著者
伊藤 亮 村瀬 聡美 金井 篤子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.181-190, 2011-04-20 (Released:2011-06-23)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究の目的は,過敏性自己愛傾向がふれ合い恐怖心性に及ぼす影響について,対人恐怖心性との比較から検討することであった。専門学校生,大学生,大学院生443名を対象に,ふれ合い恐怖心性,対人恐怖心性,過敏性自己愛傾向を測定する自己愛的脆弱性尺度からなる質問紙を実施した。パス解析の結果,自己愛的脆弱性尺度の下位因子である目的感の希薄さと自己顕示抑制の高さがふれ合い恐怖心性と対人恐怖心性の両者を高めていることが示された。しかしながら,承認・賞賛への過敏さの高さは対人恐怖心性を高め,自己緩和不全の低さおよび潜在的特権意識の高さはふれ合い恐怖心性を高めるという相違点が見出された。これらの結果から,両心性の背景には共通して過敏性自己愛傾向が潜んでいるものの,承認・賞賛の過敏さ,自己緩和不全,潜在的特権意識の過敏性自己愛傾向の下位側面のあり方によって,現れ方が異なってくる可能性が示唆された。
著者
福森 崇貴 小川 俊樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.12-20, 2009-06-01 (Released:2009-07-24)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

本研究は,a)不快情動との直面を促進する要因とはどのようなものか,b)それらの要因は不快情動の回避にどのような影響を及ぼすか,の2点について検討することを目的として行われた。自由記述式調査およびそこから得られた項目群の因子分析結果から,不快情動との直面を促進する要因は,“支えてくれる他者”,“気分調整の自信”,“環境的ゆとり”,“つらい過去経験”,“成長への意志”の5つから捉えられることが示唆された。また,構造方程式モデリングを用いたパス解析の結果,直接・間接的に不快情動回避に影響を及ぼしていたのは,“気分調整の自信”,“支えてくれる他者”,“環境的ゆとり”の3要因であった。よって,不快情動との直面を考える上では,特にこれらの要因が重要となることが示された。
著者
吉江 路子 繁桝 算男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.335-346, 2007-07-07

本研究は、 ピアノサークルに所属する大学生、大学院生77名を対象に、対人不安傾向と完全主義認知が演奏状態不安に与える影響を検討した。演奏状態不安の指標としてState-Trait Anxiety Inventory (Spielberger, Gorsuch, & Lushene, 1970) を用い、本番の演奏前後の状態不安を測定した。さらに、演奏状態不安の要因の指標として、演奏前に完全主義認知、演奏後に聴衆不安と相互作用不安、自己思考的完全主義を測定した。その結果、対人不安傾向のうち“聴衆不安”、完全主義認知のうち“ミスへのとらわれ”のみが演奏前状態不安と正の相関をもった。また、これら2変数には交互作用が見られ、“ミスへのとらわれ”高群においてのみ、聴衆不安傾向が演奏前状態不安を有意に予測していた。これらの結果より、演奏者のパフォーマンスを高めるための実践的示唆が得られた。
著者
川崎 直樹 小玉 正博
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.149-160, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

本研究では,自己愛傾向と対人恐怖傾向の2つのパーソナリティ特性が,いずれも乖離のある不安定な自己概念を背景要因としていると仮定して検討を行った。大学生341名に,自己概念の肯定性と乖離性を測る尺度,自己概念の不安定性を測る尺度,自己愛傾向,対人恐怖傾向を測る尺度からなる質問紙調査を行った。自己概念の肯定性は日常的に知覚される自己像の測定により指標化され,乖離性は自己肯定的及び自己否定的場面を想定したときに知覚される自己像の評定差によって指標化された。その結果,自己概念の肯定性は対人恐怖傾向と負の相関,自己愛傾向と正の相関を示した。一方で,自己概念の乖離性と不安定性については,対人恐怖傾向及び自己愛傾向の下位側面との間に正の相関を一部示した。以上の結果から,この両パーソナリティ特性がともに,乖離のある不安定な自己概念を維持・構築するプロセスとして理解される可能性について議論された。
著者
坂田 浩之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.101-110, 2021-09-16 (Released:2021-09-16)
参考文献数
23

本研究は,容姿にこだわる若者に対する理解を深めるために,醜形恐怖心性とメンタライジングとの関連について検討した。大学生689名に対して自己報告式の質問紙とReading the Mind in the Eyes Test (RMET)が実施された。本研究の結果,メンタライジングに関する自己認知は醜形恐怖心性と弱く関連することが示された。そして,メンタライジングに関する自己認知のうち,他者に関するメンタライジングは醜形恐怖心性と正の関連が,自己に関するメンタライジングは醜形恐怖心性と負の関連が示唆された。しかし,RMETで測定された,外的なものに基づく他者に関する顕在的なメンタライジングの正確さは醜形恐怖心性と関連しないことが示唆された。本研究の知見から,容姿にこだわる若者は,他者に関するメンタライジング能力を高く評価しがちで,自己に関するメンタライジング能力を低く評価しがちである可能性が検討された。
著者
向井 智哉 松木 祐馬
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.125-135, 2022-10-27 (Released:2022-10-27)
参考文献数
27
被引用文献数
3

アメリカで行われた先行研究は,社会的支配志向性(SDO)の2つの因子―SDO-DとSDO-E―がともに厳罰傾向と正に関連することを示している。しかし,非西欧的な文脈で行われた研究はこれまで存在しない。このような状況の下で,本研究は,日本と韓国という比較的類似した社会において,SDO-DならびにSDO-Eが厳罰傾向に及ぼす効果を検討することを目的とした。409名の日本人と417名の韓国人から得られたデータが,多母集団の共分散構造分析によって分析された。その結果,SDO-Dは日韓で厳罰傾向の各因子と概して正の関連を示すこと,ならびにSDO-Eは日本においては厳罰傾向の各因子と負の関連を示す一方で,韓国においては無関連であることが示された。SDO-Eと厳罰傾向の間に負の関連が見られたことについて,社会的支配理論の観点から議論を行った。
著者
坂田 浩之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.11-13, 2020-04-27 (Released:2020-04-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

Photographs of Reading the Mind in the Eyes Test (RMET) were classified based on affect valence, and they have been used for the investigation of mental state decoding abilities depending on their valence. The present study aimed at classifying photographs of the Asian version of the RMET that can also be applied to the Japanese by affect valence, as in the original RMET. Japanese female university students were presented with 36 photographs of Asian RMET, and asked to evaluate the affect valence of each photograph. In the resulting classification of the photographs, 20 were negative, 5 were neutral, and 11 were positive.