった。調査1では,仮想的有能感尺度および自尊感情尺度が実施された。続く調査2では,大学生445名(男性238名,女性207名)を対象に,1日のうち印象に残っている対人関係上の出来事とそれに対する抑鬱感情・敵意感情を7日間に渡って記入するように求めた。その結果,他者軽視傾向が強く自尊感情の低い『仮想型』が,抑鬱感情,敵意感情の両方を強く感じていること示された。また,7日間の評定値の変動に関しても,他者軽視傾向が弱く自尊感情の高い『自尊型』と比較して大きいことが示された。本研究の結果から『仮想型』に分類される個人は,特に対人関係に関わる出来事に関して,日常から不安定で強い抑鬱感情,敵意感情を経験していることが示された。
著者
岡田 涼
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.194-204, 2018-03-01 (Released:2018-03-06)
参考文献数
30
被引用文献数
3

本研究の目的は,小学生の協同的な学習に対する動機づけの発達的変化を検討することであった。小学3年生から6年生まで4年間の縦断データを用いて,協同的な学習に対する動機づけの平均レベルの変化と時点間の安定性という点から発達的変化を検討した。成長曲線モデルによる分析の結果,内発的動機づけ,同一化的調整,取り入れ的調整については,学年が上がるにつれて低下する傾向がみられた。また,自己回帰モデルによる分析の結果,協同的な学習に対する動機づけについて時点間での関連がみられ,安定性が示された。以上の結果から,児童期においては,全体的に協同的な学習に対する動機づけが低下し,また学年を超えた安定性があることが示唆された。協同的な学習に対する動機づけの発達的特徴について論じた。
著者
登張 真稲
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.36-51, 2000-09-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
5 9

多次元的視点を用いた共感性研究の展望を試み, 「共感的関心」, 「個人的苦痛」, 「視点取得」, 「ファンタジー」の4次元について, どのような変数と関係があるかの検討をおこなった.「共感的関心」は情動性, 他者への非利己的関心, 向社会的行動と正に相関し, 「個人的苦痛」は情動性と正, 制御性と負に相関した.「視点取得」は制御性, 対人認知, 向社会的行動(視点取得教示があるとき)に正, 攻撃性と負, 「ファンタジー」は情動性と正に相関した.次元間の関係については, 「共感的関心」, 「視点取得」, 「ファンタジー」間が正の関係にある.「共感的関心」(愛他的傾向), 「個人的苦痛」(他者の苦痛に対し, 動揺など自己志向の感情反応が起こること), 「視点取得」(他者の気持ちの想像と認知), 「ファンタジー」(他者への同一化傾向)と次元の意味を推測したが, 共感性の次元については, 内容も含め, さらに検討する必要がある.共感性の起源と発達については種々の研究方法が開発されているが, 多次元的視点によるものはまだ少なく, さまざまな角度からさらに検討する余地がある.
著者
橋本 泰央 小塩 真司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.1.4, (Released:2019-05-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本研究では辞書から抽出した対人特性語から円環構造が見出されるかどうかを検討した。大学生719人の回答をもとに主成分分析を行い,第1主成分と第2主成分からなる平面上に対人特性語をプロットすると円環状の配置が得られた。また海外の先行研究同様,支配性と親密性と解釈可能な2つのほぼ直交する軸が見出された。このことから対人特性の円環構造と支配性・親密性の軸の汎文化的特性が示唆された。外向性を表す対人特性語群の配置も先行研究通りであった。一方,協調性を表す対人特性語群の配置は海外での先行研究とは異なり,親密性寄りに配置された。今回円環上に配置された対人特性語群は語彙プールとしての活用が今後期待される。
著者
増永 希美 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.200-209, 2019-03-01 (Released:2019-03-12)
参考文献数
32

本研究では,全般性不安症状および抑うつ症状の素因としてネガティブなメタ認知的信念を扱い,これらの関連に対するウェルビーイングと感謝感情による調整(緩衝)効果を検討した。大学生173名に質問紙調査を実施し,階層的重回帰分析を行った結果,ウェルビーイングがネガティブなメタ認知的信念と全般性不安症状および抑うつ症状の関連を有意に緩衝した。一方,感謝感情は有意な緩衝効果が得られなかった。この要因として,日本人は身近な他者に社会的支援を求めることを快く思わないといったような潜在的に負の対人関係を有しているため,感謝をすると,感謝感情に伴って負債感情も生起することが考えられる。したがって,本邦においては,ウェルビーイングを高めることは全般性不安症状および抑うつ症状を低めるが,感謝感情を高める介入の効果は低い可能性が示唆された。
著者
登張 真稲
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.228-239, 2007-01-31
被引用文献数
4 2

社会的望ましさ尺度を用いた社会的望ましさ修正法の妥当性と有効注を検討する研究の結果を展望した。社会的望ましさ尺度は社会的望ましさ反応による回答の歪みを見破ることができるが,社会的望ましさ尺度を用いた社会的望ましさ修正法で前提とされている回答の歪みと社会的望ましさ尺度との間の直線的な関係は,一部の性格因子においてのみ示唆されるにとどまった。社会的望ましさ尺度を用いて個々の得点を修正する方法は,集合レベルではある程度の効果をもつが,個々のレベルで見ると個人の修正得点を正直得点に近似させる効果をもたないこと,部分相関や偏相関を用いた社会的望ましさ修正法は,パーソナリティ検査の妥当性を高める効果をもたないことが明らかとなった。社会的望ましさ尺度を用いた従来の修正法は,社会的望ましさ尺度が何を測定しているかという問題と関連づけて再検討する必要がある。
著者
近江 玲 坂元 章
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.426-434, 2008

本研究では,テレビ視聴量とパーソナリティの知的側面との間に見られる相関関係が,視聴番組の内容によってどのように異なるか検討するために,調査研究を対象としたメタ分析を行った。11の研究を対象とし,各研究から抽出した相関係数を,相関係数と偏相関係数に分類した。そしてそれぞれについて,番組ジャンルごとに効果サイズを統合した。その結果,ニュース・ドキュメンタリー,教育番組の各視聴量と知的側面との間には有意な正の相関が確認された一方で,アニメ,ドラマ,スポーツ,暴力的番組の各視聴量と知的側面との間には負の相関が検出された。したがって,テレビ視聴量と知的側面との関連を議論する際には,視聴する番組の内容に注意すべきであることが,改めて示唆された。
著者
川本 静香 川島 大輔 白神 敬介 川野 健治
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
2019
被引用文献数
2

<p>The aim of the current study was to investigate the validity of the Japanese version of the SOSS. We translated the 58 SOSS items into Japanese, after receiving permission from the creator. A total of 1909 individuals from the general public, who were not suicide bereaved, responded to the Japanese version of the SOSS through an internet survey. The factor structure observed was similar to prior research. Cronbach's α for the three factors demonstrated appropriate internal consistency. The Japanese version of the SOSS was confirmed through factor analysis to be valid and reliable.</p>
著者
橋本 京子 子安 増生
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.233-244, 2011-04-20 (Released:2011-06-23)
参考文献数
32
被引用文献数
6 3 1

本研究は,楽観性と,ポジティブ志向(現実のポジティブな面を強調するような,必ずしも現実に基礎をおいていない認知),および主観的幸福感の関連を検討することを目的として行われた。大学生337名を対象に,楽観性尺度,主観的幸福感尺度,ポジティブ志向尺度から成る質問紙調査を実施した。因子分析の結果,楽観性,主観的幸福感は,両者とも1因子構造であること,およびポジティブ志向は,ポジティブに認知する際の基準をどこに置くかの違いによって,「上方志向」と「平静維持」の2因子に分かれることが明らかになった。楽観性がポジティブ志向の各因子を経て主観的幸福感に至るモデルを構成し,共分散構造分析によって検討したところ,楽観性は,「上方志向」および「平静維持」と正の関連がみられた。また,主観的幸福感は,楽観性および「上方志向」と正の関連がみられたが,「平静維持」との関連はみられなかった。
著者
髙坂 康雅
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
2018

<p>This study investigates how many university students who do not desire a steady romantic relationship become involved in a steady relationship or want to have a romantic relationship in 1 year. A total of 96 students who did not desire a steady romantic relationship at Time 1 were asked about the status of their romantic relationship at Time 2. Those who had the highest score for "the influence of past romantic relationships" were identified, and 29 were found to desire a romantic relationship. The reasons for entering into or desiring a romantic relationship were categorized into seven groups.</p>
著者
清水 陽香 中島 健一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-30, 2018-07-01 (Released:2018-07-04)
参考文献数
38

防衛的悲観主義者(DP者)は,方略的楽観主義者(SO者)に比べて自尊心が低く不安が高い一方で,パフォーマンス前の準備を入念に行い,その結果SO者と同程度に高いパフォーマンスを示すとされている。一般に高い不安や低い自尊心は準備およびパフォーマンスを阻害するにもかかわらず,DP者が課題の事前準備に取り組むことができる理由はいまだ明らかになっていない。本研究では,その理由としてDP者には潜在的自尊心の高さがあると考え,DP者の顕在的自尊心と潜在的自尊心に着目した検討を行った。研究1では,質問紙調査によって認知的方略による顕在的自尊心の差異を検討した。また研究2では,Name Letter Taskを用いて潜在的自尊心の差異を検討した。研究1, 2の結果,DP者はSO者に比べて顕在的自尊心は低いものの,潜在的自尊心はSO者と同程度に高いことが示された。
著者
吉住 隆弘
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.3.3, (Released:2018-11-21)
参考文献数
13

The purpose of the study was to focus on the prejudice toward people receiving welfare and to identify the psychological factors related to such prejudice. Participants included 193 university students (104 male and 89 female, M = 19.5 years). Links among the participants’ self-esteem, nationalism, perspective taking, and prejudice toward people receiving welfare were examined. Multiple regression analysis revealed that prejudice was positively related to nationalism and negatively related to perspective taking. Implications for mitigating criticism toward people receiving welfare are discussed.
著者
太幡 直也
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.3.2, (Released:2018-11-08)
参考文献数
7
被引用文献数
1

This paper compared the teamwork competency of university students when graduating. Participants and non-participants in a skills training conducted at university to develop teamwork competency (Tabata, 2016) took part in this study. They completed self-report scales assessing general social skills, teamwork competency, communication, team orientation, back-up, monitoring, and leadership, 20 months after completing the training. Results indicated that compared to non-participants, participants in the skills training possessed higher social skills scores and many sub-elements of teamwork competency when graduating.
著者
砂田 安秀 甲田 宗良 伊藤 義徳 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.26.3.11, (Released:2018-01-30)
参考文献数
25

本研究では,約半数のADHDの成人に併発する症状である成人のSCT症状を測定する尺度を開発し,妥当性を検討した。この新たな尺度の狙いは,既存の尺度の項目が抑うつと類似しているために抑うつとの弁別性が乏しい問題を克服することであった。文献のレビューによってSCT項目が選定され,専門家によって内容的妥当性の検討が行われた。これらの項目は抑うつ気分でないときの状況について回答されるものであった。大学生471名が質問紙に回答し,因子分析によって項目の選定が行われた。ジョイント因子分析によって,本SCT尺度は抑うつからの十分な弁別性を有していることが示された。最終的なSCT尺度(9項目)は,収束的妥当性,弁別的妥当性,内的一貫性の高さが示された。
著者
高橋 誠 森本 哲介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.170-172, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
10
被引用文献数
3 6

The present study developed a Japanese version of the Strength Knowledge Scale (SKS: Govindji & Linley, 2007), and investigated its reliability and validity. The participants were Japanese university students. An exploratory factor analysis showed a one-factor structure. Internal consistency and test–retest reliability were sufficient. The SKS was associated with subjective well-being, self-esteem, characteristic self-efficacy, character strength, and identity. The findings showed that the Japanese version of the SKS had substantial reliability and validity. Furthermore, in this study the SKS was related to holding strengths and identity.
著者
藤井 勉
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.23-36, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

本研究では,潜在的な対人不安を測定する潜在連合テスト(Implicit Association Test:IAT)を作成した。研究1では,55名の大学生および大学院生とその友人162名を対象に実験を行った。参加者の顕在的/潜在的不安と他者評定の特性不安/状態不安の関連から,対人不安IATの予測的妥当性が示された。研究2では,32名の大学生および大学院生を対象に実験を行い,シャイネスを測定する潜在連合テストと対人不安IATの相関関係を検討した。両者の相関係数はr=.46 (p<.01)であり,対人不安IATの併存的妥当性が示された。研究3では,26名の大学生および大学院生を対象に,対人不安IATを1週間の間隔を空けて実施し,対人不安IATの再検査信頼性を検討した。2回のIAT間の相関係数はr=.76 (p<.01)であり,十分な再検査信頼性が示された。一連の研究において,対人不安IATの妥当性,信頼性は十分であると判断された。
著者
石毛 みどり 無藤 隆
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.266-280, 2006 (Released:2006-08-30)
参考文献数
51
被引用文献数
8 8

レジリエンスは困難な出来事を経験しても個人を精神的健康へと導く心理的特性である.中学生905名を対象に,レジリエンスとCloningerの7次元モデルの特性との関連,およびそれらの関連の性差を検討した.その結果,レジリエンス尺度は「意欲的活動性」「内面共有性」「楽観性」の3因子構造だった.男子の場合,「意欲的活動性」と「自己志向」および「協調」とが,そして「内面共有性」と「協調」とが有意な正の関連を示した.女子の場合,「意欲的活動性」と「自己志向」,「内面共有性」と「報酬依存」とが有意な正の関連を,「楽観性」と「損害回避」とが有意な負の関連を示した.